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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第4章:甦るトラウマ(表裏真)
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勇者VS魔王

 突然だけど私はアイラ。兄や姉から逃れてメグミに匿われている新人ダンジョンマスター。

 そして目の前のテーブルに乗っている1本の薬瓶。エメラルドの液体が神々しい輝きを放っているコレは、一般人が生涯手にすることはないと言われるこの薬はエリクサー。そう、()()エリクサーよ。

 これを使えば眠ったままのメグミかトワを復活できる。けれど1本しかないのが問題で、これを巡って意見が真っ二つに分かれているの。


「だから言っているじゃありませんか。トワ様が復活すれば、私とキル子の能力も復活するのです。効率を考えればトワ様を優先すべきですよ」

「うんうん」


 トワの復活を主張するのはウワベとキル子。レッドフードとかいう奴の攻撃を受けてメグミとトワは気絶しちゃったのよ。

 でも只の気絶じゃない。自力で回復するのを阻害するデバフが掛けられていて、他人が手を施さなきゃ復活できない状態なの。

 おまけに眷属の能力まで封印状態にあって、ウワベやキル子、フェイやゴトーまでが一般人と同程度までに下がってるらしい。

 さっきウワベが言ったように、主であるメグミやトワを復活させれば封印も解けるんだけれど、問題は……


「何度でも言うけれど、ここはメグミの邸でアンタらはそこで世話になってる状態なのよ。だからメグミが優先されるのは当然でしょ!」


 メグミ優先を主張するのはフェイ。メグミの眷属だから理解できるし、何よりメグミとトワが戦闘不能になった直後にレッドフードと言葉を交わしたのはフェイだけで、メグミたちを連れて闘技場から脱出できたのもフェイのお陰だったりする。

 となれば、やっぱりメグミに使うのが道理ってことになる。


「ボクはどっちでもいいけどナ~」

「アンタは黙ってなさいよポンコツ魔剣! ……コホン。とにかくね、メグミを優先するのは決定事項なの! 絶対って言ったら絶対なの!」


「はぁ……」

「ヤレヤレだぜ」


 フェイの強硬な態度に諦めムードなウワベとキル子。

 ――と、そこへ……



 ガチャ!



「すみません、ゴトーさんの様態がなかなか安定しなくて」


 入ってきたのは(やつ)れた表情のフロウスだった。そう、気絶しているのはメグミとトワだけじゃなく、ゴトーもまた全身大火傷を負って意識不明のままだったりする。

 因縁のある敵にアルスが連れ去られたから救出に行ったんだけれど、しばらくして空から降ってきたのよ。アルスを抱えてね。

 けれどゴトー本人を見て更にビックリ。瀕死の状態で、医者からは生きているのが不思議なくらいだって言われたんだから。


「それで……話し合いは済みましたか?」

「ううん、平行線よ」

「では早く決めましょう。例の相手、()()()()()と言ったのでしょう?」


 そう。フェイの話によると、明日の早朝にトドメを刺しに来ると宣言したらしい。敗者復活は一度だけだ――とか何とか。

 だから効率を考えればトワに使い、ウワベとキル子とを伴ってレッドフードにリベンジするのが得策よ。

 だけど……


「メグミには恩がある。今の私があるのはメグミのお陰だと言ってもいい。だから個人的にはメグミに使いたい」


 私が本音を口にすると、ウワベとキル子は苦笑いをしつつ肩を竦める。


「是非も無し……ですね。そもそもエリクサーはアイラさんが召喚した物ですし、貴女の決定に従いますよ」

「まぁしゃ~ねぇよな。情に生きる奴ぁ嫌いじゃねぇぜ?」


 こうして話し合いは終わった。後はエリクサーを持ってメグミの元へ――



 ドタドタドタドタ――バタン!



