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第86話 依頼遂行

 俺は、シリウス皇国の国王と会談するため、シリウス星に向かうことになった。

 折角シリウスに行くのだから、少しは仕事をしようと、ギルドの依頼を受け、アイドルのベル ダンディアさんを相乗りさせることにした。


「これがセイヤ様の船なのですか……。流石は王子様、おっきいですね」

「ハルク千型だけど、大きいのか?」


「あ、事務所の船はハルツだったものですから。……王族が乗る船と比べたら駄目ですよね」

「ハルツ?」

「皇国製の小型船。定員は六名」


 定員が六名か。ハルクは十二名だから、半分か。

 確か、ハルナがハルクより二回り小さいサイズで、ハルツはもっと小さいとなると、他にもハル〇があるのか。


「チハル、他にもハルが付く船があるのか」

「ある。ハルが付くのは個人向け。

 一番小さいのがハルヒで二人乗り、次にハルミ、ハルツ、ハルム、ハルナ、ハルクの順に大きくなる。

 ハルニとハルゴとハルヤは個人向けでも貨物船。ハルヤは移動販売にお勧め。

 その中でも、一番優秀なのは勿論、ハルク。

 フラグシップに相応しい優雅なフォルムに、気品のある内装。居住空間が広く貴賓を迎えるのにふさわしい船」

「そうなのか、わかった。ありがとう!」

 チハルのハルク自慢が始まってしまった。止めないといつまでも続きそうだ。


「そんな素晴らしい船に乗れるなんて、ラッキーだったわ」

 ベルさんがチハルの話を聞いて喜んでいる。


「それで、こちらが一緒に相乗りされる方々ですか」

「や、相乗り相手というわけではなくて……。いや、ステファは相乗りなのか?」

「ちょっとセイヤ、水臭いこと言わないでよ。友人でしょ」

「ああ、そうだったな。友人のステファと、聖女のララサだ」


「ベル ダンディアといいます。シリウスまでご一緒させていただきます」

「ステファニアよ。ステファでいいわ」

「セイヤ様の聖女のララサです」


「専属の聖女様がついていらっしゃるなんて、流石は王子様ですね。ところで、ステファさんはセイヤ様の友人ということですが、やはり身分が高いお方なのですか?」

「ステファは王女だ」


「お姫様なのですか! もしかして、セイヤ様の婚約者とかですか?」

「婚約者はリリスだぞ」

「リリスさんが、そうですか。あの、アリアさんは?」

「アリアはリリスの侍女だ」


「リリスさんの侍女ですか……。私、乗る船を間違えてしまったようです」

「いや、間違えていないぞ。大丈夫だ」


「だって、王族の関係者しか乗ってないじゃないですか!」

「そう言われればそうだが、気にする必要はない。気軽に話しかけて、仲良く寛いでくれ」

「そんな、無理です……」


「そんな畏まる必要はないです」

「そうそう。適当でいいのよ」

「そうですか……。そう言っていただけると助かります」


 ベルさんのことは、女性たちに任せよう。


「チハル、ブリッジに行くぞ」

「了解、キャプテン」


 俺はブリッジに行き、シリウス星に向けて船を発進させた。


 護衛のための船が二隻、前後についている。

 シリウス皇国軍の護衛艦で、Dクラスのカエデとモミジである。


 大きさは、Cクラスのハルクの半分程度、弾丸状の船体に長い羽根のような物が五つ、中央から斜め後ろに伸びている。

 よく見るロケットのイラストの羽根の部分を長くした感じだ。


 あの羽根は何の役目をしているのだろうか? レーダー? それとも武器か?


「チハル、あのカエデの羽根のような物は何かな?」

「あれは、シールド発生装置。広域にシールドを張れる」

 船のシールドは普通、自分を守るものだが、他の船をシールドで守ることができるということか。


「この船のシールドは、ちょっとの攻撃ではびくともしないんだろ。いらないんじゃないか?」

「シールドに閉じ込めることもできる」

「あ、そう。そういうことね……」

 守るのもそうだが、逃がさないのが主眼なんだな。


 信用ないな……。まあ、できれば逃げたいと考えているわけだから、当然か。


 シリウス星までは順調にいけば三日だ。


 その間、チハルはピザキャップの改造をしている。

 まだ、レース大会への参加を諦めていないようだ。


 リリスたちは、ベルさんも含めて遊戯室でカラオケ大会をやっているようだ。

 プロにカラオケで歌わせるのはどうなんだ、と思うが、ベルさんは随分と打ち解けたようなので、まあ、いいことにしよう。


 俺は魔導核に魔力を充填しつつ、カラオケをするリリスの様子をスクリーンに映してみている。

 別に盗撮じゃないぞ。監視カメラの映像だし。リリスにベルさんの映像を残してくれと言われて、ベルさんにも許可は取っている。


 しかし、リリスは歌もうまかったのだな。

 ベルさんと比べても遜色ない。

 痩せたことにより、誰が見ても可愛くなったし、これはアイドルデビューできるのではないだろうか。


 まあ、そんなことにはならないだろうが。リリスはずっと俺だけのアイドルでいてもらうとしよう。


 三日後、俺たちは無事にシリウス星に到着した。


 シリウスの衛星軌道上のステーションにハルクを着船させる。

 ベルさんとの契約はここまでだ。


「ありがとうございました。おかげで、楽しく快適な船旅が過ごせました」

「私達も楽しかったわよ」

「ここで、分かれてしまうのは寂しいです」

 リリスたちがベルさんとの別れを惜しんでいる。


「五日後のレース大会のミニライブ、私はでませんが、前のメンバーが歌いますから、ぜひ見に来てください。私も現場に行っていますから」

「そうなのですか。それはぜひ見に行きたいです。そこでまた会えるといいですね」

 これは、リリスを連れて行かなければならないようだ。

 そうなると。


「私も行きたい」

 こうなるな。


「チハルの場合、行きたいでなく。参加したいだろ」

「キャプテンは理解が早い」

「でも、今回は無理だぞ」

「何で」


「国王との会談がいつ入るかわからないし、今、目立ちすぎるのはまずい」

「……。仕方がない。今回は諦める」

「わるいな、チハル」


 レース大会など出たくないのが本音だが、今目立って、国王との会談に支障がでるのは避けたいのも本当だ。

 できるだけ目立たず、密かに国王と会談して、注目される前に、さっさとセレストに帰ろう。


「そうだ、依頼達成の報告をギルドにしておかないとな」


 俺は依頼を達成し、僅かではあるが報酬を受け取ることになった。



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