ファンタジー・ワールド(4)
メビウスの冒険(1章)について.4~under dog(負け犬)~
ヴォルフ王は戦いの準備を命令する。松明の火に当てられた兵士たちは急ぎ準備を始めていた。傷だらけの男が言った言葉が本当ならば敵には強大な魔力を持つ者がいるとシドは言う。
月光の砦はミドル・マウンテン最大の砦であり、フレーシュン大陸統一前の大きな戦いにてアルフレッド1世が籠城した際も圧倒的な軍を率いたダベールの将軍が落とすこと叶わなかったほどの頑強さであった。シド自身立ち寄ってマウンテン・ドッグスの砦の防衛体制を見ており、容易に落とすことは難しいと考えていた。
さらに月光の砦に近い距離までやってきていたシド達に戦の音も、黒煙の上がっていることも気づかせなかったのは恐らく魔力の膜を張っていたからであるとシドは言った。
山賊にそれほどの力を持つ者はいない、ブラック・セブンズ仕業であるとにらんだシドはメビウスとカルードを拠点に残そうと考えたが、カルードの姿が見つからない。シドは最悪の事態を想定し、1人、月光の砦へと向かう。
だが、後ろからメビウスも付いてきており、1人で拠点に戻すのも危ないため2人で月光の砦へ進んでいく。
一方、男の話を聞いたカルードはマウンテン・ドッグスの仲間たちの安否を心配し1人で月光の砦に向かっていた。父は無事なのか? 必死に山を走り抜けカルードは月光の砦へと到着する。砦の中の様子を探るカルード。中には敵対していた山賊やブラック・セブンズの一員と思われる黒装束の者たちが次々と出たり入ったりを繰り返していた。
さらなる侵攻に向けての準備をしているのであろう、マウンテン・ドッグスから取り上げたであろう武器や防具、宝石や食料など集めていた。カルードは気づかれないように砦の中へと入り、父グェインを探す。
その中でカルードは家族同然のマウンテン・ドッグスの仲間達が次々と処刑されているのを見てしまい、助けるために姿を現してしまう。
そして山賊達の首領、ボッホイ・デンデルズと対峙することになる。
わずか10歳の子どもが山賊の頭を相手に勝てるはずもなく、カルードは弄ばれて満身創痍の状態となる。
ボッホイはカルードに止めをさそうと剣を振るう。しかし、寸前にシドとメビウスが到着して山賊や黒装束の者達をシドが次々となぎ倒し、ボッホイに対峙する。
ボッホイもまた、倒れた子どもを切るよりも英雄シドとの一騎打ちを望み、シドへと襲い掛かる。シドは軽々とボッホイを打ち負かし、さらに襲ってきた山賊達も倒していく。
だが、そこに1人の男が現れて状況が一変する。現れたのは変わり果てた姿のグェインだった。
グェインの姿を見てカルードは涙を流す。父の姿をしたそれは身体中から血を流しており、口からは涎を垂らし、人間としての尊厳を奪われていた。シドはグェインの身に何が起きたのかを悟る。
グェインはブラック・セブンズの1人「色欲のルースト・ブラック」により、魔法をかけられ、操られていた。死のギリギリまでいたぶられている身体を色欲の魔法により強制的に操られ、人間性も消されたグェインは飼い主の言うことを守る犬と化していた。
シドはルースト・ブラックの所業に怒り嘆く。この魔法からグェインを開放するには殺すしかないのだ。ルースト・ブラックの魔法から自由になるには「死」しかないことをシドは知っていた。
ルースト・ブラックへの怒りと、自分自身に対して、間に合わなかったことのやるせなさに苛まれつつ、シドはグェインを斬るのであった。