表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/335

89話 ソフィア復活⑦

スタタッ!


師匠の横に立っていた2人が飛び上がり、私の前へと立ちました。


1人はさっきニヤッと笑った銀髪の美少女の子です。それにしても、切れ長の目でまるでお人形さんのように整っている顔立ちです。ラピスと比べても遜色ないほどの美人に間違いありません。

そしてもう1人は灰色の髪ですが、隣の銀髪の子と対照的に目がクリっとしてとんでもないほどに可愛い子です。師匠も年齢をもう少し重ねたらあんな感じになるかもしれません。まぁ、ずっと師匠を見ていましたが、全く成長もしていませんし、母親なのにロリっぽい姿もねぇ・・・

でも、この2人はそれほどまでの美少女に間違いありません。可愛いうえに強い。私から見ても羨ましいです。


思わずため息が出てしまいました。


「ソフィア」


何でしょう?師匠が呼びかけてきました。


「あんたも大概の美人よ。ハッキリ言うわ!少なくともあなたの世界ではあなたクラスの美人は殆どいないわよ。もっと自信を持ちなさい。いつも思っていたけど、ホント、あなたは自己評価が低いんだからね。」


(そうなんですか?)


いや!それ以上に何で私の気持ちが分かったのです?


師匠、恐るべし・・・



気持ちを切り替えます。

この2人も師匠と同じ獣人です。

耳も尻尾も色の違いがあっても同じ形でした。


(この人達もフェンリル族なの?)


師匠からは師匠の種族の事は教えてもらいました。


フェンリル・・・


この名前は私の世界でも伝わっています。伝説の最強の神獣だと言い伝えられていました。

そんな伝説の神獣の名を持った獣人族だなんて・・・


師匠もその兄の凍牙さんも化け物のような強さですし、吹雪君もあの歳で既に達人クラスを軽く凌駕していると思います。

そうなると、この2人の実力も相当なものでしょう。私の最後の試験の相手ですからね。


(負けられません!)


グッと腰を下げ構えます。


「美冬もとんでもない相手を寄越したものね。」

ブルっと銀髪の子が一瞬震えました。

「私は冷華よ。それにしてもあなたは自覚が無いの?人間がどれだけの事をすればこうなるのかしら?ハッキリ言って、こんな化け物の相手をするとは思わなかったわ。」


「そうですね。」

隣の灰色の髪の子も頷いています。

「私は雪と申します。隣の冷華とは親友なのよ。私と冷華がコンビで戦ってやっとあなたの相手が務まるのでしょうね。美冬、そうでしょう?」


師匠がニヤッと笑っています。

「冷華も雪もよく分かったわね。さすが、あれからみんなから散々鍛えられただけあるわ。相手の強さをちゃんと分かるようになったじゃないの。そうよ、ソフィアはまだ1対1の戦いしか学んでいなかったからね。今回は卒業試験も兼ねて複数の相手との模擬戦も入れてみたの。特にあなた2人のコンピネーションは見事だから、ソフィアの勉強に最適だと思ったのよ。」


そして私の方を見つめました。

「ソフィア、そういう事よ。戦いは常に1対1ではないわ。複数の対人戦闘を学びなさい。よく考えて戦う事よ。丁度、近距離と遠距離が得意なコンビだし、あなたの成長には絶対に欠かせないと思うからね。」


「美冬ぅぅぅ・・・」

何でしょう?冷華さんがジト目で師匠を見つめていますが?


「あなた、私達をあの子の当て馬にしたの?確かにあの子は正真正銘の化け物よ。でもね!私達にも意地があるからね!逆にあの子をコテンパンに負かせても文句は言わないわよね!」


(私が化け物だなんて・・・、師匠のレベルまでは程遠いのに、何か勘違いしているのでは?)


「ふふふ、どうぞ好きにしなさい。後で苦情を言っても聞かないからね。」


「分かったわ。」

そう言って冷華さんが私を見て指を指してきました。

「あなた!私は本気でいくからあなたも本気で戦うのよ!」


「分かりました。」


そう返事をしてから構えました。


ブオン!


冷華さんが右手を横に振ると、いきなり黄金の大きな両刃の斧を握り締めていました。

一体どこから出したのでしょう?ラピスみたいに収納魔法持ち?

あんな大きな斧を軽々と片手で持っているなんて、どれだけの腕力なの?


(だめよ!あれこれ考えていては相手の思うつぼよ!)


答えはシンプル!あの斧を躱して私の攻撃を当てるだけ!


冷華さんが両手でグッと斧を握り構えます。

「それじゃ行くわね。」


グワッ!


(はっ!速い!)


一瞬で冷華さんが私の前に移動し、黄金の斧を振り下ろしました。


しかし!斧が大きいので、構えた私の右手の掌を斧の側面に簡単に当てられました。そのまま当てた部分を起点に体を捻り、冷華さんの背中にクルッと回り込みます。

今の私と冷華さんは背中合せの状態になっています。


「はっ!」


ドン!


