表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章:ダンジョンマスター(裏)
59/108

到着?

「俺はこっちの空き家を使わせてもらうぜ」

「私はこちらだ」


 ラングとシャムシエルは相変わらずで、互いに背を向けて別々の家屋に入っていく。


「おいお前たち、そんな勝手に――」

「構わんさ。ここらの家屋は全部空き家だ。どうせ持ち主は帰って来ないだろうし、使ってやった方がいいだろう」

「村人のアンタがそう言うならいいんだが」


 しかしこれ以上の勝手な振る舞いは考えものだ。最悪はフレッツェを説得して置いていくか……いや、放置した後が怖いな。悪評を吹聴して回られても困るというもの。やはり最後まで連れて行くしかないか。


「では食事を用意して来る。少し待っていろ」


 そう言い残して老人は足早に去っていく。残された俺はゴロリと横になり、フレッツェはゴザの上で姿勢を正すと浮かれた感じで話しかけてきた。


「いよいよですなゴトーさん」

「何がだ?」

「例の闇ギルドのアジトだよ。ここからだと丸1日も歩けば着くだろう。もうすぐ役目が果たせると思うとね。ハハッ、楽しくてしょうがない」

「まだ終わっちゃいないぞ? 最悪は失敗する可能性だってある」

「ハハッ、ご謙遜を。道中を見ていたが、やはりゴトーさんの強さは本物だ。貴方にかかればどんな組織だろうと一溜りもないだろう」


 能天気な奴め。道中で襲われた時はこの世の終わりみたいな顔をしていたクセにな。この楽観的感情はどこから来るんだか。


「かの組織には多くの者が迷惑している。皆の喜ぶ顔が目に浮かぶようですぞ」

「それほどの事か?」

「そりゃもう。かの組織は()()ですからな。隣街からも拍手喝采は間違いないでしょうなぁ」

「…………」


 有名な闇ギルドか。その割には組織名すら分からないと。何ともチグハグな有り様だな。


「食事だ。こんな山奧だから大層なもんは無いがな」

「いや、提供してくれるだけでもありがたい」

「そう言ってもらえると助かる。ではゆっくり寛いでくれ」


 食事を置いて去って行く老人。俺はどうしても気になる事があったので、フレッツェとの会話もソコソコに老人の元へ向かった。俺の勘が正しければ、あの老人は……



 ガラ……



「何だ? すまないが、提供できる食料はあれで全てだぞ?」

「こちらこそすまない。どうしてもアンタに聞きたい事があってな」

「聞きたい事? では手短に頼む。ここの生活習慣だと朝が早くてな。夜更けまで話し込むと起きるのが辛い」

「分かった。では単刀直入に言う。お前は――」




「――()()()()だな?」

「っ!?」


 目を見開く老人。この反応から俺の勘が正しかったのだと確信した。


「随分と老け込んでいるな? いや、そうか、俺が見たのはお前のコピー。全盛期のお前が残した姿だったというわけだ。しかし過去の話とはいえ、闇ギルドの首領がこんな山奧で何をしている? まさか……」

「……誤魔化しても無駄なようだな。それにお前さんからは逃げられそうにない。……分かった、全てを話してやろう」


 差ほど悔しさを見せないゾルーアが手際よく茶を煎れ、俺の前に差し出しす。そして俺の正面に座ると神妙な面持ちで話し始めた。


「かれこれ40年以上は経つだろうか。俺はアレクシス王国で闇ギルド――ディオスピロスの首領として幅を利かせていた」

「アレクシス王国?」

「知らないか? 遥か南にある山脈を越えると、だだっ広い大草原が見えてくる。それを更に南に進むと、アレクシス王国っていうデカイ国があるのさ」

「そんなに離れた場所からここまで来たのか」

「あん時は必死だった。当時の国王が発令した完全浄化作戦のせいで、俺たちは居場所をなくした。逃げに逃げて大草原を越え、ペルニクス王国やレクサンド共和国をも越えたところでエラく強い傭兵団により壊滅の危機に陥り、少数精鋭で引き返した時に運悪く()()()()に見つかっちまった」


 なるほどな。その魔王が……


「ベルフェーヌか」

「ああ、ご名答だ。正に魔王の如き強さって言えばいいか? 同行していた仲間は瞬く間に殺され、残った俺も変な薬を飲まされたり妙なマジックアイテムを付けられたりと、玩具のような扱いを受けた。そして気付いた時にはこの村の近くに捨てられてたんだとよ。自分でも思うぜ? 呆気ない転落劇だってな」

