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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章:ダンジョンマスター(裏)
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偽者

「むぐぅ! す、すまないキミたち、誰か援護を頼む!」

「……フン!」


 トスッ!


「グギァア!?」

「ふぅ、助かったよ……」

「…………」


 押され気味だったハリスを援護し、ゴブリンの額にナイフを突き刺すシャムシエル。彼女はそのままハリスと代わり、他のゴブリンの殲滅にかかる。


「いやぁ、キミたちが居てくれて助かった。やはり冒険者ギルドの見立ては正しかったんですなぁ」

「ギルドの紹介?」

「ええ。冒険者で一番強い者を紹介して欲しいと伝えたところ、ゴトーさん、真っ先に貴方の名前が出たんだよ」


 それは頷ける。超絶困難な依頼が発生すると、学園に使者が送り込まれるほどだしな。


「そして他の2人は俺に次ぐ順番だったと」

「……いや、2人の名前は出ていない」

「出ていない?」

「ええ、実は……」


 ハリスの顔付きが変わり、真剣そのものに。仕方なく耳を貸すと……



 ドサッ!



「うひぃ!?」


 ハリスが耳打ちしようとした瞬間、遠くからゴブリンの死体が飛んできた。ラングが投げ飛ばした個体だ。

 そのラングはというと、悪びれた様子もなく俺とハリスの間に割って入ってくる。


「おぅ、悪ぃ悪ぃ、遠くへ飛ばそうと思ったんだけどよ、手元が狂っちまったぜ。……で、何の話をしてやがったんだぁ?」

「い、いやぁ、皆さん頑張っているなと思ってね。特に何でもないよ」

「へぇ、そうかい。そんなら現在進行形でゴブリンから求愛受けてるあの女を助けてやんな」

「え? いや、私は……」

「俺が行こう」


 渋ってるハリスの代わりにシャムシエルの隣に立つと、一瞬チラリとだけ視線を送られる。がすぐに視線を戻し、ゴブリンを切りつけながらも口を開いてきた。


「……手助けの必要はない。それとも私の実力がゴブリンより劣るとでも?」

「そうじゃない、少し気になることがあるだけだ。アンタとラング、そしてハリスとの関係についてな」

「…………」


 表情に変化なし――か。まぁ話を続けよう。


「初日から気になっていたんだ。俺とハリスが話そうとすると、必ずと言っていいほど邪魔をしてくる。何故なんだ?」

「それこそ初日に言った通りだ。陰でコソコソされるのは気に入らない。言いたいことがあるならハッキリ言えばいいだけの話」

「ハリスが何か隠していると?」

「そうだ。少なくとも私はそう感じている。ラングのやつはどうか知らないがな」


 ハリスの挙動はおかしいと俺も思う。そのことにシャムシエルは気付いていたのか。


「ハリスからも話を聞きたい。すまないが少しの間だけ離れてて欲しい」

「…………フン!」



 ブシュウ!



「グギャァァァァァァ!」


 大将とおぼしきゴブリンナイトを切り裂くと、シャムシエルはこちらに振り向き……


「……いいだろう。但し、聞いた内容はこちらにも提供することが条件だ」

「分かった」


 了承すると、シャムシエルは周囲の森に足を踏み入れて行く。他にゴブリンがいないか確認するつもりだろう。

 後はラングだ。コイツもシャムシエルと同じなら同様の条件で納得するはず。


「おいラング、このゴブリンナイトの装備品を剥がしてくれないか?」

「お、金になりそうなもん身に付けてやがったか!」


 上手くラングを誘き寄せたところで、同じ話を振っていく。


「突然だがラング、お前もハリスと俺が話すのを気に入らないのか?」

「そりゃお前、依頼主との内緒話しとくりゃ黙ってられねぇだろうが。特にお前は気に入られてるみてぇだからなぁ、1人だけ多くの報酬にありつけるなんざ許されることじゃねぇ。お前だって逆の立場ならそう思うはずだぜ? ――おっ! へへ、この野郎、なかなか立派な剣を持ってやがる!」


 間違いではない。即席で組んだパーティが依頼達成後に報酬で揉めて殺し合う――なんて話もあるくらいだからな。


「分かった。報酬は均等に分けるよう言っておく。話した内容も共有する。だからハリスと話すのを邪魔してくれるな」

「ケッ、気に入らねぇ言い方しやがる。だがそれでいいぜ? 納得してやらぁ」


 これでラングとも話がついた。今なら邪魔が入らないだろうとハリスの元へ行くと、待ってましたとばかりに耳打ちをしてきた。


「すまないゴトーさん。どうしても話しておきたいことが……」

「2人に聞かれたくない話か? 悪いが2人を出し抜くような話は受け入れないぞ。あの冒険者ギルドには知り合いが居るからな。裏切るような真似はしたくない」

「と、とんでもない、むしろ裏切っているのはあの2人の方で……」

「あの2人が?」

「ええ。初日にも言いかけたがあの2人――」




「――私が指名した冒険者ではない」

「!?」


 指名した人物とは違う?


