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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章 ダンジョンマスター
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セカンドバトル②

 楽勝と思われたダブルタワーディフェンスの思わぬ罠――というより自滅に近い形で魔物の進行がクレセント学園にも延びてしまった。

 同じダンジョンに有るのだから当然と言えば当然だ。失念していたポセイドは元より私自身も迂闊であったと言わざるを得ない。


「ポセイドよ、このままだとマズイぞ!?」

「分かっている、すぐに対処させよう。…………」


 どうやら念話を送ってるようだ。大方リーリスだろう。どれ、傍受してみ――




『何をやっているのこのドアホーーーッ! この広範囲の森を教師だけで対処させる気!? とてもじゃないけど人手が足りないわよぉぉぉ!』



「「…………」」ギ~ンギ~ン



 リーリスの怒鳴り声で頭がガンガンする。この世界に来て初めて酒を飲んだ次の日のような感じだ。

 ポセイドも耳を塞いでいる。念話だから意味ないぞ?


『おやおや、何かトラブルですか~?』

「アズラか。実はな――」

『――フムフム、事情は分かりましたよ~。よろしければこちらでストップしますんで』

「本当か!?」

『その場合はリタイアと見なして失格になりますけどね~。つまりやり直しは不可ってことで』


 この運営まさかの神対応じゃね? とか思っていたら、そう甘くはなかった。まぁ当然か。


「ポセイド、学園の様子はどうだ?」

「すでに一部の魔物が生徒たちと接触している。今はまだ低級魔物だから良いのだが……」


 時間経過と共に中級、長引けば上級が出てくる可能性もあるか。


「あ、アレは!」

「どうしたフロウス?」

「ゴブリンジェネラルです、後ろにはゴブリンナイトやゴブリンメイジもいます!」

「落ち着け、トラップで引き付けよ」

「ダメです、ゴブリンシーフが先駆けて次々にトラップ解除を!」


 チッ、ゴブリンごときが味な真似を。


「もはや一刻の猶予もならん。ポセイド、私が直々に塞き止めて来る」

「分かった。キミの柔軟な判断に任せよう」

「それでいい。フェイ、お前は学園周辺の森に向かい、魔物を見つけしだい各個撃破せよ」

「おっけ~」

「フロウスは引き続きトラップを頼む」

「分かりました」



 コアルームから第一階層の洞窟に転移した。ダンマスの権限を使用すればどこにでも転移出来るからな。

 そして振り向けばウルフの群が突っ込んで来るところだった。


「頭の悪い駄犬どもが、格の違いを思い知れ――ファイヤーストーム!」

「「「ギャゥゥゥン!?」」」

「よし、次!」


 ウルフを燃やすとオーガの列が姿を現した。燃えカスを踏み潰して悠々と進んでくる。


「オーガか。こやつらはデカ過ぎて落とし穴にはハマらん。私が撃破するしかないな。――フレイムキャノン!」

「「「グガァァァァァァ!」」」


 魔法の威力は魔力によって決まる。私が放った炎の砲弾は最後尾のオーガをも貫通し、辺り一面を火の海へと変えた。


「次は何だ? ゴーレムだろうがドラゴンだろうが何だって焼き尽くしてやろう」

「「「…………」」」


 恐怖というものが備わっているのか、奥に見えた魔物の群は火の海を渡る様子はない。鎮火するまで仕掛けてはこないだろう。


「やれやれ、波は収まったようだな」


 後は森に入った魔物を駆逐するだけか。どうせゴブリンのパーティも森に入ったのだろうし、向こうはフェイに任せれば問題なかろう。


「……で」

「「「グルルルルゥ!」」」

「鎮火した途端にま~たウルフの群か。ファイヤーストーム!」


 しっかしこうも単調だと飽きてくるな。何か刺激が欲しいところだ。危機は脱したのだし、ちょいと遊んでも良いだろう。

 何かないか、何か……



 ピコーン!



「うむ、閃いたぞ!」


 これをこうしてああやってと。む? この罠は使えそうだな。少々改良してっと……


ギャウギャウ(攻めてもいいッスか)?」(←スキルにより通訳中)

「うるさいな、今は作業中だからもう少し待っておれ」

ギャギャ(りょうかいッス)!」


 後はこれをこうやれば……よし、完成だ!