「だがその様子だと村人に助けられたんだろう?」

「まぁな。目を覚ました時には直ぐにでも出ようと思ったんだがよ、ちょうどそん時に数名のチンピラが村に現れて金品を強奪しようとしやがったんでな、軽くブチのめしてやったら村の連中に気に入られてよ、そっから今日までに至るってわけさ」


 良心に触れて心を入れ換えたか。ならばメグミの障害とはならんだろうし、このまま見逃してもいいだろう。

 しかしゾルーアの話とは別に気になる部分もある。


「ベルフェーヌは40年以上も前から活動していたのか?」

「そのようだな。麓の街へ買い出しに行くとチョクチョク噂を耳にしていた。正直関わりたくもねぇから積極的には聞いてなかったが。そん時からレマイオス帝国とはやり合ってたらしい」


 魔王ベルフェーヌ、見た目よりはだいぶ歳上だったようだ。まぁ転生している俺も他人のことは言えないが。


「話は終わりだ。煮るなり焼くなり好きにしろ」


 静かに目を瞑るゾルーア。だがコイツ本人とは遺恨はないし、殺す理由もない。


「勘違いするな。改心した奴を殺すほど鬼じゃない。お前はこの村の守護者だろう? 役目を全うするといい」

「……そうか。感謝する」


 話は終わった。老人の正体も分かったところで小屋を出ようとして思い留まる。まだ肝心な事を聞いていない。


「ゾルーア。最近この辺りで別の闇ギルドが暗躍していると聞いたんだが、何か知らないか?」

「別の闇ギルドだと? それはない。王国と共和国の戦争勃発で、名だたる組織は脱兎のごとく逃げてったよ。街に下りてもそれらしき顔は見ねぇしな」

「顔を見て分かるのか?」

「フッ、これでも歴は長いからな。顔さえ見りゃ一発さ」


 妙だな。フレッツェの言う闇ギルドは有名だと言っていた。それをゾルーアが知らないのは不自然すぎる。ゾルーアが嘘を言ってるようにも見えないし、やはりフレッツェ、まだ何かを隠しているのか。


「情報提供に感謝する。じゃあ――」

「ああ、そうだ。見逃してくれた礼になるかは分からんが、1つだけ忠告しておこう」


 そう俺を呼び止めると、意外な存在を告げてきた。


「俺の組織を壊滅寸前に追い込んだ傭兵団のことだ。団の名前こそ忘れたが、団長が魔王と呼ばれていたのは覚えてるぜ」

「……本当か?」

「ああ。本名か2つ名か知らねぇが、そいつはレットフードと呼ばれていた。見た目の歳はベルフェーヌと同じくらいに見えたな。レクサンドより北は小国同士での戦いが多かったが、それも昔の話だ。戦争が無くなれば傭兵としての仕事もなくなる。そうなりゃ活動拠点を移すだろうし、もしかしたらこっちに来るかもな。まぁせいぜい気をつけるこった」


 レッドフードか。記憶に留めておこう。


「それからもう1つ。お前さんが同行している連中だが――」

「――!?」


 去り際にゾルーアから告げられたある情報。これにより、あの3人の立ち位置がかなり絞られることになった。



★★★★★



「ゴトーさん、あそこだ、あの洞窟が闇ギルドのアジトになっているだよ。さっそく討伐を!」


 ゾルーアのいた村から丸1日を費やし、山の斜面にポッカリと開いた洞穴にたどり着いた。フレッツェが言うには、暗躍している構成員はここから送り出されているんだとか。

 しかしこんなに発見されやすい状態なのは不自然すぎる。俺は急かすフレッツェを落ち着かせ、他2人の意見を聞くことにした。


「まぁ待て。闇雲に突入するのは危険だろう。ラングとシャムシエルはどう思う?」

「俺としちゃあ今すぐにでも突入してぇところだけどな。シャムシエル(コイツ)と同行するのをさっさと終わらせてぇしよ」

「……私も同じだ。一刻も早く不毛な輩と離れたいのでな」

「ほら、2人もこう言ってることだし、さっさと突入しようじゃないか。もちろん先頭は私が。その後ろをゴトーさん。お2人は後ろを警戒してほしい」


 危険な場所に足を踏み入れようとしているのにこの躊躇(ちゅうちょ)のなさ、やはりコイツはゾルーアの言った通り……


「どうしましたゴトーさん?」

「何でもない。行こう」


 いよいよアジトらしき洞窟へと足を踏み入れた。中で何が待っているやら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