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第94話 追跡

「リリス、無事か?!」

「セイヤ様、私はなんともありません。ですが、ベルさんが連れ攫われてしまいました」


 リリスには怪我などないようだ。

 チハルに迎えに来てもらった俺は、ハルクに戻ってきていた。


「それで、どういう状況なんだ。警察なりには連絡したのか」


「それがですね……」

「すみませんが通報するのは、待ってください!」

 誰だ、この眼鏡っ娘は?


「えーと。どちら様?」

「私は、ベルちゃんたちが所属している芸能事務所の社長の娘で、アリサといいます」

「芸能事務所の社長の娘さんがなぜここに?」


「それは、ベルちゃんを追ってきたんですけど……」

「アリサちゃんは、ベルさんの追っかけをやっていたらしいのですが、ベルさんが、他のメンバーから虐められていると誤解して、お父さんに頼んで、他のメンバーから引き離したうえで、ソロデビューさせたらしいんです」


「虐められていたというのは誤解なのか?」

「ベルさんが私にそう言いましたから、間違いありません」


「私がもっとちゃんとベルちゃんの話を聞いていれば、こんなことにならなかったんです」


「それで、元メンバーの人たちは、アリサちゃんが無理矢理ベルさんを連れ去ったと誤解していて、アリサちゃんと口論の末、ベルさんを連れて逃げ去ってしまったんです」


「お願いします。ベルちゃんたちを追いかけて、捕まえてください。大事にはしたくないので、通報はしたくないんです」


「捕まえてどうするんだ?」

「今度はちゃんと相手の話も聞いて、話し合います」


「セイヤ様、私からもお願いします」


 リリスから頼まれたら断れないよな。だが、今から追跡できるのか。


「デルタ、相手の位置はわかるのか?」

『航路上を航行していますので、位置は把握しています』

「そうか、なら、発進して追跡してくれ」

『了解しました。ただちに発進します』


「ありがとうございます」

「セイヤ様、我が儘言ってすみません」

「これくらい構わないさ」


「セイヤは、相変わらずお人好しね」

「セイヤ様は、慈悲深いお方ですから」

 ステファと聖女が何やら言っているが、気にしない。


 普通なら、追跡するにも魔力が必要で、お金がかかるが、俺の場合タダだからな。

 そんなわけで、気楽に引き受けられる。


 二時間もすると相手の船に追いついた。

 追いついたはいいが、これからどうしたものか。

「とりあえず、相手の船に通信を送ってみるか。チハル、よろしく」

「わかった、やってみる」

 チハルが通信チャンネルを繋ごうとするが、うまくいかないようだ。


「通信を拒否されている」

「聞く耳持たん、てか。困ったな……」

「強制停止させるのが簡単」

「次元魔導砲か。確かにそれなら簡単だろうが、船が壊れないか?」


「ベルちゃんが乗ってるのに、攻撃なんてしたらダメです!」

「だそうだぞ」


「なら、魔力が切れるまで追跡を続ける」


 こっちは、俺がいる限り、無補給でどこまでもいけるからな。いつかは相手が魔力切れを起こすだろうが、それがいつになることやら。

 三日後には第一王女を連れたプロキオンに向かわなければならない。

「そんなに悠長にはやっていられないな」


「なら、威嚇攻撃してみる。運が良ければ相手が白旗をあげる」

「うーむ。威嚇攻撃なら構わないか?」

 アリサに確認する。


「絶対にベルちゃんには当てないでね」

「ということで、許可が出たぞ。チハル、威嚇攻撃用意」

「ビーム砲を射角十で発射する。発射準備完了」

「ビーム砲発射!」

「発射」


 ビーム砲の光線が相手の遥か上方を通過する。


 さて、これで止まってくれればいいが。

「なんか、やってることが海賊みたいだな……」


『目標が軌道を変更、航路外に出ます』

「キャプテン、敵船が逃げた」

 チハル、敵ではないからな。撃ち落としたりしないでくれよ。


「航路外に出て大丈夫なのか?」

「この辺はデブリが多い。危険」


「危険って、ベルちゃんは大丈夫なの」


「あっ!」

「どうした?」

「え? どうしたの」


「敵船が自爆した」

「え、爆発したのか?!」

「ベルちゃんーーー!」


「爆発はしていない。デブリにぶつかってシールドが吹っ飛んだだけ」

「シールドがなかったらやばいだろ?」

「次に何かにぶつかれば、大破する」


「まずいぞ、どうする?」

「ベルちゃんだけでも何とか助けて」


『目標が停止しました』

 相手も、そこまで無謀ではなかったようだ。


「よかった、逃げるのを諦めたようだ」

「よかった。よかったよ。ベルちゃんー」


「敵と通信チャンネルが繋がった」

「スクリーンに出してくれ」


 ブリッジのスクリーンに相手のコックピットが映し出される。


『降参だ。もう逃げないから撃たないでくれ』

「あれ、カイト?」


『何でセイヤがそこにいる?』

「それはこっちのセリフなんだが」


『いろいろあって、今は雇われ運転手。というか、そっちは女の子に囲まれて優雅だな』

「そっちだって、女の子ばかりだろう」


『あれは女の子とはいわない。別の生き物だ』

『カイト!誰が女の子じゃないですって』


『ほら、こんな感じだ』

「苦労してるんだな」


「セイヤ、世間話をしてる場合じゃないでしょ」

『あれ、ステファ。何でステファも一緒なんだ?』


「いろいろあったんだよ。いろいろな」

『お互い苦労しているということか』


「セイヤ様、それより、ベルさんのことを」

「ああ、そうだな。アリサがそちらと話し合いがしたいそうだ。こっちに来れるか」

『ハルクの格納庫ならそのまま入れる気がする』


「チハルどうだ」

「可能」


「大丈夫なようだから、格納庫に入ってくれ」

『助かるよ。さっきので、シールド発生装置がイカれたみたいでさ。シールドが復帰しないんだ』

「おいおい、むちゃしすぎだろ」

『だって、行けって……』


 カイトもなかなか大変なようだ。


 その後、カイトの船をハルクに受け入れ、アリサと元メンバーによる話し合いがもたれた。



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