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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
第3章 ダンジョンマスター
48/108

ダンジョンバトル

『フフン、これで私の2勝1敗。勝負あったわね。ま、1度でも黒星をくれた事は認めてあげる。だけどこれが結果よ。所詮二流のダンマスじゃ私には敵わないってことね』

「…………」


 我輩――カイザー4世が険しい顔をしている反面、奇妙な仮面を付けた少女――ミラはスクリーン越しに鼻を鳴らしている。

 なぜこのような構図になっているのかと言えば、我輩がダンジョンバトルに負けてしまい、所有するダンジョンを奪われそうになっているからだ。


「だから言ったんですよカイザー様、負けたら取り返しのつかない事になるって。どうして受けちゃったんですか、このクソザコナメクジ!」


 側近であるメディスから心無い中傷を受けてしまった我輩。(←自業自得やぞ) 彼女自身もサキュバスであるためそれを見越してのバトルだったのだが、結果は惨敗となってしまった。もう少し戦えるかと思ったのだが……。


「まさかとは思いますがカイザー様、此度の敗北はわたくしのせいだと思ってませんか?」



 ギクッ!



「そ、そんなことは……ないぞ」

「……何なんですか今の間は。というか絶対思ってましたよね? そんな風に責任転嫁をしてるから足元を掬われるんですよ、このクソザコヘタレ野郎!」

「待て、そこまで言うことは――」

「文句があるんですか? これ以上ふざけた真似をするのであれば、遠慮なくハッ倒しますよ?」




「すみません……」

「宜しい。ではミラとの交渉です。ダンジョンを没収されては地上にあるクレセント学園が混乱してしまいますので、それを回避するよう働きかけましょう」


 そうだ。ダンジョンを手離すのは学園を手離すのと同義。何としても阻止せねば。


「聞いてくれミラ。我輩は子供たちを育成するための学園をダンジョン内部に抱えている。このまま渡すのは子供たちが不憫(ふびん)でならんのだ」

『あっそ。これからは私が運営してあげるから心配しなくていいわよ』

「分かった、宜しく頼――」

「このド阿呆ーーーッ!」ゲシィ!


 メディスからド突かれてしまった。首が寝違えたように痛む。


「そうじゃないでしょおバカ! 宜しく頼んでどうするんですか!」

「いやしかし……」

「退いて下さい、わたくしが話します! ――あ~あ~、宜しいですかミラ? ここから先はわたくしメディスが代わらせていただきます」

『ふ~ん? 別にいいけど私の考えは変わらないわよ。アンタたちには即刻ダンジョンから立ち退いてもらうから』

「まぁそう焦らずに。ダンジョンを譲るとは申しましたが、我々が何処に住むかは明言しておりません。つまり、引き続き住み着いても問題ないのです」

『は?』

「ですので我々は立ち退きません。邪魔だと仰るなら受けて立ちます――」




「――ダンジョンバトルを再び!」

『はあ!?』


 何をするかと思えば強引に再戦を申し込んだか。これで首の皮一枚が繋がったな。


『何なのよその屁理屈、これじゃまるで詐欺じゃない!』

「詐欺だろうがウサギだろうが、我々の主張は間違っておりません。受けないのであれば同居する事になりますが?」

『ふざけんな! うら若き美少女である私に中年男とひとつ屋根の下で過ごせって言うの!? 冗談じゃないわ!』


 酷い言われようだ。日頃から学園の生徒と触れ合っている我輩をそのような目で見るとは。(←触れ合うどころか姿すら現してないが)


