表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第4章:甦るトラウマ(表裏真)
69/108

さすらいのリザードマン

 ゴトーの試合も終わり、いよいよ私の出番がやってきた。まだまだ予選の段階ながら、中々にしてクセの強い相手と対峙することに。その相手とは……


「お前が噂の魔王だな? 俺の名前はリド。この大会に参加したのは武者修行の途中で耳にしたからだ。狙うは優勝、ついでに魔王も成敗できて一石二鳥だ!」


 ……等と申しておるのは、人化の指輪で人の姿に化けているリザードマンロードというリザードマンの上位形魔物だ。まさか魔物まで大会に紛れてくるとはな。


「威勢だけは良いな、威勢だけは」

「威勢だけじゃない! これでもリザード――コホン! 俺の事はいいだろ、プライベートの侵害だぞ!」

「自分でバラそうとしたのだろうが。まぁその威勢に免じて正体はバラさないでおいてやろう」

「ホントか? ありがとう、お前って良い奴だな!」


 そういうコイツは素直な奴だ。愚直なまでにな。


「さぁ、両者とも用意はいいか~~~?」



 ゴォーーーーーーン!



「試合開始ーーーーーーっ!」


 まずは様子見。リドの出方を(うかが)うと、剣を真っ正面に構えての様子見と。


「うむ、若いのに感心だ。猪突猛進(ちょとつもうしん)だけが戦術ではないからな」

「え……お前の方が若いんじゃ……あ、分かったぞ、さてはお前、見た目の割に年増な魔族女だな!? そうやって若い男をたぶらかしてるん――」



 ボグッ!



「――ってぇ!?」


 思わず手が出てしまった。女性に対して年増は禁句だからつい……な。というかEスキャンで見たが、年齢的には私と大差ないのだよコイツ。


「お前ぇ! いきなり目の前にワープするとか卑怯だぞ!?」

「戦いに卑怯も何もない」

「しかもグーで殴りやがって!」

「剣で斬るよりマシだろう」

「それにパパにだってブたれたことないのに!」

「お前の家庭事情なんぞ知らん。というか、どっかの誰かみたいな台詞はやめぃ」

「そうやって直ぐ反論する! 貧相な身体のくせに口だけ達者な女は結婚できずに売れ残るってパパが言ってたぞ!」


 ほぅ……(←あ、ヤバ……)


「よし、お前のパパとやらを連れて来い。親子共々八つ裂きにしてくれる」

「へん! お前なんかがパパに敵うかよ! なんたって俺のパパは世界に点在していたリザードマンを集めて王国を築いたんだからな!」

「ほぅ、リザードマンを」

「あ、信じてないな!? パパはリザードマンの中でもとってもエライ――うぁっ!」

「ええぃ、お前は自分でバラそうとする癖をどうにかせぃ!」


 堪らずリドを引き寄せて耳打ちする。


「お前、魔物だとバレたら取っ捕まって殺処分されるぞ?」

「ハッ!? そ、そうだった、俺がリザードマンなのは秘密だったんだ。――あ、さてはお前、俺の正体を掴んでるからって脅す気だな? なんて卑怯な奴なんだ! やっぱり魔王なんてロクな――」

「だから話を聞け!」



 ベシベシベシベシ!



「イタタタタタッ! や、やめろ、大衆の面前でケツを叩くな! パパにだって叩かれたことないのに!」

「貴様が聞く耳を持たんからだ! パパに代わってお仕置きしてくれる!」



 ベシベシベシベシ!



「おっとぉ、これはどういう事か、リド選手が一方的にケツをしばかれているーーーーーーっ! 対戦相手に弟の姿を重ねてしまったのか~~~? これではまるでお仕置きだ~~~!」

「いや、まんまお仕置きだから。下らんこと言ってると、お前のケツもしばくぞ?」

「つ、謹んで遠慮しますです~~~」


 レフェリーを退け、改めてリドに耳打ちする。


「私に刃向かうなど百年は早いぞ。公衆にケツを晒されたくなくば、大人しく降参いたせ」

「や、やっぱり卑怯者じゃないか! 強制的に俺の黒歴史を作って末代まで笑い者にする気だろ!」(←被害者妄想が激しい)

「じゃかぁしぃ! 好きで貴様のケツを晒そうとは思っとらんわ! 貴様のような小僧のケツを見たがるか!」(←そういう層は一定数いると思われる)

「クッ……、悔しいけど降参だ。これ以上黒歴史を作りたくないし……」


 むぅ? もしやコヤツ、周囲にひた隠しにしている黒歴史を抱えておるな? かつてネットに引きこもっていた私と同じ目をしている。(←シナジーを感じたか)



 スッ……



「え?」


 拘束を解かれたリドが不思議そうに見上げてくる。


「リドよ、一度だけチャンスをやろう。お前の持つ最強の技を見せるがいい」

「最強の技? パパ直伝の奥義なら……」

「ならばそれを披露せよ。このままファザコンで終わるのは不本意であろう?」

「そ、そりゃ、まぁ……。あ、でもこの奥義は上から攻めて来た相手が限定だから、普通には使えないよ」


 なんとも不便な対空技だな。


「まぁよい。しからば私が上空から斬り込んでやろう。遠慮なく奥義を打ち込んでみせるがいい」

「分かった、やってみる!」



 シュバ!



「行くぞリドよ!」

「よぉし、やってやる!」


 一気に高所へ飛び上がると、地上で構えるリドに向け急降下。

 さぁ、見せてみよ、お前の真の力を!



