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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
最終章:無秩序のカタストロフ
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カタストロフ

「行きましょうルシフェル様。()()がお呼びのようです」

「ちょ、待たんかゴトー!」


 そう言って夜空に羽ばたくゴトー(←正確には大ジャンプね)。スタンピードも気にはなるがフェイだけでも事足りると判断し、グレシーを連れてゴトーに続く。


「お前、場所が分かるのか?」

「はい。あの妙な声が聴こえてから不可解なノイズが続いておりまして。ノイズを辿れば発信源まで行けるはずです」

「妙なノイズか」


 言われてみれば偏頭痛のような感覚が残っておるな。私は痛みを打ち消せるが生身のゴトーはもっと強く感じてるはず。というかこれ、静電気並の強い衝撃だが大丈夫か? いや、ドMのゴトーなら丁度よいのかもしれんな。


「そろそろ森からでるよ。メグちゃん、この先はグロスエレム砂漠だから風邪ひかないでね」

「うむ。夜の砂漠は冷えるからな。()()()()()に焚き火で暖を取るのが理想――って待てぃ。あそこに集まっておるのは……」


 魔王カタストロフに脅かされてる一方で、地上ではキャンプファイヤーが盛り上がりを見せていた。いやキャンプファイヤーは良いのだ、問題は集まっている連中だ。

 気になった私はゴトーの足を引っ張り、強引に地上へと降り立った――というか埋まった。



 ズボッ!



「わぁお! 空から何か降ってきた!? これも天からの恵み!」


 嬉しそうに私を砂から引き上げる白いローブ姿の女。こ奴はペルニクス王国の武術大会で私に接触してきたグロスエレム教の教祖――メンヒルミュラーだ。


「そうだ()()()だ。久しいなメンヒルミュラーよ」

「あれ? な~んだ()()()かぁ」

「んだとクソボケぇ! 誰がハズレだ誰が! この魔王ルシフェルを侮辱するのは万死に値するぞ!」

「ちょっとちょっとぉ~、冗談なんだし~、そんなに怒んないでよ~」

「い~や許さん! そのついでに言うと、その間延びした喋り方も気に食わん! 緊張感の欠片もありゃしない!」


 後半は難癖になってしまったが言ってることは間違ってはいない。こっちの苦労を少しは分けてやりたいくらいだ。


「これは元からだって~。それよりメグミっち~、ラヴィリンスを倒してくれてありがとね~♪」

「倒したのは私ではないがな」

「でもでもぉ、宇宙の人たちが転移してきたのはメグミっちの影響でしょ~? お陰様でグロスエレム教国の再興が見えてきたって感じ~?」


 宇宙の人たち……ああ、ラヴィリンスのダンジョン砲により艦星が爆破されそうになった時だな。リヴァイアサンが機転を利かせて民間人をイグリーシアへ転移させたのだ。


「そうか、どこへ行ったか気にはなっていたが(←今の今まで忘れてただろ)、まさかお前のところに転移していたとはな」

「うん♪ でね~、こっちの事情を話したら同情してくれちゃってぇ、グロスエレムの国民になるって言ってくれたんだ~」


 そりゃそうだ。どこかに属さなければ難民になるだけ。それなら多少の変化があったとしても国民でいられるほうが良い。


「今までは地下生活だったけれどね~、こらからは地上の晴れやかな生活~? 人手は有るしぃ、建築とか頑張っちゃうぞ~って感じぃ♪」

「ンクンク――プハァ!」

「――ってグレシー、一緒になって酒を飲むんじゃない!」


 まったく、とんだ道草を食ってしまった。


「かぁぁ美味ぇぇぇ! 夜空を見上げながらの酒ってのも美味いもんだな!」

「お~ぅ、良い飲みっぷりだねぇ、口裂けのお姉さん! まだまだ有るしぃ、ジャンジャンらいっちゃお~ぅ! ほらぁ、そこの紳士なお爺様も~」

「ありがたく頂戴しておりますぞ」

「ングングング――」(←無心で飲んでるウワベくん)


 あっちも楽しんでるようで、三人の側でトワが頭を抱えている。


「はぁ、揃いも揃ってお酒の誘惑に負けるなんて。――こうなったらメグミ、わたくしたちだけでもさっさと参りますわよ」

「そうするか。ゴトーよ――」

「…………」



 ダッ!



