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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章 ダンジョンマスター
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コンタクト

「見ず知らずの人間だと?」


 ロンについて尋ねると、先の台詞が返ってきた。


「ええ。だから知っているのは名前だけね。私だって逃げてるんだし、1人くらい増えたって変わらないわよ」


 しかし我が邸に来てしまった以上、知らぬ存ぜぬとは行かない。後でEスキャンをかけてみるか。



『メグミさん、聴こえる!?』


 念話か。緊迫した様子のリーリスからだ。今日は休日であるし、嫌な予感しかしない。


『どうしたのだリーリス、クレセント学園に侵入者でも現れたか?』

『その通りよ! 相手はダンジョンマスターみたいで、次々と魔物を送り込んでくるの。理由を聞いても知る必要はないとか言ってて話にならないのよ。唯一答えたのはジプシーという名前だけ。お願い、撃退するのに協力して!』

『ダンジョンマスターか。よかろう、すぐに向かおうぞ』

『ええ、急いでね!』



 ダンジョンバトルを挑まずに刺客を送り込んできたと。つまり相手のダンマスはこちらを殺る気で来ているのだ。

 アイラへの追手か、はたまたロンか、騒がしくなってきたな。


「我が愛しのメグミさん。失礼ながら、先ほどから顔色が優れないようですが、ひょっとするとボクの愛が足りなかったでしょうか?」

「黙れ変態ドラゴン。頼んでないし必要もない。そんなことよりミラ、ジプシーという名に――」

「!?」ビクッ!


 血の気の引いた顔でこちらを見てきた。心当たりがあるようだな。


「クレセント学園に刺客を送り込んできたらしい。向こうは本気のようだ。話してくれるな?」

「……うん。ジプシーは高ランクのダンジョンマスターで、姉の手下でもあるの。きっと前に行われたダンジョンバトルを見て私の正体に気付いたんだわ」

「襲ってくる理由は何だ?」

「私の情報を求めてるのよ。あの時使っていたダンジョンは破棄したから、あの場に行っても残骸が残っているだけ。だから……」


 対戦相手となったポセイドが行き先を知っている、もしくはアイラを取り込んだとでも思ったか。


「力ずくで聞き出すつもりか。ではもう1つ聞こう。ジプシーという輩――」



「――殺ってしまっても構わんか?」

「え……そ、そうしてもらえるなら寧ろ助かるんだけれど……。でもジプシーは手強いわよ? 何せ奴は大役職(リードロール)の1人。大陸の南方では勇者として有名なのよ」

「ほぅ、勇者か」


 ゴトーの話ではゴルモン王国のククルルも勇者の1人で、不思議なスキルを使うと言っていた。ならばジプシーも同等の強さを持ち合わせているのだろう。相手にとって不足はない。


「フフフフ……アッハッハッハッハッ! 魔王ルシフェルの生け贄がまた1人、ネギを背負ってやって来たのだ。手厚く歓迎しようではないか」

「まさかジプシーと戦う気!?」

「当然だろう? 私の生活圏に介入してきたのだ、邪魔立てするのは万死に値する!」


 私の意思を確認すると、アイラも力強く頷き……


「分かった。でもジプシーの狙いは私にある。私も一緒に戦うから!」

「うむ。我ら姉妹の力で敵を打ち破ろうぞ」


 相手がダンマスならばアイラも居た方が有利となろう。特に戦闘ではあの変態ドラゴンも――


「ああ、素晴らしきかな、美少女たちの熱き共闘。その可憐なる輪の中に是非ともボクを!」

「「触るな穢らわしい!」」

「ブヘボッ!」


 やはり変態には期待出来んかもしれん。(←同意せざるを得ない)



★★★★★



 学園に着くと、コアルームがある森の砦に教師陣が集められ、必死の攻防を繰り広げていた。

 攻めて来たのはおびただしい数のチャージクロウとグリーンウルフで、砦を取り囲んだ状態でジワジワと攻め上がって来ている。


「魔物の大群がこれほどまでに……。まさかダンジョンが崩壊したのでは!」

「それはないわエスペル先生、コアルームは無事だから撃退に専念して」

「わ、分かりました!」


 リーリスとエスペルが連携して当たっている。他の教師陣は裏の方か? まぁいい、取りあえずはご挨拶代わりだ、雑魚共を蹴散らしてやろう。


「歓迎してやろう――ファイヤーウォール!」


 砦と奴らの間を炎の壁で遮断した。集っているのは低級の魔物だ、強引に突破すれば丸焦げになること間違いなしだろう。


「あ、貴女は!」

「メグミさん!」

「来てやったぞリーリス」


 私の姿を確認し、2人が安堵の表情を浮かべる。


「しかし凄い数だな?」

「ええ。ポセイドの話では森中が埋め尽くされているそうよ」

「それほどか!」

「低コストの魔物を大量に召喚して物量で圧をかけてるのよ。低級と言えど攻めて来る以上は無視できない。ジワジワと消耗させて、こちらが根をあげるのを待っているんだわ」


 勇者のクセにやることが小賢しいな。


「やっぱり私のせいで被害を被っているのよね? 本当にごめんなさい!」

「貴女のせいじゃないわミラさん。話も聞かず一方的に攻めてくる方が悪いのだから。それに何の相談もなく学園を巻き込んだあのポセイド(ポンコツ)にも責任はあるんだから、何も気にせず匿われてちょうだい。後のことはメグミさんに任せて……ね?」

「ね? っておいリーリス……」


 まぁ最初から私がやるつもりだったがな。


「グルルルルゥ……」


 む……ファイヤーウォールの効果が切れたか。チャンスと思ったウルフたちがニジリ寄ってきた。


「ゆっくりしてる暇はなさそうだ。フェイとフロウスは付近の雑魚を蹴散らしてくれ。私はジプシーの動きを探ってる」

「りょ~か~い!」

「任せてください」


「メグミ、私は? 私はどうしたらいい?」

「ん? そうか、ミラは――」



 グルン!



