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第20話 講習一日目

 結局昨日の夜は、俺はソファーで寝た。今日はツィンの部屋に変えることにしよう。


「俺は十時から十六時までライセンス講習だが、その間チハルはどうするんだ?」

「キャプテンを講習会場に送った後は、アルバイトに行く」


「ピットにアルバイトに行くなら、講習会場まで案内してくれなくてもいいぞ」

「キャプテンは迷子になる」


 あれー。迷子になると断定されちゃったよ。

 確かに引き篭りで、日頃外に出ないけど、方向音痴じゃないぞ。

 方向音痴じゃないけど、初めてだし、今日は送ってもらうことにしよう。

「そ、そうか。なら、案内よろしく」


 チハルに案内されて、時間に余裕を持って講習会場に到着する。

「終わる頃また迎えに来る」

「そうか、悪いな」


 会場に入り口でチハルと分かれてから俺は指定された教室に入る。


 教室は二人掛け机が、横に二列、縦に四つ並んでいた。全部で十六席だ。

 既に半分以上の席が埋まっている。


 一番後ろの席の中側が、左右両方の列とも空いていた。

 左列外側の席には同じ歳くらいの男の子が、右例外側の席には女の子が座っていた。

 俺は左端に座っている男の子に声をかける。


「あの、隣空いてるかな?」

「ああ、空いてるから座れば」


「それじゃあ失礼して」

「随分と遠慮してるな。席は自由なんだから遠慮することないのに」


「人が多い所は慣れてなくて」

 なにせ長らく引き篭っていましたから。


「そうなのか? 俺はカイト。一週間だけどよろしくな」

 カイトはカードを差し出して俺に見せた。

 俺も慌ててカードを取り出すと、カイトに差し出して見せて自己紹介する。これで、カードの情報交換は済む。


「俺はセイヤ。片田舎から出てきて慣れないから、迷惑をかけるかもしれないがよろしく」

「田舎って、ここも十分田舎なんだが、ここ以上か。大変かもしれないが頑張れよ」

「ありがとう」

 何故か肩を叩かれた。


 その後、カイトと話をしながら開始の時間を待っていたが、席も粗方埋まり、もうすぐ開始の時間というところで、俺は後から教室に入って来た、執事風の男を連れた女の子に声をかけられた。


「ちょっとそこのあなた、そこを退いてくれる」

「え、どうかしたのか?」


「私がそこに座るから、そこを退いて!」

 何か怒っているようだ。


「カイト、知り合いか?」

「いや、知らないが……」

 カイトの知り合いかと思って、カイトに聞いてみたが、違うらしい。


「君が先に来てこの席を取ってたのかな?」

「私は今来たところよ。つべこべ言ってないで早く退きなさい!」


「そこの席も空いてるけど」

 俺は右隣の席を指す。


「貴様、お嬢様が退けと言っているんださっさと退け!」

 女の子と一緒に来た執事風の男が怒鳴ってきた。


 隣の席も空いているのに何故この席でなくてはいけないのだろう?

 お願いされれば譲ってもよかったのだが、高圧的な態度で命令されると頭にくる。


「他に席が空いているんだから、そこに座ればいいじゃないか!」

「庶民の分際で私に意見するのですか!」


 庶民の分際でって、執事風の男も連れているし、貴族かなにかなのだろうか?


「恐れ多くもこの方は、帝国、ブリエル男爵家の御令嬢、コーディリア様であらせられる」

 ああ、貴族なのね。執事風に男、改め、執事がカードを掲げて、今にも頭が高いと言い出しそうだ。


「あ、セイヤといいます」

 相手が名乗ったので、俺もカードを見せて名前を告げた。


「なに、庶民の分際でカード交換してるのよ! ここが帝国なら打首よ、打首!!」

 庶民、庶民って、これでも王族なんだけど……。


 何か面倒くさくなってきたな。席なんてどこでもいいし、もういいか。

「それは、失礼しました、男爵令嬢様。こちらの席をお譲りしますので、どうか、お許しください」

 俺は席を立って、きちんとお辞儀をすると、隣の席に移った。


「ふん。最初から大人しくいうことを聞いていればよかったのよ」

 譲ってやったのに礼も無しか。

 まあ、いい。もう関わらないようにしよう。


「それではお嬢様、お昼にまた参ります」

 執事は俺をひと睨みしてから教室を出て行った。


「災難だったわね」

 一番後ろの右端に、先に座っていた女の子が小声で話しかけてきた。

「何なんだろうね?」


「本当にね。あ、私ステファ。よろしくね」

「俺はセイヤ。こちらこそよろしく」

 俺はステファとカードを見せ合い挨拶を交わす。


 そんなトラブルがあったが、間も無くして講義が始まった。

 今日と明日、二日間は講義で、三日目から六日目まで四日間は実技となる。

 そして七日目の最終日は筆記試験が行われ。それに合格すればライセンスが交付される。


 今日の講義は、宇宙船の種類と航行上のルールについてだ。


 宇宙船は、大きさと使用目的によってクラスに分かれている。

 俺が乗るハルク1000Dは、Cクラスだ。

 シャトルポッドは、Pクラス。

 大型貨物船は、Kクラス。

 戦闘艦は、Bクラスだ。


 低速航路はワープ2、通常航路はワープ4、高速航路はワープ6、これは俺も知っていた。

 緊急船舶は、一般航路でもワープ8で航行することになる。

 緊急船舶が航行する場合、他の船は、速やかに航行を止め、航路を空けなければならない。


 通常航路の場合、一万倍の速度で緊急船舶がすっ飛んで来るのだ、予め避けてなければ追突されて大破だ。


 後は、航宙管理局の指示には従うこととか、識別信号は必ず出しておくこととか、航路外は原則航行しないことなどの話があった。

 これらに反すると、海賊船と見なされ、いきなり攻撃されても文句が言えないそうだ。


 もっともそれは、原則であって例外はある。作戦行動中の戦闘艦や冒険者の船がそれに当たる。

 それらの船は、軍やギルドが管理することになるが、航宙管理局とは仲が悪いようだ。



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