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そしてSクラスへ

「みんな集まってるわね? それじゃあSクラスの新入生に入ってもらうわよ~!」


 担任のリーリス先生に手招きされ、俺を含む3人の男女が入室する。そう、このクラスにいる全員があの試験を突破したのだ。ならば全員が俺と同等の実力者と思った方がいいのかもしれない。


「「…………」」

「ん? お前たち、どうして俺から距離を取るんだ?」

「ななな、なんでもないよ! 気に触ったら謝るよ、ゴメン!」

「べ、別に何でもないんだからね! ゴーレムを粉砕したのを見て怖くなったりしないもん! だからお願い、許してください!」


 この2人も俺と同じ新入生――なのだが、この取り乱しよう、さては俺をライバルと見込んで観察していたな? 面白い。俺に隙を見つけたのなら、いつでもかかってくるがいい。そう思い、視線を向けて答えてやった。


「フッ……」

「「ヒィ!?」」


 オーバーリアクションで怯えているフリか? さすがはSクラスに選ばれるだけのことはある。これからも良きライバルでいて欲しい。

 さて、視線を戻してクラスを一望してみる。この学園では1年から3年までは同じクラスとなるため、既に10人近くの先輩方が各々の席に着いていた。

 傍らの2人を見て先輩方も気付いたんだろう、ゴーレム破壊についての質問が俺に飛んできた。


「試験用のゴーレムをブッ壊したってマジ!?」

「それも一撃だったって聞いたわ!」

「どさくさ紛れにエスペル先生を口説いたという噂も……」


 エスペルとはCクラスの担任で、試験の日にお姫様抱っこをしてしまったあのインテリ女性だ。

 しかしマズイな。ゴーレムはともかく、教師を口説こうとしたなどと噂されては平穏には過ごせない。幸か不幸か、今の俺は容姿端麗のようだからな。ここは弁明しておこう。


「1つ訂正したい。ゴーレム粉砕(アレ)は本気であり遊びではなかった。そこでゴーレム破片の片付け(あとしまつ)として責任を取ったまで。そう、彼女を巻き込んでしまったのは俺のせい。だからこそ俺が救ったのだ」

「「「おおっ!」」」パチパチパチ!


 割れんばかりの拍手喝采。どうやら感銘を受けたらしい。


「遊びじゃなく本気――って、そういう意味よね!? エスペル先生、歳下彼氏ゲットじゃん!」

「凄いよね、学生の身分で責任取るつもりなんだ。ここまで堂々と宣言するってなかなかできないよ」

「いいなぁエスペル先生。あたしも彼みたいな恋人が欲しいなぁ」

「歳の差カップル爆誕って感じ? エスペル先生羨まし~い!」


 んん? どうしてエスペルが羨ましがられているんだ? よく分からんが後で俺からもおめでとうと言っておくか。(←それは止めとけ)



 パンパン!



「はいはい静粛に~。今は授業中よ? 関係ない話は後にしてね」


 担任の制止によりクラスが静まる。しかしリーリスは俺に向き直ると、タメ息交じりに話し出す。


「キミもね、あんまり誤解を与えないように注意してね。エスペルの件だってただの救出作業でしょ? あの()ってまだ20歳で教員歴が短いし、男性との接触が少なかった箱入り娘だからけっこう本気で悩んでたのよ」

「本気というのは……俺と真向勝負をしたいと?」

「ち~が~う! 決闘とかじゃなくて男女の話、恋愛の話! 責任取るとか言ったら誤解されるに決まってるでしょ! ったく……貴方って異性と話したりしないの? そうやって天然で垂らしこんでると、いつか刺されるわよ」


 それは望むところだ。不意打ちで死ぬ輩なんぞ、所詮はその程度ということ。俺は他とは違うという事実を証明してやろうじゃないか。


「分かった」

「ホントに分かった?」

「ああ。俺は逃げも隠れもしないエスペル先生をいつでも出迎えると誓おう」

「だ~か~ら、紛らわしい言い回しをするなって言ってるのよーーーーーーっ!」



★★★★★



「やれやれ、ようやく解放されたか」


 初日は顔合わせだけだというのに、教師からの説教で貴重な時間を浪費してしまった(←お前、また説教されるぞ)。

 しかも途中からエスペルまで加わっての波状攻撃ときた。これなら暴漢を100人単位で相手にしていた方がマシというものだ。


「あ、あの……」

「ん? キミたちは……」


 職員室を出たところで3人の女生徒に囲まれた。真ん中の獣人娘はチラチラと俺の顔を見たり逸らしたりと落ち着かない様子で、両脇の子たちは獣人娘の耳元で必死に何かを呟いている。

