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中二病JK,異世界転生で更に悪化する!  作者: 北のシロクマ
最終章:無秩序のカタストロフ
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もう1つの守護神

 ラヴィリンスの放ったダンジョン砲の回避に成功し、ダンノーラ帝国へと転移した我々を待っていたのは大役職(リードロール)のフォーチュン――ルミナだった。彼女が言うには魔王カタストロフの覚醒が迫っているらしいのだが……


「魔王カタストロフ。魔王ダイダロスと同等の脅威と言われており、世界を破滅に導く可能性すらある恐ろしい存在。かつてのダイダロス――レッド様と戦ったお二人なら分かるでしょう? 放置するのは危険すぎると」


 真剣なルミナの眼差しで、ペルニクス王国での武術大会を思い出す。不意打ちとは言え私とトワが同時に戦闘不能へと追い込んだのは魔王ダイダロスことレッドであった。あのような失態は二度と御免だ。


「しかし面倒な事だ。ラヴィリンスを何とかせねばならぬというのに魔王カタストロフまでもか」

「いえ、ラヴィリンスは問題ではありません。寧ろラヴィリンスが撃退してくれるのなら好都合とも言えます」

「撃退? 何をだ?」

「魔王ベルフェーヌです」


 あの獣人魔王か……。記憶の片隅に置いたはずが勝手に出てきよってかに。


「魔王カタストロフの覚醒はラヴィエルとラヴィリンスが倒れる事が条件となっているのです。ラヴィエルが倒れた今、ラヴィリンスの生存が今後を左右するでしょう」

「しかしなぁ……」


 これまで散々敵対してきたのだ。ついさっきは艦星ごと消し去ろうとしてきたしな。今さら生かしておく気は起きないのだが。


「お……お、おおおお!? ななな、何という事だぁぁぁぁぁぁ!」


 ユラが担いでいた男が突然騒ぎだした。


「喧しい奴め。ユラよ、ソイツは誰なのだ?」

「……ラヴィリンス派の首領。この男を捕らえておけば、一派の忍びは大人しくなる」


 肝心の本人が騒がしいのだがな。しかし首領の口から出た言葉に他の忍びたちは愕然(がくぜん)とする。


「ラ、ラヴィリンス様が……お亡くなりなられてしまった!」

「「「むおぉ!?」」」


 懐から取り出した丸い玉を周囲に見せつける首領。その丸い玉はヒビが入った辺りから黒く濁っており、見るからに不吉であると訴えていた。恐らくこの玉を使ってラヴィリンスと交信していたのだろうな。使用できなくなったのは本人が消滅した証……と。


「やはりこうなりましたか……」

「やったのはベルフェーヌか?」

「はい。名のある勇者や魔王を倒すことで能力を高めてきた魔王ベルフェーヌは、最後の仕上げとしてラヴィリンスを倒すことを画策したのです。そしてラヴィリンスが倒れた今、魔王ベルフェーヌは貴女たちにも匹敵する力を獲たことでしょう」


 それは面白い。今まで散々逃げ回っていたツケを是が非でも払ってもらわねば。


「ベルフェーヌはどこにいる?」

「貴女を捜しにここまで――と言いたいところですけれど、ラヴィリンスの守護神がベルフェーヌを見定めるはずです」

「守護神とな! それは宇宙にいた守護神と同レベルなのか!?」

「それは分かりませんが……と、とにかく急ぎアイリーン地上軍のダンジョンへ!」


 守護神という魅惑のフレーズに引かれ、直ぐにダンノーラ帝国を発つ。ザルキールにはレッドたちを残したし、問題はあるまい。

 ……ああ、他国の街を残したままで大丈夫なのかって? んなもん大丈夫に決まってるだろう(←大丈夫じゃねえよ)。寧ろ落ち着いたら賑わいを見せるんじゃないか?(←それは希望的憶測)



★★★★★



「これはエグいな……」


 地上軍のダンジョンに入ると、自分でも驚くくらい自然に言葉が出てしまった。何故ならダンジョンの至るところに死体が転がっており、いずれも致命傷となる無惨な斬り傷を負っているのだ。中には魔物も混ざっているな。


