表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/335

97話 王都決戦⑤(テレサ②)

「剣聖の娘よ・・・、いや、今の貴様は別の存在になったようだな。」


ザンが私を見ているけど、ダラダラと冷や汗をかいています。


「ふふふ、ここまで儂が高揚するとはな。あの勇者と対峙した時よりも心が躍っているぞ。娘と呼ぶのは失礼だ。改めて名前を聞こう。」


へぇ~、あのグレンやリズみたいなゲスな態度じゃないんだ。あっちの殿下に抑えられている連中も、自分の国の皇女すら簡単に殺せるほどのクズなのにね。

こいつだけはまともな感じするわ。


だから、私も剣士としての礼を尽くすわ。


「テレサよ。勇者レンヤの妹であり妻の1人よ。」


「おい!テレサ!お前、どさくさ紛れに何を訳の分からない事を言っている。」


兄さんがなぜか慌てています。


(私って変な事を言った?)


妹って言うのは本当だし、この戦いが終わったら私は正式に兄さんにプロポーズをして結婚するんだからね。私と兄さんが結婚というハッピーエンドで結ばれる、それは確定なのよ!その邪魔をする者は何人たりとも許さないわ。


「兄さん、これは本当の事だよ。このザンに冥土の土産として教えてあげているの。兄さんに手を出したらどうなるか?徹底的に私が教育してあげるわ。あいつには死を与えるけどね。」


「ふはははぁああああああああああ!テレサとやら!豪気よのぉおおお!」


ザンが嬉しそうにしています。


グッと再び剣を構えます。


「ザン・・・、剣士は言葉で多く語らないわ。」


ザンがゆっくりと頷きました。


「そうだ。全ては剣で語り合うものだ。」


私が下段で構えると、ザンも私と同様に下段に構えます。


「「いざ!勝負!」」



ギィイイイイイイイイン!



同時に飛び出し下段から一気に剣を振り上げ袈裟切りで迎え撃ちました。

まさかザンも私と同じ兼筋とは驚きます。

全く同じタイミングで剣が合わさりました。


「ふはははははぁあああああああああああああああ!見事な剣よ!これが聖剣ミーティア!剣では対等に立ったか!」


「ミーティアはこんなものじゃないわ!伝説の力を見せつけてあげる!」


「ぐはははぁあああ!これで儂も本気を出せる!儂を失望させるなよ!」


「私を舐めるなぁあああああああああ!」



ギャリィイイイイイイ!



お互い相手の力を利用し一気に後ろへジャンプします。

空中でザンが剣を振りました。


「真空破斬!」


さっきの兄さんの技のように剣先から衝撃波が飛び出します。

違う!これは真空の刃!


(ならば!)


「烈空連斬!」


私も空中で剣を振ると、剣筋からいくつもの三日月の衝撃波が飛び出しました。

一度にこれだけの数が出せるとは、自分自身でも驚きです。


シュバババ!


そのままザンの真空波を切り刻みザンへと飛びました。


「くっ!」


空中のザンは身動きが取れず躱し切れずに烈空斬の衝撃波をまともに喰らいました。


「がはっ!」


しかし、さすがは剣鬼と言うだけあります、体勢を崩しながらも辛うじて床に着地しました。


「ぐっ!何てパワーだ・・・」


ギリリと歯ぎしりをしながら私を睨みつけています。


「だが!これは受けられるか!我が神速の剣を喰らえぇええええええええええ!」


ドン!と床が鳴るほどの踏み込みでザンが私へ迫ってきます。

先程の私なら全く目が追い付かず、さっきの脇腹を切られた時のように訳も分からず刻まれていたでしょう。


だけど今は・・・


(見える!体も軽い!)


これなら私もあの剣技を、神の剣技を使えるかも?

神速の速さでザンが私の目の前まで迫り剣を振り下ろしました。


「何!」


振り下ろしの剣がいくつも見えます。


「六花斬!」


一瞬にしていくつも斬撃を打ち込むなんて!

だけど!私も負ける気はありません!


(今こそ無蒼流を試す時!)


「無蒼流奥義一の型!円の型!」

剣を下段に構え円を描くように剣を振るいました。そして一瞬で全ての斬撃を受け止めました。


ズザッ!


またもやザンが後ろへ飛び私との距離を取りました。

下段に構えていましたが、ゆっくりと剣を正眼へと構えます。


「テレサとやら、この剣は一体・・・」


「神より授かりし剣の技、その名も無蒼流・・・」


「神の剣とは・・・、ふふふ・・・、ふはははははぁあああああああああああああああ!」


ザンがいきなり大声で笑い始めました。


「これは何たる幸せ!まさか!神の剣をこの目で見られるとは!最高に幸せだぞぉおおおおおおおおおおおお!」


(ちょっとこの人変態?何でここまで喜んでいるのよぉおおお!)


