表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
最終章:無秩序のカタストロフ
98/108

守護神

「フフン、聞いて驚け。我こそは偉大なる覇者として多分そのうち世界を征服するであろうと5チ○ンとかで(ささや)かれているかもしれない存在、魔王ルシフェルである!」ドドン!




「あ、テーブルの下に有りました、ここがダンジョンの入口です!」

「おお、でかしたぞアイカ!」

「この先にラヴィエルが居るのですわね」

「さ、早く行きましょうシャイターン様」


「――って聞かんかい貴様らぁ!」


 まったく、他人にやらせておいて梯子を外すとは卑怯な奴らめ。(←自分でやっておいてこの言い草よ)


「自己紹介なんて歩きながら済ませれば良いのですわ」

「いやお前、それだと魔王としての威厳がだな……」

「いいからメグミ、さっさとなさいな」

「こら、引っ張るでない!」


 トワの計らいにより盛大に転けた自己紹介の後、将軍の部下を司令室に残してダンジョンへと入った。中は殺風景な石レンガの通路となっており、左右には対称な造りの扉が一定間隔で備わっている。


「んふ♪ ダンジョンと言えばお宝よね! 扉の先に未知のお宝があったりとか!」

「あ、いけません! その先は――」


 アイカの制止も聞かずにグレシーが近くの扉を押し開ける。



 ビュゴォォォォォォ!



「ひゃぁぁぁ!? 吸い出されるぅぅぅぅぅぅ!」

「グレシー!?」


 扉の先はまさかの宇宙で、空気と共にグレシーがすっ飛んで行く。


「俺が連れ戻します」


 こんな状況でも冷静なゴトーがグレシーの後を追い飛び出す。そして難なくグレシーをキャッチしたところで……


「もぅ、世話が焼けるわねぇ。ほら」


 フェイのドラゴンブレスが放たれると中をゴトーが泳ぎ、グレシーと共に生還した。

 ブレスの中を泳ぐ? という突っ込みはなしだ。ゴトーにしか出来ない芸当だからな。


「大丈夫かグレイシーヌ?」

「え~ん、怖かった~~~! もう絶対ダーリンから離れないから!」

「コラッ、ラブロマンスは後にせい! さっさと先に――ん?」


 ズラリと並んでいた扉が次々と消えていく? 妙だな、トラップとしては有効だと思うのだが。


「逃すつもりはないのでしょう。つまり、私たち全員を相手に勝てる気でいるのですわ」


 それは面白い。


「トラップも無しに勝てる算段があると言うのか。ならば証明してもらおう」

「ええ、是非ともそうしてもらいましょう。幸いボス部屋はすぐそこのようですし」


 トワが促す先にボス部屋の扉が。


「フッ、少々遊んでやりたいところだが敵はラヴィエルだけではないのでな。私とトワで一気に片付けてやろう」

「ええ。他の者は将軍とアイカを頼みますわよ」


 期待半分、僅かな娯楽にでもなればという気持ちで扉を開ける。中は宇宙を模したようなデザインで、天井から床まで宇宙空間と星々が描かれていた。カップルで訪れればさぞロマンチックな一時となろう。


「ほぅ、洒落ているな。ボス部屋というのはもっとシンプルなものが多いのだが」

「ホントホント~。なんか神秘的な感じ~」

『フフ、気に入っていただけたようで何よりですよ』


 グレシーがはしゃいでいるところにラヴィエルの声が響く。


「ラヴィエルか」

『ええ。地上でも観察させていただきましたが、メグミさんとトワさん。貴女たちは大した御方だ。差し向けた無人機は大国をも焦土にしかねない破壊力を持っているというのに、お二人の前では雑魚同然。軍隊にしてもそうです。イグリーシアにはない兵器を装備していたのにほぼ全員を無力化してしまうのだから』


 無人機は亜空間エレベーターの時で、最新兵器を持った連中は艦星に乗り込んでから相手をした連中のことだな。まぁ当たらなければどうという事はないし、当たってもゴトーなら生きているレベルだ(←それ、ゴトーがおかしいから引き合いに出すのは……)。


