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聖女ですが  作者: さんか
第一章
11/72

11 決意

小鳥のさえずりで目覚める

今は何時だろう、部屋には時計がないから外の明かりで決めるしかない、

深夜まで散歩して部屋に戻ってからも窓を眺めて仮眠をとるように椅子に座って寝ていたから永い眠りで休んだ感じはしない


外から小鳥が舞い込んできた。

普通は人間がいると逃げちゃうのでは・・・動いても逃げないで窓辺に首を傾げたりしながら無垢な目をした小鳥が窓辺で動きを止めた

オカメインコのような形をした白い羽に水色と黄緑が色を添えて頬は赤く丸いオカメインコそのもの、後ろ首のあたりは馬のように羽が長くなっていた

窓辺から逃げずにヨルを見てチュンチュン鳴いているから怖がっていないのだろうか

ヨルは、スイに買ってもらったサンドイッチ、全部食べるにはもったいなくて取っておいた分を小鳥にあげた


「・・・ここはいいところだね」

ヨルが小鳥に話しかけた、

小鳥は首をかしげながらヨルを見てまたサンドイッチをつついて食べはじめた


ヨルは物理的に声が出なくなっているのではなく、精神的なもので声が出なくなっている、動物には話すの事が出来たのだろう自分でも話せたことを自覚して感動しているわけでもなく、ただ話しかけただけ、鳥には善意も悪意もなくたらもらえた食べ物を食べているだけ、それが分かったからだろう



窓辺で小鳥と話をしていると”コンコン”とノックがしたから扉を開けに行った

「ヨルさん、朝食の用意ができましたので用意ができましたらお越しください」

ミハーゼが朝食を教えてくれた、朝食なんて誰かが教えに来てくれるものなんだと違和感を感じつつ、心の中では凄い驚きだった。

ヨルはコクリと頭を縦に振って分かりましたと伝えた

それを見てミハーゼは待ってるねと言わんばかりの笑みを浮かべて食堂に戻っていった


昔チャイムで朝起きて時間通りに用意して食堂でご飯を食べている時があったのを思いだす、いつも用意された食べ物は取られてしまいやせ細って違う場所へ行った記憶だけ断片的に思い出す、そんな現実はもうないのに、そうじゃないかと不安が押し寄せてくる。

精神は一度壊れると治るのには時間がかかる、傷ついた心は完治することはない、心の傷を忘れたところで脳が覚えていたら結局傷は戻る、意味のない事はしないと決めてただ生きても付きまとうトラウマ・・・


急がないとと少し慌ててクローゼットから刺繍が施されたワンピースに着替える。

慌てていてノックに気が付かずに着替えていたら、ドアが開いてスイが入ってきてしまった。


「ヨル、起きたかい朝食に・・・わああ・・・」

スイは慌てて目をそらしたが、ヨルは何も動じることなく被りかけのワンピースをパサッとおろした。

なんでびっくりしてるんだろう、もしかして私がノックに気が付かなかったからかもしれない、、、申し訳ない事をしてしまった


またもすれ違う思考、スイとヨルはマイペースな分気が付いていないことですれ違っているが害のないすれ違いだから誰にも気づかれない


動じないヨルを見て、ひと呼吸おいて咳ばらいをすると、気持ちを立て直してヨルに「行こうか」と声をかけなおして一緒に食堂まで行った



朝食を食べながらスイが言いづらそうにヨルに話し始めた

「ヨル、今日の夕刻にあの街に行く事にしたんだが君はどうする?」

当然行くと思っていたので頭を縦に振りながら行きますとゆるぎない態度で返事した


死にに行くわけじゃないけど別に死んでもいい、ただあそこにいたご両親を助ける事だけはしてあげたい、それに気がかりなこともいくつかある。


それが解決してもしなくても、途中で約に立てなくなっても、それでいい、死に場所は自分で決める

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