01 召喚
東京雑居ビル屋上に憔悴しきった女性がビルのフェンスを越えて立っていた、大雨で誰も気が付かないそこで躊躇なく飛び降りた。
「これでやっと楽になれる―」そう心で思って安堵の顔を見せ降下中に気絶した彼女を大きな花びらの光が幾重にも重なり包み込んだ、つぎの瞬間光は消え、何も変わらない大雨の夜が続いた。
「ハァハァ・・・」
「アマギ様、成功です」
「あぁ・・・」
窓のない部屋に数人の人間が囲んだ中心に飛び降りた女性が光と共に現れた、しかし、気絶しているためにその場に倒れた
「死んでる・・・?」
「いや、気絶している・・・」
周りの人は警戒して近づかないで様子をうかがっているとコツコツと高い音を鳴らしながら誰かが部屋に入ってきた
「召喚は成功したか?こいつが聖女か?」
貴族よりも上の階級だろうか、周りとはひときわ豪華で目立つ格好をした男が迷うことなく倒れた彼女の髪をつかんで様子を見て見下すように”こんなものか”というような態度で鼻でフッと笑うだけ笑った
「寝ていては素性が分からんな、牢にでも閉じ込めておけ」
「えっ・・それは・・・」
召喚して息を切らして座り込んでいる彼を介抱するように支えていた一人の兵士がつぶやいた
折角召喚が成功して、目の前で倒れこみそうなこの状況で更に召喚者を牢にんなんてあんまりだと言わんばかりの小声が漏れてしまった。
「ばかっやめ・・」
どこからか小さく声が飛んだ瞬間、
「お前、いらない」
「うっわっっ・・」
黒い矢が彼に刺さりそこから大きな風呂敷状にかわるとかれを飲み込んだ
周りは恐怖に凍り付く誰もかれも下を向いて怯えていた。
「明日から役に立ってもらうから、ちゃんと起こしとけよ」
偉そうな物言いで豪華な装いの男は去って行った
「どうする・・・召喚しておいて牢はさすがに・・・」
「でも俺たちにはどうすることもできないだろ、飯と外套だけなら用意してもお咎めはないだろ」
「そうだな・・・」
「全く、あの力があるなら戦場の先陣をきってくれればいいのに」
「仕方ないさ、必ずしも力がある人が戦うわけじゃないんだろ、ましてや国の王ならなおさら」
「あれが王なんてこの国は終わってる・・・」
「事情を知らない街は豊かだからな・・・国の為にと志願したら現状を知るなんて・・・皮肉だな・・・」
「彼女を連れて行こうか、濡れているから拭くものも用意してあげられるか」
召喚したアマギが少し回復して立ち上がった
「はい、あまりたくさん用意はできませんが」
「じゃあ、行こうか」
アマギは優しそうな顔立ちでストレートの長い髪を1本に結わえた長身を近くにいた兵士に肩を借りて歩き出した。