「――だ~か~らゴトー、勝手に行くなっちゅうに!」


 あの声が聴こえてからというもの、ゴトーが妙にソワソワしている気がする。

 まさか声の主に心当たりが? いや、ゴトーも私と同じ転生者、イグリーシアに知人が居るとは思えん。


「しかしゴトーめ、どこに向かっておる」

「もちろん魔王カタストロフの所でしょう。わたくしにも妙なノイズが走ってますし、ゴトーも同じなのでしょう?」

「うむ。しかしグレシーやトワの眷属たちは感知しておらんようだ」

「つまり、転生者だけが感知できる。そう言いたいのですね?」

「そうだ」


 それが何を意味するかまでは分からんがな。


「だが転生者だけではないらしいぞ?」

「どういう意味だ()()()――」



 ん? レッド!?



「――ちょっと待て。レッドよ、なぜ私の隣を飛んでおる?」

「追ってきたからだ」

「おう、そうだな、追ってきたからここに居るんだな! んなこたぁ分かっとるわぃ! お前はザルキールに残ってスタンピードを対処しておっただろう!?」

「だがザルキールには奇妙な幽霊が多数いる。それも戦闘が得意な連中がな。加えて戦闘メイドのユラに魔王フロウスまで居るのだ。いらぬ心配だろう」

「む……確かに」


 そう考えれば過剰戦力か。これから魔王カタストロフと一戦交えるのだ、グレシーよりは役に立つだろう(←グレシー哀れ)。

 魔剣アゴレント? ああ、奴はザルキールに置いてきた。此度の戦いにはついて来れぬからな(←更に哀れ)。


「それはそうとレッドよ、お前にもノイズが走っておるのか?」

「そうだ。どうも我が(まと)っている兵器が共鳴しているようでな。呼んでいるのなら向かうしかあるまい」

「そうか」




「いやいや、騙されんぞ? その兵器とやらは私が壊したはずだ」

「確かに壊れた。だが()()()()


 おい、サラッとおかしな事を言い始めたぞ?


「死にかけてまで壊したアレが復活したとか冗談であろう? ……冗談だよな?」

「残念ながら冗談ではない。これを見れば信じるか?」


 シャキン!


「ぬおっ!? これは紛れもなく古代宇宙の最終兵器!」

「そう、ファイナルガルツギアだ」


 待て待て、ちょいと頭痛がしてきたぞ。あの時の戦いは何だったのかってくらいに今まさに絶望を感じている……。


「まさか本当に復活したというのか。またリベンジマッチをしなきゃならんとかマジで悪夢なんだが?」

「ああ、そんなことか。それなら心配無用だ。この復活は魔王カタストロフに共鳴しているに過ぎん。奴を倒せば消えるだろう」

「本当か?」




「多分……」

「おい……」


 だが復活したのなら話は早い。魔王カタストロフの相手はレッドがする事になるからな。まぁ消えなかったらその時に考えればよかろう。


『メグミさん、聴こえる!? 大至急お願いしたいのよ!』


 この声はリーリスか。もしかしなくてもカタストロフ関連だろうな。


『取り込み中だが一応は聞こう』

『だったらこっちを優先してちょうだい。プラーガ帝国のギアソルジャーが各地で暴走しているらしいの!』

『暴走だと? ギアソルジャーとは半分機械化した人間や獣人たちであろう』

『そうなんだけれど、何かに洗脳されたように呼び掛けにも応じないし、みんな揃って西の方に移動しているみたいなの。他の国に入り込む前に止めたいのよ』


 プラーガ帝国の西と言えばアレクシス王国になる。だがラヴィエルが死んだというのにアレクシス王国を狙うか?

