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聖女ですが  作者: さんか
第二章
31/72

31 タカさん

真っ黒な髪とマスクであまり表情は見えないが若い男性のような・・・

片方の耳に黒の耳飾りが月明りでキラキラ光る。

本当に

ヨルの攻撃で地上に着地するが魔力が読めない。

限界まで使っているようにも見えないのにお互いに余力を残しながら戦うのはらちがあかないと思ったが下手に強い攻撃をするわけにもいかない。


その時、見覚えのある仮面をつけたノエルが次々に殺していく。

残りはヨルの相手だけとなった時に彼女は敵である相手を魔力で吹き飛ばし”逃げて”と訴えた。

もちろん喋れるわけじゃないけど、目で全身で訴えた。

気が付いてくれたかは分からないが男は吹き飛ばされたまま逃げて行った。


敵がいなくなって攻撃を止めたノエルはヨルの方をじっと見ていた。

ヨルは警戒しながら彼をじっと見ていた。


彼の感情には生と死の極端などちらかしか存在していないような気持ちを感じる・・・

一瞬のスキを逃さすヨルに攻撃してきた。

素手での戦闘に慣れているノエルよりも攻撃の劣るヨルは魔力で対抗するしかないけれど・・・

明らかに外部から来た刺客よりも激しい戦いをしている。


命に代えても間に入ってヨルを守ろうとスイ達がとびかかろうとした瞬間、


「はい、待った!」

天井から降ってくるようにフットワークの軽そうな男がヨルとノエルの間に落ちてきた。

「何やってんの?聖女さん、俺呼ぶときはどうするか言いましたよね」

両手にお肉を持って現れたのはハヤタカだった。

ヨルは、ああ忘れてたとボールが入っている胸のあたりを抑えて無表情で少し頭を下に傾けた。

「まあ、いいけどさ、街の方は聖女さんが来てるってお祭り騒ぎなのにどうしたのこれ・・・」


するとソウエンが部屋に戻ってきた。

「ノエルこっち来い!!」

空気を読まずに彼を引き取りに来たのか・・・


ヨルの前を通り過ぎる瞬間、お面の隙間から目が合って、それはそれは悲しそうな目をしていた。

ヨルはハッと何かに気が付いた。

両手両足には何も見えないがヨルには足かせがはめられているのが見えた、首にも首輪のようなものが見える・・・

とっさに彼の手を握ってソウエンの方へ行くのを止めた。


言葉が出せない2人の間に会話はなく、無言の時間が数秒流れる。


「助けてほしいんだってさ」


2人のやり取りを目の前で見ていたハヤタカがまた通訳するかのように彼の気持ちを語った。

ノエルはヨルの手を振りほどき、ソウエンのとこへと行ってしまった。


「夜会は続けますか?」

気が付けばキクの城の人間はハヤタカとシオンだけで、それ以外はススキの人たちだけが残っていた。

折角の食事も全部なぎ倒され夜会どころではない。

「とりあえず、王は無事なんで街でも見に行きませんか?」

なんでこんな時にポジティブに話が進められるのだろうか。

ホールには死んだ人もまだいて、どうしたらいいのかも分からないのに。

「ああ、そこの人たちは使用人の人たちがやりますよ、ぼちぼち来ますね」

ハヤタカが言うとタイミングよく使用人がホールの清掃に来た。

使用人の1人がジェイドに何やら説明をしている。

話がおわるとその使用人は片づけをしないで出ていてしまった。


「私とアイラは王と話をしてから控室でやすむから、街をみるなり気を休めてくれ」

「なんかすごい事になっちゃったからみんな着替えてから行くのよ」


2人は夜会の会場を後にした。


「じゃあ行きましょーよ、楽しいですよ」

「ヨル、この人は知り合い?」

さっきから馴れ馴れしく話しているから気になっていた。

ヨルはコクリと頷いて、なんとか声を出そうとしたけどなかなかでない。

名前くらい自分で紹介しないと、したい・・・

いつまでも声が出ないのは自分も苦しい。

「あんた、名前は?この街の人間?」

ラルがハヤタカに質問をした。


「ああ、俺はこの街の人間ってことにしておいてくれますか、名前は・・・」

答えようとした瞬間ヨルが彼の腕をつかんで、それは私が答えると言わんばかりに口をムッとしていた。

ハヤタカは思がけない行動に黙ったまま、数秒後にははいどうぞと彼女の言葉を待った。



「・・・タ・・・タカさん」



ヨルが振り絞って出した名前が最後の2文字になってしまった。

「いやぁ、いいっすね、タカさん、じゃあタカさんでよろしくお願いしますね」

顔を真っ赤にして下を向いてしまった彼女をハヤタカは見て機転を利かせた。


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