表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/335

92話 ソフィア復活⑩

涙を流しながらソフィアが俺に向かって駆け寄って来た。

とても綺麗になっていて、そちらの驚きが大きい。結界越しで見た姿よりも、こうして実際に見る姿の方がとても綺麗に見える。あの時はまだ幼さもあって少女って感じだったのに、まさに聖女と言われても遜色ない程の神々しさを感じる。


(こうして向かって来るから抱きしめた方が良いのかな?)


そう思った瞬間!



ゾクッ!



急に背筋に冷や汗が流れた。


(何が起きるのだ?)


俺の危機センサーが最大限の警報を放っている。


フッ!


目の前のソフィアが消えた!


「どうした!」



ズザザザザザァアアアアア!



いきなり足元から床を擦る音が聞こえたと思ったら、足元にソフィアがスライディングをしながら迫っている。しかもだ!ソフィアの目が怖い!まるで獲物を捕獲する捕食者の目だ!


(何で俺が狙われる?)


そう思った瞬間に、ソフィアが俺の足をカニばさみで挟んだ。



ガッ!



(は、速い!)


俺が反応する事も出来ない程のソフィアの早業だ!

あのソフィアが何でこんな事まで出来る?


(あいつはサポート専門で戦闘は何も出来なかったはずだけど何で?)


ビターン!


「ぐえっ!」


ソフィアのいきなりの奇襲で訳が分からないうちに倒されてしまう。受け身も取れないくらいの早業で、思いっきり顔面を床に打ち付けてしまう。


(い、痛ってぇええええええええ!)


しかし、倒れた瞬間にいきなり右腕を握られてしまい起こされてしまった。

どんな力業だよ!あのソフィアが本当にどうした?


ガシッ!


(う!)


ソフィアが俺の後ろに回り込み、後ろから俺の腰をガッチリとホールドしてきた。


(こ、これはヤバい!)


一瞬で背中に恐怖が走る。このままじゃ死ぬ!

しかし、ソフィアは無常にも俺を腰だめに持ち上げる。何てパワーだ!

フワッと上昇したかと思うと、一気に俺の体を後頭部から床に叩き付けた。

ソフィアのあまりの早業に全く反応出来ない!


ドガァアアアアアアア!


「ぐほっ!」


床に後頭部がめり込んだ感触がはっきりと感じる。


一瞬意識が飛んでしまった。


ハッと我に返ったが・・・

ソフィア!石の床にジャーマンをするなんて何を考えているんだぁあああああああ!

俺の異常とも言える頑丈さで何とか死なずに済んだけど、普通の人間なら頭が破裂して死ぬぞ!


それ以前にだ!


お前!どこでこの技を覚えたのだ!

しかもだ!この技の切れ!確実に息の根を止めるほどの完成度だぞ!

ラピスからソフィアがヤバイ奴になったと聞いていたが、これは俺の想像を超えている。

破壊者デストロイヤー』ソフィアなんて誰が想像出来る!


起き上がろうとしたが、後頭部をしこたま床に打ち付けてしまっているので、まだ体に力が入らない。


ガシッ!


ソフィアが俺の両足首を握り自分の脇の下に挟み込んで俺を持ち上げようとしている。


(まだ拷問が続くのか?もう勘弁してくれぇえええええええええええええええええええええ!)


朦朧とした意識の中でソフィアの顔が見えたけど、目が完全に据わっている。あのヤンデレモードのテレサでも可愛いと思う程の狂気が全身から発せられていた。


(ソフィア!頼む!目を覚ましてくれぇえええええええええ!)


しかし、俺の願いも虚しく俺の足を持ちながら回転を始めた。


ブオン!ブオン!ブオン!


徐々に回転が速くなってくる。


「うわぁああああああああああああああああああ!」


血が・・・、血が・・・、遠心力で頭に血が上ってぇぇぇ・・・


意識がボ~ッとしてきたけど、ソフィアが何か叫んでいるのが聞こえた。

辛うじて聞こえるのだが・・・


(はぁ!)


