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93話 王都決戦①(シャルロット①)

SIDE シャルロット



時間はレンヤ達がソフィアに会う少し前に戻る。



「ふぅ~」


思わずため息が出てしまいました。

昨夜はレンヤさんから魔王が現れるかもしれないと言われたけど、この事を知っているのはこの中では私だけです。まぁ、そんな話はさすがに誰にも話せませんけどね。


ぐるっと周りを見渡すと、私の父である国王と、第一王妃のカトレア様、そして私の母である第二王妃のシスレイア母様がソファーに座っています。

その他に今回の主役でもある第一王子のアベル兄さんがいますが、兄さんはとても緊張していますね。

2年ぶりに帝国のリーゼロッテ皇女殿下がお越しになりますし、本日は兄さんと皇女殿下の婚約式でもありますから、緊張するのは仕方ありませんね。


本来は第二王子のカイン兄さんも一緒にいらっしゃるはずですが、騎士団の団長として護衛をしなければならないととの事で、テレサと一緒に皇女殿下の護衛に行っています。


今の私がいる場所は王城の接見の間に繋がる控室みたいな場所です。先に接見する者、今回は皇女殿下とその使節団ですね、その方々達が接見の間にて控え、その後、私達がその部屋に赴く手筈になっています。


「シャル、どうしたの?何か浮かない顔をしているけど?」


母様が心配そうに私の顔を覗き込んでいました。


「い、いえ・・・、何も無いです。」


「そう・・・」

母様が黙って私を見ています。

いきなりポンと手を叩きました。

「シャル、そう言えば兄さんからの手紙で勇者様が現われたってね。しかも、あのテレサちゃんのお兄さんだなんて・・・、世の中は広いようで意外と狭いわね。」


そしてジッと見つめます。


「途中まで一緒だったのでしょう?それで、あなたは何もしなかったの?小さい頃から勇者様大好きだったあなたは?」


(か、母様・・・、何でこんな時に?)


旅はずっとレンヤさんと一緒にいましたし、結婚の約束もして、それにもう抱かれてしまったし・・・

王族として恥ずべき行為でしょうが、私は後悔していません。私はレンヤさんと一緒になりたい、その為なら王族の地位も捨てても良いと思っているくらいです。


レンヤさんとの甘い時間を思い出すと顔が赤くなってきます。


最初は勇者様であったレンヤさんを好きだったけど、一緒に旅をしてレンヤさんその人が好きになった私がいます。ラピス様もみなさんがレンヤさんが好きなのは良く分かります。一緒にいると心が落ち着きます。ずっとレンヤさんの馬車にいたからアイ達には悪い事をしたけどね。


(それに昨日も・・・)


時間が無くて抱いてはくれませんでしたが、ほんの一時でも一緒にいれたのは幸せでした。


「ふふふ・・・」


母様が私を見て微笑んでいますが?


「そういう事ね。」


「母様、どういう事です?」


そっと母様が私の手を握ってきました。


「シャル、あなたは自分では気付いていないみたいだけど、兄さんのところから帰ってきたあなたはとてもキレイになっていたわよ。見た目ではなくて、あなたから漂う気品が全く違っていたからね。どうやら恋をしてその恋が実ったようね。アレクセイさんとカトレアさんは気付いていないみたいだけど、私には分かるわよ。伊達に母親じゃないからね。」


ドキッ!


(母様にはバレていたの?)


母様がそっと私の耳に顔を近づけてきました。そしてボソッと呟きました。


「もう男と女の関係になったの?」



「母様!」



思わず叫んでしまいました。




・・・




周りのみんなの視線が私に集まっています。


「シャル、どうした?」


父様がジロッと私を睨みました。


「あなた」


母様が父様に話しかけました。


「シャルがかなり緊張しているみたいだったから、ちょっと気持ちを切り替えるようにしたのよ。あまりこのような場に出た事が無いから、少しリラックスをね。」


「そ、そうか・・・、シャル、少しは落ち着いたか?」


「は、はい!父様、申し訳ありませんでした。」


そして母様を思わず睨んでしまいましたが、「うふふ・・・」と言って微笑んでいるではないですか!


(あぁ~、完全に母様にバレているわ・・・)


だけど、私が王女としてはしたない、いえ!大問題になるような事をしてしまったのに、母様は落ち着いているのが不思議です。

また、私の耳元で囁きました。


「シャル、おめでとう。」


「母様・・・」


思わず母様を見つめましたが、ニッコリと微笑んでくれています。


(何で?)


