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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第5章:試練と継承(表)
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搭乗イベント

 深々と降り注ぐ雪。多くの者が外出を控える中、突如として上空に現れた謎の大陸。その日王都は蜂の巣をつつくような大騒動へと発展した。そう、我が街ザルキールが王都へとやって来たのだ。


「ストップだアイラ、この辺りでよいぞ」

「はい停止っと。で、城の真上なんだけど、ホントに大丈夫なの? 撃ち落とされたりしないでしょうね?」

「心配いらん。使者は送ってある。それに見てみろ、多くの民が両手(もろて)で歓声をあげているではないか」


 街が丸ごと宙に浮かぶなど、殆どの者が初見であろう。故に都民からは乗せてほしいという声が殺到していると使者が言っておったわ。中には城詰めの兵士もおるようだし、間違っても攻撃はしてこんだろう。


「むしろ名物になって経済効果が見込めるというものだ。見ろ、人がノミのようだ」

「いや、そこまで小さくはないけれど」

「ノリが悪いなぁ。そこは話を合わせるところだぞ? たまには気分をリフレッシュしてドSになってみろ」

「ええ……」

「じゃあテイク2。見ろ、人がノミのようだ」

「フフン、人の分際でこのアイラ様に挑もうって言うの? 所詮アンタらは私にとってノミに等しいのよ。ノミはノミらしく無様に飛び跳ねてなさい。アーッハッハッハッ!」

「…………」




「ついに本音が出たな?」

「ちょっ!? アンタが言えって言ったんでしょうが、このスットコドッコイ!」


 さて、アイラで遊ぶのはこのくらいにしてだ、私も謁見に同行してこよう。


「何? メグミも城に行くの?」

「念のためだ。父上だけでは心配だしな。リーリスにも同行してもらうとしよう」

「私も?」

「こういう時のコネクションだろう。それにバカそうなあの国王だ、強引に丸め込めば大丈夫だろ」



★★★★★



「ビャックショイ!」

「大丈夫ですかお父様? 連日の寒さで風邪を引かれたのでは……」

「かもしれん。それで、え~と……スレイン子爵、どこまで話したんだっけか?」

「ザルキールの跡地についてで御座います」


 なにせ街を持ってきてしまったからな。元の場所には大きなクレーターがあるのみだ。


「目の上のコブだったレマイオス帝国は弱体化し、新皇帝ロンヴァール殿がまとめています。これによりザルキールの役目は過ぎ去ったものとして捉えても良いかと」

「確かにな。スレイン子爵よ、今までご苦労であった。ザルキール跡地は別の者に任せることにしよう」

「ハハッ、有り難きお言葉」


 まだ見ぬ新領主よ、クレーターを埋めて街を作るのは困難を極めるだろう。これも経験だと思い頑張ってくれたまえ。


「ところで陛下、ザルキールに関してもう1つお願いが御座いまして」

「何だ、今度はリーリスか。学園以外でお主が動くとは珍しい。して願いとは?」

「ザルキールでの外遊を認めてほしいのです」

「良いぞ」

「無理を承知でのお願いで――って、良いのですか!? マジで!?」

「うむマジじゃ」


 まさかの一発OKだとぅ!? これは私でも予想外だ。


「理由を知りたいか? どうだ、知りたいだろう?」

「ええ、まぁ……」

「実はな、数日前にミリオネック商業連合国から使者が参ってな、軍事同盟を求めて来よったのだ」


 ミリオネックは南の山脈を越えた先の南東方面にある大国だ。


「軍事同盟……ですか? 現在は敵国となる国も有りませんし、こちらに利が有るとは思えませんが……」

「その通り。だからな、キッパリと断ってやったのだ、要らぬ争いに巻き込まれても困るのでな。しかしミリオネックめ、拒否すれば敵対国家と見なし、アイリーン宇宙軍と共に粛清すると通告してきた」


 宇宙軍が? アイリーンは今、地上軍が押されていると聞いた。コウモリ外交を続けていたミリオネックは宇宙軍に付く選択をしたということか。

 軍事同盟の申し入れは弾頭してきたペルニクス王国を取り込もうという算段で、従わなければ排除するつもりだろう。


「アイリーンに関してはリーリスから聞いておる。とてもじゃないが、我が国だけでは対抗できぬ相手とも……な」

「では陛下、やはり軍事同盟の受け入れると?」


 苦渋の決断を下したか――に見えたが、意外にも父上の問い掛けには首を振った。


「つい先ほどまで答えを保留にしておったのだがな、ザルキールを見て考えがまとまったわい。誰が来ようとミリオネックなんぞに組せん! こっちは長年の宿敵であるレマイオス帝国を退けたのだ、粛清の意味はこちらから教えてやるとしようではないか!」


 やる気満々な国王。乗せられやすい性格が逆に功を奏したか。


「では改めて命ずる。スレイン子爵よ、ザルキールと共にミリオネックの首都へ向かい、完膚なきまでに叩きのめしてくるのだ!」

「ハッ、しかとお受け致しました」


 無事に国王の許可も下りたので、さっそくザルキールに戻り出発!