「どういうことだ、冒険者ギルドが間違った人物を寄越したと言いたいのか? そんなことをして何のメリットがある?」

「い、いや、私も別に冒険者ギルドを疑ってるわけでは……」

「ならあの2人が別人に成り済ましていると?」

「え、ええ。その可能性はあるかと」


 それこそ何のメリットがあるのかという話になってくる。が、構わずハリスは持論を展開する。


「よいかなゴトーさん。我々が討伐に向かっている場所には闇ギルドが入り込んでいるんだ。そう、ゴロツキなんかとはわけが違う。本物の殺し屋集団だ。彼らが何らかの方法で我々の動きを感知し、対策に出たとも考えられるのだ。彼らが最初に行ったのは、ゴトーさん以外の2人を殺害。そして当人に成り済ましてからの合流。後は隙を見て我々の抹殺を行うつもりなのでしょう」

「隙を見て――か」


 だがそれはないと断言できる。この数日間、俺はわざと隙を作っておいたんだ。

 例えば夜間。俺はハリスと共に熟睡して見せた。人間離れした俺ならどんなに熟睡していても秒で起きることができるからな。(←もはや人間ではない)

 しかしどうだ、あの2人は俺を観察する素振りは見せるものの襲ってくる様子はないときた。つまり殺すだけが目的ならとっくに本性を表しているはずなんだ。

 それに……


「言っておくがハリス、お前が偽者の可能性だってあるんじゃないか?」

「えっ!?」

「お前が闇ギルドの構成員で、あの2人は本物。上手く依頼主と成り代わったはいいが、他の2人を始末するのに失敗。本物が合流してきたと考えれば……」

「そ、そんな!」


 だが戦闘中のハリスの動きは素人そのもの。これで闇ギルドの構成員なら三流以下と言っていい。万が一にもその可能性はないだろう。


「安心しろ、今のは冗談だ。第一これが本当だったら真っ先にお前を糾弾しているはず」

「で、ですよねぇ……」

「だが疑念が晴れたわけじゃない。俺の視点では挙動不審だし、他の2人から見ても怪しいことこの上ない。本当のことを話してくれないか?」

「…………」


 しばし考え込むハリス。やがて大きなタメ息を1つつくと、肩をすくませて観念したように両手を広げて見せてきた。


「分かった、分かりましたよ。まったく、ゴトーさんには敵いませんなぁ。全てお話ししますので、全員を集めてもらえますかな?」


 ハリスを交えて話をすることを2人に伝え、休憩がてら焚き火を囲む。沈む夕日を背景に、ハリスが話し始めた。


「お察しの通り私の名はハリスではなくフレッツェという。とある貴族様の警備を任されている者だ」


 貴族が絡んでる気はしていた。喋り方が庶民とは違う感じがしたからな。


「んで、何だって貴族の輩が俺らを騙す? 返答しだいじゃ死体に化けるぜ?」

「ま、待て、騙してはおらん。我が主の領地が正体不明の組織に脅かされているのは本当のことで、冒険者を雇ったのも少数精鋭で挑もうとした結果なのだ。だが恥ずかしながら内通者がいたようでね、冒険者ギルドに依頼したのがバレてしまったのだよ。当然奴らは阻止してくるし、こちらも作戦の練り直しを迫られる――ところだったのだが、敢えて我々は強行することにした。まさか奴らもバレた上でそのまま実行するとは思わんだろう」


 結局のところ強行手段というわけだ。


「内通者を締め上げたところ、作戦を阻止するための刺客を各々の冒険者に放ったと言っていた。ゴトーさん程の実力者ならば万が一にも殺されはしまいと確信していた。だがキミたち2人も生きているとは思わなかったのだよ」


 それで2人を見た時に驚いていたのか。


「私からは以上だ。が、キミたちは――」

「避けろ!」



 トッ――トトトトトッ!



 フレッツェと俺がいた場所に多数の矢が撃ち込まれた。フレッツェの腕を掴んで強引に持ち上げたことで回避には間に合った形だ。


「ひぃ! ゆ、弓矢!?」

「例の組織か? ご丁寧に夜襲とはな」

「ゴトー、ぶつくさ言ってねぇでフレッツェを護ってろよ!? ソイツが死んだら報酬がパーだ!」

「分かっている」


 ラングが怒声を上げつつ武器を構えると、俺とシャムシエルも素早く立ち上がった。


「やれやれ、今夜は寝れそうにないな」


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