「テレサとやら感謝する!魔人となったこの身で敵う相手などいないと思ったが、こうして心から楽しめる相手に会えるとはな。儂の力が神に届くか?試させてもらうぞ!」


スッ!


ザンの姿が消えた?どこ?


(上!)


剣を上に掲げた瞬間に剣に襲撃が走ります。


キィイイイイイイイン!


何てパワー!片手で防ぎ切れなかったので、両手で剣を支え受け止めました。


キン!キン!キン!


まるで嵐のような攻めなんて!

上からの剣を防いだ瞬間、すぐに左からの斬撃が襲って来ます。左手を支点にし剣を縦にして受け止めます。

次の瞬間、今度は右から斬撃が襲ってきます。

上半身を捻る事ですぐに右からの剣を受け止める事が出来ました。

そう思ったら、今度は私の足を狙った切り下ろしが襲いかかります。

クルッと手首を捻り、剣を逆手に持って受け止めました。


お互いに距離を取り、再び正眼に構えました。


「ここまで儂の剣が届かないとは・・・」


ザンはゼイゼイと激しく肩を上下させながら息をしています。


それにしても不思議です。

ザンの剣筋が見えるのです。私の目に光の線が見えると、その線に沿ってザンの太刀が襲ってきます。

まるでザンの剣を先読みしている感覚です。


(これが無蒼流奥義の先の目!)


あれだけ苦労していたザンを上回れるなんて想像もしていませんでした。

しかし、これだけ強力な力は・・・


(くっ!体が追い付いていかない!)


先程に比べ一気に体力が落ちています。


(まだまだ未熟ね。兄さんに追い付けるのはいつになるのかな?)


「ふはははぁああああああああああ!いくら神の剣でも使い手に限界が来たようだな。だが、儂は手加減をせんぞ!儂の剣が神をも超える!それを証明する!」


ザンが高らかに笑っています。


「そうね、いい加減に決着を着けようと思っていたのよ。いくらあなたが私より強くても、この技は確実にあなたを仕留める。最後の勝負よ!」


剣を目線の高さに構え、切っ先をザンに向けました。


「ならば!儂も最高の剣で応えよう!」


ザンが上段へ大きく振りかぶると、一気に剣気が私へと叩き付けられました。

これだけの剣気を放つなんて・・・

兄さんの次にあなたは強い!


兄さんへと届く前に立ちはだかる大きな壁!それがあなただった。


だけどぉおおおおおおおおおおおお!



「その壁をぶち抜く!兄さんの隣に立つ為に!」



「無蒼流秘奥義、終の型・・・」


私の放てる最大の剣です!

剣気を最高に高めます!


「な、何だこれは?なぜ雪が降っている?」


私の周りに雪が降り始めました。

「これは私の剣気を最大に高め、絶対零度の空間を作り出しているのよ。この雪が舞い散るごとくあなたの命も儚く消え去るわ。私の最大の技を!神の御業をこの身に受けなさい!」


私の背後からザンへと雪が舞い散ります。その雪が一気にザンへと向かって吹雪に変わりました。


「乱れぇええええええ!」


吹雪に私の体を一体化させ一気にザンへと迫ります。


せつ!」


目線に合わせて構えていた剣を一瞬で数百いえ数千ともいえる突きを放ちます。


ガガガガガァアアアアア!


「ぐひゃひゃひゃひゃひゃ!」


ザンが魔剣で防御していましたが、魔剣が耐え切れずに砕け全身が穴だらけになっています。


げつ!」


突きから剣を上段へ構え肩口から一気に袈裟切りを行うと、その軌跡がまるで三日月のように輝きます。


!」


切り下ろした剣を一気に切り上げました。

その瞬間、まるで大きな真っ赤な花が咲いたようにザンから血飛沫が舞い散りました。




沈黙が続きました。



ドサッ!