 ギラッ!



「クッ、太陽が眩しくて直視できない! けどチャンスは一度だけ! このまま終わりたくはない…………そうだ、厳しい修行時代を思い出すんだ」



~~~~~



「ふむ、だいぶ太刀筋は良くなった。しかし一撃必中の決め手に欠けるな」

「だ、だって、パパが相手じゃそんなの無理に決まってるじゃん!」

「バカ者。相手が誰かは関係ない。いざ戦場に身を置かれれば、例え親子でも剣を交えねばならんのだ」

「そんな! パパと戦うなんてできないよ! 目で追っても追いきれないし、俺なんかじゃ敵わないよ」

「戦う前から諦めてどうする。そんな生半可な精神では一人前の武士には成れぬぞ?」

「いや、リザードマンが武士って……」


 そもそもパパの考えは古いんだ。そりゃ昔は素材狩りとして冒険者に狙われたかもしれないけれど、リザードマンの王国を築いた今なら、軍隊で攻めて来ても簡単には駆逐されない。仲間が捕らわれ尖兵として送り込まれる心配とか、そんなの不要じゃないか。なのにどうして強くなるのに拘るんだか。


「リド、お前には覚悟が足りん。外で頭を冷やしてこい」

「は~い……」


 不貞腐れつつ外に出た。周りでは同年代の知り合いが遊び回っている。


「はぁ、好きで国王の息子に生まれたわけじゃないのに……」

「どうしたリド、父親(おやじ)と喧嘩でもしたか?」

「あ、モフモフおじさん!」


 いつの間にか隣にいたのは、パパの古くからの知り合いらしい魔狼のおじさん。人化している今の姿はその辺のチンピラ(←失礼なガキだなぁ)にしか見えないけれど、勇者クラスの相手と対抗できるだけの実力を持っている凄い魔物なんだ。

 俺は思いきっておじさんに相談してみることにした。


「そういう理由か。ま、ザードらしい考えじゃねぇか、ククククク!」

「笑い事じゃないよぉ~。いつだってパパは無茶ばかり言うし。おじさんからも何とか言ってみてよぉ~」


 おじさんの言うことなら少しは耳を傾けるかと思い、お願いしてみたんだ。

 ちなみにザードっていうのはパパの名前だよ。


「そうだなぁ……、そんじゃあ1つだけヒントをやろう」

「ヒント?」

「目で追えないんだろ? だったら気配を掴めばいい」

「はい無理~~~」


 気配を掴むって何? 俺にバケモノに成れって?(←そもそもお前は魔物) それこそ無理ゲーじゃん!


「無理じゃない。お前たちリザードマンは温度に敏感だ。それなら敵の気配に混じって生暖かい風を感知できる」

「生暖かい……風……」

「そうだ。目を閉じて神経を研ぎ澄ませ。そうすりゃ何かしら見えてくるだろうよ」


 言われた通りに目を閉じた。おじさんは隣に立っている。



 シュン!



「!?」


 温度が消えた! どこかに移動したんだ。


「いいぞリド、上手く感知したな。次は殴りかかるから上手く避けるか反撃してみろ」

「そ、そんな急に言われても……」

「つべこべ言うな、行くぞ!」


 クッソ~、モフモフおじさんは言い出したら聞かないんだよなぁ。こうなったら腹を括るしかない。



 スッ……



 右後ろに下がった。



 ススッ……



 後ろに回ったと見せかけて左前に移ったな。



 スッ……



 右横に移動した。まだ来ないのか?



 スッ……ススッ……



 また後ろに――いや正面だ、正面に移動した。



 フワッ



 正面からの風!? 来たか!



「今だ! 奥義――」



燕返(つばめがえ)しぃぃぃぃぃぃ!」



~~~~~



「はい残念っと♪」



 ピンッ!



「いってぇぇぇ! 何て無駄に痛いデコピンなんだ! それに回想に割り込んでくるなんて卑怯だぞ!?」

「卑怯で結構、なぜなら魔王だからな。しかしリドよ、中々の動きだったぞ? まさか異世界で燕返しを見ることになろうとは思わなかったからな」

「そ、そう? 俺って結構強い?」

「素質はある。後はお前の努力しだいだろう」

「努力――か……」


 何やら俯いて考え込むリド。そして(おもむろ)に顔を上げると……


「よし決めた! 俺は今日からお前に弟子入りする。いいよな!?」

「何故そうなる! というかさっさとギブアップせぃ!」

「分かった! ギブアップするから弟子入りの件よろしくな!」

「……ったく仕方ないな」

「おおっと、ここでリド選手ギブアーーーーーーップ! 勝ち上がったのはメグミ選手だーーーーーーっ!」


 パチパチパチパチ!


 見応えのない試合だったため観客の熱狂は少ない。いや、これはやむを得んな。だってコイツ、デコピンで倒せるくらい弱いし。


『良かったのですかルシフェル様?』


 ゴトーからの念話だ。


『聞いておったか。まぁ素質は有りそうだし何とかなるだろう』

『ですが弟子入りというからには色々と世話をする必要も出てくるかと。ルシフェル様自らご指導なさるので?』

『…………』


 うっわ、何それメンドクサ! 何が楽しくて教師の真似事をせねばならんのだ!

 だが秘策ならある。こういった事にうってつけの人物がな。


『ゴトーよ、後は任せた。リドを立派なリザードマンに育ててやれ。んじゃ!』

『…………』


 うむ、今日も爽やかな青空だ。(←現実逃避)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