「さすがは私の子ね。好きになったら脇目も振らずに真っしぐらなのは私譲りかもね。今時の女は受け身は流行らないし積極的に攻めないとね。私もそうだったし、手段を選んだらダメ。狙った獲物は既成事実を作って確実に仕留めるの。」


(母様・・・、お淑やかに見えたのですが、とっても肉食だったのですか!)


母様の知らない一面を垣間見ました。

もしかして、父様との結婚も母様が父様と結ばれる為に既成事実を?


(今の母様の言葉ならあり得ますね。)


「シャルにはね、王族の柵など無くして好きな人と結ばれて欲しかったのよ。でもね、あなたの好きになって結ばれた相手がまさかの勇者様なんてねぇ・・・」


「そ、それは・・・」


「良いのよ。私はシャルが幸せになってくれるのが1番だからね。打算もあるけど、勇者様を引き入れたのはこの国としても重要なんだからね。アレクセイさんも喜ぶと思うわよ。」


「そうなんですか?」


「そうよ、今はちょっとお話し出来る機会ではないから後で私から伝えておくわ。まだ清い関係という事にしておくわね。」


「か、母様・・・」


母様に敵いません。全てを見透かされているみたいで、また顔が真っ赤になってしまいます。


「ふふふ・・・、カトレアさんのアベルさんに私のシャルと、おめでたい事が重なったわね。」


「そ、そうですね・・・」



だけど・・・



私が1番気にしているのは・・・



やはりレンヤさんから聞いた魔王の事です。


いくら心配するなと言われても、やはりとても心配です。

かつての勇者パーティー4人がかりでやっと倒せた存在です。そんな存在が甦って、ここを襲うと言われているのですから・・・


しかしグッと拳を握ります。


まだ非公式ですけど私もレンヤさんの妻の1人、みっともない真似だけは出来ません!


(いざとなったら、私の力で皆を守ります。)




【心配しないで。】




(誰?この声は?どこからなの?)


指輪を確認しましたが、今の言葉はレンヤさん達の念話とは違います。

念話は頭の中に響くような感じですが、今のはもっと私の中から聞こえた気がしました。


(気のせいかな?)


かなり緊張していますので、周りの言葉を何かと勘違いしたかもしれません。



文官が部屋に入って来ました。


「国王様及び皆様方、接見の間の準備が整いました。貴族様達も既にお並びになられております。そして、使節団の方々も入場され国王様方をお待ちの状態です。」


「分かった。」


父が立ち上がり扉へと歩き始め、我々も父様に続き歩き始めました。



(いよいよですね。)






「面を上げい。」


父がそう仰ると、片膝を付き頭を下げていた使節団が頭を上げました。

先頭にはリーゼロッテ皇女殿下がいました。

アベル兄さんに紹介された時は2年前で、それからは帝国に戻られお顔は拝見していませんでしたが、当時よりももっと美しくなっています。女の私でもため息が出る程に美しいなんて・・・

ラピス様やアン姉さん達と遜色ないほどに美しいなんて、兄さんには勿体ないですよ。


チラッと兄さんを見てみると・・・


(はぁ・・・)


デレデレしていないでしっかりして下さい!



「この度は・・・」


リーゼロッテ皇女殿下が口上を述べた瞬間に・・・


「殿下!申し訳ありません!」


私の後ろで護衛として控えていたテレサがいきなり皇女殿下の方へ駆け出しました。


「テレサ!何を!」


父様が座っている玉座の位置は周りよりも何段か階段を登った場所にあり、私達は父様の後ろに控えていました。その後ろからテレサが飛び出し、一気に段を飛び降ります。


「貴様ぁああああああああああ!何者だぁああああああああ!」


皇女殿下の後ろに控えていた男へとテレサが剣を抜き斬りかかります。



キィイイイイイイイイイイッッッン!



剣がぶつかり合った音が響きました。


テレサに斬りかかられた男はいつの間にか剣を取り出してテレサの剣を受け止めています。


(何で?)


この接見の間に入る時は剣などの武器は持ち込み禁止の筈です。厳重に身体チェックを行って、絶対に持ち込むことは出来ないのに、それを何で持っているの?しかも、短刀などならともかく普通の剣を帯剣しているなんてあり得ません!


