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第7話 食べ物

 目を覚ますと、そこは宇宙船の船室のベッドの中だった。

 宇宙船はドックに向け、ワープ4で航行中だ。多分。

 自動運転のうえ、振動や騒音もないので実感が湧かない。


 リリスや家族は心配しているだろうか?

 無事だと伝えたいが、残念ながら連絡方法がない。


「さて、それじゃあ船内を見て回るかな」

 無理なものは仕方がない。できることからやろう。


「と、その前にお腹が空いたな。食べる物はあるんだろうな」

 いや、待てよ。この船何年放置されていたんだ。

 俺が生まれてこの方、宇宙船の話なんて聞いたことがないぞ。

 父上や兄上がこっそり使っていた可能性もあるが、いや、ないな。

 しばらく使っていなかったため、キャプテンの登録が切れていたからな。


 そうなると、食料が積んであっても、駄目になっている可能性があるな。

 ドックまで十日間、飲まず食わずは流石にきついぞ。


「ああ、おーい。何か食べられる物はあるか」

 俺は船のAIに呼びかける。何か名前がないと呼び難いな。


『フードディスペンサーなら、七層の船員食堂、六層の貴賓室の食堂、船長室の控室にあります」

 えーと、船長室というのはここのことか? それとも、ここは寝室で船長室は別にある?


「船長室の控室に案内してくれ」

『ご案内します。マーカーに従ってお進み下さい』


 例の如く矢印に従って進むと、寝室を出てすぐ左手の部屋が船長室、その先ブリッジに近い方が控室だった。


 俺は控室に入ると、正面に自動販売機のような物があった。これがフードディスペンサーだろう。

 俺はそれに近づくと、モニター画面に映し出されたメニューを見た。


「タッチ操作でいいのかな?」

『音声でも操作が可能です』

「あ、そうなのね」

 また、独り言を拾われて答えが返ってきてしまった。


「うーん。色々あるね。お、ハンバーガーがあるじゃないか! フライドポテトも。じゃあこのセットだな。しかし、久しぶりだな。前世以来だからな」


 俺は気分が高揚していく。

 セレストには、ハンバーガーもフライドポテトもなかった。


 まず、パンがなかった。

 セレストの主食は米であった。


 小麦粉はあったが、できるのは、饅頭とかお焼き。麺もうどんはあったが、パスタはなかった。

 多分、小麦粉の種類が薄力粉か中力粉しかなく、強力粉がなかったのだろう。


 それなら、品種改良して作ればいいじゃないかと言われそうだが、そんなの何年かかるかわからない。

 それこそ何十年かけてもできないかもしれない。

 引き篭りの俺にやれと言われても無理である。


 ジャガイモもなかった。

 そのため、他の国も含めて探してもらったら、見つかった。

 だが、それには毒があった。

 芽や光に当たった部分だけでなく、イモ全体に。

 味もイガイガして、とても食べられなかった。


 トマトもなかった。

 ナスはあったんだけどね。

 トマトがないとケチャップが作れない。

 洋風料理のメニューがだいぶ制限されていた。


 つまり、セレストでは生活様式が西洋風な割には、食事は和食が主だった。


 そんなわけで、ハンバーガーとフライドポテトに気分が高揚するのも仕方がないことだ。


「飲み物は、当然コーラだな!」

『年齢確認が必要です。十八歳未満の方には提供できません』


「え? コーラって十八禁なの!」

 何だ、この世界。何故にコーラが十八禁。


「じゃあ、ジンジャーエール」

『年齢確認が必要です。十八歳未満の方には提供できません』


「えっ、どうしてだ? なら、サイダー」

『年齢確認が必要です。十八歳未満の方には提供できません』


「サイダーも駄目か……。これならどうだ、炭酸水!」

『年齢確認が必要です。十八歳未満の方には提供できません』


「くそー! 炭酸が駄目なのか。何故だ、理不尽過ぎる。駄目だと言われると余計あのシュワシュワを味わいたくなる」


 悔しがってもどうにもならない。俺は諦めて、バニラシェイクを頼んだ。



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