 ――とはならなかった。そう、目の前にある好奇心に誰もが夢中になり、ザルキールへの搭乗を求める民が殺到したのだ。スレイン子爵の評判に影響するため彼らを無視するわけにもいかず、連日の大盛況が続いていた。


「今日で5日目か。まったく、飽きもせずにやって来るものだ」

「そこはメグミに同意するわ。でもお陰でDPも潤うし、私としては有り難いけれど」


 宿や民家を増設するのにDPを使用したからな。かなり減ったが見返りも大きい。


「なんならまたゴトーに腕立て伏せをさせても――」

「それだけはマジ止めて。今度こそダンジョンがブッ壊れるから。いい? フリじゃないからね? 絶対だからね?」

「分かった分かった」

「ところでアレ、メグミの知り合いじゃなかった? 名前は確か……」

「グレシーか!」


 我が目を疑うとはこの事を言うのだろう。アイドル衣装を着たグレシーが、地上の者に向けて歌を披露している姿がスクリーンに映っていたのだ。


『みんな~、今日はあたしのイベントに来てくれてアリガト~! ン~~~チュ♪』


 な~んでお前のイベントになっとるんだってばよ! しかもちゃっかりと投げ銭まで貰いおって。割と歌が上手いのも腹立たしい。


「アイラよ、奴を落としてやれ」

「止めなさいよ、マジで死んじゃうから」


 まぁよい。友達だし、みかじめ料を貰う事で許してやるか。まったく、搭乗する者が多いと不審者が増えて困るな。


『ルシフェル様、ダンジョンに侵入しようとした冒険者パーティを捕らえました』

『またか……』


 ゴトーから侵入者確保の念話が。これで今日は30件目だ。ちゃ~んと警告文まで貼り出してあるのに、つくづくバカな連中だな。


『ゴトーよ、警告通り装備品を没収の上、王都の騎士団に引き渡せ』

『了解です』


「あ、DPが一気に増えた。また侵入者?」

「うむ」

「王都の奴らは文字が読めないとかじゃないでしょうね?」

「読めるだろ。【この先はお宝の山につき絶対に立ち入り禁止】って張り紙に書いてあるんだし」

「アッホ~~~! 何してくれてんねん!? だ~から侵入者が多いんでしょ~が!」


 只の釣りだったんだがな。予想以上に入れ食いらしい。まぁゴミ掃除だと思えばよいだろう。


「あ、今度は街の入口が騒がしいわね」

「そのようだな。だが入口はフロウスが目を光らせている。強行突破はできまい」

『メグミさん、少々厄介なことが……』


 む、噂をすればフロウスから念話が。


『どうしたフロウス?』

『実は……予約なしで入ろうとしている二人組と予約した人たちとで揉め事が……』

『そんなことか。予約が無いなら乗せるわけにはいかん。追い払ってよいぞ』

『それがその……件の二人組は国王とロザリー王女のようで……』


 ったくあの父娘は……


『分かった。私が対応しよう』


 困っているフロウスの元に透かさず転移。自然と引き吊った顔で二人の前に出た。


「国王よ、外遊許可を貰ったことには感謝するが、商売を邪魔されたとあらば黙ってはおれませぬぞ?」

「バッカモ~ン! 乗せるくらいケチケチするでない! こちとらようやく仕事が落ち着いて駆けつけたのだ、ちょっとくらい良いではないか!」

「そうなんですよメグミさん。私たちがザルキールに乗りたいと言い出した途端、宰相らは様々な国務を押し付けてきたのです。ようやく片付いたと思ったら5日も経っているじゃありませんか、こんなの不公平です!」


 いや、国務はしとけよちゃんと。王族だろうが。


「事情は分かったが横入りはダメ、絶対」

「予約制だとは思わなかったのだ! 知ってたら予約してるわい!」

「使者には伝えといたはずだが」

「え? そんなはずは……。な、ならば宰相の仕業だ! 奴め、自分だけ先に楽しみおってからに。ほれ、あそこを見ろ!」


 そこにはザルキールで手を振ってる宰相の姿が。


「よし分かった。国王たちを乗せて代わりに宰相を放り出そう」

「うむ、感謝するぞメグミ殿」

「ありがとう御座いますメグミさん」

「というわけで……じゃあな、宰相」ポイッ

「ひぇ~~~!?」


 ドヤ顔だった宰相を地上に放り出し、国王たちを連れてザルキールに戻った。


「おお! おおおお! これは絶景、なんという見晴らしの良さか……」

「そうですねお父様、宰相に擦り付けた甲斐があったというものです」


 ん? 今、良からぬ台詞を聞いたような……いや、気のせいだろう。


「しかしこの街――いや、島と言ったほうがよいのか? どういう仕組みで浮いているのだね?」

「もちろん、かなりの労力が必要です。それこそ血の(にじ)むような億単位の腕立て伏せが」

「お、億単位の腕立て伏せとな!? むぅ、言葉の意味はよく分からんが、とにかくヤバそうなのは伝わったぞ。他では無理そうなのもな」


 それは良かった。ゴトーの真似をさせると何人死ぬか分からんからな。


「ああ、そうだ、思い出しました! 確かザルキールには名物のパフェがあったはずですわ!」

「おお、甘味か。ロザリーよ、ワシも行くぞぃ!」


 ロザリーと国王が走り去って行く。多分だが満員御礼で入れないと思うがな。


『メグミ、聴こえる? 未確認飛行物体が上から降りてくるわ』

『何だと? 敵か!?』

『分かんない。少なくとも飛竜じゃないわ。解析不能な素材って出たから』


 解析不能……まさか!


「アイリーン宇宙軍か!」


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