「御託はいいから我らと戦え。貴様に残された道はそれしか無いのだからな」

『もちろん戦いますよ。但し、貴女たちの相手をするのは……』



 ゴゴゴゴゴ……



「何だ? 妙な地鳴りが起こっているようだが……」


 下準備でもしているのか? とも思ったが、それどころではない事をアイカの口から告げられる。


「ハッ!? マズイです! このフロアーの先にあるのは外、つまり宇宙空間です!」

「何ぃ!? ――グレシー、魔力を開放して周囲に障壁を張れ!」

「分かった!」


 咄嗟の指示で障壁を作らせ、そこへ将軍とアイカを押し込んだ。障壁の内側なら魔力放出により空気が生まれるから安全なはず。直後に床が外れて身体か宙に浮き、無重力を体感しつつ周囲を(うかが)った。


「フン、芸のない。やることは結局同じか」

『いいえ、ボス部屋(ここ)で戦うのが必須なのですよ。通路にあったのは宇宙への出口。本物の宇宙で倒してもDP(ダンジョンポイント)は手に入りませんのでね』


 それでトラップを解除したのか。


『ですがご安心を。貴女たちと戦うのは歴戦の猛者にしてアイリーンの守護者。SSS(トリプル)ランクの魔物がお相手します。――さぁ出番ですよ、リヴァイアサン!』

「「「リヴァイアサン!?」」」


 まさか――とは思った。深海まで探し回らねば会うことは不可能とさえ言われているリヴァイアサン。それが宇宙空間と化したボス部屋に現れたではないか。


「あーーーっ! コイツ宇宙にいた奴じゃない! やっぱ生きてんじゃん!」

「む? 誰かと思えばお主ら、亜空間エレベーターを使用した者たちだな。こうも早く対面とは、いやはやどうして」


 敵を前にしてるというのに感心する素振りを見せている。肝が据わっていると言うべきか? それか元からの性格か。どちらにしろやる事は1つ。


「我が名は魔王ルシフェル。いざ、お相手願おう!」


 トワが名乗るのを待たずして攻撃を仕掛ける。真っ正面から顔の下辺りをおもいっきり殴りつけてやった。



 ガツン!



「むぅ!? 拳の一撃で鱗が消耗しているだと?」


 驚くリヴァイアサン。同じく私も驚いている。ゴブリンやオーガなら跡形もなく弾け飛ぶくらいの威力だったはず。それを受けて感心する余裕が有るとはな。


「力量は分かった。今度はこちらから行くぞ――フン!」



 ドォン!



 巨体をうねらせ、バネのように弾く一撃を頭上から叩き込んできた。耐えられねば全身が潰れるだろう一撃を、両腕を掲げてガードする。


「ふむ、見事だ。そう来なければ本気を出す意味が失われるというもの。――ゆくぞ!」


 先ほどよりも速い!? それでいて正確に狙い済ました攻撃を連続で打ち込んでくるとは!


「さっきまでの威勢はどうした? まさか隙を作らねば反撃出来んと言うまいな?」

「言うかアホんだらがぁ!」


 だが一転攻勢に出にくいのも事実だ。地に足が着かない宇宙空間は思いのほか動きにくい。

 しかも奴の皮膚は想像以上に硬く、こちらの攻撃が通っているのか微妙ときた。

 戦法を変える必要あり……か(←いよいよ脳筋っぽい戦いを止めるのか?)


「硬いなら柔らかくするまで――ブラストヒートクロスアーム!」



 ガツンッ!



「ほぅ、炎を(まと)ったクロスガードか」(←やっぱ脳筋だった)

「そうだ。私は火属性の魔法が得意なのでな、ちょっとした応用で技を編み出せるのだよ」

「硬質化した鱗を熱で溶かすか。だが生憎だったな。リヴァイアサンの属性は水であり、火属性に遅れはとらぬ!」



 ゴォッ!