「壁にまで鋭い傷痕が。まるで殺人鬼が湧いて出たかのようですわ」

「ああ、賑わいのある街に突如として起こった連続殺人。これは無差別なのか、それとも……」

「何言ってんだウワベ?」

「今ミステリー小説にハマっておりまして、これがなかなか面白いのですよ。トリックの仕掛け方が斬新な他、人と人との感情が複雑に絡み合い、これが新たなミステリーを生み出すという感じに――」

「世間から見ると我々眷属の方がよっぽどミステリーですぞ」

「ほぅ、上手いですねハント殿。座布団一枚!」

「いつから笑○はミステリー小説になったのですか……」


 ……ウワベのアホは置いとくとして、死体が吸収されてないところを見るとラヴィリンスが死んだのは間違いないだろう。

 しかしだ、先ほどあったルミナの話から1つの疑問が浮かび上がる。


「ルミナよ、宇宙軍同様ここにも守護神がいると言ったな? ならば何故ラヴィリンスを見殺しにしたのだ?」

「守護神が身限ったからです。今のアイリーンは護る価値がないと」


 そこはリヴァイアサンと同じか。奴もラヴィエルを護っていたわけじゃなかったしな。


「ラヴィリンスは護らない、しかしアイリーンを脅かすのは敵だと。そんなところか」

「当たらずしも遠からず……でしょうか。聞いた話ですが、地上軍の守護神は大雑把な性格で細かいことは気にしない御方だそうです。身限ってからはアイリーンを離れておりましたし、戻って来たのは本能的に戦いを求めた結果なのでしょう。戦闘狂という噂もあったくらいですし」


 戦闘狂か。ゴトーも似たようなところがあるが……


「キャッ!? ここにも血痕が! ゴトーくん、あたしこわ~~~い♪」ダキッ!

「フフ、戦闘狂とは面白い。是非とも手合わせ願いたいものだ」

「また戦いのこと考えてる~? グレイシーヌつまんな~い」


 戦う気満々か。ひょっとしたら私よりも気が合うかもしれん。



 ゴトッ……



「む? そこの陰に誰かいるのか? いるのなら大人しく出て来るがいい。出て来ないのなら――」

「ま……待って……ください……」

「あ、その声は――」


 聞き覚えのある声と共にヨロヨロと姿を現した男を見て、完全に思い出した。


「お前はツェンレン!」


 魔王ダイダロスとの決着の後、魔王カタストロフを捜して旅立った勇者の1人だ。ツェンレンの後ろには血塗れになったククルルもいる。


「お前たち、どうしてここに?」

「魔王ベルフェーヌと戦うためです。奴は手当たり次第に勇者や魔王を襲うようになり、倒した相手の魔力を吸収することで自身の強化を行ってきました。その傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な振るまいを見て、奴こそが未来の魔王カタストロフなのではと疑いをもったのです。そこで同士を募って挑んだのですが……」

「面目ない、返り討ちに合ったんだぞ……」


 詳しく聞けば、他の仲間は全て殺されてしまい、2人だけが辛うじて生き残ったようだ。


「ここにはトラップも有りますからね、何とか回避して傷が癒えるのを待っていたんですよ。しかし皆様と再会できたのは幸運です。どうか共にベルフェーヌを――」



 ゴゴゴゴ……



 そうツェンレンが言いかけたところで、ダンジョンの奥から凄まじい魔力反応がジリジリと響いてきた。


「かなりの魔力だな。しかも2つだ」

「片方が魔王ベルフェーヌ、そしてもう片方は守護神ですわね」



 ドゴォォォンンンンンン!



「んお? 今の爆音はなんだ?」

「マヌケ面を晒さないでくださいまし。何者かがダンジョンを突き抜け、外へ飛び出したのですわ」

「誰がマヌケ面か!」


 しかしダンジョンの不壊属性を無視するかのような動き、ますますもって興味深い。


「奴らを追うぞ。来い、(しもべ)たちよ!」

「誰が僕ですか!」

「お気をつけて。わたくしはここでツェンレン様とククルル様の手当てをします」

「うむ、頼んだぞルミナ」


 負傷した2人を任せて急ぎダンジョンを脱出すると、沈みゆく夕日を背景に上空でぶつかり合う2つの影。互いに凄まじい魔力を放っており、どちらと戦おうか迷う程だ。

 いや、いっそのこと乱闘するか? その方が楽しいかもしれん(←本来の目的を忘れているもよう)。



 ズッッッドォォォォォォォォォォォォン!