ゆっくりと仰向けにザンが倒れます。


「み、見事・・・、これが神の剣・・・」


そして私は頷きました。

「そう、神が私に与えてくれた最強の技『乱れ雪月花』、誰も破ることは不可能よ・・・」


「ふふふ・・・、そうだな。技のあまりの美しさに儂は戦いの最中だというのに見とれてしまった。これだけの素晴らしい技を見る事が出来るとは儂は満足したよ。もっと儂が若ければ間違いなくお前に求婚したのにな・・・、剣に生き剣だけしか考えられなかった儂だが、それだけ儂の心を鷲掴みにされるとはな・・・」


「それは無理ですよ。私には心に決めた人がいますから・・・、その人の隣に立ちたい、守られるだけではない、一緒に歩みたい人がいますからね。」


「こうもあっさりと断られるとは・・・、ますます惚れてしまったよ。」


ザンの手足が灰になって崩れ始めています。


「どうやら儂も終わりだ。ありがとう・・・、最後に最高の人に会えるとは儂の人生も悪くなかったよ・・・」




「最後に人の心を取り戻せた気がする。悔いが無い最後だよ・・・」




そのまま全身が灰になり崩れて消えてしまいました。

私は深々と頭を下げました。


「敵に間違いありませんでしたが、あなたは私の師匠でした。あなたのおかげで私は強くなれました。感謝します・・・」


ポロっと涙が流れます。



「テレサ・・・」


兄さんが後ろから声をかけてくれました。

振り返ると優しく微笑んでいました。


「兄さん・・・」


「まさか、ミーティアの後継者がテレサだったなんてな・・・」

そう言って私の手に握られているミーティアを見つめています。


「そうよ兄さん、私と兄さんは結ばれる運命だったのよ。アーク・ライトとミーティア、お互いに引き合い寄り添う運命の剣だしね。だから・・・」


ジッと兄さんを見つめます。胸がドキドキしています。


「改めて言うわね。」


顔まで真っ赤になっているのが分かりますけど、ちゃんと言わないと・・・


「兄さん、好きです。大好きです。もう兄さんしか考えられない・・・、だから、私と正式に結・・・」



「はいはいは~~~い、そこまでよ。」



・・・



「はい?」



いきなり私と兄さんの前に誰かが割り込んできました。


「兄妹で結婚なんて倫理的にアウトよ。」


(誰よ?この人は?)


私の目の前にいる人は、アン姉さんやラピス姉さん達に匹敵する綺麗な人です。そういえば、こんな綺麗な人が何でさっき殿下のそばにいたの?そして、どうもこの顔は覚えがあるけど・・・


「レンヤさんへの告白は私が1番最初にしたのよ。500年も前からね。既にレンヤさんは私と結婚する約束をしていたの。あなたみたいなポッと出の小娘なんかに渡さないわよ。」


メラッ!


この女!一体何を言っているの?兄さんの1番は私なのよ!あなたこそポッと出では?少しくらい色気があるくらいで調子に乗らないで!


(・・・)


(500年前?)


「はっ!」


(まさか!)


「おいおいソフィア・・・、大人げないぞ・・・」


兄さんが困ったようにしています。


「ソフィアって・・・」




「はぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!」




まさかのまさか!


あのソフィア様!


確かに肖像画に似ているけど・・・


でも、今、目の前にいる人は肖像画に比べてとっても大人っぽいんだけど・・・


そう言えば、王都に来る目的がソフィア様の復活だったわね。そういう事は・・・



目の前にいる人が本物のソフィア様なの!



実は・・・


私は物語の中で1番好きなのはソフィア様なんです。

その憧れの人が目の前に・・・


「お姉様とお呼びしても?」


思わず言葉が出てしまいました。


「良いわよ。」


さっきまでの怖い顔が嘘のように優しく微笑んでいます。本当に聖女なんですね。この笑顔だけで満足してしまいます。


「ソフィアお姉様・・・」


「どうしました?」


「ソフィアお姉様なら兄さんのお嫁さんになっても良いですよ。そして私も一緒にはダメですか?」


「う~ん・・・、それならOKかもね。」


ソフィア様が私の手を握ってくれます。


「テレサちゃんだっけ?2人でレンヤさんの隣を独占しない?ラピスやあの子には負けたくないから、協力してくれる?」


「はい!喜んで!」



「お前らなぁ・・・」



兄さんがとても呆れた感じで見ていますが、これは譲れません!


「兄さん、ソフィア姉様と共々よろしくね。」



「あっ!」


チラッと殿下を見てみると・・・


アン姉さんと一緒にとんでもないくらいの怖い顔で睨みつけていました。


(殿下!抜け駆けしてごめんさない!)


心の中で殿下に謝りました。













しかし・・・


後で知ったのですが・・・




殿下の方が先に抜け駆けして既に兄さんと男と女の関係になっていたと・・・


しかも!あの旅の間、何度も私に内緒で兄さんとデートをして、夜は同衾して愛し合っていたりと・・・


殿下はもう兄さんの妻の1人としてみんなから認められていたなんて・・・


「テレサ、ごめんね。」


ペロッと殿下が可愛く舌を出して謝っていましたけど・・・



その事を聞いた時はショックで3日も寝込んでしまいました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