第8話 シェイク
寝て起きたら、腹が減ったので、俺は宇宙船にあるフードディスペンサーで、ハンバーガーとフライドポテト、それに、炭酸が十八禁だったので、バニラシェイクを頼んだ。
しばらく待つと、フードディスペンサーの、モニターの下の取り出し口にシェイクが三つ出てきた。
何故に三つ?
注文数を間違えたかと思ったが、出てきた物は仕方がない、三つとも取り出してその一つにストローを挿して口をつける。
行儀が悪いかもしれないが立ったままだ。王族としてはNGだが、ファストフードだからOKだろう。
うーん。久しぶりのバニラシェイク。ん? バニラシェイクだよな? しょっぱいぞ!
「何だこれ? バニラシェイクじゃないよな。冷たくないし、むしろ温かい。こっちのは冷たいな。こっちはどうだ、こっちは温かい」
俺は次に、冷たいシェイクを飲んでみた。
「ああ。これはバニラシェイクだ」
懐かしい味がする。
「となると、こっちはどんな味だ?」
俺は恐る恐るもう一つの温かいシェイクに口をつけた。
「何だろこれ? トマトっぽい感じもするし、リゾット? いや、コメの感じはしないな、むしろパン! パンのリゾット!」
俺は首を傾げながら、最初に飲んだシェイクを飲んでみる。
「こっちはイモっぽいな……」
俺はそこで思い当たってしまった。
「これは! ハンバーガーとフライドポテトのシェイクなのか!」
そうか。宇宙食なのだな。
なんとも残念な気持ちに支配される。
「はあー。捨てるわけにもいかないよな……」
宇宙船にどれだけ食料が積んであるかわからない。無駄にはできないだろう。
そうだ、それは確認しておかないとまずいな。
「おーい」
あ、名前も確認しておかないと。
『何か御用でしょうか』
「聞きそびれてたんだが、なんて呼べばいい?」
『本船なら、ハルク千型、プロトタイプ、デルタです』
「プロトタイプ? 試作機なのか」
『はい、試作機の四号機です。プロトタイプとしては最終型です』
何で試作機なんかがうちにあったんだ?
まさか、うちの祖先が、宇宙船の開発なんてしてないよな。
試作機ということで、安く買い叩いたのだろうか。
うちの祖先ならそれが濃厚かな。
「じゃあハルクかデルタかな」
『では、デルタでお願いします』
「わかった。それじゃあデルタ、この船には何日分の食料と水があるか教えてくれ」
『現時点では十日分です』
「ドックに着くまでか。ドックで食料を買えるかな」
『買えると思いますが、お金はあるのですか』
「しまった。金なんか全くないよ。第一、セレストのお金が使えるのかな」
『共通通貨のギャラクティ貨に交換が必要です」
共通通貨があるのか、ということはやはり沢山の星が宇宙に進出しているのだな。
「そうだよな。困ったな……」
『食料なら、フードディスペンサーでは駄目なのですか』
「これだって、素を買わなきゃ駄目だろ」
「いえ、フードディスペンサーは魔力から食品を合成しています』
「えっ、魔力が素なの?! それなら食料を買う必要はないんだ」
考えてみれば、魔法で水が出せるのだから、食べ物が出せても不思議ではないのか。
しかし、これが魔法で出来ていると思うと、ちょっと複雑だな。