 どういう状況だこれは? 俺としてはさっさと邸に帰り、教師から受けた精神的苦痛を癒したいところなのだが(←いやお前、マジで○されるぞ……)


「すまないが急いでいるんだ。用がないなら――」

「あ~、ゴメンゴメン、用が無いわけじゃないんだよ? 今この子が勇気を出して伝えようとしているところなの。ほらリリカ、こういうのは自分で伝えないと」

「無理無理無理無理ぜったい無理~~~! ミラノの違ってそんなハッキリ喋れないもの!」

「それだけ喋れれば充分ですよ。ほら勇気を出して、チャンスは自らの手で掴み取らなきゃです」

「ミィフィー……」


 勇気を出すだと? フッ、読めたぞ? 俺を油断させて不意打ちで倒そうというのだな?(←いや、だからお前……)

 いいだろう、俺からは手出しをしない。隙を見つけて打ち込んでくるがいい。


「あの!」

「む?」


 おお、ついに視線を逸らさず俺を見据えたか。なかなかにして良い目をしている。すでに玉砕を覚悟しているかのような目だ。(←だろうな)


「貴方が新入生のゴトーくん……だよね? 私……リリカって言いまふ。――あ……」


 噛んだことに気付き赤面している。失敗に(もだ)えている姿はとても可愛らしい。が、この程度では俺を油断させることなどできん。毅然とした態度ではね除けて見せよう。


「些細な失敗は誰にでもある。俺は気にしないぞ。それより続きを聞かせてくれないか?」

「うん!」


 リリカと呼ばれていた少女の顔がパァっと明るくなる。上出来だ、仕切り直しの流れは完璧だと言えるだろう(←うん、完璧に落ちたよ)。


「今朝ね、ゴトーくんを見てから凄く胸が締め付けられるの。とても落ち着かないというか、もっと見ていたいとか思ったり。立ち尽くしていたらゴトーくんの姿が見えなくなって、それから寂しいというか切ない感じがしてきて……」


 う~ん、これは……




 知らず知らずのうちに俺の殺気を浴びたことによる後遺症か?(←違う!) だとしたら俺が責任を持って手当てをせねば。(←そういうとこやぞ)


「だからゴトーくん。ゴトーくんさえ良ければこの私と――」

「居たわ、あそこよ!」


 いったいなんだ? 廊下の角から女生徒の集団が現れたぞ?


「アレがゴトーくん? マジでイケメンじゃん!」

「ホントだ、ちょ~イケメン!」

「よっし、ターゲットは見つけたし、ここからは実力勝負よ!」

「「「ゴトーく~~~ん、私たちと遊びましょ~~~!」」」


 クッ、まさかの敵襲か! 学園生活初日から大歓迎されるとは。(←文字だけは間違っていないな)


「ここは危険だ、早く別の場所へ」

「そ、それなら私についてきて!」


 リリカに手を引かれて学園から脱出した。両脇にいた女生徒2人も一緒だ。学園を出てから転移ゲートを潜り、王都中心部に来たところで後ろを振り返る。


「追手は巻いたようだ」

「うん。これで2人きり……だね」


 いや、キミの友人も一緒だが――という野暮なことは言わない。何人でも相手をしよう。


「邪魔者はいない。3人一緒に相手をしようじゃないか」

「……え」

「「う、嘘……」」


 俺が宣言するとリリカは露骨に嫌な顔を見せ、他2人は途端に顔を真っ赤に。そしてミラノと呼ばれていた活発そうな女生徒が、頬を搔きながら……


「えっと……ゴトーくんって、そういう趣味? ハーレム願望とか有ったりする? 真面目そうに見えたんだけれど……」


 ハーレムか。前世では多数を相手取ることの方が多かった。そういう意味でなら……


「否定はしない」(←後悔するぞお前)

