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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第5章:試練と継承(真)
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そして宇宙へ

「ああ~ん、何だかとっても良い気分。身体が火照っちゃう~ん♪ ね、ダーリンもそう思うでしょ~?」

「…………」


 グレシーの突然の急成長と予期せぬ言動に私もゴトー唖然としている。いや、マジでどうしてこうなった?


「あちゃ~、遅かったかぁ……」

「その声は!」


 小声でありながらも脳裏に響く透き通った声が背後から聴こえた。その声をもう何年も聞いていないのを今さらながら思い出す。


「女神クリューネ!? お前、ザルキールに居たのか!」

「だって酒場のオッサンがこっちに来ちゃったんだもの、仕方ないじゃない。何年経ってもあの限定パフェは忘れられないわぁ」


 初めて会ったのもそれが理由だったな。


「それよりメグミ、あの娘――グレイシーヌだっけ? 早いとこ眷属化しちゃいなさい。放って置くとアンタの中二病みたく取り返しのつかない事になるわよ」

「失礼な! それはどういう――」

「細かいことはいいから! 魔物化したら手遅れよ!?」

「う、うむ……」


 急かされるままグレシーに触れ、自身の宿す魔力を流し込む。自身より弱い者はこうやって眷属に加える事も可能なのだ。但し信頼関係がないと抵抗されて失敗するがな。


「あ、あれれれ!? 身体が!」


 するとどうだろう、グラマラスな美女だったグレシーが元の姿へと戻っていくではないか。


「グレシーよ、お前は幸せ者だぞ? 私の眷属になったのだからな。元の姿に戻ったのは暴走せぬよう制限をかけたからだ」

「そうなの? よう分かんないんだけれど……あ! でもでも、メグちゃんの眷属って事はゴトーくんと一緒に居れるって事だよね、そうだよね!? いやっほ~~~ぃ♪」


 もっと複雑な感情を持たれるかと思ったのだが意外にもすんなりと受け入れたな。


「そ、その~……なんだ、グレシーよ。後悔はしておらぬか? 助けるためとは言え、お前の両親の許可なく眷属にしてしまったことを。ゴトーと同じく普通の学生では居られぬのだぞ?」

「全然♪ 寧ろゴトーくんと一緒に居れる口実が出来て、ちょ~ハッピ~♪」


 ……まぁコイツが良いならいいか。


「何とか収まったわね。じゃ、ラヴィエルはメグミに任せるから」

「待てぃ!」ギュ!

「フギュ!? ――ってコラァ! 他人の翼を勝手に掴むな~!」


 飛び去ろうとするバカ女神の翼を鷲掴みにし、こちらに向き直らせた。


「グレシーの件は感謝するが、それとラヴィエルとは別問題だ。なぜ私に?」

「ああソレ? 最初に言ったじゃない、倒して欲しい奴がいるって」


 これは初めてクリューネと会った時の話だ。私を魔王として覚醒させたのもソレが理由だったはず。


「確かにそう言っておったな。それがラヴィエルだと?」

「名指しは出来ないのよ。世界規模で影響を与える奴は後にどうなるか見当もつかないし。それに神が関わるのは本来なら御法度だもの、これはあくまでも独り言」


 クリューネはクリューネで色々と苦労してそうだな。いや、助ける気はないが(←無いのか!)。


「声のデカイ独り言――というところか」

「そ。こっちにも事情ってもんが有んのよ。全てを理解しろとは言わないけれど、察してくれると助かるわ。じゃ、上手くやってちょうだい」


 そう言い残しクリューネは天界へと帰って行った。どのみち倒さねばならんしな。ラヴィエルを討つのに異論はない、ないが……


「しかしラヴィエルか。対決するにしても奴の居場所は宇宙」

「今すぐ決着とは参りませんわね」


 私の台詞を引き継ぎ落胆するトワ。どうにかして宇宙に出る必要がある。


『そうとも限りません』


 割って入るラヴィリンス。一同が耳を傾けると、誇らしげに提案してきた。


『アイリーンに備わる亞空間エレベーターを使えばアイリーン宇宙艦星(うちゅうかんせい)へと辿り着けるでしょう』

「亞空間エレベーターだと?」

『外部からの傷害を受けず、安全に行き来するための装置です。昔はこれを用いて艦星と地上との交流が行われていたのですけれど、衝突が始まっては封鎖さぜるを得ませんでしたから』