膝を捻り背中を冷華さんへとぶつけます。

今の私は自分の体のどの部分からでも発勁を打つことが出来ます。

私の攻撃は拳だけではありませんので隙はありません。


「がはっ!」


私の発勁を受け、冷華さんが派手に吹き飛び地面を転がっていきます。


「冷華!」


雪さんが地面に蹲っている冷華さんへと駆け寄ります。

しかし近づく雪さんを手を伸ばし止めました。


「雪、大丈夫よ。」

ゆっくりと冷華さんが起き上がりました。

そして私をキッと見つめます。

「何て衝撃なのよ。美冬と同じくらいのパワーなんてあり得ないわ!危うく内蔵が口から飛び出しそうになったわよ!」


そして全身が赤く輝きました。


「何!これは!」


輝きが収まると冷華さんの姿が変化していました。

真っ赤な甲冑に身を包み、その甲冑の背中には何でしょう?翼のようなものが生えています。


「雪!彼女の評価を改めるわ!私達の本気の全力をもってしても勝てるか分からない!それだけの強敵だわ!美冬と思って戦うのよ!」


「分かったわ!」


雪さんが頷くと、全身が青い光に包まれました。

光が収まると冷華さんと同様に甲冑に包まれています。彼女は青い甲冑で天使のような翼が4枚背中に生えています。


2人が纏っている甲冑は何て幻想的なんでしょう。戦いの最中だというのに思わず見とれてしまいました。


「今度は私の番よ!」


冷華さんが叫ぶと背中の翼が赤く輝きました。


フッ!


「消えた?」


ゾクッ!


首筋が急に寒くなりました。


(消えたのとは違う!これは!)


咄嗟に両手をクロスし防御姿勢を取りました。

その瞬間に信じられない衝撃が防御した両手に伝わりました。


ドカァアアアアアアアアアアアア!


「ぐあぁああああああああああ!」


衝撃に耐え切れず吹き飛ばされ、今度は私が地面を転がっていきました。


「ぐぅぅぅ・・・」


何とか立ち上がりましたが、相手のあまりのパワーで防御した私の両手が折れていました。


(私もまだまだ未熟ね・・・)


受け止めた瞬間に腕が折れるほどの衝撃だと分かっていたのに、思わずそのまま受け止めてしまいました。冷静に考えれば受け流す事も出来たのに、あの2人の甲冑に見とれていたなんて本当に未熟です。今は真剣勝負の最中なのに・・・


「まだ続ける?」


冷華さんがニヤッと笑っています。


「ヒール!」


一瞬で折れた腕が治ります。


冷華さんへの答えは・・・


「もちろん続けますよ。私も本気でやらせてもらいます!」


再びグッと構えます。先程と違い心が冷静になっていきます。

吹雪君の時は手加減しましたけど、これからは私の本気で戦って良いのね?

そう思うと自然と笑みがこぼれました。


「さすがは美冬の弟子ね。戦いを楽しむなんて・・・、そうこなくっちゃねっ!私も楽しませてもらうわぁああああああああああ!」


その瞬間に冷華さんが再び消えました。


(これは消えたのではないわ!感じるのよ!冷華さんの気配を!)


目を閉じ全神経を集中します。


「見えた!」


すごい!天使族や女神族でもないのに空を飛んでいる!甲冑から大量の魔力が放出されているのが分かるわ。

どうやらあの甲冑のおかげで飛んでいるみたいね。

しかも高速でジグザクに飛んで近づいている!ここまで細かい動きをするなんて、目で追えないのも分かります。


「だけど!同じ手は通用しませんよ!」


ドン!


右足を思いっ切り地面へと踏み込みました。


ドパァアアアアアアアアアア!


私を中心に周りの地面がめくれ、大量の土が舞い上がりました。

ちょっとしたクレーターが出来上がってしまっています。


「な、何なのコレぇえええええええええええ!」


冷華さんの叫び声が聞こえました。

大量に舞い上がった土の壁で、私へと向かっていた冷華さんの動きが鈍くなったのを感じます。

飛び上がると冷華さんが土煙の壁を突き破って接近してくるのが分かりました。

あの動きを見ると、どうやら私の姿を見失っている感じです。


(隙あり!)


飛び上がった私の下を通り過ぎようとした瞬間に蹴りを入れようとしました。

完璧なタイミングで当てるつもりでした。


(殺気!)


またもや首筋にゾッとした気配を感じました。

右腕をサッと目の前で撫でるように動かすと、数本の矢を掴みました。


「これは!」


私の手に握られていた矢は普通の矢ではありません。光の魔力が物質化した矢でした。


(危ないタイミングだったわ・・・)


魔力を纏わせた手でなければ掴めなかったです。魔力を矢にして放つなんてとんでもない弓です。

矢の飛んできた方向に視線を移します。


私のはるか頭上に黄金の弓を構えた雪さんが浮かんでいました。


「信じられない・・・、何であの矢を察知出来るの?しかも、アルテミスの矢を掴むなんてあり得ない・・・、凍牙さんや美冬と同じ事が出来るなんて、冷華の言った通り私も一瞬たりとも気が抜けない!」


少し青い顔をしていますが大丈夫でしょうか?