「そうですね、わたくしとしても賛同しかねますので、もう一度勝負と行きましょう。こちらが敗北した暁には完全撤退しますので」

『な~んか腑に落ちないけれどそれでいいわ。でもバトルは明日早朝よ、これだけは譲らないんだから!』



★★★★★



「――という経緯があったらしくてね……」


 毎度お馴染みとなりつつある学長室。椅子に腰を下ろしたリーリスが、机に頬杖をついてぼやく。

 夏休みが終わって秋が見えつつある平和な学園生活が、またしても脅かされているとは。


「一応聞くが、何だって私が呼ばれたのだ?」

「決まってるじゃない。ヘタレなダンマスに代わってバトルに勝って欲しいのよ」


 うん知ってた。


「だが少々他力本願ではと感じるがな。学園長はどうした? 今まで見たことすらなかったが、こういう時こそ出番であろう?」

「無理よ。だってカイザー4世が学園長なんだもの、彼が負けちゃったのがそもそもの原因でもあるし」


 あのカイザー4世か。確かポセイドという名前だったか? 奴が最大の戦犯らしい。しかも学園という立場でありながら情けない。


「で、例の如く私に尻拭いをさせようと?」

「他に居ないのよ、この危機を救える人材が」

「やれやれ、またそうやって気分よく(おだ)てて乗せる作戦か」

「本当の事よ。対戦相手のミラはS級の魔物を抱えてるみたいで、ここの教師陣じゃ太刀打ち出来ない。魔王としての貴女の力が必要なの。それにダンマス以外の者がダンジョンバトルに参加できるなんて、一生涯に1度有るかどうかも分からない。貴重な体験になるのは間違いないし、魔王である貴女だからこそ参加資格があるとも言えるわ」


 私だからこそ――か。フッ、分かっておるではないか。これこそが私への正しい評価。ダンジョンマスターとやらの実力、見せてもらおう。(←すっかり乗せられとる)


「良いだろう。何人(なんびと)たりとも私を負かすことは出来んという事実、しかと目に焼き付けてやろうではないか」

「フフ、メグミちゃんならそう言ってくれると思ってたわ。じゃあ早速で悪いけれど、明日の早朝までに面子を募って待機しててくれる? 邸に迎えに行かせるから」



★★★★★



「――という経緯があってだな……」


 その日の授業が終わり、邸に戻った私はフロウスとフェイ、ついでに魔剣のレンを自室に呼び寄せた。勿論ダンジョンバトルへ参加してもらうためだ。


「……あの~メグミさん、何だかんだと乗せられてるような……」

「それはそれ。例え乗せられようと、本人が納得の上なら問題ない。現に私は楽しみで仕方ないのだ、ダンマスという未知なる相手が。それにフロウスとて試したいであろう? ()()()()を」

「アハハハ……。うん、否定はしない。以前より力を獲た私の実力、試したいとは思ってた」


 魔王ラジャンを倒した後、奴が持っていた魔力の一部がフロウスにも流れたのだ。今のフロウスならアバードと良い勝負だろうな。とは言えアバード本人が死んだため確かめようはないが。


「フェイにレン、お前たちはどうだ?」

「う~ん、ダンジョンって狭っ苦しいから好きじゃないんですよ~。でもルシフェル様のご命令なら参加しま~す」

「自分は望むところだゾ~。ダンジョンと言えば魔物、倒した魔物の血は吸い放題だからナ~」


 うむ、話はまとまったな。


「……ところでメグミさん、この場にはゴトーさんが居ないけれど……」

「ああ、ゴトーか。奴なら冒険者ギルドの依頼で数日前に出立したぞ。何でも傘下に入った元レクサンド共和国の地にディオスピロスとは別の闇組織が暗躍してるとかでな、休学して現地に向かったようだ」


 ディオスピロスだけでも駆逐するのが大変だったからな。わざわざゴトーを呼び戻すのは愚行だ。奴には国の安定に貢献してもらおう。

 ちなみに下僕として街の警邏(けいら)を任せている獣人の少年たちも参加を見送る。守備が手薄になるからな。

 そして次の日の早朝……




「わたくしはサキュバスのメディス。ダンジョンマスターであるポセイド様の(めい)によりお迎えに上がりました」


 綺麗な姉ちゃんがやって来た。父上が見たら即落ちしそうな外見である。


「まさかとは思うが、来たついでに父上を誘惑しようとか思ってないだろうな?」

「ご安心を。これでも主一筋ですので、他者に手を出したりは致しません。ついでに言うと、オッサンは趣味ではありませんので」


 サキュバスなら男を選ばないというのは偏見らしい。良かったな父上。(←男の立場なら泣ける)


「しかし何だ、サキュバスという上位の魔物がついていながら敗北したのか。敵は相当な手慣れだな」

「手慣れ――というよりは素質的なものなのでしょう。まだバトルの経験が少ないであろう少女でしたが、天啓を受けたかの如く見事なスポーンとトラップ配置でした。最初から警戒していれば我が主の敗北は無かったかもしれませんが。そういえば年齢もメグミ殿と同じくらいでしたね」


 益々興味深い。魔王である可能性もあるだろうし、対戦相手として申し分ないな。


「そろそろご準備の方は宜しいですね? ではわたくしの腕に掴まってください――」



 シュン!



