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83話 ソフィア復活①

「レンヤ、昨日は思ったよりも早く帰ってきたわね。」


ニヤニヤとラピスが俺を見ているよ。


「そりゃそうだろう、こうしてラピスと一緒に眠りたかったしな。しかも今日は決戦だし、お前と一緒にいるのが1番落ち着くよ。」


ボン!


ベッドの中で俺の腕に抱き着いていたラピスだけど、俺の言葉で一気に顔が真っ赤になりモジモジしている。

ふふふ、いつもグイグイと迫られるからな。たまにはこうしてクサいセリフを言うと意外に効果があるんだよな。俺は普段はこんな言葉を言っていないから尚更ラピスに効果があるみたいだ。


(こうやって見ると、ラピスって思った以上に純情だよな。まぁ、そこが可愛いけどね。)


「う~~~、本当はこのままレンヤを食べたいけど・・・」


何だ?ラピスが少し泣きそうな顔で俺を見ているのだが・・・


「さすがに今朝はこれ以上の事は出来ないわ。ソフィアの事もあるし、魔王との決戦もあるから・・・」



「我慢よ・・・、そう、今は我慢の時だからね・・・」



・・・


う~ん、ラピスが俺の胸の中でブツブツと言っている。

何か可愛い感じだからギュッと抱きしめてあげると、とても嬉しそうに俺を見ていた。


「レンヤ、ありがとう・・・、これでも十分ご褒美よ。今日一日頑張れる元気をもらったわ。」



「はいはい、いつまでイチャイチャしているの!もう朝食は出来ているんだから、さっさと食べに来なさい!」


ローズが部屋の中に入ってきた。

すまん!ラピスとイチャイチャし過ぎたよ。



朝食を済ませ、マナさんとローズは俺の実家の手伝いに戻っていった。

ホント、転移の魔法って便利だよな。


家を収納しアンを抱きかかえ王都へと飛んで行った。




「ここが王都か・・・」


俺の記憶の中にある王都よりもはるかに大きくなっている。

500年も経っている上に、この大陸最大の国になっているから、都市の大きさは桁違いだよ。

昨日はシャルの指輪の反応で、直接シャルの部屋に転移出来たけど、過去の知識では王都への転移は無理だったな。下手すれば壁の中に転移して一巻の終わりだった。


「さてと、ナルルースからもらった地図で教会に行きましょう。」




「・・・」



「デカい・・・」


思わず言葉が出てしまった。


「そうね、私も予想外だったわ。」


ラピスも唖然とした顔で教会を見ていた。

500年前の記憶と比べると、倍どころではない!3~4倍は建物がデカくなっているぞ。

元々大きい建物だったが、見上げるほどに大きくなっている。まるでもう1つの王城みたいな存在だ。


「ふむふむ・・・、ナルルース自作の王都ガイドブックによるとね、へぇ~、そういう事なんだ。」


ラピスが何か冊子みたいものを見ながらブツブツ言っている。

それにしても、王都ガイドブックって・・・

お前等、最終的に王都観光も考えていたのか?


(あり得るな、)


「この教会本部は『聖女ソフィアが眠る地』との事で、王都でも1番の観光名所みたいね。それだけソフィアの人気が高いのね。ちょっと妬けちゃうわ。」


「まぁまぁ気にするなよ。お前も人気が高いから大丈夫だろう。」


そう言ったけど、何だ?まだラピスの機嫌が良くならないぞ。


「不動の1番人気のあなたに言われたって嬉しくもないわ!まぁ、物語はあなたを神格化しようとアレックスが頑張ったみたいだからね。さて冗談は終わりにして、ソフィアに会いに行きましょう。」


「おぅ!」


ソフィアかぁ~、記憶自体は勇者に目覚めた時に甦っているからまだ2ヶ月も経っていない。みんなと分かれてから500年も経った感覚が無いよ。

ラピスは全く変わらない姿で再会したけど、ソフィアはどうなっているのかな?

あの時は今のテレサと同じくらいの歳だったから少し幼い感じもあったけど、少しは大人になっているのかもしれない。


チラッとアンを見ると、アンも俺の視線に気付いたのかニコッと微笑んでくれた。

ラピスはソフィアがヤバい奴だと言っていたけど、アンを目の前にしてどう行動するのか?それがとても心配だよ。


(修羅場にならない事を願う!)



