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74話 テレサの闇

いやぁ・・・


まさか、父さんも母さんもパニックになって気絶するとは思わなかった。

フローリア様の事はもちろんだけど、ラピスがここまでの存在だとは想像もしなかった。

確かにザガンの町ではラピスは大賢者だとそんなに周りには言ってなかったし、町中では普通にエルフのお姉さんで買い物していたよな。

正体を知っている人はごく一部だった。

それよりも、俺が勇者になった事で大騒ぎになっていた状態だったな。



アンとマナさんが父さん達を介抱して、しぱらくしてから目を覚ました。



「父さん、母さん、大丈夫か?」


「「う~ん・・・」」


2人がプルプルと頭を振っているよ。


「まさか、ここまでお前が立派になって帰って来るとは想像しなかったぞ。」

「そうね、テレサも1年前に出て行って淋しかったけど、こうして無事にあなたが帰って来てくれて本当に嬉しいわ。」


父さんも母さんもニッコリと笑って俺を見ている。


「そうそう!」


母さんがいきなり大声で叫んだ。

「レンヤ!テレサの事、どうなったか知っている?」


「あぁ、知っているよ。この町に戻ってくる途中までは一緒にいたんだよ。」


「えっ!本当に?」


母さんが冷や汗ダラダラの顔で俺を見ている。

「レンヤ、大丈夫だった?テレサに何もされていない?」


「まぁ、何もされていないっていうか、アイツは騎士団の副団長になっていて、王女様の護衛騎士って事で、俺達もずっと王女様達と一緒にいたから、何も無かったぞ。まぁ、途中で模擬戦などの訓練はしていたけどな。」


「本当に?本当に大丈夫だった?」


「母さん、そんなに心配してどうしたんだよ。テレサに何かあったのか?」


母さんが父さんの顔を見て、父さんが頷いた。


「レンヤ、テレサが騎士団に入団する事になって家を出る時にな、お前が戻って来た時にテレサが自分の部屋へお前を案内してくれと頼まれたんだよ。」


(どうした?2人の顔がとても青い・・・、テレサ、お前は何をしたのだ?それよりもだ!なぜ自分の部屋を案内させたがっていた?)


「まさか・・・、テレサがあんな変態になっていたとは・・・、もう、俺と母さんでは抑えられない・・・」


(はい?)


父さん、今、何を呟いた?とても怖い話だと思うが・・・


(嫌だ!真実を知りたくない!)


父さんと母さんに連れられて2階にあるテレサの部屋へと案内された。

テレサの部屋は俺の部屋の隣にあるが・・・


中に入ったが、別段、変わり栄えのない整理整頓された普通の部屋に見えるが、何があそこまで父さん達を怯えさえていたのだ?

テレサが成人となって『剣聖』の称号を授かって王都に行ってから1年経っていると、ここまでの旅の間で本人から話は聞いた。それだからなのか、まだ1年しか経っていない部屋はキレイなままだった。


(こうして、テレサの部屋に入るのは10年ぶりじゃないか?)


そうだろう、いくら家族でもテレサは妹だよ。勝手に女の子の部屋に入る訳にいかないし、何かねぇ~、あのレッド・ベアー事件以来、お互いに余所余所しい感じになってしまったんだよな。

まさか、テレサが俺の事を好きだったとは全く思っていなかったけど・・・


(どちらかといえば、俺は嫌われていると思っていたよ。)


ん?何だ?あの壁にかかっている布は?


ふと、壁にかかっている布が気になった。

何であんなところに布がかけてあるのだ?まるで壁にある何かを隠しているみたいだ。

その壁の向こう側は俺の部屋だぞ。


そこへ行き布をめくってみると・・・


(マジかい・・・)


そこには小さな穴が開いてた。

恐る恐るその穴を除いてみると・・・


(嘘だろう?)


俺の部屋が丸見え、特にベッド付近がよく見えるように穴が開いていた。


・・・


母さんが俺の肩をポンと叩いた。驚いて母さんの顔を見てしまう。

「レンヤ、テレサが教えてくれたのよ。ここから毎日あなたがベッドで眠っている姿を見るのが日課だったて・・・、あなたの寝顔は最高よって言っていたわ。ゾクゾクして天にも昇る気分だったって・・・」


真っ青な顔の母さんがそこにいた!


