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85話 ソフィア復活③

フローリア様に連れられた場所はとても大きな神殿の前でした。


(こんな大きな石造りの神殿なんてありえない・・・)


神々の凄さを実感します。


ここに連れられた際も、一瞬目の前が真っ暗になったと思ったら、いきなり景色が変わりこうして目の前に巨大な神殿が現れましたから、神々も転移魔法は簡単に使えるみたいです。私達の世界ではラピスと魔王だけしか使う事が出来ませんでした。


(大聖女となった私でも、ここでは単なる人間と同じなんでしょうね。)


この神殿から伝わってくる圧倒的な迫力は初めて経験します。魔王城でもかなりの圧迫感は感じましたが、ここまでの迫力はありませんでした。

これが神々が纏うといわれる神気というものかもしれません。


「ソフィアさん、あなたに会わせたい方々がいますので入りましょう。」


そう言ってフローリア様が中に入って行きました。私も慌てて後を追い中に入って行きました。


「すごい・・・」


外観はとても大きい建物でしたが、中も信じられないくらい広いです。

通路でも何十人も並んで歩ける程に広いですし、天井も見上げるくらい高く、壁や天井に描かれている壁画もうっとりしてしまうくらいに素敵な絵が描かれていました。

途中で背中に翼の生えた女性と何人もすれ違いましたが、その方々はフローリア様が近づくとスッと壁へ寄ってフローリア様が通り過ぎるまで頭を下げていました。


その光景をフローリア様はため息をつきながら見ています。


「天使のみなさんも私に遠慮しなくてもいいのに・・・、まぁ、この神殿の責任者だから敬われるのは仕方ないけど、いつまで経っても慣れないものね。」


この態度でフローリア様の事が分かった気がします。

とても気さくな方みたいですね。

思わずクスッとしてしまいました。



とても大きな両開き扉の前に私達は立っていました。


(何て大きな扉なの・・・、こんな大きさの扉を作るなんて、私達の世界では不可能だわ。)


唖然として扉を見つめていましたが、フローリア様が扉に近づき手を差し出すと、音も立てずにゆっくりと扉が左右に開きました。

その扉が開いたところから中が見えます。

とても大きい部屋です。

その部屋の奥に階段があり、数段上った場所にこれまた大きな祭壇がありました。その祭壇の前には石造りの大きな椅子が置かれています。

そして、その椅子の両隣に2名ずつ女性が立っていました。


ピンクの髪と瞳の薄い桃色の翼が生えた女性とラピスよりは少し薄い青色の髪と瞳で同じく青い翼が生えた女性が一緒に立っていました。

椅子を挟んだ反対側には栗色の髪と紫色の瞳に真っ黒な翼を生やした女性に、隣は・・・、ん?ここまでは天使の方々みたいですが、最後の方は違っていました。

真っ白な髪に真っ赤な瞳、そして、他の方々、フローリア様も含めて違っていたのが、頭に獣人の証である耳が生えていますし、真っ白なフサフサな尻尾も生えていました。


(犬?いえ!狼の獣人?)


そして、天使の方々はとても綺麗で女の私でもうっとりするほどです。ですが、その獣人の方はとても可愛いのですが、どう見ても私よりも年下に見えます。私達の世界でも成人前では?と思いました。


フローリア様の後を追って部屋の中に入り祭壇へと進んでいましたが、祭壇前の階段の前で青い髪の方が手を前に出して、「貴様はここで待つように。」と言われましたので、階段の前でそのまま立っていました。

フローリア様は足を止めず優雅に階段を上り、椅子の前まで来ると横の方々は片膝を床に着け頭を下げました。

そしてゆっくりと椅子に座られました。


「さてソフィアさん、改めて自己紹介しますね。私は女神フローリア、あなたの世界の創造神です。」


私もフローリア様の横に並んでいるみなさんに倣い片膝を着き頭を下げました。

「こうして女神フローリア様に直接お会い出来て感謝の極みでございます。」


「そんなに畏まらなくても良いですよ。みなさんも楽にして下さい。」


そうフローリア様が仰ると、横の方々が立ち上がる気配を感じました。

頭を上げフローリア様を見ましたら、とても優しく私に微笑んでくれました。


「ソフィアさん」


「はい!」


「あなたは本当に頑張ってくれました。邪神に侵された私の世界を救っていただき感謝しかありません。」


い、今!何と!そんな話は初めて聞きました。

「邪神とは?」


「そう・・・」

微笑んでいましたフローリア様がキリッとした表情になりました。

「あなたの世界には邪神が存在しています。その力を受け継いだ存在が魔王でした。その力は邪神の加護をを受け勇者以上の存在になる時もありました。今回の魔王はまさにそんな存在でしたが、倒し平和をもらたしてくれた事には感謝しかありません。」


魔王・・・

そんな存在だったなんて・・・

私達が4人がかりでやっと倒せたのも分かりました。


「ですが、その為に大きな犠牲が・・・」


レンヤさんの事を思い出しポロッと涙が出てきました。


「分かります・・・、その気持ちは・・・」


フローリア様も目を閉じ涙を流し始めました。

(そ、そんな!どうして?)


「私もかつて好きな人がいました。だけど・・・、その人はこの神界の平和の為に死を選びました・・・、その尊い犠牲で神界に平和が訪れました。」


(フローリア様にも私達と同じ境遇が!)