教会の建物の中に入ろうとするとすぐに守衛の騎士に止められたが、ララノアさんから貰った紹介状を見せると、騎士達が慌てて頭を下げ平伏してきた。

ここまで畏まれてもねぇ・・・

その騎士に連れられて建物の奥まで通された。


いくつもの扉をくぐり大きな両開きの扉の前に俺達は立っている。


その扉がゆっくりと左右に開いた。



「お待ちしておりました、勇者様に大賢者様。」

豪華な法衣を纏った老人が部屋の中で俺達を迎えてくれた。

「こうしてお目にかかれる機会をいただけるとは、女神フローリア様に感謝します。私は現教皇のヨハンと申します。」


そう言って俺達へと深々と頭を下げていた。

だけど、この部屋には何も無くそんなに大きくもない部屋だった。

立っている教皇の後ろにまた大きな両開きの扉が存在してた。


(あの奥が・・・)


「ここから先の部屋は歴代の教皇の地位にいる者か、ほんの一握りの限られた者しか入れません。表向きは聖女ソフィア様はこの教会で生涯を終えられたとなっています。教会はこの部屋の奥にソフィア様のご遺体を安置していると公表しました。そう世の中に伝える事により、我々はソフィア様がゆっくりとお休み出来るようにしてきました。」


そしてジッと俺達を見つめる。


「我ら教会としては、こうしてお眠りになられているソフィア様を目覚めさせる事は本当は反対でした。ソフィア様は我ら教会にとっては生き神様です。こうして未来永劫教会の象徴としてお眠り続けて欲しかった・・・、それくらいにソフィア様の神々しいお姿が我々の心の支えとなっていました。」


しばらく沈黙した後に再び教皇が口を開いた。


「ですが、こうしてソフィア様がお眠りになられているのは、勇者様、転生されたあなた様をお待ちする為でした。我々はソフィア様のご意志を遵守します。では!ソフィア様のところへ!」


クルッと俺達へ背を向けると扉へ向かって何か言葉を呟いた。



ゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオ!



ゆっくりと扉が開いた。



部屋の中に入ると・・・


「こ、これは!」


かつての魔王城の奥の部屋にあったアンを安置していた部屋に似ていた。

石造りのかなり大きなホールになっており、天上はドーム状でかなりの高さだ。

部屋の中央には大きな祭壇が建てられていて、その中には・・・



「ソフィア・・・」



巨大な透明な水晶のような結晶の中にソフィアがいた。

両手を胸の前で重ね静かに佇んでいるようだ。口元が少し微笑んでいるように見える。それにしても・・・、こうやって間近で見ると今にも動き出すのでは?と思うほどに生き生きしている。

俺が魔王城で死んだ時の記憶にある姿とはかなり変わっていた。

少し幼さを残していたあの時のソフィアよりも大人びてとてもキレイな女性になっていた。

目を閉じ佇んでいる姿は金髪もあってか女神フローリア様と思える程に美しい。まるでこの世に女神様が降臨されたのかと思えるくらいにソフィアが神々しく見えた。


「驚いた・・・」


「えぇ・・・」


ラピスも俺の言葉を聞いてゆっくり頷いた。


「ソフィア・・・、最後に分かれた時に見た姿とは大違いよ。『大聖女』の称号を得て本当に女神様になったの?それくらいにあなた、今の姿は神々しいわ・・・、教会の人々があなたを手放したくない気持ちは分かる・・・、それだけの存在感が今のあなたにあるなんて・・・」



スゥゥゥ・・・


「何だ?」


アーク・ライトがいきなり俺の目の前に現われた。


「レンヤ、ソフィアのこの結界は聖剣でないと破壊出来ないみたいね。この結界はクリスタル・コフィンよ。神々しか使えない究極の結界魔法の1つね。私自身を封印していたコーキュートス・コフィンとは比べものにならないくらいの強力な魔法だから、この聖剣でないと破壊出来ないのよ。悔しいけど私の魔法のどれを使っても傷一つ付ける事も不可能だわ。聖剣を使えるレンヤでないとソフィアを復活させられないという事よ。」


「分かった。」


目の前に浮いているアーク・ライトを握った。


「神々の力には神々の力を・・・」


ガカッ!


刀身から眩いくらいに光が溢れてくる。

あまりの眩しさに俺以外の者は全員が目を逸らしてしまう。


剣を上段に振りかぶった。




「ソフィア、待たせたな。」




【大丈夫です。こうしてレンヤさんに再び会えたのですから、待った甲斐がありましたよ。】


(この声はソフィアか!)


【はい・・・、こうして再び巡り合えるなんて・・・】


僅かに微笑んでいたソフィアの口元がはっきり分かるほどに微笑んでいた。


ソフィア・・・


今すぐ出してやるからな。


剣に闘気を集中し一気に振り下ろした。


「一刀両断!縦!一文字切りぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」






キィイイイイイイイイイイン!





澄んだ音が辺りに響いた。



ピシッ!



ソフィアを包んでいたクリスタルに1本の線が上から下まで走った。


ガシャァアアアアアアアアアアアン!


クリスタルが弾けるように消滅したが、衝撃は一切感じない。

そして、そこにいたのは・・・


クリスタルの中にいた時と同じ姿でソフィアが佇んでいた。


そのソフィアがゆっくりと目を開けた。

初めて会った時と変わらないエメラルドグリーンのとてもキレイな瞳が俺を見つめていた。



「ただいま。」



思わずそう呟いてしまった。

ソフィアの瞳から涙がポロポロと溢れ始める。

だけど、ニッコリと微笑んでくれた。



「お帰りなさい、レンヤさん・・・」



ソフィアが両手を広げて俺へと駆け出した。




(げっ!)




直後、俺は信じられない目に遭ってしまうとは・・・


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