さ、最高って・・・


俺の部屋をここから毎日見ていたのか?しかもだ!俺の寝姿をアレにして・・・


(へ、変態だ・・・、そんな事を親に言うのか?かなりの異常さだぞ!テレサの闇ってどうなっている?)


父さんも母さんと同じくらいに青い顔で俺を見ている。

ザガンの町や道中での俺に対しての言動は確かにヤンデレだと感じた。

遠慮せずに俺の事が好きって公言していたし、過剰すぎるくらいのスキンシップも・・・


だけど・・・


ここまでサイコだったとは・・・


(恐ろしい・・・)


「俺も母さんから聞いた時は信じられなかったけどな。テレサがここまでお前に執着していたなんて・・・、まぁ、多分、お前に助けられてから、お前の事は兄ではなくて1人の男として見ていたのだろうな。俺は見ていないが、テレサはお前が勇者の力を使っていたのを見たのだろう。一発で惚れてしまったに間違いないな。」


父さんが頷くと母さんもうんうんと頷いている。

「確かにね、テレサがあなたの話をする時はちょっと目が変だったわね。さっきの寝顔の話も普通は絶対に言わないわよ!気持ち悪いしか感じないしね。それをね、あの子はとてもうっとりした恋するような目で話をしていたのよ!『兄さん、最高・・・、兄さんの妻になって抱かれてね、兄さんの寝顔をじっと見つめているのが私の夢』って・・・」


そう言って、がっくりと肩を落とした。

「何で・・・、何であの子はああなってしまったのよ。あの子が真実を教えてくれるまでは普通、いえ、とても優秀な子だったのよ。まぁ、どの男の子にも興味が無いと言っていたから、そこはちょっと心配していたけど、まさか・・・、レンヤ、あんただけしか興味が無いヤンデレになっていたなんて・・・」


父さんが母さんの肩をそっと抱いた。

「ジュリア、仕方ないよ。兄妹愛も人それぞれだ・・・、テレサの愛はレンヤ、ただ1人に向けられていたって事だよ。しかも、かなり歪んだ感情でな・・・」


「あ、あなたぁぁぁ・・・」


2人がヒシッと抱き合った。



(おいおい・・・、どんな漫才だよ・・・)



それにしても、テレサよ・・・

町にいた時と道中は抑えていたのか?王女様がいたからか?

それとも、3年振りに会えたから、一時的に満足して少しのヤンデレのレベルで収まっていたのか?


ふと、机の上にあるノートに目が行ってしまう。

何冊も重ねて置いてあった。


(何だ・・・、とても禍々し気配を感じる。)


「あぁ、あのノートか・・・、テレサの日記とメモ帳だよ。これもお前が帰ってきたら見せるように言われていてな・・・」


2人が冷や汗ダラダラでノート見ている。

ここまで怯えるノートとは何なのだ?まさか、見ると呪われて寿命が縮んでしまうような悪魔のノートなのか?


(この親の怯えようならあり得るぞ・・・)


意を決してノートを手に取りページをめくった。


(こ、これは・・・)


「うわぁ~、コレってサイコなノートだね。レンヤさん、覚悟を決めたら?私ならテレサさんが増えても問題無いからね。テレサさんならみんなとは仲良くしていけると思っているからね。」

俺の後ろでアンがニッコリと微笑みながらノートを見ていた。


そのノートには・・・


『好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き・・・』


延々とこの言葉だけがびっしりと隙間無く書かれていた。しかもだ!全てのページに!何冊も!


(お、恐ろしい・・・)


「ふふふ、レンヤ君モテモテね。でもね、私も彼女の気持ちは分かってしまうかな?だってね・・・」


マナさんがニッコリと微笑んで俺を見ている。


そうだった・・・

マナさんもブラコンだ!テレサに通じるものがあるのか?


「私もレンヤ君しか愛せないし、そう思ったら体がウズウズしてきたわ。今夜は私の番だし・・・」


ペロッと舌舐めずりをして、とても妖艶な笑みで俺を見ている。完全にロックオンされているよ。今夜は激しそうだ・・・


「ふふふ、このノートの妖気に当てられたかな?」


妖気って・・・、テレサのヤンデレ菌がマナさんに伝染してしまうとは予想外だった。


俺の妻軍団にあっさりと認められているテレサって・・・


(もしかして、アン達とテレサって同類?)


