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第109話 諜報員

 神楽殿を含む社が、山ごと浮いてしまったが、来客のほとんどが、シャトルバスを使ってやって来ていたので、帰りは然程問題にはならなかった。


 それより問題になったのは、眷属のことだった。


 俺としては、タマさんを無理矢理眷属にしたくなかったし、もっといえば、眷属自体いらなかった。

 だが、それでは大公は納得せず、どうしても、タマモを眷属にするように求めて来た。


 ここで、話をややこしくしたのは、大公が求めていたのは、タマモを眷属にすることで、必ずしも、タマさんを眷属にしろと、言っているわけではないということだ。


「お姉ちゃんのわからずや! 私がタマモを引き継ぐと言ってるでしょ!」

「ヨーコにはまだ無理よ」


「そんなことないもん。神楽の舞だってちゃんとできてたでしょ」

「確かにちゃんと舞えていたようだけど、まだ、私の方が上よね」

「そんなの、お姉ちゃんが判断できないでしょ。私はお姉ちゃんの後ろにいたんだから」


 お陰で、姉妹喧嘩が始まってしまった。


「それなら、どちらの舞が良かったか、セイヤ様に判断してもらうことにしようじゃないか」

「わかったわ。それで公平ね。セイヤ様、私の舞の方が良かったですよね」


 おいおい、こっちに振るなよ。


「そうだな。ヨーコちゃんの舞はよかったよ。でも、タマさんの舞はもっとよかったな」

「ほら、みなさい」

「ぐぐぐぐぐ。お姉ちゃんの方が少しスタイルがいいから、贔屓目よ」

「諦めが悪いわね」

「だって……」


「タマ。口を挟んで悪いが、芸能活動の方はどうするの? まさか、猫耳カルテットを抜ける気?」

「眷属になったら、アイドルなんて続けられないでしょ。それなら、妹さんがやりたいと言っているんだから譲ればいいんじゃない」

 ミケさんとニヤさんとしては、タマさんに抜けて欲しくないのだろう。


「ごめん……」

「そんな。スズはどうするの。タマと一緒にやることを楽しみにしているわよ」

「……」


 ミケさんにベルさんのことを言われ、タマさんは項垂れてしまった。


 やはり、タマさんには猫耳カルテットを続けてもらった方がいいだろう。


「ちょっといいかな。俺としては、タマさんには猫耳カルテットを続けてもらおうと思っている」

「セイヤ様は、お姉ちゃんじゃなく、私を選んでくださるのですね!」

「セイヤ様、私では眷属として不服ですか。もしかして、セイヤ様はロリコン?」


 おいおい、デブ専の次は、ロリコン疑惑かい。勘弁してくれ。


「勘違いしないでくれ。俺は、眷属をタマさんにしたうえで、アイドルを続けてもらいたいんだ」

「眷属をやりながら、アイドル活動をしろということですか?」

「そんなの、お姉ちゃんが大変じゃない!」


「まあ、大変だから、他のメンバーにも助けてもらえるとありがたい」

 俺はミケさんとニヤさんにお願いする。

「あたしたちが眷属の仕事のお手伝い?」

「眷属の仕事って何するの?」


「眷属のタマさんにお願いしたいことは、諜報活動だ。ミケさんは、工作員だったからこの手の仕事は得意だろ」

「工作員でなく、市場調査員よ! 工作員は、向こうが勝手に言ってきただけよ」


「まあ、仕事の内容は、その市場調査員と大差ない感じで、アイドル活動をしながら、気づいたことを報告してくれればいい」

「どこかに潜り込んだり、悪の組織を潰したりしなくていいの?」

「逆に、危険なことはしないこと。人質に取られて脅されるのが一番厄介だから、安全第一、秘密厳守で頼む」


「それなら私たちにも手伝えるかな」

「タマと一緒に続けるためなら、やってみるよ」

 ミケさんとニヤさんやってくれるようだ。


「タマさん、そんなところで、どうだろう?」

「眷属って、そんなことでいいの? もっとこう、夜のお相手とか」

 まったく、ミケさんはそんなことを考えていいたのか。俺がそんな命令するはずがないだろう。

「リリスがいるから、間に合っています」


「へー」

「ホー」

「セイヤ様」

 リリスが真っ赤な顔をして慌てている。どうした? あ!

「勿論、リリスとはまだ、そういう関係ではないからな。将来的な話だから!」


「まあ、そういうことなら、私に文句はないよ。はなから、眷属になれば、セイヤ様の命令は絶対だと思っていたし」

「無理なお願いはしないつもりだけど、無理だったら、無理とはっきり言って欲しいんだが」

「実に、緩い主様だが、わかったよ」

 タマさんもそれで納得したようだ。これで一件落着か。


「それで、私たち、アイドル諜報員になるわけだけど、コードネームとかないの?」

 ミケさんはノリがいいね。密かにこういうのに憧れていたのだろうか?

「コードネームね。それじゃあ、スーパース……。スーパートリオで」


「今、スリーって言いかけなかった?」

「いや、そんなことないよ」

 俺は、そっぽを向いて白を切る。


「そう。ならいいけど……」

「よくないわよ。スズもいるんだから!」

「あ、そうね」

 ミケさんは一旦納得したようだが、タマさんが違う点で納得できなかったようだ。


「ベルさんも入れるのか?」

「一緒のメンバーだもの、当然よ」

 ベルさんも入れるとなると四人組か。なら、スーパーフォーか。でも、これじゃあ捻りがないな。


「なら、そうだな。ハヒフォーで」

「何で、スーパーカルテットじゃないのよ?」

「それに、いきなり、ハヒフォーってなに?」


「四人組だし、勢いがあっていいかな。なんて」

「何か、引っかかるけど、セイヤ様が決めたならそれでいいわ」


「そうかい。それじゃ、コードネームはハヒフォーで。登場する時は、ハヒフォー、ハヒフォー、ハヒフヘフォーと歌いながら登場してね」

「コードネームを歌いながら登場するの?」


「いや、今のは冗談だ。なんか、悪役っぽくなっちゃうし」

「そう。ならいいけど」

 少し、悪ノリし過ぎたようだ。みんなの視線が冷たい。


 そんな中、一人、涙を溜めている者がいた。

「みんな、楽しそうでズルい!私もお姉ちゃんみたいに、外の世界に行きたいのに。ウぁーン」

 ヨーコちゃんはついには泣き出してしまった。


 結局、みんなで宥めすかし、成人したら、眷属見習いにすると約束して、なんとか泣きやませたのであった。



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