 答えは否。ならばアレクシス王国とは別の場所に向かってると考えられる。

 つまり……


『あ~分かった。多分これアイリーンに向かってるんだな。ならば阻止するしかあるまい』

『じゃあ引き受けてくれるのね。あたしもプラーガに向かうから、メグミさんの方もお願いするわ』

『うむ』


 魔王カタストロフめ、アイリーンを仮想敵国として動いておるな。だが私がいる限り思い通りにはさせん。


「メグミ、今の話は……」

「トワも傍受していたか。聞いての通りだ、砂漠で酒盛りしている連中をアイリーンに戻すぞ」


 急げばギアソルジャーより先に着くだろうと予測し、グレシーに念話を送ることに。


『グレシーよ、酒盛りは中止だ。今すぐアイリーンに向かい、ギアソルジャーの侵入を阻止するのだ』

『ほえぇ? グレシーちゃん、まだ飲み足りな~い♪』


 クゥゥゥ! こんな時にヘベレケになりおってからに!


「メグミ、我に良い考えがある。我の脳裏とグレイシーヌの脳裏を共有させるのだ」

「それって意味あるのか?」

「恐らくはな。まぁやってみろ。トワの眷属たちも同じく頼む」

「そこまで言うなら……」

「承知しましたわ」




『『『アガガガガガガガ!』』』


 なんだこれ? 何が起こっておる?


『ちょ、止めてメグちゃん! 変なノイズで頭が割れそう!』

『だぁぁぁ、いてぇぇぇぇぇぇ!』

『ト、トワ様お許しぉぉぉぉぉぉ!』

『ぐおぉぉぉぉぉぉ!? 今すぐアイリーンに戻りますぞぉぉぉぉぉぉ!』


 これ全部ノイズのせいか? だとしたらゴトーって変態なんじゃ……(←だからドMだと言ってるだろう)


「ルシフェル様、俺の顔に何か?」

「大した事じゃない。お前に痛覚は無いのかと思ってな」

「いえ、堪えられないほどの痛みではありませんので。それにノイズとも後少しの付き合いです。あの山の中に魔王カタストロフが居るようですので」

「ようやくか」


 待っていろ魔王カタストロフ。貴様を倒して一連の騒動に終止符を打ってくれよう。



★★★★★



 その頃、天界でも騒動が続いていた。


「クリューネ戻りました!」


 天界に着いた途端、奇妙な空間を感知した。急いで現場に向かうと異空間と格闘している神たちが既にいて、神妙な面持ちのラフィーネお姉さまがこちらに振り向く。


「戻りましたかクリューネ。見ての通り、何度塞いでもすぐに開こうとするのです。まるで終わりが見えません」


 ラフィーネお姉さまの近くにいる神たちも、皆一様に疲れきった顔をしている。きっと何度も塞いだんだわ。


「う~ん、いっそ広がるのを見届けるとかは?」

「ゲートの大きさによって消耗する魔力が違います。当然大きい方が消耗も激しい。そうなったらクリューネ、貴女が責任を持って塞いでくれるのですか?」

「遠慮しときます……」


 休暇中止の上に重労働とか冗談じゃないわ。今も激しい魔力が飛び散ってるし、触れたらどこか覚えのある魔力だし――




「あれ? この魔力、()()()の魔力じゃない!」

「知っているのですかクリューネ? ならばその者も魔王カタストロフに加担している可能性があります」


 そうラフィーネお姉さまは言うけれど、加担しているはずはない。だってアイツは……



★★★★★



 同時刻、アイリーンのコアルームではアンジェラが奮闘していた。


「はぁはぁ……。な、何故だ、何故壊れんのだ……」


 スタンピードを止めるためコアルームまで来たは良い。良いが、ここからが問題なのだ。何故ならこのダンジョンコア、妾の全力を持ってしても一向に破壊できんのだ。


「効いてないわけではない。殴る度にヒビが入っているのは見える。しかし何故だか秒でコアが復元されるのだ」


 まるでコアの向こう側で何者かが必死で修復しているかのようだ。しかも妾の攻撃から秒で復元とか、もはや神レベルと言ってよいだろう。

 まさかとは思うが、神がスタンピードを引き起こしているのではあるまいな? いや考え過ぎか。神は滅多なことで下界に関わろうとはしない。


「いかんな、弱気になると別のものに責任転嫁したくなる」


 今も街では戦闘が続いておるのだ。守護神としてスタンピードを止めて見せねば!


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