「レンヤさんの・・・、レンヤさんの・・・、レンヤさんのぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


ソフィアが絶叫したした瞬間に俺の体が急に軽くなった。

どうやらソフィアが手を放し俺を空中に放り投げたみたいだ。


(このまま高く放り投げられて床に激突か?)


そう思ったけど、世の中はそう甘くは無かった。ソフィアは更に俺を痛めつけてトドメを刺すみたいだ。


ガシッ!


空中にいる俺の後ろに回り、ソフィアが首を締め付ける。

あの速度に追い付くほどのジャンプだと!身体能力は俺以上なのか!

そのまま半回転し頭から床へと落下を始めた。

ソフィアが何でバベルクランベルを使えるのだ?しかもガッチリと極まっている。


(くそ・・・、大回転スイングで頭に血が上り過ぎて体の自由が・・・、もうどうにもならん・・・)


俺の耳元でソフィアの絶叫が聞こえた。


「浮気者ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


(はい?)


その瞬間!


ドォオオオオオオオオオオオオオオオッンンン!



俺の意識が途絶えた。






「ソフィア・・・」


ラピスがソフィアを残念な子を見るような目で見ていた。


「派手にやったわねぇ・・・」


そしてソフィアからレンヤへと視線を移した。


そこにあったのは・・・



頭が床に埋まって人間オブジェとなったレンヤが、床から生えているみたいな状態でピクピクしていた。

アンジェリカも教皇も完全に引いていた。



「す、すみません・・・」



ソフィアがラピスに土下座をし、ひたすらペコペコと頭を下げていた。






「う~~~~~ん」


段々と意識がハッキリとしてくる。

俺の目の前にはラピスの顔があって心配そうに覗き込んでいた。


「俺は・・・」


「良かった、目を覚ましたのね。」


俺が目を覚ましたからか、ラピスがとても嬉しそうにしている。


・・・


(ん?)


今の俺はラピスに膝枕をされていた。

ラピスの膝枕は何度かしてもらったけど、妻達の中では一番気持ちが良いんだよな。ずっとこうしていたいと思ったけど・・・


「はっ!」


さっきまでの事を思い出し頭を撫でてみた。

う~ん、何かブヨブヨした感じだけど、すぐに元に戻るだろう。頑丈さだけは誰にも負けない自信があるからな。


慌てて起き上がると目の前にソフィアが土下座をしていた。


「レンヤさん・・・」


「ソフィア・・・」


「本当にごめんなさい・・・、ちょっと頭に血が上ってしまって・・・」


あぁぁぁ・・・、そういう事ね。

チラッと横を見るとアンが引き攣った顔をしていた。

ソフィアはアンを見るのが初めてだしな。俺が他の女性に手を出していると思われても仕方ない。まぁ、現実にアンと結婚しているし、事情を知らないソフィアに嫉妬されても仕方ないだろう。


それにしても・・・


ラピスが言っていた「ヤバイ」ソフィアは良く分かった。

今のやり取りだけで分かったのは、格闘術は俺以上の技術だろうし、正直、ソフィアと1対1で戦っても勝てないと思う。それだけの規格外の強さを身に着けたなんて・・・


土下座をしていたソフィアが立ち上がり俺の前に来る。

俺はまだソフィアからのダメージが抜けていないので床に座っていたけど、ソフィアが膝を着きギュッと抱きついてきた。


「レンヤさん・・・、本当に生まれ変わったのね・・・」


俺の胸の中で静かに泣いていた。気が済むまでこのままにしておこう。

チラッとラピスを見るとゆっくりと頷いてくれた。

アンも優しく微笑んでくれている。

教皇だけは苦虫を嚙み潰したような顔をしていたけど・・・


「ソフィア、気が済んだ?」


ラピスがソフィアの肩を叩いて微笑んだ。


「うん!レンヤさんに会えたし満足よ。積もる話は色々とあるから、後で3人でじっくりとお話ね。」


ニコニコしていたソフィアだったが、急に視線が鋭くなりアンを見つめた。


「あなたは一体何者?人間ではないわね?しかも、あなたから感じる魔力は覚えがあるわ。いえ・・・、絶対に忘れない・・・、その魔力はかつてのレンヤさんを殺した魔力よ。」