「クッ!?」


 一時的に魔力を大解放することにより私の炎を消し飛ばしたか。だがお陰で隙ができた。


魔偽製造(マギプロダクト)!」

「今度は別のスキルか。何をしようと――むむ? これは!」


 スキルを発動した途端、魔力溜まりに覆われた事に驚きを隠さないリヴァイアサン。同時に空気も発生し、動揺し始める。


ボス部屋(ここ)全体に仕込んでやったぞ? これで宇宙空間は無効だ」


 施したのは偽装だがな。

 何をしたかって? ま、答え合わせは後だ。


「出番だぞトワ、あまり待たせるでない!」

「わたくしは貴女の召し使いじゃありませんことよ!」


 私の一言でリヴァイアサンの背後からトワが出現。


「終わりですわよリヴァイアサン、わたくしの存在を忘れていた無礼を後悔なさい――イビルエキスキューション!」


 充満していた魔力溜まりがリヴァイアサンを覆い、一瞬で動きを封じた。


「グオォォォ!? く、空気が生まれたことで魔法が生きたのか!」

「クククク。それだけではないぞ? 私が殴りつけた箇所からトワの魔力が入り込み、貴様の身体を侵食し始めたのだ。どうだ、自身の身体が不調を訴えているだろう?」

「な、なぜそれを……」


 フッ、ではそろそろ種明かしと行こう。


「最初から仕込んであったのだよ、魔偽製造(マギプロダクト)による偽装をな」

「……どういう事だ?」

「貴様の気付かぬところでトワが魔偽製造(マギプロダクト)を発動していたのだ。これにより貴様と私のみを宇宙空間へと隔離した。貴様の目には映らなかったようだがな。呑気に私のみを相手にしているうちに、トワには貴様の周囲に魔力溜まりを作ってもらった。そして解除したのだ、魔偽製造(マギプロダクト)をな」

「解除……だと? では先ほどお前が発動したのは……」

「私の魔偽製造(マギプロダクト)でトワの魔偽製造(マギプロダクト)を打ち消した――いや、上書きしたと言うべきか? つまり今のボス部屋は空間変異が起こる前と同等なのだよ」

「そんな事が……」


 さて、いよいよ大詰めだ。


「勝負は着いた。リヴァイアサンよ、早ぅ降参いたせ。私は慈悲深いのでな(←自分で言うな)、命まで取ろうとは思わん」



「フッ、このままで構わぬ」

「何っ!?」


 今度は私が驚かされた。こうも潔く死を受け入れる者は初めてだ。

 しかし受け入れぬ輩も存在する。そう、ラヴィエルだ。これまでの会話を聞いていたであろうラヴィエルが、コアルームから飛び出してきた。



 バタァァァン!



「ふ、ふざけるなリヴァイアサン! お前が死んだら誰がボクを護るんだ!? それで守護神面をするつもりかぁ!」

「フン。下らない兄妹喧嘩で世界を脅かす貴様が何を言う。これまでダンジョンを護ってきたのは艦星にいる人民のためだ。そして戦いを通じて感じ取ったのだ、この者たちならアイラ様を導いてくれるとな」

「アイラだと? リヴァイアサン、ボクを裏切ったのか!」

「いいや、裏切ったのは貴様だ。貴様はアイリーン一族の面汚し。我ら眷族(けんぞく)の期待を裏切ったのだ。この落とし前はつけてもらうぞ――滅びよ!」

「なっ――ウギャァァァァァァ!?」



 滅びのバーストス○リームを受け、ラヴィエルの肉体は消滅した。


「元凶は滅した。ダンジョンマスターが消滅したことで艦星の保護機能も完全に停止するだろう。我が完全に滅びる前に、ここに残る人民だけでもイグリーシアへ送るとしよう。フン!」


 リヴァイアサンの全身が激しく光ったかと思えば、数十秒後には完全に収まった。最後の力を振り絞り人民を転移させたのだろう。


「これで我の勤めは終わった。さらばだ、()()よ!」

「リヴァイアサン、お前……」


 その台詞を最後にリヴァイアサンの全身がボロボロと崩れていき、やがて空間に溶け込むように消滅した。


「…………」


 何とも言えない悲壮感が漂う中、ダンジョンを出ようと(きびす)を返したその時、ラヴィエルの死を祝福するかのようにラヴィリンスの声がフロアーに響く。


『おめでとう御座います、皆々様。これでアイリーンはラヴィリンスの名の下、1つに(まと)まることでしょう』

「やけに嬉しそうだな?」

『ええ、長年の厄介者だったラヴィエルが消えたのですから。――ああ、そうそう。皆様には改めて御礼をしなければなりませんね』

「遠慮する。今はそんな気分ではない」


 何を寄越されるか分かったもんじゃないからな。そもそもラヴィリンスと和解したわけでもない。


『いえいえ、是非とも受け取って下さい。むしろ()()()受け取ってもらわねばなりません』

「はぁ? 下らん押し売りなら間に合っているぞ」

「下らなくはありませんよ? 私にとって――いえ、貴女方にとってもね。ダンジョンマスターが消滅した今なら艦星の保護機能は無い。つまり、一方的な攻撃が通るのです」

「ラヴィリンス、貴様まさか!」

「フフ、今までありがとう御座います。そして――」



 シュィーーーーーーン!



 何だこれは!? 巨大なエネルギー反応が地上から!



「――さようなら、忌々(いまいま)しい魔王たち」



 ドシューーーーーーーーーーーーッ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