09 黒の魔力
「イメージしたら魔力が使えるようになったんだよね、じゃあこんなの作ってみる?」
ラルが持ち前の軽い感じで指先に光を集め空間に絵を描くようにハートをつくった
かわいいでしょ?と言わんばかりに笑いかけてくれているのだろう、しかしヨルは無表情で「あ、そういうのはいいです」というオーラで答えた
冗談で空気を和ませようとしただけなのに真面目に返されて少しへこんでいるラルにアスラが彼の肩にそっと手を置いて「ご愁傷様」と君は振られたから諦めろという遠回しのフォローをした
「あーもーわざわざ言わなくてもわーってるよ!!」
ラルは喋らなけれなそこそこモテるだろうに、ちょっと残念
イメージで作れるものも魔力が足りなければ作れない、
分かってはいるのにラルが教えてくれるもの全てできてしまった。
「でもさ、聖女って黒い魔術士なの?なんか太陽のようにキラー!っと神々しいものを想像してたわ」
「確かに、ヨルの魔力は黒だね、特性はなんだろう」
ヨルの魔力は黒く禍々しい、聖女という名に合うかというと・・・合わない・・・
苦笑いでなんでだろうねと無言で会話に答える
「黒の魔力は悪魔の領主がもつと聞いたことがあるが」
「噂だな、そんなものみないと分からない」
ヨルは確証はないけど分かっていた、自分の心が黒を生み出していると・・・
負の感情が渦巻いて、まだ私は死にたがっていると、この異世界で無意識に心が叫んでる
それは転移前の出来事からまだ時間がたっていない、
みんな心がキレイなんだなと比較して食ないのにしてしまって、それでまた落ち込む
「俺たちはまた両親を助けに行く、ヨルはどうする?」
男3人は出来れば来てほしいけど、こんなおとなしい女性を戦場に連れ出すのはと心配そうな表情を浮かべた
ヨルは行きますと言いたいけど言葉が出なくて伝えられない、どうしたらいいのか考えに考えて思いついた
指先に魔力集中し、空中に〇(丸)を書いて、行きますと答えた
「あっ!俺の!!」
ラルは最初にハートを送った方法をヨルに使われて冗談交じりに使ったな!と空気を和ませた
* * *
時間を忘れるくらい魔術を教わった、これならカイザにも対抗できるかもしれない
みんなの魔力を使い切ってもヨルはまだまだというところだったが、日が暮れ始めてきたのでここでお開きとなった
「じゃあ、また」
「おう、ヨルもよくやすめよ!」
「お疲れ様、ヨル」
ヨルはスイとウィンにのって少し離れた家へと戻った