 そんな便利なものがあるのか。


『しかしこれは諸刃の剣。封鎖が解かれたと知れば大軍を送り込んでくるに違いありません。攻めようにもわたくしの戦力は地上の進行を食い止めるので手一杯。そこで貴女たちの所有する空飛ぶ街です。それに乗り、亞空間エレベーターから攻め込んでもらいたいのです』


 さて、ラヴィエルを叩くのは既定路線として、ラヴィリンスを完全には信用できん。やはり地上にも戦力を残しておくべきであろうな。


「トワよ、少々頼みが……」

「ふむふむ……良いでしょう」



★★★★★



「凄い……凄いよゴトーくん、雲より高く飛んでるよ!」

「そうだな」


 もしもの保険として魔王アスタロイと一部の仲間――ユラとレッドを地上に残し、亞空間エレベーターで上昇していく我らがザルキールの街。普段見ることのない光景に、グレシーが目を輝かせていた。


「気を付けろよグレシー。障壁で護られているとは言え、亞空間は未知の領域。不意に放り出されることだって有り()るのだ」

「でもぉ、その時はゴトーくんが助けてくれるも~ん♪ ね、ゴトーく~ん?」

「そうだな」

「ほらね~♪」


 クッ、相変わらずイチャイチャしよってからに。


「よいかグレシー、ゴトーは私の眷属なのだ。活動に支障をきたすような真似は見過ごせんぞ?」

「うっわ、ヤダヤダ。まるで息子の嫁をイビってる鬼姑みたい」

「誰が鬼姑か!」

「も~、そんなに怒ってると幸せが逃げちゃうよ~。ゴトーくんもそう思うでしょ~?」

「そうだな」

「ほら~。だからメグちゃん、外の景色でも眺めてリラックスリラックス~♪」


 まったく、呑気なものだな。


「あ、見て見てゴトーくん、外が真っ暗になったよ~!」

「そうだな」


 宇宙に出たか。遠くに米粒サイズの物体も見える。アレがラヴィエルのいるアイリーン宇宙艦星か。


「見て見てゴトーくん、光の点々がスッゴく綺麗だよ!」

「そうだな」


 遠い彼方の星か。その中の1つに地球も含まれるのだろうか? 戦いが終わったら探してみるのも良いかもな。


「見て見てゴトーくん、イグリーシアってこんなに丸いんだね~!」

「そうだな」


 別世界と言うくらいだし、四角になっていても驚かなかったがな。

 しかしグレシー、在り来たりな事ばかり抜かしよって。どうせならもっと面白いものを見つけて欲しいものだ。


「わぁ~ぉ! 見て見てゴトーくん、宇宙にも()()()()()()()が居るんだね! これは凄い発見だよ!?」

「そうだ――」




「「リヴァイアサンだと!?」」


 巨大な海蛇とでも言えばよいか? ダークブルーの鱗が輝かしいリヴァイアサンが宇宙空間からこちらを見ているではないか。

 すぐに臨戦態勢を取るが、どうも相手の様子がおかしい。


「動きませんわね。それに気配も感じませんわ。オブジェクトなのかしら?」

「確かに。空間で遮断されていて気配が掴めないな。動かないのであれば放置するしかないだろう」


 トワとゴトーも気配を感じないらしい。かくいう私も同様だが。まぁ作り物なら仕方ない。


「え~、動かないの~? つまんな――」




『…………』ギロッ!

「ひっ!? 目が動いた!」


 何を言っておるのだグレシーは……


「気のせいだろ。それよりほれ、もうすぐ艦星に着くぞ」

「いや、気のせいじゃないって! 絶対こっち見てたって!」

「分かった分かった。後で遊ばせてやるから我慢せい」

「遊びたいわけじゃないんだってば!」


 喚くグレシーを引っ張り上を見据えると、艦星から無数の機体が飛び出して来るのが見えた。ラヴィエルが差し向けたのだろう。


「歓迎会のようだ」

「歓迎会!? スイーツとか出るかな? 甘いものなら幾らでも食べられるよ!」


 グレシーの期待するスイーツは出ないだろう。しかし……


「あんな飛行物体で我らを倒そうなど、その思考はスイーツのように甘いな」

「同感ですわ。わたくしたちが魔王であるという事実――」

「しかとその脳裏に――」




「――刻んで差し上げますわ!」

「――刻んでやろうではないか!」


 私とトワの放った魔法が融合し、飛来する機体の群に浴びせ掛かる。何らかの化学反応かは知らんが、全ての機体が虹色に輝き爆散した。


「フフ。ラヴィエルよ、首を洗って待っているがいい」


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[気になる点] リヴァイアサン? もしかして、アイリの眷族であった彼か?
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