「待たせたなゴブリンども、攻めて来てもよいぞ」

「「「ギャーギャギャ(いっくぜぇぇぇ)!」」」



 ガチャガチャガチャガチャン!



グギャッ(なんだこのクサリは)!?」

ギャー(オレたちの足に)ギャギャ(巻きついたぞ)!」

「フフ、今から貴様らには5人6脚をやってもらう。20体いるから4組な。突き当たりまで行けばゴールだ。それでは始めぃ!」

「「「ギャギャギャギャ(わけわかんねぇ~)!」」」


 恐らく二人三脚をやったことはなかったであろうゴブリンどもが悪戦苦闘し始める。


グギャギャ(右足がこうだから)……」



 パカッ!



ギャッ(ひぃっ)!? ――ギャーーーッ(うわぁーーーっ)!」

ギャギャギャギャ(バカ、おちるな)!」

ググギャーーーッ(なんでオレたちまでぇ)!」


「そうだった。言い忘れてたが、落とし穴トラップは止まると開くよう改造したからな。当然1人が落ちれば他も落ちる。連帯感を味わう絶好の機会だからな、存分に楽しんでくれたまえ」


 続く5体も誰かが足を引っ張り、その後どの組も最初の一歩で脱落していった。


「さぁ、次は誰だ?」

グウォォォォォォ(ワレワレだぁ)!」

「オーガか」



 ガチャガチャガチャン!



グォ(くぅ)ググガァ(れいのクサリか)!」

「そうだ。だがお前たちはデカすぎるために横並びにはなれん。そこで種目を変更しようと思う。題して――」



「――両手両足、絶対対称歩行だ!」

グガァ(なんだってぇ)!?」

「なぁに、簡単なことだ。現在貴様らは右手足と左手足に分かれて鎖に繋がっておる。つまり、右足を出したら右手を出さねば歩行できんのだ。ではスタート」

()ゴゴゴォ(こんなのムリじゃ)……」



 パカッ!



ぐわぁぁぁ(やっぱりぃぃぃ)!」

「はいざんね~ん♪ 落とし穴もオーガを飲み込めるサイズにまで改造したからな。安心して挑むがいい」

「「「ぐががががぁぁぁ(あんしんできねぇぇぇ)!」」」


 そしてやはりというか何というか、オーガどもにも難しかったようで、全員が見事に落下。個人的にはもう少し頑張って欲しかったがなぁ。


「さぁて、次は――」



 プスプスプス……



「んん? トラップから煙だと? まさかオーガどもめ、落下した先で屁でもコキよったか」(←すげぇ臭そう)


『大変だメグミくん、ダンジョントラップに尋常ではない魔力反応を検知した。何か異常は起こっていないか?』


 慌ただしくもポセイドが念話を送ってきた。


「異常か? トラップの中でオーガの屁が充満しているだけで、何も変わった様子は――」



 ボォォォン!



「――うひぃ!?」


 トラップが破裂して地面が凸凹になった。これでは落とし穴は発動できんな。いや、それは置いといてだ。


『どうしたメグミくん! 何があった!?』

「い、いや……多分……だが、オーガの屁が引火したのかと……」

『だがガスの類いは検知されてない。新手の魔物かもしれん、充分に注意してくれ!』

「わ、分かったぞ……」


 オーガの屁ではない? ならば魔改造が原因ではないか!(←それしかねぇよ)


ギャギャギャ(これってチャンスなん)?」

バゥンバゥン(かもしれん)

グオォォォン(だったらのるぜ)グオオオォォォ(このビッグウェーブに)!」


「クッ、貴様らぁ!」


 だが鎖の罠は有効だ。こちらに接近すれば、たちまち拘束し――



 シャーーーッ――――ガチャガチャガチャン!


グゲェ(しまった)!?」

グルゥゥゥ(これでは先に進めん)!」



「――って、私の体にまで巻き付いとるがな!」


 しかもこの鎖、私の魔力が込められてるだけあって、なかなかにして外れん。


「ええぃ離せ、離さんか! ――このぉ!」



 ドゴォォォォォォン!



 ヤバッ! 加減を間違えて、天井や壁が穴だらけに!