「ねぇねぇ、レンヤさん、これも凄いわ。私もこれから日記を書こうかしら?」


ローズが嬉しそうに別のノートを見ている。

表紙には『テレサ・愛の日記』と書かれていた。


(うっ!読むのが怖い・・・)


「私もちょっと読ませてよ。」

ラピスも嬉しそうにその日記を覗き込んでいた。


「ふむふむ・・・、彼女がどれだけレンヤだけを見ていたのか、よ~~~~~~~~~~く分かるわ。私達妻連合に入る資格は十分に条件を満たしているわね。それ以前に、彼女を外す選択は無いわね。」


(ラピスさんやぁ~~~~~、それはどういう意味で?)


俺の考えている事が分かったのか、ニコニコしながら日記を俺に差し出してくれた。



『○月×日

今日は兄さんと一緒に朝食を食べたわ。ふふふ、いつもよりも2秒ほどスープを飲むベースが遅いわね。何か体調が悪いのかしら。

夕食はいつもの調子だったわ。朝、心配していたけど大丈夫だったみたいね。

兄さん、今日も兄さんの顔を見れて、私は幸せよ。

大好き、兄さん・・・』


『□月△日

う~ん、今日は兄さんと上手に話せなかったよ。私のバカ・・・

こんな日は兄さんを思いながら・・・

私っていけない子ね・・・

早く妄想でなく、本物の兄さんに抱かれたい。

この体の疼きを収めるには、やっぱり兄さんに抱かれたいよ。

もう、妄想では我慢出来ないくらいに・・・

いつかは私が兄さんを食べちゃうかも?


えへへ・・・


愛してるわ、兄さん。世界で1番好きです。』


『●月※日

はぁ~、さっき、兄さんが出て行ってしまったよ・・・

何で言えなかったのだろう?

ずっと言いたかった言葉を・・・


「兄さん、大好き!結婚して!」


って・・・


まさか、喧嘩別れで兄さんと離ればなれになるなんて・・・


素直じゃないバカな私・・・


情けなくて死にたい・・・』


『▲月◇日

兄さんがいない・・・

気が狂いそう・・・

延々とノートに私の気持ちを書き込んだわ。


会いたいよ・・・』



・・・



こんな内容の日記が延々と続いている。


「ラピスよ・・・」


ジッとラピスを見つめてしまった。


「私の言った意味が分かった?」


「あぁ・・・、テレサは野放しには出来ない・・・、俺の傍に置くのが一番平和だと思う。父さんと母さんの気持ちがよく分かったよ。」


思わず天井を仰いでしまった。



(覚悟を決めろ!だよなぁ・・・)



「父さん、母さん・・・、言いたい事はよく分かったよ。俺が責任を持ってテレサをそばに置くことにするよ。それ以外に方法は無さそうだし・・・」


2人からガシッと手を握られた。

「レンヤ、お前だけが頼りだ・・・、テレサにこの部屋で色々と告白されたが、あの時のテレサの顔は・・・、恐ろしくて恐ろしくて・・・、ここまでお前と結婚したかったとは思わなかった。」

「お願い、もうあなたしか頼れないわ。テレサを幸せにしてね。まるで闇堕ちしたような怖いテレサを救えるのはあなたしかいないわ。」



テレサめ・・・

滅茶苦茶に強引な方法で俺との結婚を父さん達に認めさせようとしたな・・・

こうして2人が俺にテレサの面倒を頼んだくらいだし・・・

アイツの意図が見えてしまうのは気のせいか?


だけどなぁ~

まさか、アンやラピス達はこんなサイコなテレサに対して喜んで賛成するとは予想外だったが・・・


(みんな似た者同士かもしれん・・・)




俺の目の前の父さんと母さんが疲れ果てている気がする。

ちょっと話題を変えた方が良いかもしれない・・・



「アン、この旅の間で色々と開発したパンを父さん達に見てもらえないか?」


「あっ!そうね、特に一番の自信作を見せるね。」


ニコニコした表情でアンが収納魔法からパンを取り出した。


「何だ?これは?」

父さんが不思議そうな顔で、アンが取り出したパンをジロジロと見ていた。


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