「――着きました」

「「「おお!」」」


 これには私を含む全員が驚く。一瞬にしてダンジョンの一室にワープしたのだ。


「ダンジョンマスターの眷属は、必要な物資や獲物を連れて帰れるようダンジョンへの瞬間転移が出来るのです」

「獲物ってお前……」

「ご安心を。皆様は獲物ではなく特別ゲストとしてお迎えしましたので」


 まぁ当然だな。


「ところでポセイドはどうした?」

「それでしたら――」


 ノソッ……


「……誰だ我輩の眠りを妨げる者は」


 奥から眠そうな青年が現れた。カイザー4世ことポセイドである。


「おお、誰かと思えばメグミではないか。新顔も居るようだが友人か? まぁゆっくり――」

「――してる場合ではありません! 間も無くダンジョンバトルですよ、忘れたのですか!?」

「おっと、そうであったな。つまりアレか、メディスが言っていた強力な助っ人とはメグミの事であったか」

「そうです。というかダンジョンの危機なのですからしっかりしてください!」

「分かった分かった、あんまり大声を出さないでくれ。二日酔いの頭にガンガン直撃する」


 コイツ、酒臭いと思ったら二日酔いかい! メディスも頭を抱えてるし、本当に大丈夫か?



 プチュン!



『フフン♪ おはよう、敗者の皆さん。今日はリベンジマッチということで楽しみにしてたわよ』


 壁にあったスクリーンに仮面を付けた金髪少女が映り込んだ。勝者の余裕からこちらを見下してるのがヒシヒシと感じられるな。


『お前がミラとか言うダンマスか? 今日はこの魔王ルシフェルが相手になってやろうぞ』

『…………』




『ギャーーーッハハハハ! 何かと思えば魔王ですって!? たかが魔王がな~にカッコつけてんのよ。っていうか恥ずかしげもなく堂々と名乗るとか、ひょっとして中二病ってやつなんじゃないの~? あ~おっかしい! こんなアホっぽい奴初めて見たわ』

『…………』



 プチン!



『良いだろう小娘。その挑発は宣戦布告と受け取った。魔王ルシフェルの恐ろしさ、思い知らせてやろう!』


キャラクター紹介


メグミ

:本作の主人公にして魔王ルシフェル。自分こそが魔王の中の魔王であると信じて疑わない。前世から引き続き中二病を患っており、この世界においても残念な少女として認識されつつある。


ゴトー

:本作の裏主人公。メグミこと魔王ルシフェルの眷属にして人間の限界を突破した存在。休学が多くクレセント学園ではイケメンのレアキャラ扱い。メグミと同じくザルキールの街のラーカスター邸で生活している。


フェイ

:フェザードラゴンという小型のドラゴンで、魔王ルシフェルの眷属でもある。メグミからラーカスター邸を守護するよう命じられているが、無視して出歩く事もしばしば。普段は人化して幼女の姿になっている。(←その方が魔力の消耗が少ないらしい)


レン

:魔剣アゴレントの方。積もり積もった念が魔剣に宿り、人化できるまで進化した存在。血に飢えると夜な夜な街の外へと出歩き、魔物の生き血を啜っているとかいないとか。


フロウス

:レマイオス帝国の獣人にして魔王であり、権力争いを避けるため祖国を捨ててザルキールへとやって来た。現在はラーカスター邸にて居候の身である。


ミラ・ラヴァース

:ダンジョンマスターの少女。何故だか仮面を付けており、素顔を隠している。クレセント学園を所持しているダンマスのカイザー4世に勝負を挑み見事勝利を納めたものの、カイザー4世の眷属であるメディスの屁理屈によって再戦する羽目になった。


ポセイド

:カイザー4世と呼ばれる事もあるダンジョンマスターの青年。見た目は二十代後半くらいのイケメンだがのんびりした性格からか、眷属のメディスには残念なイケメンと思われている。知る者は少ないが、クレセント学園の学園長も勤めている。


メディス

:ポセイドの眷属にして上級魔物のサキュバスで、頼りない主をフォローしつつ日々奮闘している。ポセイドと距離感が近いリーリスを一方的に嫌っているらしい。


リーリス

:クレセント学園の中で一番の知識人であり魔族の美女。学園長であるポセイドが不在の時は代理も勤めている。最近では困り事をメグミに頼むのが恒例と成りつつある。


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