「た、たた、大変だよアイラ姉ちゃん!」

「ロン? 今は大事な話をしてるんだから、遊びたいなら後に――」

「違うよ! 帝国軍が……レマイオス帝国が進軍を始めたんだ!」

「なんですって!?」

「帝国に残っている内通者が知らせてくれたんだ。連中、武闘会に注意が向いてる間にザルキールを落とすつもりだ!」


 なんて間が悪い。レッドフードだけじゃなくレマイオス帝国も相手にしなきゃならないなんて。

 こうなったらせめてロンだけでも……


「ねぇロン、もしもの時はここから――」

「もちろん迎え撃つんだよね!?」

「――え?」

「この日のためなんでしょ? 地下にあるダンジョンを大きくしたのって。もちろんボクも戦うよ? 逃げてばかりじゃ勝てないんだし、だったら逃げずに戦ってやろうよ!」

「ロン……」


 何よ、私なんかよりロンの方が何倍も勇気があるじゃない。こんなんじゃダンジョンマスター失格ね。一代でアイリーンを築き上げたご先祖様に顔向けできないじゃない。


「ロン、アンタの言う通りだわ。レマイオス兵をダンジョンに誘い込んで全て倒してしまいましょ」

「そうこなくっちゃ!」


 もちろんロンには戦わせない。連中の狙いはロンの可能性もあるからね。


「さっそく準備に取りかかるわよ。そこの2人も手伝って」

「え、ボクらも……ですか?」

「当たり前じゃない! デバフが掛かってるとは言え、並の冒険者よりかは戦えるんでしょ?」

「そりゃそうだけどよぉ……」


 当然のようにウワベとキル子も参戦させる。居ないよりマシだし。レッドフードは復活したメグミと、お供にフロウスとフェイとレンを付ける。私たちにできるのはこれが限界……



 ドタドタドタドタ――バタン!



「た、たた、大変だ!」


 今度はアルスの専属護衛ジュリオが駆け込んできた。


「落ち着きなさいよジュリオ。レマイオス帝国の進軍は既に知ってるから」

「え、レマイオス帝国が!? 急いでスレイン様にご報告を!」

「――って、ちょ~っと待ったぁぁぁ! レマイオス帝国の話じゃなかったのぉ!?」

「う、うん。実は奇妙な冒険者が訪ねて来てね、この邸に住まう魔王にお目通り願いたいとか言ってきて……」


 魔王というフレーズでその場の空気が凍りつく。

 一般人なら魔王なんて口には出さない。ソレを言うのは魔王を狙っている輩か魔王本人かのどちらかよ。


「こんな時に!」


 思わず悪態をつく。まるで不幸が一気に襲ってきたような感じよ。ったく理不尽な。

 でも相手は待ってくれないだろうし、さてどうしようと頭を悩ませていると、フロウスが挙手してきた。


「私が出ます。今この場で魔王と言えるのは私だけ。ならば私が出るのが一番でしょう」


 けれどその冒険者が敵だった場合、会うなりいきなり襲ってくる――なんて可能性もあるし……。

 

「やっぱりダメ、今会うのは危険だわ。ジュリオ、今は気分が優れないとかテキトーに言って追い返して」

「分かった、上手く言いくるめて来る。相手も冒険者だし、子爵の邸を急襲したりはしないだろう」

「うん、お願――」


 けど甘かった。不幸が向こうから寄ってくるとは思わなかったのよ。



 ガチャ



「ちょ、ちょっとお客様、勝手に上がられては……」

「お取り込み中失礼。時間が勿体無いので来てしまいましたよ」


 給士のマユラが制止するのを無視して若い男が入ってきた。みんなの視線が入口に集中し、各々で身構える。そしてジュリオが剣に手を掛けながら男に詰め寄る。


「無礼だぞ冒険者! ここをスレイン子爵の邸と知っての狼藉か!」

「ええ、存じてますとも。既に年単位で魔王となる存在を匿ってきた御当主様でしょう? とても興味深い御方であると認識しておりますよ」

「き、貴様……」

「ああ、誤魔化さなくとも結構。大体のことは把握しておりますので。それで魔王ルシフェルさんは何処(いずこ)に?」


 誤魔化しが効かないくらい踏み込んだ事情を知っているみたい。これは(とぼ)けても無駄ね。


「メグミなら寝室で寝てるわ。それよりアンタは何処の誰なの? 返答しだいじゃ生かして帰せないんだけど?」


 ササッ!


 フロウスとフェイ、そして人化したレンが男を囲む。


「これはこれは、大層な御歓迎で。しかしボクとて()()の端くれ。ムザムザ殺られるつもりもありません」

「勇者――ですってぇ!?」


 まさか勇者が来るなんて!


「そうです、歴史上では幾度となく対立してきた魔王と勇者、その片割れの勇者ですよ。名前はツェンレン、これでも大役職(リードロール)はマジシャンの座についています。以後お見知りおきを」


 勇者と名乗る者の大半は大役職(リードロール)だった。コイツも例外じゃなさそうね。


「ところで皆様、一斉にお起立なされてどうされたのです? 本日は立食パーティーですか? 困りましたねぇ、生憎と昼食は済ませてきたのですよ」

「フン、そうやって意気がってられるのも今のうちよ? あたしたちにかかればアンタなんか――」

「……ほぅ?」



 グォッ!



「うわぁ!?」

「ヒッ!」


 ツェンレンから放出される魔力に押され、各々が大きく仰け反ってしまう。特に耐性の低いジュリオは壁に叩きつけられてしまった。


「魔力を少々放出しただけなのですが……そのようなオーバーリアクションは予想外でしたよ」


 これで少々? コイツとんでもない量の魔力を保有してる!? もう迷ってる余裕はない!