ソフィアがゆらりと立ち上がった。


「事の次第によっては・・・」


グッと拳を構えアンと対峙したその瞬間・・・



スパァアアアアアアアアアアアアン!



「いったぁあああああああああああああああ!」


「このバカ!」


ラピスがソフィアの頭を杖で叩いていた。


(おいおい、あの杖って国宝級の杖じゃないのか?それを遠慮なしに鈍器にするなんて・・・)


「ホント、そそっかしいのは昔から変わらないわね。胸が大きくなった分、脳味噌が減ったのかしら?」


(ん?)


ラピスの言葉で思わずソフィアの胸を見てみると・・・


(デカイ!ローズ級だぞ!胸の大きさにコンプレックスがあるラピスがすぐに食いついた訳か。)


ソフィアが俺の視線に気付いたのか、顔が真っ赤になりモジモジしてしまった。

「レンヤさんのエッチ・・・」


「うっ!」

そ、そんなつもりは無かったのに!

だけど照れているソフィアがとても可愛い!こんなに可愛いとは思わなっかったよ。


「ハイハイ、お遊びはここまで!これからは真面目な話をするからね。」


ラピスがパンパンと手を叩いて場の雰囲気を変える。


「ソフィア、あなたが感じた魔力は間違い無いわ。だって、彼女はあの時の魔王の娘だからね。」



ザワッ!



ソフィアからとんでもない殺気が放たれる。

こんな強大な殺気はあの魔王以上だぞ!近くにいる教皇がソフィアの殺気に当てられ気を失っているよ。


「だから落ち着きなさい!」


ズンッ!


再びソフィアの頭をラピスが殴った。


「い、痛いです!」


涙目になってソフィアがラピスを見ていた。


アンがソフィアの前に立ち深々と頭を下げた。

「初めまして、私はアンジェリカと申します。あの暴虐の限りを尽くした魔王グリードの娘です。今はラピスさんのお力により人間の姿をしていますが・・・」


「どういう事?何で500年前の魔族がここにいるのよ?あり得ないわ。」


ソフィアが鋭い目でアンを睨みつけている。


「本当に落ち着きなさい。本気で怒るわよ!」


「だけどラピス!いきなりこんな事を言われても理解出来ないわ!ちゃんと説明して!」






「そういう事ね・・・、彼女も私やラピスと同じで、封印されこの時代に甦った訳ね。」


ラピスの説明でどうやら事情を理解してくれたみたいだ。


(良かった・・・)


「だけど信じられないわ。邪神の眷属である魔王の娘よ。何でフローリア様の加護を受けているの?」


まだ疑いの視線でソフィアがアンを見ている。

しかし、アンはそんなソフィアの視線を気にせず微笑んでいた。


「それならこれで納得出来るでしょうか?」


次の瞬間、アンの体が輝き、光が収まると魔族の姿になっていた。


「そんな・・・」

ソフィアが驚愕した顔でアンを見ている。

「確かにあなたからフローリア様の神気を感じるわ。それに魔族には絶対無い黄金の角に瞳・・・、本当にフローリア様の使徒なんですね。」


「そうです。」

ゆっくりとアンが頷いた。

「私がこうしてフローリア様の使徒となったのは、魔族と人族との長い戦いを終わらせる為だと思います。全ての種族が平等に暮らす国を作るのが夢です。勇者であるレンヤさんと一緒に・・・」



ピキ!



