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第103話 ガーディアル大公

 散開星団で海賊たちを殲滅し、第一王子の襲撃を退けた俺たちは、その後は、問題なく航行を続け、ほぼ予定通りにプロキオンに到着した。


 プロキオンのステーションに着船し、下船した俺たちを待ち受けていたのは、沢山の兵士だった。


「これは、また、随分と大勢でお出迎えで」

 アリアが咄嗟にリリスを守る動きを取るが、相手には敵意はないようだ。


「ルタ。心配しておったぞ、途中で襲撃を受けたそうじゃないか。大丈夫だったか」

「おじいさま。私はこの通り、元気よ。それより、この兵士はなに?」


 第一王女がおじいさまと呼ぶということは、この人が、プロキオンの大公か。

 第一王女の年齢から考えれば、既に六十代と思われるが、まだ、四十代に見えるガタイのいいおっさんだ。


「なに、万が一のために用意したまでだ、気にするな」

「おじいさま……。心配ないから持ち場にもどらせて」


 万が一のためといっているが、これは、俺に対する威嚇だろうか?

 大公の命令で、数人の護衛を残し、兵士たちは戻っていく。


「それで、そいつが、ルタの婿になる男か?」

「婿ではないわ。皇王になる男よ」

 いや、まだ皇王になるか、決まってないからね。その話し合いを国王とするのだから。


「ルタはそれを認めるのか?」

「あれだけの実力を見せられれば、認めざるをえないわ」

 何か、俺の実力を見せる場面があっただろうか?


「ほー。ルタが認めるのか。なら、やはり婿にしたらどうだ!」

「いろいろと、そんなわけにはいかないのよ」

 俺には、リリスがいるからな。婿入りの話なら絶対拒否だぞ。


「紹介が遅くなったが、祖父のバルトバPガーディアル大公だ」

「セイヤといいます」


「セイヤ殿だな。儂のことはバルと呼んでくれ」

「そんなわけにはいきません。ガーディアル大公」


「息子もガーディアルだぞ」

「では、バルトバ卿と」


「まあ、それで我慢してやるか。ところで、セイヤ殿はルタを嫁にもらう気はないか」

「アマンダルタ殿下をですか?」

「おじいさま!」


「既に婚約者のリリスがおりますので、ご遠慮させていただきます」

「嫁など二人いてもよいではないか」

「いえ、リリス一人いれば十分です」


「おじいさま。私もその気はありませんから」

「そうなのか。それは残念だ」


 よかった。アマンダルタ殿下が断ってくれたおかげで、この話はこれで終わるだろう。


「だがな、セイヤ殿でなくとも、誰か婿を迎えないと、ルタもいい歳なのだから早くした方がいいぞ」

「おじいさま。私はチャールスが成人するまでは結婚する気はありませんと、何度もお伝えしたはずですが」


「そうはいうがな。現実問題として、既に行き遅れと……」

「おじいさま!」


 おやおや、これは、俺に嫁を取らせたいのでなく、純粋に、孫娘の婚期を心配しているようだ。


「おじいさま、それよりも屋敷に案内して」

「おお、そうだな」


「それでは私たちはここで失礼します」

 猫耳カルテットを代表してタマさんが挨拶する。


「ん? タマモではないか。一緒だったのか」

「都合で、セイヤさんに送ってもらいました」


「そうか。宿は手配してあるのか?」

「いえ、実家の社に泊まりますので」

「そうか、実家にな……。それがいいだろう」


 タマさんは、巫女だといっていたし、実家が神社なのか?

 大公もタマさんのことを知っているようだが、泊まる所を心配していたが、タマさんは実家と何かあるのか?