「マユラ、コレ持って寝室に走って! そしてトワに飲ませるの!」

「……え?」

「早く!」

「わ、分かりました!」


 ゴメンねメグミ。でも手遅れにはしたくないから。


「ふむ。慌ただしいようですが、戦う意思のない者を襲ったりはしませんよ?」

「フフ、それは助かります」

「でもって後悔すんのはテメェの方だぜ?」


 意味を理解したウワベとキル子が目をギラつかせる。


「後悔? はて、ボクが後悔する光景が浮かびませんねぇ。特にお2人は一般人に等しい能力、それでどうやって――なっ!?」


 ツェンレンの顔が引き吊る。今の今まで下に見ていた存在が目の前で覚醒だもの、さぞ驚いたと思うわ。


「コレで形勢逆転だなぁおい!?」

「そ、そんなバカなことが! 魔力量だけでもS級モンスターのそれじゃないか! キミたち2人は一般人ではなかったのか!?」

「フフ、能ある鷹は爪を隠すと言います。キル子さんはともかく、ボクの存在を無視して魔力を語るのはナンセンスですよ」

「クッ……」


 正に形勢逆転。そしてトドメと言わんばかりに……


「お待たせしました、皆々様。魔王シャイターン華麗に復活ですわ」

「ま、魔王!?」


 背後に立っていたトワを見てツェンレンが腰を抜かした。


「貴方ですね? 魔王に喧嘩を吹っ掛けてきた愚か者は。ちょうど肩慣らしをしたいと思っていたところです。レッドフードと戦う前にウォーミングアップと行きま――」

「え!? ま、待ってください、今レッドフードと言いましたか!?」


 意外にもレッドフードという名前にツェンレンが反応した。


「確かにレッドフードと言いましたが、それが何か?」

「ボクの目的は破滅をもたらすと言われている、魔王ダイダロス、及びに魔王カタストロフの討伐なのです。レッドフードはそのどちらかではと言われてまして、奴を正体を確かめるのも目的の1つなのですよ」


 魔王ダイダロスに魔王カタストロフ?


「その二つの魔王とやらはどのくらいの強さなのです?」

「ざっくり言うと、ボクが10人いても勝てない相手です。そのため世界に散らばる大役職(リードロール)を集めている最中でもあるのですよ。ですが魔王シャイターン、貴女や眷属たちなら――」

「…………」


 いつもなら高笑いしそうなのにトワは神妙な面持ちに。


「アレは確かに化け物ですわ。アレの奇襲でわたくしはご覧の有り様でしたし、メグミに至ってはいまだに眠ったまま。このまま挑んでも勝てるかどうか……」

「で、でもあの時は奇襲されたからでしょ? 本気を出せばあんな奴――」


 フェイの問い掛けに対し、トワは静かに首を振る。


「……嘘……でしょ?」

「こんなシリアスな場面で嘘は言いません。けれどメグミさんやゴトーが復活できれば、あるいは……」


 となると早急にDP(ダンジョンポイント)を貯めてエリクサーと交換する必要がある。そうすればメグミも復活するし、何とか太刀打ちできるかも。残念ながらゴトーにまでは手が回らないけれど。

 けれど効率よくDPを貯めるには、レッドフードより先に帝国軍が攻めて来てもらわなきゃだわ。そんな上手くいくかしら? いや、上手くいかなきゃ困るんだけれど。

 でもそれだと運任せよね? アイリーンの初代創設者は幸運の持ち主だと言われてるんだけれど、今だけ幸運を分けて欲しいわ。



 ズズズズ~~~~~~ン!



「な、何? 物凄い音が庭先から聴こえたような……」


 恐る恐る全員で窓の外を見る。そこには見慣れない2人の女たちが……って、幸運が欲しいとは思ったけれど、厄介ごとを寄越すとかどうなってんの!?


「あら、あの者は武闘会に参加していた戦闘メイドのユラではありませんか」

「ふむ。もう1人はボクのパーティメンバーのようです。ここに来る途中はぐれてしまったのですよ。まったく、ククルルの方向音痴にも困ったものです」


 よく分かんないけれど、トワとツェンレンの知り合いらしい。しかもこの2人、互いに強い魔力を感じ取って、咄嗟(とっさ)に戦闘行動を起こしたんだとか(←野蛮人かよ)。

 ホントにもう、どうして次から次へと厄介ごとが――


 ――ん? でもこの状況、かなり強いメンバーが終結してるって事じゃない?


「トワ、それにツェンレン、このメンバーならレッドフードに勝てるんじゃない!?」

「「…………」」



「確かに……」

「いけるかもしれませんね」


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