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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第4章:甦るトラウマ(表裏真)
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「ウグッ……ま、まさかこれほどの強さとは、さすがは魔王ダイダロスと言うべきでしょうか」

「感心してる場合じゃないぞツェンレン、ククルルでも敵わない強敵が目の前にいるんだからな~!」

「クッソォ……。おいウワベ、何とか奴の隙を突けねぇのか?」

「無茶ですよキル子さん。隙があったところで今の我々では……」


 勇者2人は膝をつき、眷属2人も肩で息をしています。戦闘メイドに至っては、わたくしの後ろでフロウスの手当てを受けている最中。

 対してダイダロスは涼しい顔でこちらを眺めているじゃありませんか。回復の邪魔をしないのは情けのつもりでしょうか? 不愉快極まりないですわね。


「フン、貴様らにはガッカリだ。徒党を組んでこの程度とはな」

「……言ってくれますわね。それほどの自殺願望をお持ちなら、どうぞご自分でと言いたいところですけれど」

「それだと意味がない。この()()()()されている以上、自傷行為は阻害されてしまうのだからな」


 兵器? 寄生? この女、いったい何を言って……


「ああ、断片的に言っても伝わらないか。ならば直に見るといい」



 シュン!



「!? そ、その鎧――いえ、むしろ装甲と言えるほどの武骨さ!」


 目に飛び込んできたのは、強固な装備に全身を覆われたダイダロスの姿でした。一言で言えばサイボーグという言葉がシックリきますわ。これまでは何らかの方法で不可視にしていたのでしょう。

 しかし、ツェンレンが意外な反応を示しました。


「その装備は……プラーガ帝国のギアソルジャー!」

「ギアソルジャー?」


 ククルルもクエスチョンマークを浮かべる中、脂汗を流しつつもツェンレンが答える。


「プラーガ帝国はアイリーン宇宙軍と同盟を組んでおり、宇宙軍の技術を用いることで自国の兵を機械化させているのですよ。強靭な装甲を持つギアソルジャーはたった1人で従来の兵士100人に匹敵すると言われ、敵対するアレクシス王国は戦力の立て直しに四苦八苦しているとか」


 つまりダイダロスはアイリーン宇宙軍と組んでいると?


「勘違いしているようだが、我はどこの組織にも属してはいない。アイリーンとは全く無関係――と言えば嘘になるが」

「どういう事ですの?」

「この呪われた装備はアイリーンの関係者から譲り受けた物だからだ」

「「「え!?」」」


 信じがたいカミングアウトに透かさずキル子が突っ込みます。


「いや、嘘だろお前。そんな効果なもんを他人に渡すとかあり得ねぇって! だいたい渡した奴はどうなったんだよ? 譲ったことを後悔して地団駄踏んでんじゃねぇのか?」

「後悔などしてはいない。()()は【ありがとう】と言っていた」

「は? 最後って……」



「その人は私が殺した」

「「「!!!」」」


 尚も衝撃的な暴露が続きます。


「もう何10年も前の話になるか。当時の我はアレクシス王国の名も無き錬金術師によって造られたオートマタに過ぎなかった。造られた目的も戦闘用としてではなく、永遠に歳を取らない観賞用の人形としてな」

「だから若い女の服装を?」

「そうだ。だが人形として過ごしていた日常が、ある日突然終わりを告げた。プラーガ帝国の侵攻によってな」


 アレクシス王国はアイリーン地上軍。プラーガ帝国はアイリーン宇宙軍。前々から対立していたのですわね。


「当時の主も戦闘用ゴーレムを使って抗戦したのだが、ギアソルジャーを筆頭にした部隊には分が悪く早々に討ち死に。観賞用に過ぎない我は足掻くこともできずに壊されるだけ――のはずが、1人の女性によって救われたのだ。それがこの兵器の持ち主だった」


 ここまでなら美談とも取れます。が、最終的には恩人を殺しています。


「なぜ殺したのです?」

「それが恩人の望みだったからだ。この兵器は古代文明の遺物にして強力な保護装置が搭載されたもの。外敵からの防護はもちろんのこと、肉体維持機能でのオートトレーニングシステムや精神維持機能によるサポート、有害となる気体・液体・物体の即時排除、更には老化防止のための指定時空変換をも行うため、正に無敵の兵器と言えよう」

「ちょ、ちょっと待ってくださらない?」


 もう聞いているだけで付け入る隙がないように感じるのはわたくしだけではないでしょう。 

 ならば余計に疑問に思うのです。


「それほど完璧な兵器を持ちながら、なぜ恩人は手離したのです?」

「意図せず不老不死になったからだ」

「不老不死……」

「絶対的な兵器を身に付けている以上、誰もが下手に近付けない。故に恩人は孤独だった。唯一の肉親である妹はとうに寿命を迎えているのに対し、恩人の見た目は10代後半――いや、保護装置により事年齢は変わっていなかったのだ。だが我と出会ったことで希望が芽生えた。どういう原理か不明だが、我が近くにいると装置の一部機能を阻害してしまうのだ。そしてそれは我が恩人を殺すには充分なほどであり、結果恩人は天国へと旅立つことに成功した」


 望まれない不老不死。つまりは恩人を救ったことになるのですね。


「しかしその代償が今度はお前に振りかかった」

「その通り。我は死に場所を求めているに過ぎない。傭兵として渡り歩いていたのもそのためだ」

「でしたら……」


 ここでウワベが割って入り、疑問を口にします。


「でしたら何故、アイリーンと戦わないのです? 宇宙軍が攻めてきたのがそもそもの原因でしょう?」

「言っただろう? 恩人はアイリーンの関係者だと。アイリーンとは恩人の妹が創設者であり、それと敵対するのは恩人の意思を無下に扱うのと同義。例え世界を敵に回したとしても、それだけは出来ぬ」


 意思は固そうですわね。ですが――はいそうですかと引き下がるわけにもいきません。


「ならばわたくしたちが勝利した暁には、こちらの要求に従ってもらいますわよ? それがアイリーンと戦うことであろうとも」

「フン、いいだろう。従わせたくば我を倒してみるがいい」


 ――と、言ってはみたものの、現状は手詰まり。せめてメグミが居れば何かしらの策を打てるのですが。


「さぁ、話は終わりだ。全力で来るがいい」

「…………」

「どうした、よもや成す術なしと言うのではあるまいな? もしそうなら……」



 シュィィィィィィ!



