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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章 ダンジョンマスター(真)
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御来客

 俺の名はジプシー。多くの者に一攫千金の夢を与えるダンジョンマスターだ。

 何が一攫千金かだと? んなもん決まってら。ダンジョンに有るのはトラップだけじゃねぇ、訪れた連中を歓迎するための宝をあちこちに隠してある。それを求めて冒険者たちがやって来るんだが、侵入者の滞在時間に応じてDP(ダンジョンポイント)が手に入る仕組みになってやがんのさ。つまりだ、迷えば迷うほど俺にとっては美味しいってわけ。

 中には本気で攻略してくるのもいるが、そこは大丈夫。迷宮と化した俺のダンジョンでコアルームまでたどり着ける奴はいねぇ。


『マスター、ペルニクス王国で開放中のダンジョンがマイナス収支です。何らかの対策を行うか、閉鎖することを推奨します』


 相棒のダンジョンコアから助言が入った。こうして危険な侵入者を知らせたり、魔物やトラップ配置などの提案を行ってくれる頼もしい奴だ。


「構わねぇ、放っとけって。あそこはまだ着手したばかりの場所だ。マイナスなのは仕方ねぇさ」

『よろしいのですか? こうした不良債権を放置するのは後々面倒なことになる可能性が……』

「んなこたぁ分かってる。けどあの場所はペルニクス王国への足掛かりでもあるんだ。なんでもラヴィリンス様の妹が居るらしくてな、生け捕りにして連れてくるよう頼まれてんのさ」


 今言ったラヴィリンス様ってのが俺の主にあたり、超有名なダンジョンマスターでもある御方なんだ。まぁそうだな、ついでだしラヴィリンス様について詳しく説明してやんよ。


 現在イグリーシアの中心では勢力を二分(にぶん)した争いが起きている。俺はその片方の勢力――アイリーン地上軍に加担し、総大将であるラヴィリンス様を支えているのさ。

 だが戦況は均衡状態が続いてやがり、それを打破するためにラヴィリンス様の妹であるアイラを迎えましょうってところなんだ。


 でだ。こっからが重要なんだが、俺もラヴィリンス様も勇者として――


『マスター、ペルニクス王国で開放中のダンジョンにて、多くのトラップが消耗しています』

「トラップが?」


 そういやフレッツェが誘い込んだ冒険者がトラップを無視して暴れてんだっけか?


「後で確認してやんよ。それより今はクレセント学園の方だ」


 あそこでアイラは匿われてるからな。じっくりと攻め立てて降参するのを待つのが鉄則だ。

 だ~がしかし、ここで強い魔物を送り込むのは素人のやることだ。強ければ強いほど相手も本気をだしてくんだろ?

 そこでだ。俺がとる戦法は、ザコであっても大量の魔物を送り込むってやり方だ。これなら相手も様子見を決め込むだろうし、長期戦ともなれば精神を磨耗しやすい。へへ、伊達に勇者として崇められてるわけじゃねぇのさ。


『マスター、ペルニクス王国で開放中のダンジョンですが、トラップの損失が止まりません。早急に手を打つべきかと思われます』

「あ?」


 俺の相棒は些細なことで忠告などしない。損失って言うからにはガチで異常ってことだ。アイツら、俺が知らないところでどんだけトラップ壊しやがった?


「さっきも言ったが後だ後。作戦が遅れてラヴィリンス様のご不興を買いたくないんでな。奴ら以外に侵入者はいないんだ、暇な時でいいのさ」

『しかし、例の侵入者がトラップを破壊して回っているのが原因で……』

「はぁぁぁぁぁぁあ!?」


 例のってことはゴトーとかいう野郎か!


「トラップだってタダじゃねぇ、再設置するにもDPを使うんだ、奴は今どこにいる?」

『1階層の中間地点を過ぎたところです。尚もトラップに掛かりつつボス部屋に接近中』

「トラップに掛かってるだと?」

『はい。どうやらわざとトラップを発動させてから破壊しているようです。目視と魔力で探っている節があるので間違いないかと』

「んな事して何の得がある?」

『計算してみましたが、これらの事象により侵入者が獲られるものは何もありません。それどころか体力の消耗により命を危険に晒す行為で――』

「あんだよソレ!」


 おかしい、いったい何を企んでやがんだ? まさか俺のダンジョンを攻略するための情報収集を――


 ――いやいや落ち着け、情報なら敢えて掛かる必要はねぇ。相棒も言ってたじゃねぇか、それらの動きで獲られるものは無いと。


 ならば何だ、得をしないのなら損失が目的か? んなバカな。これじゃまるでドMじゃねぇか。(←大正解です)