「このおぉおおおおおおおおおおおお!」


ジャンプをした私ですが頂点に達したので、そのまま自由落下の状態です。

その隙を狙って私の下を通り過ぎた冷華さんが急旋回をして、再び高速で私へと突っ込んできました。


「空中で落ちるだけのあなたには手が無いわ!このまま真っ二つにしてあげる!あなたは精神体と聞いているから死ぬ事はないわ!痛みは感じてもしばらくすれば元に戻るからね!」


「それは勘弁して下さい。」


私のお腹へと斧が迫ってきます。


トン・・・


さっきの斧を躱す要領で両手を斧へ添えました。今回はこの斧を空中の足場にしてそのまま一気に飛び上がります。ギリギリのタイミングでしたが、斧は私の足下を通り過ぎ、目の前の冷華さんの背中へ両手の掌を当てました。


「双掌波ぁあああああ!」


ズドン!


「がはぁあああああああああああ!」


私の発勁を受け冷華さんが地面へと墜落していいきます。


「隙あり!」


今度は雪さんが黄金の両手剣を手にして私へと急降下してきました。


マズイですね・・・

真上からの攻撃なので躱しようがありません。

しかし、さっきまで黄金の弓を持っていたのに、いつの間に剣へ持ち替えたのでしょうか?


雪さん、迂闊でしたね。そのまま弓で攻撃を続ければ、遠距離攻撃の対抗手段の少ない私には有効な手でしたのに・・・


2本の黄金の刀身が私の首を狙って打ち込まれてきます。はさみの様に首を切り落とすつもりでしょう。


(甘いです!)


ビタッ!


刀身を親指と人差し指で摘まんで止めました。師匠の動きに比べ遅いです。不意打ちにはまだ剣術レベルは低い感じがします。弓での攻撃の方が本分だからでしょうね。


「止められた!そんなバカな!」


雪さんが信じられない目で私を見つめていますが、それは大きな隙ですよ。

剣を摘まんだまま、今度は私が腕を交差させます。


「な、何ぃいいいいい!」


クルクルと雪さんが空中で回転を始めました。

これは大きな隙ですよ!

その隙を見逃すほど私は甘くありません。


「旋風脚!」


さっき空中の吹雪君を吹き飛ばした技です。

体を捻り、その反動で体を独楽のように回し相手を蹴る技です。


ドカァアアアアア!


「きゃぁああああああああああああああああ!」


私に背中を蹴られた雪さんが、冷華さんとは反対の方向へ吹き飛んでいきました。



スタッ!



空中での攻防が終わり地面へと着地しました。

飛び上がった場所から全く変わらないクレーターの中心の位置へ降り立っています。

グッと構えると、私からかなり離れた左右対象の位置に冷華さんと雪さんが蹲っていました。



「圧倒的じゃない。」

「さすがソフィア姉ちゃんだ!俺が好きになっただけあるよ!」


師匠と吹雪君が私を見てニコニコしています。


(いえいえ!そんな事ありません!それに吹雪君!私の事は諦めて頂戴!)


正直、ギリギリの攻防だったと思います。

私と彼女達の実力は拮抗しているのに間違いありません。ちょっとでも気を抜いたりタイミングを誤ると、私の方が彼女達のようになっているでしょう。


それに・・・


彼女達は本気だと言っていましたが、まだ真の力を出しているとは思っていません。

まだ隠された力があると感じています。



「ふぅ・・・」


ムクッと冷華さんが立ち上がりました。


「こうも私達の力が通用しないとはねぇ・・・」


「そうですね。」


雪さんも起きがります。


「ソフィア!」


冷華さんが真剣な表情で私を見つめました。


「はい!」


私が返事をするとニヤッと笑いました。


「先に謝らせて頂戴!」


(どうして?)


「私達はあなたを人間だと思って舐めていたわ。いくら精神体となって潜在能力を解放した状態だといっても、たかが人間、私達フェンリル族に及ばないと思っていたのでしょうね。やり過ぎてしまうと可哀想だと思っていた私がいたわ。それがこの結果よ!あなたを格下だと思って戦った事を謝罪するわ。」


「私も同様です!」


雪さんも真剣な表情で私を見つめていました。


「これからは本気の中の本気の勝負!」


コクンと雪さんも頷いています。



「レッド・ソウル!オーバードライブ!」

「ブルー・デスティニー!オーバードライブ!」



2人が叫ぶと各々の甲冑のあちこちが展開し、甲冑と同じ色のオーラが噴き出してきます。

背中の翼も大きく開き、今までとは比べものにならないくらいの魔力が放出されていました。


(これが本気の2人!凄すぎる!)


圧倒的な魔力のプレッシャーに押し潰されそうです。


だけど!


私も負けられません!


私のこの1万年の努力!ここまで頑張れたのはただ1つの想い!






大好きなレンヤさんと共に戦う!もう守られるだけの私は嫌!!!





この想いは誰にも負けません!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