「それではセイヤさん、ここまでありがとうございました。暫しの別れとなりますが、私の舞を是非見に来てくださいね」

「ああ、見に行かせてもらうよ」


「それでは、閣下も殿下も皆さんもお先に失礼します」

「失礼するニャ」

「またニャ」


 俺たちは猫耳カルテットの三人を見送った。


「さて、それでは儂らも行くとするか。こっちだ」


 俺たちは大公に案内され、大型シャトルに乗り、大公の屋敷に向かったのだった。


 屋敷に着くと、他の者が部屋に案内されるなか、俺だけ応接室に通された。


 応接室では、俺と大公と第一王女だけで、第一王女の護衛も外に出されてしまった。

 随分と用心しているが、これからなにが始まるのだろう。


「着いて早々ですまぬが、現状を説明させてもらおう」

「現状?」

「プロキオンの独立運動の話だ」

 第一王女に睨まれてしまった。


 そうだった。それが目的でプロキオンまで来たんだった。猫耳カルテットを乗せて来たのはついでだったな。

 プロキオンが独立しようが、俺には関係ないから忘れかけていたぞ。


「現在、独立を主張している独立派を指揮しているのは、儂の孫の一人であるヤガトだ」

「孫ということは、アマンダルタ殿下の従兄弟になるのか」

「そうだ。私の母の兄、伯父の長男になる」


「ということは、ゆくゆくは、大公をそいつが継ぐのか?」

「継承順位は伯父に次いで二位だ」


 プロキオンのトップに立つ予定の者が独立派なのか。なかなか厄介だな。


「基本的なことを聞いていいか」

「何だ」

「住民の何割が独立派ですか?」

「住民か? 住民なら一割もいないだろう」


「プロキオンはシリウスの一領であることで、他に比べ不利益を被っているわけではないのか?」

 住民に独立派が一割もいないということは、住民は不利益を感じていないということだろう。


「昔はそんなこともあったが、リタが王妃になってからはそんなことはなくなった」

 第一王女の母、王妃の名前はザハナダリタだったな。


「もともと、それを解消するために、娘のリタを王のもとに嫁に出したのだ。それなのに、第五王女に王家の紋章が現れたことにより、振り出しに戻りかねない状況になった。

 加えて、その第五王女が、皇王候補を連れて戻った。

 シリウス王家が皇王の力を独占すれば、プロキオンが不当に低く見られることになりかねない。

 それを理由に、独立派が活気付いている」


「俺は、シリウス王家のために力を使う気はないんだが」

「シリウス王家にその力を独占させる気がないのなら、それを皆にも示してもらいたい。

 そうすれば、独立派の高まった機運を削ぐこともできるだろう」


「みんなに示せと言われてもな。俺がそんな気はないと言っただけでは納得しないのだろう」

「そうだな。一番簡単なのは、ルタとの婚姻だったんだが」

「それは拒否する」


「おじいさま」

「本人たちがその気でないのではな。娘を政治の駒として使った儂としては、孫娘まで辛い思いをさせたくはない」


 大公は、娘を政略結婚させたことを今も気に病んでいるのか。何だかとても辛そうだ。


 この世界では、政略結婚は普通のことかと思っていたが、そうでもないのか。

 そういえば、第二だか第三王女は、一般人と結婚したのだったか。


 いや、その時ステファに聞いたら、政略結婚が普通だと言っていたな。

 だが、ステファが逃げていた理由の一つが、政略結婚したくないためだった。


 ステファの奴、こんな所にも嘘を放り込んでいたのか。


 あれ、でも、第四王女のエリザベートも政略結婚が当たり前だと言っていたな。王族だけ常識が違うのか?

 それとも、単に個人的感覚の違いにすぎないのか……。

 まあ、俺はリリス一筋だから、どうでもいいか。


「次善の策として、もうすぐ神の降臨を祝う神楽がある」

 タマさんが舞うやつのことだな。


「そこで、セイヤ殿に、皆の前で皇王の力を示してもらい。その上で、仕える眷属を受け入れて、プロキオンを見放すことがないと宣言してもらいたいのだ」


 はっきり言ってしまえば、そんな目立つことやりたくないのだが。第一王女と結婚させられるよりはましか。

 眷属って、神話に出てきたあれか。

 待てよ。

「仕える眷属ってどんな人なんですか?」


「神に仕える眷属は、代々『タマモ』と呼ばれている。今代のタマモとは先程まで一緒だったようだが」


 やはり、タマさんのことか。でも、そうなるとタマさんはアイドル活動をどうするつもりなんだろう?


 この策にも、迂闊に頷けなくなったな。



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