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第72話 アダラ星

 アダラ星の衛星軌道に入った俺たちだったが、高速強襲艦のアカネと拿捕した帝国の軍艦は、そのままシリウス星に向かうことになった。

 俺たちは暫くアダラ星に滞在することになる。


「これからアダラ星に降りるわけだが、全員で降りてしまって大丈夫か?」

「下の受け入れは大丈夫だけど。留守番が必要かってこと?」


「船を空にしてしまうのは心配なんだが……」

「この星でなら大丈夫だと思うわよ」

『本船のことはお任せください』

「デルタがそういうなら心配ないか……。全員で降りることにしよう」


 俺たちはシャトルポッド二台にいつものように分乗し、指定された侯爵邸の庭に降り立つ。

 既に庭に出ていた侯爵が俺たちを出迎えてくれた。


「ステファニア王女殿下、お待ちしておりました」

「ファーレン侯爵、出迎えご苦労さま。こちらが、伝えておいたセイヤ様です」


「そうですか、こちらがセイヤ様ですか。私は、ゼストラAファーレン、アダラ星を任されております」

「セイヤSシリウスだ。それと、婚約者のリリスだ。暫く世話になるがよろしく頼む」

「リリスメリヤ ブータニアです」


「ブータニア?」

 侯爵がセレストの爵位を知るわけがないな。

「聞いているか知らんが、俺の国セレストの大公家だ。そのつもりで対応してくれ」


「公女様でしたか。知らぬこととはいえ、失礼いたしました」

「別に気にしておりません」


「それでは中にどうぞ、色々とお聞きしたいこともありますので」


 俺たちは侯爵邸の応接室に通される。


 テーブルを囲んで、侯爵の前に俺とリリスが座り、俺たちの後ろにはチハルとアリアが立つ。

 テーブルの脇に、俺側にステファが、リリス側に聖女が座る。


「セイヤ様、色々とお聞きしたいことがあるのですが、先ずはその前に、紋章を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 ステファの方を見ると頷いている。ここまで来てしまったんだ。今更仕方ないか。

 俺は左手を前に出し、魔力を込める。手の甲に紋章が浮かび上がり輝きだす。


「これは紛れもなく皇家の紋章! 何百年ぶりかに皇王が誕生するとは……」

 侯爵が平伏してしまった。

 何故か聖女が自慢げな態度だ。


「皇王?」

「皇家の紋章を持つものは、国王以上の皇王となるのです。いわば、神のような存在ですな」

「当然です。セイヤ様は神なのですから」

「あー。そこの聖女は黙っているように」


「聖女? セイヤ様は聖女をお連れなのですか?」

「まあ一応、そちらの女性が、セレストでは聖女と呼ばれていたが……」

「そうですか、既に聖女を傍に従えていらっしゃるのですね」

「それが何か?」


「記録によると、過去の皇王は皆、聖女を従えていたそうです」

 聖女が何だか嬉しそうだな。何故だかこっちは癪に障るんだが。


「王家の紋章ならステファも持っていた思いますが?」

「王家の紋章でなく、皇家の紋章です。一段格上になります」


「これが皇家の紋章なのか?」

「光り輝いていますから間違いありません!」


 何か、思っていたよりも大事になりそうな雰囲気だ。


「しかし、攫われた皇女の子孫がいたとは……」

「いえ、攫われたのではなく、駆け落ちしたようですよ」

「そんなことはあり得ないでしょう。その皇女は皇王になる予定だったのですよ?」


「皇王の地位より愛を選んだのですね」

「神になることより、愛を選んだというのですか? とても信じられません」

「別に不思議ではないでしょう。俺でも迷わずリリスを選びます」

 というか、神になんかなりたくない。


「セイヤ様、こんな所で、恥ずかしいです」

 リリスが体をくねらせて恥ずかしがっている。可愛い。


「リリス様との結婚は反対しませんので、セイヤ様には皇王になっていただきたいのですが……」

「はっきり言って仕舞えば、皇王にはなりたくないな。というか、俺はセレストに引き篭もるので干渉しないでもらいたい!」


「セレストに干渉するなとおっしゃられますが、それは無理です。皇女の子孫だとすると、血筋的には、そちらがシリウス皇国王族の本筋になってしまいます。セレストに皇女の末裔が住んでいる以上、シリウス皇国と一緒になってもらうか、少なくとも同盟関係を結んでいただかないと困ります」


 シリウス皇国と一緒になるって、セレストがシリウス皇国の一領になるのか?

 同盟なら悪くないかもしれないが、父上達が受け入れるだろうか……。


「シリウス皇国とセレスト皇国の関係は、俺の一存では決められないし、そんな権限もないな」


「セレストには、セイヤ様以上の方がおられるのですか?」

「俺は第三王子に過ぎない」


「他の王子にも紋章が?」

「紋章があるのは、現在のセレストでは俺だけだ」


「でしたらセイヤ様が最上位者になるのではないのですか?」

「いや、違うぞ。紋章があるだけで最上位者にはならないだろう。シリウス皇国だってそうだろう?」


「いえ、シリウス皇国は法律的には紋章をお持ちの方が上位です」

 侯爵が衝撃の事実を明らかにする。シリウス皇国における紋章の扱いが、大き過ぎてビックリだ。


「ステファ! 王位継承は第三王子がトップじゃなかったのか!」

「それは勢力関係よ。法律上は私が一位だったわ。今までは……」


 ステファの奴!! さらっと言いやがって、今までは、ということは、今は俺なのか! わざと黙っていやがったな!!

 ステファに怒鳴りつけてやりたいところだが、話がややこしくなるので、そのことは後にしよう。


「シリウス皇国ではどうか知らんが、セレストでは、俺に権力などない。それに、セレスト星にはセレスト皇国以外にも公国がいくつかある。セレスト星の代表者は決まっていない」


「皇国はセレスト皇国だけで、他は公国なのですね?」

「そうだな」

「ならば、セレスト皇国と交渉できれば問題ありません」


「だが、経済的に発展していて、力があるのは、公国の方だぞ」

「問題は、経済力や軍事力でなく、血筋です。皇国を名乗っている以上セレスト皇国が皇女の本筋なのでしょう?」

「それはまあ、そうなのだろうが。そうだとしても、交渉権があるのは、父親の国王陛下だ」


 どのみち、交渉するにも、現状セレストの位置を知っているのはステファだけだ。

 ステファが喋らなければ、交渉団をセレストに送ることも難しいだろう。

 ここは、俺には権限がない、の一点張りで押し通そう。


「そうですな。すぐに解決できる問題ではないですし、セレスト皇国の件は追々ということにいたしましょう」


 取り敢えず侯爵は諦めてくれたようだ。


「それで、肝心のセイヤ様の皇王即位についてですが」

「いや、だから、皇王なんかなりたくないって」


「いえ、シリウス皇国の法律で決まっていますから」

「俺は、シリウス皇国の者じゃない」

「出身がどこかは関係ありません!」


 その後も侯爵と、やってください。やりたくない。の、堂々巡りを繰り返すことになった。

 ステファが苦笑いをしながら見ているのは、過去に自分が経験したことだからだろう。


 結局その日は何も話が進まず、侯爵との話し合いは終了となった。

 当然、侯爵との会談後は、ステファに説教だ!!



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