「これまでにない高エネルギー反応!? それを放てばこの辺りは人が住めなくなりますよ!?」

「かまうものか。我に敗れ去った者の末路として相応しかろう。いっそこのまま――」



 ゴーーーーーーッ!



 エネルギーの充填を阻止するかのように、ドラゴンブレスがダイダロスを丸飲みに。

 ですが当然のように奴へのダメージは微弱のようで、何でもないという風に落ち着き払ったダイダロスがブレスの先へと視線を移します。


「ドラゴンか。まだ戦力を残していたとはな」

「なぜならボクは取って置きですのでね、無闇矢鱈(むやみやたら)と人前には姿を現さないのですよ」


 ブレスの主はブラストドラゴンのブラッシュ。アイラが抱える最大戦力です。


「なぜ出てきたのです? わたくしたちが敗れた場合、アイラを連れて逃げるよう言ったはずですよ?」

「それも考えたのですがね、もしここで見捨てようものなら二度とアイラ様に口を聞いてくれないと思ったのですよ」

「ですが……」

「それにですね、既に()()()()()のですよ、我々の大逆転勝ちです!」

「そ、それはどういう――」


 言いかけたその時、ダイダロスの傍にいる憎たらしくも可愛らしい少女に気付きました。


「メ、メグミ!?」

「フフン、待たせたな。ダイダロスの懐への侵入に成功したぞ」


 いったいいつの間に!


「メグミ、貴女今まで――」

「言いたいことは分かるぞ? だがそれを説明する前にやるべき事が残っている」


 そう言ってメグミはダイダロスへと向き直ります。

 あら? そういえばダイダロスが大人しい気が……


「グ……ゥオオオ!?」

「ふむ、どうやら効いてきたようだな」


 大人しいと思ったダイダロスが苦しそうに歯を食い縛っています。


「き、貴様はルシフェル! 我に……我に何をしたぁ!?」

「すぐに分かる。――ほれ、装備の感覚が薄れていくだろう?」


 よく分からない現象が続いています。メグミは知っているようですけれど、蚊帳の外みたいで面白くありませんわ。(←いや、黙って見てなよ)


「いったい何が起こっていますの? 説明なさいメグミ!」

「うるさいなぁ。ブラッシュのブレスに紛れて魔剣を傷口から投入してやっただけだ」

「なるほど、それだけ。――で、どのような効果が有りますの?」

「魔剣を身体の一部と誤認させ、呪われた装備を自主的に外すよう動いてもらったのだ。あ、ちなみに魔剣とは魔剣アゴレントのこと、つまりはレンな」


 ふむ、よく分かりませんが、レンが内部で動いているのですね。そしてソレを証明するかのように、パキンという音と共に武骨な装甲がダイダロスの足元に落下。少々言い難いですが下着姿のダイダロスが露となりました。


「そ、そんなバカな!? 身体が勝手に動いて……」

「ふむ。レンよ、そろそろ良いだろう」

『分かったぞ~!』


 装甲に紛れていた魔剣アゴレントがメグミの手元に戻り、残されたのは呆然と立ち尽くすダイダロスと忌々しい呪いの装備品でした。


「は、外れ……た? どんなに外そうとしても自力では外せなかったあの装備が!?」


 驚き目を丸くするダイダロス。そうです、貴女を苦しめるものは排除したのです。


「さぁトワよ、我らの力でこの装備品を破壊するのだ!」

「フフ、よろしくてよ」


 これを壊せば完全なる勝利!


 だったのですが……



 フィキィィィィィィン!



「何と! 魔法が――」

「効かない!?」


 甘かったようです。わたくしたちの魔法は弾かれ、再び頭を抱えることに。この装備品単体でも驚異的な耐久力を持っているのですね。


「我々も協力しましょう。こんな身体でも大魔法の一撃くらいなら放てます」

「そうだな、ククルルたちも加勢すれば、こんなもの――」

「いや、無理だ」


 ツェンレンとククルルの台詞に対し、首を振ったのはダイダロス本人だった。


「この装備は古代国家の最高傑作。イグリーシアには存在しない物質を使用しているため、この世界の魔力(マナ)では破壊できない。正に無敵の装備なのだ」


 無敵というフレーズが今最高に忌々しいですわね。

 さてどうしようかというところで、ゴトーから念話が入りました。


『ルシフェル様、シャイターン殿、間もなくアイラのダンジョンが地上に繋がります。念のためご注意を』

『『は?』』


 瀕死のはずでしたが、メグミ同様復活を果たしたのですね。いや、それよりもダンジョンがどうとか……



 ズズ~~~ン!



「あ、この重い感覚は……」

「ええ、ダンジョンと地上が繋がったようですわね」


 そこへ透かさずゴトーから念話が。


『準備が整いました』

『ゴトーよ、さっきから何を言っておる? まさかとは思うが、この呪われた装備品をダンジョンの宝箱に入れ、入手した者を陰で嘲笑ったりするんじゃなかろうな?』

『そんな趣味はありません』

『ならばどうしろと言うのだ?』

『吸収させるのです。ダンジョンに』

『『ああ!』』


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