『メグミくん! 今の衝撃はなんだ? キミがいる辺りから検知されたぞ!』

「落ち着けポセイド。オーガだ、オーガの奴め、最後っ屁をひり出しよって爆発を」

『爆発だと!? キミは大丈夫なのか?』

「うむ、問題ない」(←問題だらけだが)

『分かった。ミラはまだ粘っているようし、キミも気を付けろ』

「お、おぅ……」


 マズイ、実にマズイぞ。もしも敗北なんてしたら、完全に私のせいではないか。(←当たり前だ)



 ビーッ! ビーッ! ビーッ!



『異常ナ魔力ヲ検知、異常ナ魔力ヲ検知、直チニ原因ヲ追及シテクダサイ。繰リ返シマス。異常ナ――』


 異常な魔力だと? やはり私が原因か!(←さっきからそう言ってるよね?)


『マズイぞメグミくん、このままではダンジョンシステムがダウンし、完全に無防備となってしまう。悔しいがここは敗北を認め、早急に原因を――』

「まて、早まるな!」

『しかしだな……』


 本格的にマズイ! どうする私、どうするルシフェル!


ギャーギャギャ(さっさと前いけ)!」

グルルルゥバゥバゥ(動けねぇんだっつぅの)!」

グゥオォォォ(あつくるしぃぃぃ)!」



 発動した鎖は私を含めて全ての魔物を繋いでおり、それによって大渋滞を起こしている。ったく呑気な連中め。(←お前のせいだがな)

 しかし出口か。パンクしなければよいが――ん? 出口?


『アズラよ、このままダンジョンから出たらどうなるのだ?』

『うぉう!? まさかダイレクトに念話を送ってくる人が居るなんて!』

『いいから答えよ』

『あ~はいはい。その場合はですね、相手方のダンジョンに出るんですよ。つまり魔物を送り込めちゃうんですね~』

『そうなのか!』


 私の作った罠が原因ならば、それを持って相手のダンジョンに入り込む、これしか方法はない!


『ポセイド、今から私はミラのダンジョンに突撃する。しばし留守にするぞ』

『そ、それは何のために……』

『詳しく話してる隙はない、後は頼んだ!』


 念話を切り、一直線に出口を目指した。途中にいた魔物は全て鎖が拘束し、そのままミラのダンジョンへ……




「ゴーーール!」

『――って、何しに来たのよアンタァ! しかもいらん魔物を大量に引き連れてぇ!』

「残暑見舞いだ、潔く受けとるがいい」

『いらんわ! さっさと連れて帰――』



 ビーッ! ビーッ! ビーッ!



『魔力値ガ異常、魔力値ガ異常、正常化ヲ行ウタメ、全テノ機能ヲ停止シマス』


 思った通りミラのダンジョンでも異常が起こったな。


『え!? どういうことよ! アンタ何かやったんじゃないでしょうね!?』

「私は知らん。知ってるけど知らん。可能性があるとすればオーガの屁だけだ」

『何よそれ……』

「運営の放ったオーガが落とし穴の中で屁をこいてな、それが異常だとして検知されたのだ。ここも同じではないのか?」

『そ、そう言えばオーガの列をまとめて穴に誘導したような気が……』

「あ~多分それだな、うん。間違いないな、うん」

『ぐぬぬぬぬ……もうマジでクソ、クソ過ぎるクソ運営じゃない! ふざけんなアズラ!』(←お前も簡単に信じるなよ)



 プチュン!



『「あ……」』


 機能停止したためか、通路を照らしていた照明が全て落ちてしまった。そして直後に嬉しいアナウンスが響く。


『あーーーっとぉ、ミラ選手のダンジョン機能が停止した隙に、ゴブリンがコアルームに到達してしまったぁ! これによりミラ選手は敗北、勝者はポセイド選手となりましたぁぁぁ!』


 あれ? 勝ったのか? 正直あまり勝った気がしないのだが。


『待ちなさいよ運営! 今のトラブルは露骨じゃない、こんなの反則よ反則!』

『いえいえ、不正は見当たらなかったですよ~。そこはこのアズラが保証しま~す!』

『ぜぇぇぇったい嘘! アンタらが放ったオーガの屁が原因でしょ、この屁コキ虫! けものフ○ンズみたいなカッコして調子に乗ってんじゃないわよ、この中途半端なネコミミが!』

『ちょっ! 見た目を(けな)すのは人権侵害ですよ!? わたくしを怒らせると失格にしますからね!』

『やれるもんならやってみなさい!』


 やれやれ、騒がしい連中だ。勝負は着いたというのにギャーギャーと。(←主にお前のせい)


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