「レンヤさんと一緒ですって?」


またもやソフィアから殺気が溢れ始めた。

いちいち反応しないでくれ。


しかし、その凶悪な殺気がすぐに一瞬で消えた。


「まぁ、私1人がこうして暴れてもみっともないだけだしね。さっきも言ったけど、詳しくは後でお話しをしましょう。こうしてラピスが一緒にいるって事は彼女は邪悪で無い証拠でしょうしね。」

そしてジッと俺を見つめると、ペロッと舌舐めずりをした。

「レンヤさん、ジックリとね・・・、ふふふ、今夜は寝させませんよ。」


思いっ切り頭痛がしてきた。

何で俺に近づく女連中は全員が肉食系なのだ?俺って襲って欲しいように見えるのか?


(勘弁してくれ・・・)



そして、視線が急に真剣になりラピスを見つめた。


「ラピス・・・」


ラピスも真剣な表情だ・


「ソフィアも気が付いた?」


「えぇ・・・」

ソフィアがコクリと頷いた。

「王城の場所がこの500年間変わっていないとしたら、非常にマズイ事が起きているわね。ラピスはサーチで分かったと思うけど、王城からとんでもなく凶悪な気配がいくつも感じるわ。まさか?」


ラピスがゆっくり頷いた。

「どうやら今世の魔王が現われたみたいね。しかも、王城にいる王族を直接狙ってきたのは間違い無いわ。まぁ、私達にとっては飛んで火に入る夏の虫だけどね。ふふふ・・・」


「レンヤ!」


ラピスが俺を呼んだ。


「私は少しギルドに寄ってから王城に行くわ。あの魔方陣も無効化しておかないとね。」


そう言ってからラピスが姿が消えた。転移魔法で移動したのだろう。


「ラピス!」

ソフィアが叫んでいたけど、急にがっくりとしている。

「転移魔法はあなたしか使えないのよ。私達をここに残してどうするのよ。どっちがそそっかしいの?」


「ソフィア、大丈夫だ。」


「レンヤさん!どうして?」


「俺も使えるからな。」


「はい?何でです?」


「う~ん、そう言われても使えるものは使えるし・・・、まぁ、あの時よりも大幅に強くなったし、邪神の加護を受けた魔王でも負ける気は無いぞ。」


かつての前世の俺よりは格段に強くなっているのは実感している。テレサはかつての俺くらいだろう。そのテレサでも俺には全く敵わない状態だ。あの時みたいにみんなを悲しませる訳にはいかない。


「ふふふ・・・、そうですか。それは楽しみですよ。私はレンヤさんと一緒に戦う事を夢見て頑張ってきましたからね。もう足手まといとは言わせませんよ。」


ソフィアがニコッと俺に微笑んだ。

とても心強い言葉だよ。

いや!それ以前にソフィアの事を足手まといなんて思っていなかったし、本当に頼りになる仲間と思っていたのになぁ・・・、どうやらサポート専門がソフィアにとって嫌だったのかもしれない。

ソフィアの強さはさっきの体術を直接味わったからな。あの技の切れと破壊力は間違い無いと思う。

あんな技を喰らうなんて逆に相手に同情するかも?


「ソフィアさん、私も負けませんよ。レンヤさんの隣は譲りません。」


アンがニヤッと笑っていた。

その笑顔を見て、ソフィアもニヤッと笑う。


「ふふふ・・・、この私に宣戦布告とはいい度胸ね。それじゃ、どちらがレンヤさんの隣にふさわしいか勝負ね。さっきラピスが言っていた魔王の首をどっちが先に取るか・・・」


「それはいい勝負ですね。父に比べれば今感じている魔王の気配なんてゴミみたいなものですからね。私が首をもらいます。ふふふ・・・」


2人が睨み合ってパチパチと視線の火花が弾けている。


(頼むから仲良くしてくれ・・・)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