(しかも!真っ黒な剣ですって!)


「まさか・・・」


いきなりの出来事に皇女殿下が慌てて立ち上がり身構えています。


「トーマス!あなた!何をしているのですか!剣を持ち込むなんて、この国に対しての敵対行為と同じではありませんか!」


皇女殿下が叫んでいますが、テレサと剣をつばぜり合いをしている男がニヤリと笑いました。

あのテレサの剣の前に何で余裕なの?


「ふふふ、道案内ご苦労。貴様のおかげですんなりここまで辿り着けたよ。籠の中の小鳥はこんな事くらいしか役に立たないからな。ゆっくり休んでくれ。永遠に・・・」


ズバッ!


真っ黒な光が皇女殿下の胸に吸い込まれました。


「がはっ!そ、そんな・・・」


胸から血が滴り落ちゆっくりと倒れました。


「リィイイイイイイイイイイイイゼェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」


アベル兄さんが階段を駆け下り皇女殿下を抱えました。


「リゼ!どうして!」


「アベル・・・」

だけど皇女殿下はもう・・・

「ごめんなさい・・・、父が変になっていたのは気付いていたけど、こんな事をするなんて・・・」


そしてゆっくりと目を閉じました。


「リゼ!リゼ!そんなぁあああああああああああああああああああああああああああ!」


兄さんの慟哭が響きました。



(な、な、何が起きているの?)


あまりの事で体がガクガク震えて何も出来ません。


(怖い!テレサは?)


さっきの男とまだつばぜり合いをしています。

しかしその男のニヤニヤ顔がまだ続いていますが、テレサ相手になぜそこまで余裕でいられるの?


「ふふふ、さすがは剣聖と呼ばれているだけある。この私の次の太刀を出さないようにしているとはな。だけど、まだまだ未熟、私の餓えを潤すほどではなかったか・・・」


「くっ!」


テレサが一瞬で後ろへと飛びました。

しかし、着地した瞬間に膝を付いてしまいます。左肩にじわりと血が滲んできました。


「ほほぉ~、辛うじて躱すとはなかなかのものだ。真っ二つになると思っていたけどな。少し評価を上げよう。」


「黙れ!」


「ふふふ、いい目だ。貴様なら我が名を名乗っても良いだろう。」


(何!顔がグニャリと歪んで別人の顔に!)


しかも!肌の色が少しずつ紫がかってくる!それに額にあるものは!大きな赤黒い角が!


「魔族?」


思わずその言葉が口から出ました。


その男が私を睨みます。


「そこの小娘!私は魔族のような下等な存在とは違うのだよ。」


(違うって、どういう事なの?)


「剣聖の娘よ、改めて自己紹介をしよう。私はサーベラス帝国7将軍が1人、『剣鬼』ザンだ。まぁ、この肩書きは元だけどな。今は皇帝陛下から更なる力を与えていただいたのだよ。」


後ろに控えていた6人が立ち上がります。

その6人も顔が歪んだと思ったら別人の顔に変わり、全員が紫色の肌と額に大きな赤黒い角が生えていました。

その1人の女性の右手の掌に黒い光がバチバチとしています。その光が皇女殿下を襲ったのに間違いありません。


「ふふふ、我ら7将軍は人間の壁を越えたのだよ。人族、魔族、そんな下等生物など我々の足下にも及ばん。この世界は我々が支配する。ガルシア皇帝陛下を頂点とした我々新人類『魔人』がな!」



ゾワッ!



「な、何!この圧倒的な圧力は!」


魔人と名乗った彼らの後ろから圧倒的な存在を感じます。怖くてガタガタと体が震えます。

グニャリと空間が歪んで3人の人影が現われました。

その3人の中の1人は見覚えがあります。サーベラス帝国のガルシア皇帝?


だけど・・・


身長は軽く2mを越えているし、他の人と違って額と側頭部に3本の角が生えています。

他とは違う圧倒的な威圧感を感じます。


(あれがレンヤさんの言っていた魔王?間違い無いわ!)


その魔王が父様を睨みニヤリと笑いました。


「アレクセイよ、お前の国はもう終わりだ。いや、人族、魔族、エルフ、獣人、我ら魔人以外の下等生物は全て我らの奴隷だ。逆らう者は全て滅ぼす。全ての種族を越えた我ら魔人に逆らえる存在などいないからな。がはははぁああああああああああああああああああああああああ!」


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