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聖女ですが  作者: さんか
第一章
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06 主のいない街

静かな夜から朝の静けさに変わる

夜中に眠りについたのにヨルはもう起きてしまった

寝たのか横になっていただけなのか、体は重いままだが気持ちは少し落ち着いていた


上半身をゆっくりと起こすと、同じ布団の上で少し離れて寝ているスイを見ると、自分を警戒しないで寝ている事に自分自身も少し安心感があった


『この人は悪い人じゃない・・・?』


ヨルは召喚したところが居場所とは思っていないから、戦闘中に連れ去られたとは思っていない、どこにいっても状況は変わらない事は転移前から知っていた。

帰りたい場所もないし、生きていた場所も別にない。


部屋から出るのはスイに迷惑をかけるかもしれない、でもこのままベットにいるのも・・・と、ヨルはベットから降りて窓辺に置いてあった椅子に腰かけて外を見た


お風呂に入っていないから髪が絡まっていてみっともない、部屋の中にお風呂はないし顔を洗うところもなさそうと諦め、手櫛で髪の毛の手入れをしながら今迄の出来事を整理しはじめた


カイザは悪い人、アマギさんはいい人なのかな、もう少しお話がしたかったな。

それから向いに幽閉されてたあの人や街の人・・・死ぬことに意識が行き過ぎてて助ける事を考えられなかった。

私に強力な魔力があるなら使えるようになれば助けられるのかな。

でも助けた後で、裏切りや、妬みに変わらないだろうか・・・いつもそうだった人間たち・・・。

私の存在はそれを助長させてたのかもしれないけど、やっぱり人間はまだ怖い。

この世界に私を知る人がいないのはよかったな。


異世界というのだから私がいた世界とは全く違うということだよね、窓から見る景色の草木は前の世界と変わらない、でもこっちのほうが自然が多いのかな、電信柱もないから電気は存在しなそう


あの戦いで私やっぱり死んだと思うんだけど、この世界では生き返る魔法が存在してしまうのだろうか。

彼には蘇生術が使えるとか?

ヨルは穏やかに眠っているスイを見ながら何度見ても綺麗な顔だなと見とれて顔を赤らめた



火照った顔を手で仰いでいると視界に鳥らしき動物が舞い込んできた


『これは幻獣?』

雀くらいの鳥なのに羽じゃなくて戦場で見た竜の鱗のようなものだった

それを見てここは異世界なんだなと信じる事が出来た。


朝日に照らされて少し赤みがかったヨルの髪が朝日に照らされて光る



小鳥の鳴き声でスイが目を覚ました


「あれ、もう起きてたの?おはよう」


「・・・っ!?」


ヨルは朝の挨拶など貰ったことが産まれて一度もない、当たり前のように挨拶してもらえたことにびっくりして硬直してしまった


「えと、大丈夫?」


スイが心配そうに起き上がると、声の出せないヨルは大丈夫ですと頭を縦にふった


「水浴びしたら少し街にでようか、領主がいなくなってあまり活気がないのだけど」

「・・・」

なんでこの人はこんなに優しいのだろうか、もう裏切られて殺されてもいいと思えてきた、蘇生されてしまった身で殺されるとは思えないのだが・・・今迄が酷い世界だったから麻痺しているのかもしれない・・・


「先にどうぞ、俺は外で見張っているから安心してゆっくりしてきていいよ」

スイが水浴び場まで案内するとそこは旅館の温泉かと疑うくらい広い風呂場だった

こんな経験ができるなんて思っていなかったヨルはびっくりして震えてしまった

しかし、そんなゆっくりしている場合ではない、わざわざ私なんかのために外で見張りをしてくれているスイさんのために早く済まさなくては・・・


湯船につかると「ふわああ~~」と溶ける声がでてしまって慌てて口をふさぐ。

少し温まって急いで着替えて急いで浴槽の扉を開けるとスイがふっと笑って「さっぱりした?」と尋ねてきたのでヨルは顔を真っ赤にしてうつむきながら頷いた



 * * *


「ヨル、体調はどうだい?朝食を食べたら少し街を見に行かないかい?」

「・・・」ヨルはコクリと頭を縦に振った


「半年前はもっと活気があったんだけど、両親が連れ去られてからは不安で元気がなくなってしまったからあまり楽しめないかもしれないけど」

はははと寂し気な笑みで締めくくり、朝食は家にいる従者が用意してくれるというので呼ばれるまで部屋でスイの話を聞きながら待った


「スイさん、朝食の用意ができましたが、こちらにお持ちしましょうか?」

「いや、いいよそちらへ行くよ、ありがとう」


「じゃあ、ヨル行こうか、おなかが空いただろう」

スイはなぜ私をここまで人間として扱ってくれるのだろう、申し訳ない・・・・ヨルは下を向いて沁みついてしまった何もないところでびくびくしてしまう動きをなんとか抑え込もうとしながら歩いた。



朝食を食べ終えて街へ行く準備をして外へ出たが、車はない・・・何で?と首をかしげると、スイがピーっと口笛を鳴らすと遠くから見覚えのある竜が飛んできた


あれは確か戦場で飛んできた竜・・・


「街まで少し距離があるからこれに乗って行こう」

さあ、と手を伸ばしてきたスイの手を取り飛び乗ると羽のない翼をばたつかせて飛び立った


「・・・っ」

勢いで振り落とされるかもしれないとスイの腕にしがみついた

「怖い?支えてるから大丈夫だよ。こいつはウィンって名前なんだよろしく」


余裕で話しているスイとは裏腹にヨルは恐る恐る下を見る。

海外の田舎でも見ているかのよう、川辺ではたくさんのススキが風になびかせていた


街につくとウィンはスイに撫でてもらうとどこかに飛んで行ってしまった。


「じゃあ行こうか」

スイがヨルの手を取り街を歩きだした

フランスのクリスマスマーケットみたいにたくさんのお店が並んでいる

こんなショッピングなんて経験がなく、ここでも遠慮がちに街を見ていると気づいたことがある

色んな人がスイを知っていて話しかけている

少し心配したような顔で・・・きっとご両親のことなんだ、みんな心配してくれていて優しい


この街は元気がないというより元々おとなしい人種が多くいる街なのだと思った



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