「おっと危ない。戦いの最中に岩の塊を投げつけてくる程の余裕があるのか」

「岩ではなく隕石ですわ。お陰で辺りが火の海に」


 草木が燃え盛る中、隕石を押し退けるようにして這い出てきたのはアイツ。そう、ここで会ったが何とやらの魔王ベルフェーヌだ。


「クッ……。ここまで強化したのにまだ上がいるというのか!」


 悔しげに唇を噛むベルフェーヌ。だがこちらにも何度も取り逃がしたという後悔の念がある。


「良いところで会ったなベルフェーヌ。今度こそ息の根を止めてくれよう」

「何ぃ!? 誰だか知らないが邪魔をするなら只じゃおか――ル、ルシフェル!? なぜここに!」

「貴様がラヴィリンスを倒したせいで面倒なことになったのだ。その責任を果たしてもらいに来たのだよ」

「チッ、こんな時に……」



 シュ――ドゴォォォン!



 ベルフェーヌとの会話中に小さめの隕石が投げ込まれた。上手く避けたから良いものの、小さくても最強クラスの魔法。牽制(けんせい)で使われるものじゃない。


「これこれ、(わらわ)を無視して話を進めるでないぞ。まったく、近頃の若者は礼儀というものがなっとらん」

「初対面でいきなり攻撃を仕掛けてくる輩が礼儀を語るのか? まったく、これだから年寄りは……」

「……と、年寄りだと?」

「寧ろ老害と言うべきですわね。こんな輩がいるイグリーシアを残念に思いますわ」

「お、おおお、おのれぇ……この美しき容姿を間近で見てからほざくがいい!」


 こちらを見下ろしていたもう1つの影がプンスカと怒りつつ降臨。かくして見た目は超絶美人な二十代で、長く伸びた紫の髪を美しく(なび)かせているのもポイントが高い。これだけでも羨ましいのに、それを更に上乗せしているお色気巨乳バディ。青少年が夢見る美人教師ってのはこんな感じだろうと思わせてくれる。


「すまんかった。ぶっちゃけ美人です……」

「フン、分かればよい」

「まぁ発育不良のメグミならそうなりますわ。けれどわたくしはまだまだ成長しますもの、いずれ貴女を超えて見せますわよ」

「ちょいとムカつくが、その意気や良し。せいぜい頑張るがいい」


 あれ? 思ってたよりかはフレンドリーな気がする。


「お前、ラヴィリンスの守護神で合っているのだよな? まさかメテオ撃ち込んでおいて無関係な通りすがりとは言うまい?」

「フッ、言うわけなかろう。さっきのアレはほんの挨拶代わりだ。あの程度で死ぬようならそれまで。妾の相手には程遠いわぃ」


 アレが挨拶代わりか。とんだ守護神がいたものだ。さすがのトワも眉間を押さえて非難めいた台詞をぶつける。


「……貴女ねぇ、もしもわたくしたちが非戦闘員の接触者だったらどうするつもりだったのです?」

「うん? まぁ……ハッハッハッハッ!」


 笑って誤魔化したぞコイツ。


「そう難しく考えるな。結果としてお前たちは戦える。ここに来たということは妾とそこの小娘との戦闘を止めにきた――もしくは加勢にきた、そうであろう?」

「微妙に違うな。私が止めるのはそこの魔王ベルフェーヌだ。お前はどうでもいい」

「その通りですわ。わたくしたちは――」

「ええぃ、ゴチャゴチャとうるさい!」



 ドォッ!



 感情が昂るあまり強烈な波動と魔力が飛び散る。この反応は間違いなくリヴァイアサンと同等クラス。それが縛りのないフィールドでの戦闘だ、リヴァイアサンの時より遥かに厄介となろう。


「これ以上語るというのなら拳で語れ! 妾にとって守護神の勤めは過去のこと。もう遠慮などせぬ。妾はバハムートのアンジェラ、全員まとめてかかってこい!」


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― 新着の感想 ―
やはりアンジェラか! リヴァイアサンのリヴァイが出たのならその対として出るのは当然か?
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