「「「グルルルルゥ!」」」

「何っ!?」

「え、ええ!?」


 ウルフたちが一斉にミラの方へと向き直った。そして直後に……


「アォ~~~~~~ン!」

「「「グルルァァァ!」」」


 狙いを定めたグリーンウルフの群がミラの方へと殺到し始める。いやウルフだけではない、上空のチャージクロウもミラの動きを監視しつつ急降下を開始した。


「完全にバレているようだな。ひとまずミラは砦に隠れ。ブラッシュたちは砦の防衛だ」

「お任せを。姫には指1本触れさせませんよ」


 砦の防衛メンバーにミラの眷属を追加し、私とミラは砦に入った。コアルームに駆け込むと、悲痛な表情を浮かべたポンコツ――じゃなかった、ポセイドとメディスに出迎えられる。


「ポセイド!」

「来てくれたかメグミくん。いきなりだが、我輩のことをポンコツと呼ばなかった?」

「き、気のせいだ。それよりも現状を」

「うむ。状況は見ての通り、一方的な侵略を受けている状態だ。こちらの呼びかけにも一切応じず、粛々と魔物を送り込んでくるだけだった。つい先ほどまではな」

「先ほどまでは?」

「うむ。キミたちが現れて少し経った辺りからだ。相手のダンマス――ジプシーから通達があった。ミラを引き渡すのであれば侵略は中断し撤退すると。無論丁重にお断りしたが」


 それでジプシーは直接ミラを狙ってきたのか。


「私のせいでごめんなさい! いざとなったら見捨ててもいいから、その……」

「…………。水臭いぞミラ。お前のことは私が護ると言ったであろう?」

「そうだぞミラくん。メグミくんは我輩よりも頼りになる。ここはド~ンと任せればよい」

「うんうん」


 ポセイドよ、それ自分で言うのか……。メディスも頷いてやるな。


「どれ、私が直々にジプシーとかいう輩に引導を渡してやろう。ポセイド、繋いでくれ」


 コアルーム(ここ)からならダンジョン全体に声が響く。侵入してきた魔物を通してジプシーにも声が届くだろう。


『聴こえるかジプシー? 私の名は魔王ルシフェル。有り余る才能で世界を統一してしまうかもしれない逸材である。ミラを寄越せとのことだが、まっぴら御免だ、糞食らえだ。貴様なんぞ指先1つでダウンさせてやる。どこからでもかかってくるがいい』

『…………』


 だんまりか……と思われたその時!


『フッ、魔王ルシフェル……と。随分とダサい自己紹介だな? ま、俺を笑わせる才能があるのは確からしいぞ? アッハハハハハハハハ!』

『なっ!? 貴様!』


 この野郎、私をおちょくるか!


『魔王ルシフェルだぞ! 怖くないとでも言うつもりか!? 土下座するなら今のうちだぞ!』

『クックックックッ! 台詞がまんま小者じゃねぇかよ。そんなんでビビる奴がいるかっての』(←メグミを知っていれば大抵ビビるんだよなぁ……)


 クッ! コイツ……


『笑わせてくれた礼だ、1つ重要なことを教えてやろう』

『明日のラッキーカラーとかなら不要だぞ? 大して信じとらんからな』

『何だそれは……。まぁいい、教えるのは俺の正体だ。何を隠そう俺こそが大役職(リードロール)の1人である愚者(フール)。そして大役職(リードロール)とは勇者として崇められている存在。俺と敵対するんだ、世界を敵に回す覚悟はあるんだろうなぁ?』


 フン、世界か。


『世界なんぞ、いずれ私が飲み込んでくれる。貴様こそ私と敵対して無事でいられるとは想わないことだ。ミラは私の妹も同然。これ以上手出しをするのなら、命を投げ捨てる覚悟で来るのだな』

『ハッ、俺を殺せるとでも? おもしれぇ、ラヴィリンス様の片腕と呼ばれる俺様だ。殺れるもんなら殺ってみな!』


 そこで声は途絶えた。つまりは交渉決裂。真っ向からの対立だ。(←交渉しとらんよな?)


「よぉし! 皆の者、ジプシーのダンジョンへ乗り込むぞ!」

「待ってくれメグミくん」

「怖じ気付いたかポセイド!」

「そうではない。乗り込むにしてもどこへ乗り込むつもりだ?」

「ん? そりゃもちろんジプシーの――」

「奴のダンジョンがどこに有るか不明なのだ。とにもかくにもダンジョンを探さねばだ」


 クッソォォォォォォ! 探すのめんどくさ~~~~~~い!(←いや探せよ)

 つまりジプシーの野郎は魔物を送るだけ送って高みの見物というわけだ。あの腐れ外道、卑怯者、腹黒野郎、ブラッシュ以下め!(←それは可哀想)


『ルシフェル様、少しよろしいですか?』

『何だ、ゴトーか。今は取り込み中で――』

『――――』

『んん? ちょっと待て、今……何と?』


 まさかの知らせがゴトーから舞い込んだ。


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