表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫華の付与師は今日もお留守番。ダンジョンで無双する最強支援職  作者: さくさくの森
第四章 明確な敵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/93

外伝 黎明の翼 ―オーリス―

40話でラナが何度か「さん」付けしてましたが修正済みです。

聖堂附属療舎の朝は、いつもと変わらぬ静けさに包まれていた。

けれどその静けさの奥に、胸をざわつかせる気配があった。


今日、赤位探索者――エルド・フェルナーが面談に来る、と聞いていたからだ。


私は療舎で働きつつ青位の探索者でもある。

結界術と治癒術の実地運用には自信があるが、それでも赤位の実力者がわざわざ名を出して面談を望むのは珍しい。


だからこそ、何かが変わる日になる――そんな予感があった。


その予感は、扉が開いた瞬間に現実となった。


「失礼する。オーリス・ノルディアさんでよろしいでしょうか」


柔らかく、しかし芯のある声だった。

黒紺の外套、整った立ち姿、そして真っ直ぐにこちらを見る瞳。


噂どおりの人物だった。


「はい、私です。お身体の具合に何か?」


「いえ。あなたに話があって来ました」


念のために確認はしたが診察ではなかった。

私は無意識に姿勢を正していた。


「私は新しい探索隊を立ち上げます。

 そのために、あなたをスカウトしに来ました」


……なるほど。

胸の奥でひとつ腑に落ちる。


たしかに最近、療舎での活動と並行して結界運用の相談を求められることが増えていた。

戦場で継戦能力を高める結界、即応治癒の配分設計――地味だが、積み重ねを評価してくれる人もいた。


それが、この男だったというわけだ。


「スカウト……私を、ですか」


「あなたの結界と治癒は、机上ではなく現場仕様だ。

 あれほどの精度で判断できる探索者は少ない。

 私の隊には、その視点が必要だ」


誇張ではなく、穏やかな事実として告げられた言葉だった。

努力を正しく見てくれる者がいるというだけで、心が静かに温まる。


だが、私はひとつだけ譲れない。


「……入隊にあたって、確認したいことがあります」


「聞かせてください」


私は彼の目を見る。

逃げる必要など、最初からなかった。


「救えないものを救えると謳う隊には入りません。

 理想を掲げるだけで撤退判断が曖昧な隊は、多くを失う。

 救えないとき、あなたは――どう現場を動かすつもりですか」


一瞬の沈黙。

しかしその沈黙には迷いがなかった。


エルドはまっすぐに答えた。


「撤退を敗北とは扱わない。

 次で持ち込むための手順として規律化する。

 生存と再挑戦の可能性を残す判断を、常に優先する」


それは、私がずっと胸に抱えていた理想と全く同じだった。


エルドは続ける。


「救えないものを救えるとは決して言わない。

 ただ、救えるものは確実に救う隊とする。

 そのために、必要な結界と治癒の運用は――あなたの力を借りたい」


胸の奥で何かが静かに音を立てた。

理想論ではない。

戦場の泥と血を理解したうえでの言葉だ。


私は息を整え、短く答えた。


「……了承しました。

 その方針で動くのなら、私はあなたの隊で力を尽くしましょう」


エルドは小さく息を吐き、微笑した。


「感謝する。あなたがいてくれるなら、隊は必ず強くなる」


その瞬間――まだ恋ではなかった。

だが、この人となら多くの命を繋げる。

その確信だけは揺るぎなく胸に落ちた。





合流してからの日々は、想像以上に忙しく、そして充実していた。


エルドは私が提案した撤退ラインの明文化を即座に採用し、結界の維持限界、治癒班の負荷限界、地形・視界の悪化時の対応……そのすべてを明確に定義した。


何より、彼は隊全員に決して無茶をさせない。


前へ出るときも、退くときも、常に根拠がある。

判断基準に一貫性があるというだけで、これほど安心できるものなのか、と痛感した。


そして――


(……この人は、尊敬に値する)


そう気づいたのは、初任務から数週間が経った頃だった。


尊敬は、恋とは違う。

だが、尊敬が積み重なれば、心の向く先は自然と形になる。


リディアには早々に見透かされ、

ラナと氷雨には「「うん、バレてるね」」と正面から言われ、

トゥリオには何も言われていないのに目が合うたびに気まずい。


ヴァルクとクーデリアは判別が付かない……

私はそんなにも分かりやすいのだろうか?


肝心のエルドも気付いているのかいないのか……

分析力には自信があるが、色恋の観察眼は、どうやら私には皆無なようだ。







その日の任務後、夕暮れの宿舎で装備を整えていると、エルドが声を掛けた。


「今日の結界、完璧だった。オーリスのおかげで無傷で帰れた」


「当然のことをしただけです。

 あなたが明確な撤退基準を守ってくださるから、私は迷わず動けます」


エルドは首を振る。


「違う。オーリスがいてくれるから、俺はその基準を隊の形にできている」


……反則だ。

心がほんの少し跳ねた。


だが私は、それを胸の奥に押し込み、静かに礼を返した。


「これからも、救える場を作らせてください。

 そのために私はいます」


「もちろんだ。頼りにしている」


その言葉は、他意のない真っ直ぐな信頼だった。


私は息を整える。

恋を悟られないように、尊敬を尊敬のままに保つために。


――私の黎明は、こうして始まったのだ。


かなり露骨に描写してましたが、オーリス⇒エルド。

その他の矢印は読者諸兄に任せます。黎明リディア読むと色々とお労しい……

作者的に8でくっつけやって段階だとすると作中の最大は6程度なので安心安全です。まだ頑張れる。

因みにエルドはスパダリ適正高いです。作中では地味かもしれませんがスペックが大概変態。仮に学園ものだと生徒会長で全国模試1位で運動部の主将で会社経営もしてるとかそういうの。まあ国家の象徴筆頭なので平常運転ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