「私は平和の為に身を捧げた彼の意志を継いでこの神界、そして数多の世界の平和を維持する為にこの身を捧げました。」


「だからね・・・」


フローリア様が私を見つめました。その目はとても優しい目です。


「ラピスさんやソフィアさんには私のようになって欲しくないのよ。愛する人を失う悲しみ・・・、その悲しみをずっと背負って生きていくのはね。」


「ありがとうございます。」

深々と私は頭を下げました。

「このような私にご慈悲をかけていただけるとは感謝の極みです。」


「気にしなくて構わないわ。あなたの事はラピスさんからよく聞いていますからね。」


「ラピスが?」


「そうよ、あのラピスさんがあなたの事を話す時は本当に嬉しそうにね。あまり他人には興味を持たない彼女がねぇ・・・、まるであなたは妹のようにいつも話していましたよ。良かったです、彼女にも親友と呼べる人が出来たなんてね。」


(そんな・・・、ラピスがそこまで私の事を・・・、確かにお互いに呼び捨てで呼べるくらいまで仲良くなっていましたが・・・)


「だから、あなたにも願いを叶える機会を与えましたのよ。強くなりたい願いを叶える為にここに呼んだのです。」



(強さ・・・)



そう!私が今、1番に望んでいる願いです。


レンヤさんの隣に立ちたい・・・

レンヤさんの背中を守りたい・・・

レンヤさんと共に歩みたい・・・



もう守られるだけの私は嫌・・・



「お願いします!」


その場で床に両手を着け頭を下げました。


「何卒!私に戦う力を!好きな人と一緒に並んで戦える力を!」




「お願いします・・・」




どれくらい頭を下げていたのでしょうか?

床に着けていた手が握られゆっくりと立たされました。

私の目の前にはフローリア様が優しく微笑んでいます。


「さっきも言ったでしょう?その為にここへ呼んだのですからね。」


「フローリア様・・・」


「ですが・・・」

急にフローリア様の表情が真剣になりジッと私を見つめています。

「あなたが強くなるには生半可な方法ではなれませんよ。今の大聖女の称号でもあなたは十分に強いはずです。かつての聖女とは比べものにならないくらいにステータスは上がっています。それでもですか?」


「はい!」

私は迷いません!

「今のままではダメなんです!多少強くなったくらいではレンヤさんやラピスの隣に立てません。2人の圧倒的な強さ、私はそれ以上に強くなりたいのです。もう2度とあのような思いはしたくありません!ここは神々の世界、この世界でも通用する強さになりたいです!」


「分かりました。あなたの決心は揺るぎないものですね。あなたが納得出来るまでお付き合いしますよ。」


そして4人の方へ視線を移しました。

「彼女は『ロイヤル・ガード』と呼ばれる私直属の護衛です。この神界でも最強の戦力ですよ。」


「みなさん」


「「「「はっ!」」」」


フワッと浮かび上がったと思った瞬間に、私の目の前にいるフローリア様の後ろに立っていました。


(いつの間に?)


全く動きが見えませんでした。


「春菜さん」


「はい」

ピンク色の髪の天使様が前に出てきました。


「う~ん・・・、ソフィアさんは称号の関係で聖属性の魔法しか使えませんからねぇ・・・、同じ魔法でも分野が違いすぎて修行になりませんね。それに今後はラピスさんの修行を春菜さんの元で行う予定ですし・・・」

はぁ~とため息をされました。

「やっぱり春菜さんではかなり難しいですね。」


「夏子さん、千秋さん」


「「はっ!」」


「この2人も難しいですね。彼女達は剣をメインにして戦いますから、剣の適正の無いソフィアさんでは無理でしょうね。」


そして獣人の子を見つめました。


「そうなると、やはり・・・、武闘家系しか無いかもしれませんね。」


しかし・・・


「フローリア、この子はダメね。才能が全く無いわ。」


「美冬さん、それはどういう意味で?」


「私の言った通りよ。数十年、数百年単位では強くなるのは不可能よ。私には見えるわ。あなたには才能は無い!どれだけ頑張っても並の達人までにしかなれないわ。あなたの目指している境地はどんなのか分かる。だけど、それは夢よ。現実はそんなに甘くないわ。」


「美冬さん、いくら何でも・・・」


しかし、美冬さんと呼ばれた獣人の子が私に向かってニヤッと笑いました。


(この人は私を試しているに違いないわ!)


この人の指導なら間違い無く強くなれる!絶対に!

私は美冬様に土下座をしました。

「お願いします!私を!私を強くして下さい!」


「本気で強くなるつもり?」

ジロッと睨まれますが、私も負けられません!


「はい!どんな修行でも絶対にやり遂げます!」


「そう・・・」


腕を組みジッと考え込んでいます。

もしかしてダメなの?

そんな不安だけが大きくなっていきました。




「フローリア・・・」




ボソッと美冬様が呟きました。


「例の空間で修行するわ。」


その言葉でフローリア様がコクッと小さく頷かれたのがチラッと見えました。


「彼女は才能が無いから、まともな方法で強くはなれないからね。どうせなら徹底的に鍛えるわよ!世界で頂上てっぺんを取れるくらいにね!!!」


ペロッと舌なめずりをしながら私を見つめています。


「ふふふ・・・、もう遅いからね・・・、私に目をつけられたら最後、まともな人生を送れなくなったわ。運命だと思って諦めなさい。」



ゾゾゾゾゾォオオオオオ!



何て事でしょう!私の背中には大量の汗が流れています。


(もしかして?かなりヤバイ方なんでしょうか?)


『後悔』という言葉が私の頭の中をグルグルと回っていました。


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