「やっぱりぃぃぃ!」

「「…………」」


 何故かドン引きされているような……いや、単に怖じ気付いただけか。


「そ、そりゃあイケメンだもんね、うん。気持ちは分からないでもないよ、うん。だけどね、ちょ~っとばかし過激すぎない?」

「そうか? これまでの人生では、当たり前のことだったんだが」

「「「当たり前!?」」」

「最大規模では一度に30を越す人数だったしな」

「「「一度に30人越え!?」」」

「中にはしつこい輩もいてな、朝昼晩と立て続けに挑まれた時はさすがに死にかけたが」

「「「テクノブレイク未遂!?」」」


 やはりドン引かれてるな。30越えは稀だったし、引き合いに出すべきではなかったか。


「そうなん……だね。ゴトーくんは私たちとは違う世界で生きてるんだね。ハハ、ハハハハ……」

「「リリカ……」」


 急にしんみりしてしまった。さっきまでの勢いが皆無となり、とても一戦交えるという雰囲気ではない。


「元気だしなよリリカ。そのうちきっと良い出会いがあるから」

「そうですよリリカさん。ゴトーくんはちょっと残念な人だったですけど、きっとまた別の出会いが……」

「ううん、いいの。だって私は――」




「それでもゴトーくんに引かれてるんだから!」

「「な、なんだって~~~!?」」


 しんみりした雰囲気が一転し、リリカの目に闘志が宿った。うむ、その意気や良し!(←良くない!)


「覚悟は決めたよゴトーくん。私、貴方に相応しい女になる! だから私に何でも言って!」

「分かった。ではせっかくだし冒険者ギルドを使わせてもらおう。確か近くだったはずだ」

「「「ま、まさかの公開プレイ!?」」」


 そんなに驚くことか?


「腕試しをしたいんだろう? ならば地下の訓練施設が最適だ。見たところリリカの武器は剣のようだし、真剣ならケガをさせてしまいかねない。俺の武術は相手の武器を利用したりもするからな。その点ギルドの武器は刃を潰していると聞いた。より安全だろう?」

「「「あ――」」」




「「「――あ~~~、はい……」」」

「そうと決まれば冒険者ギルドに急ごう。昼飯時は混みそうだ」


 リリカを含む3人は妙に大げさに納得し、俺の後をついてくる。そしてヒソヒソと話し始めた。


「あ~もうビックリしたぁ。というか全然違う話しじゃない。誰よハーレム野郎とか言い出したやつ!」

「それ言ったのミラノでしょ! もう少しで恥ずかしい真似するところだったんだからね!」

「何よ、あたしのせいだって言うの? そんなのリリカの勘違いじゃない!」

「勘違いはアンタもよミラノ!」

「も~止めなよ2人とも~」


 はて、何か勘違いさせるような要素でもあっただろうか。(←有りすぎて困る)


キャラクター紹介


ゴトー・ラーカスター

:メグミによって召喚された元日本人で、見た目は中等部の少年に見える。人間ではあるもののメグミの眷属として誕生したため、普通の人間とは比較にならないほどの身体能力を持ち合わせている。

 前世では優れた格闘家であり、暗殺に近い襲撃を何度も撃退するほどの実力者なのだが、異性と関わることが極端に少なかったのが影響し、女性とのコミュニケーションにかなりの難あり。無駄にイケメンのため、これからもトラブルは必須だろう。


エスペル

:クレセント学園のCクラスの担任で、20歳のハーフエルフ。入学前の振り分け試験では試験官を任されていた。天然発言の多いゴトーに出会った初日から振り回される不幸な人物でもある。

 ゴトーと同様に異性との接触が少なかったため、異性の発言を真に受けやすい性格。


リリカ

:クレセント学園Cクラスの女生徒で、14歳の獣人少女。アウトドア派で活発な性格だが、人見知りが激しいという一面も。

 学園生活の初日にゴトーに一目惚れし、以後何かと絡んでくるようになった。


ミラノ

:クレセント学園Cクラスの女生徒で、14歳の人間少女。リリカとミィフィーの3人でいつも仲良くつるんでいる。ハッキリと物を言う性格のため、リリカと喧嘩になるこもしばしば。


ミィフィー

:クレセント学園Cクラスの女生徒で、14歳のハーフエルフ。リリカやミラノの陰に隠れて印象が薄くなりがち。


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