「ダメだ、考えても分からねぇ。ひとまずクレセント学園は現状維持に留め、侵入者の対処を優先で行う。――相棒、奴の様子はどうだ?」

『1階層のボス部屋間近です』

「ほわぁぁぁぁぁぁっつ!?」


 いくらなんでも速すぎんだろ! あの複雑な迷路をどうやって……いや、そんな事よりボス戦だ。


「相棒、配置ボスを差し替える。ストーンゴーレムを下げてゲートゴーレムを投入しろ!」

『了解しました――――差し替え完了です』

「よし、ゲートゴーレムには直接指示を出す。スクリーンに映せ!」

『了解です』


 スクリーンに映るのは召喚したばかりのゲートゴーレム、そしてボス部屋に突入したばかりのゴトーの姿だった。


「間に合ったか」

『マスター、侵入者はこちらの様子を(うかが)っているようです』

「それは好都合だ。――ゲートゴーレムよ、一気に捻り潰してやれ!」

『メイレイヲニンシキ。タダチニゲキハシマス』


 ストーンゴーレムはC級なのに対しゲートゴーレムはA級。A級と言えば軍隊を派遣されるレベルだ、冒険者1人で倒せる相手じゃない。



 ドゴォォォォォォ!



 ゲートゴーレム拳がゴトーに振り下ろされた。全長5メートル超えの巨体に加えて人が1人丸々と収まるサイズの拳だ、まともに食らっちゃ生きてはいまい。


「……ったくヒヤヒヤさせやがる。このジプシーともあろう者が野良に攻略されたとあっちゃ、ラヴィリンス様に顔向けできねぇからなぁ」



 グ……ググググ……



 ――などと呑気に構えている余裕はなかった。気付けばゲートゴーレムの拳が揺らぎ、少しずつ持ち上がってやがる! 半分パニックになりつつ釘付けになっていると、拳と共にゴーレムの全身が宙に浮き……



 ブン――――ズダァァァァァァン!



「う、嘘だろ? ゲートゴーレムを片手で放り投げたってのか!?」


 悪夢のような光景がそこにあった。あのデカブツを軽々と持ち上げ、壁に叩きつけやがったんだ。

 信じがたい、信じがたいが紛れもなく現実に起こっている事で、たかが人間相手に片手で捻られている光景が目の前にある。


『どうした、もう終わりか? 俺はまだ半分の力しか開放していないぞ?』


 は、半分だと?


「クッソォォォ、調子に乗んじゃねぇ! ――ゲートゴーレム、ブラストビームだ!」

『メイレイヲニンシキ。ブラストビームニヨルターゲットゲキハヲココロミマス』


 そうだ、コイツはただのデカブツじゃねぇ。どんな物質をも粉々にするスキルが備わってるんだ。


『ターゲットロックオン、ブラストビームヲハッシャシマス』



 シュビーーーーーーーーーーーーッ!

 


 真っ赤な光線がゴトーを直撃。両腕でカードしているが、そんなもので堪えれるほどチャチじゃねぇ。腕が溶けるように消滅し、全身までドロッドロになるまでがセットだ。


「なぁんだ、呆気ねぇ。本気になった俺がバカみてぇじゃねぇか」

『はい。残念ですが、2階層への侵入を許してしまいました。改めてご命令を』

「おぅ、そうだな。そんじゃあ――」




 ちょっと待て。相棒は今何て言った? 2階層への侵入を許したとか言わなかったか?


「相棒、1つ確認したいんだが、ゴトーの野郎は死んだよな?」

『現実逃避をしないでください。侵入者は2階層を走り回っております』

「ほわっちゃぁぁぁぁぁぁあ!?」


 いや、おかしいって! 魔法で硬質化させた壁ですら破壊するビームだぞ? それを受けてピンピンしてるとかあり得ないだろぉぉぉ!?


「納得できねぇ、説明しやがれ!」

『ゲートゴーレムの放ったビームを一度体内に吸収し、威力を弱めたビームとして発射したようです。これは魔法の反射を模したので――』


 だめだ、ゴトーの野郎が何をやったかさっぱりわからね……。だが1つだけ正しいことか言える。


「クレセント学園から撤退し、こっちに本腰を入れる。これ以上好き勝手させられるかよ!」


 そう決意を改めた直後、まさかの声がコアルームに響いた。


『ククククク、無様だなジプシー? 攻め込む覚悟は有っても攻められる覚悟は足りなかったと見える』

「そ、その声は……」

『我が名は魔王ルシフェル、遊びに来てやったぞ?』


 魔王ルシフェル!? う、嘘だろ、ついさっきまでクレセント学園に居たはずじゃ――



 ――最悪だ!


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