02 悲しい世界
「ここは・・・」
召喚されてから眠っていた彼女が目を覚ました
「君にとっては異世界かな」
えっ・・・と目を向けると整った顔をしたアマギが優しく語り掛けてきた
彼女は憔悴したまま綺麗な顔をした彼に『綺麗な顔だな』見とれていた
「・・・ん?」
黙ってみていた彼女の心が読めなくて疑問形で首をかしげてリアクションを返してきた
自分なんかが見てはいけないと目をとっさにそらして下を向いた彼女が、『そういえば』と気が付いた
「・・・死んでない」
小声でボソッと話した、近くにいても聞こえないくらいの声で話した彼女の声は誰にも聞き取れなかったようだ
「どうかした?」
アマギが何かを言った彼女に問いかけた
彼女は頭を左右に振って下を向いた
きっと状況が分からないだろうと察していたアマギが説明をはじめた
「君は聖女としてこの世界に召喚されたんだ、それでねここで君は戦わなくてはならないんだ、たくさん話しても理解できないと思うから簡単にいうとね、”君が戦わないと僕らが死ぬ”って事なんだ」
いやいやいやさっぱりわからない、え、なんで戦う?何と受験戦争なわけないし・・・騎馬戦?・・・なわけないし・・・この空気にこの人の服装・・・あれ、この人が着てる服なんか変・・・あ、そういえば死ぬって言ってたな、本当に死ねるならなんでもいいんだけど、あれっていうかなんで私生きてるの?自殺したよね?確実に死んだよね?ここは天国?死んだから?・・・あっ・・・
気絶しかけた瞬間光が見えた記憶が一瞬よみがえった
もしかしてあれのこと・・・?
彼女が一人で百面相しながら悶々と考え事をしているとアマギがクスクス笑いながら話しかけてきた
「俺はアマギ・リンドウ。アマギでいいよ、君の名前は?」
アマギさん・・・誰かに名前を聞かれたことがない彼女は涙があふれだしてしまった、なんで私なんかの名前を・・・騙されていたとしても嬉しい・・・
「・・・ヨル」
憔悴して自殺までした彼女の心は死に絶えていて声が出ない、なんとか振り絞った声をアマギは拾い上げてくれた
「ヨルね、素敵な名前だね、でもごめんね、君は今日戦いにでて死ぬかもしれない、それを僕らは助けることができないんだ、見てることしかできない」
悲しそうな顔でヨルに話すアマギの顔はやるせない気持ちを隠しきれない悲痛な笑みとなってこぼれていた
私は死にぞこないの人間だから別にいつどこで死んでもいい、ただ嘘でも優しく話しかけてくれた人にはその恩を返したい、私は何もなくて、それで死んだんだから、鉄格子に話しかけられているこの現状も異世界だからなんでしょ、向かいの部屋で心配そうに見ている女性がいる、なぜあんな綺麗な人が鉄格子に・・幽閉されているのだろう・・・
なんだろう・・・
なんだかこの世界は悲しい