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66話 道中にて②

(やっちまったぁ・・・)


テレサが絶叫した後プルプルと震えている。


みんなと一緒に暮らすようになってから当たり前のように過ごしていたからなぁ~、気にせず出してしまった。


「何だ、何だ!」と護衛の騎士達もテレサの絶叫でただ事ではないと思ったのか、ワラワラと俺達のところへ集まってくる。


「「「へ!」」」


全員が間抜けな声を出して硬直してしまった。


「何なのだこれは?」

「どうしてこんな場所に小屋が建っている?」

「小屋と言っても只の小屋ではないぞ・・・」

「こんな立派な外観の小屋は見た事も無い・・・」

「し、信じられん・・・」


騎士達が口々に呟いている。


「みんな!どうしたのよ!」


王女様も騒ぎを聞きつけてきたのか、慌てて俺達のところに来てしまった。


「はい?」


王女様も固まってしまった。テレサと仲良く固まっている姿は意外と面白いが、2人はそんな余裕すらないだろうな。


ギギギ・・・と、今度は王女様が俺達の方へ首を回した。テレサと同じ反応も面白い。


「勇者様、コレは一体何なのです?いきなりこんな建物があるなんて夢でも見ているのですか?」


「う~ん、これは某女神様からラピスがもらったと聞いていますけどね。」


「「某女神様って・・・」」

王女様もテレサも絶句した表情でラピスを見ている。


「もう1つあるから、王女様達も使ってみますか?」


俺がそう言うとラピスが頷いて、収納魔法からもう1軒のログハウスを取り出し、隣に設置した。



・・・



「テレサ・・・」


王女様がフラフラしながらテレサへ寄りかかった。


「何か夢でも見ているのかな?ちょっと考えられない光景なんだけど、多分夢を見ているのでしょうね。ちょっと馬車で休んでくるわ。目が覚めたら現実に戻りそうね。あはは・・・」


「で、殿下!しっかりして下さい!これは夢でなく現実ですから!」


テレサが懸命に王女様の肩を掴んで揺さぶっていた。


(あぁ~、王女様が現実逃避してしまったよ・・・)






「これが女神様の贈り物・・・」


王女様が玄関の中で家の中を見ながらキョロキョロとしている。

後ろにテレサもいるけど、王女様と全く同じ行動をしていた。

2人の後ろにメイドが1人控えている。今回の旅で王女様は身の回りの世話として3人のメイドを連れてきていた。その内の1人だけど、さすがは王族に仕えているだけある。2人の反応と違い冷静そうに見えるけど、内心はかなり焦っているのだろうな。さっきから額から汗がダラダラと流れているよ。


(この建物はとんでもない贅沢仕様だからなぁ~、見る物全てが驚きの連続だろうな。)


この家は土足厳禁なので靴を脱いで上がり、リビングへと移動した。


「な、な、な・・・」

リビングへ入るとまたまた王女様が固まっているよ。

「こんなの王宮でもあり得ないわ・・・」


恐る恐るソファーへと手を伸ばす。

生地やクッションの感触を確かめると俺をジッと見ている。最上級なソファーだと分かったみたいだ。座りたくて座りたくて堪らないオーラが見えるくらいに俺に訴えているよ。


「どうぞ座って下さい。姫様が寛いでくれないとみんながゆっくり出来ませんからね。」


嬉しそうに王女様がソファーに座ると「はぁ~」と幸せそうな表情になった。


「勇者様、これは人をダメにするソファーですわ。ずっと座っていたい気持ちになってしまいます。神々の技術を堪能出来るなんて私は何て幸せなのでしょう。」


(ははは・・・、大げさな・・・)


でも、その気持ちは良く分かる。この家の中にある家具や設備は、この世界の最高級品よりもレベルが高い品々ばかりだ。神々の世界は俺達が想像も出来ない世界なんだろうな。


「それでは寝室とシャワー室を案内しますね。」

マナさんが王女様と一緒にいたメイドに話かけると頷いて、マナさんと一緒にシャワー室へと歩いていった。


「それじゃ、私はキッチンで料理ね。」

アンがガッツポーズをしてからキッチンへと移動している。

う~ん、とっても可愛い。


「ちょ、ちょと待って下さい。」

王女様が慌てて立ち上がった。

「テレサ、馬車からマイとミイを呼んできて。あの2人にも教えるわ。」



しばらくしてテレサが2人のメイドを連れて戻ってきたけど。2人の反応もみんなと同じだったので、思わずクスッと笑ってしまった。



俺は何もする事が無いからもう1軒の方に戻って休ませてもらおう。


「姫様、後は女性同士の方がよろしいでしょう。俺はもう1軒の方で休んでいますから、何かあれば彼女達に伝えて下さい。」


王女様にそう言って出てきた。

我が家に戻るとラピスがリビングで待っていて、「お疲れ様」と言って抱きしめてくれた。

しばらく抱き合いキスをしてから離れる。

ニッコリとラピスが微笑んでくれると、今日一日の疲れが吹き飛ぶくらいに心が安らぐよ。


「ローズマリー、もう呼んでも大丈夫?」


そんな声が聞こえたかと思うと、ラピスの隣にローズが現れた。

俺を見つめて微笑むとゆっくり抱きついてきた。


「あなた、会えなくて淋しかったわ。」


そのまま俺の胸に頬を埋めてうっとりした表情になっている。


「でも、こうやって離ればなれにならずに済むなんて、みんなに感謝よ。どれだけ離れていてもこうして会えるなんてね・・・」


「ふふふ、特に私に感謝よ。分かった?」

ラピスがフン!と胸を張って踏ん反り返っていた。


「もちろんよ、ラピス様。」


「ねぇねぇローズマリー・・・」


「何です?」


「私達って、正式にレンヤと夫婦になったじゃない。アンやマナは私の事は『さん』付けで呼んでいるけど、あなたは『様』付けよね。もう堅苦しい呼び方は要らないと思うけど、どう?だからね、私の事は『様』付けで呼ばないで欲しいのよ。みんな立場は同じなんだからね。」


「それなら・・・」

ローズがニコッと微笑んだ。

「ラピス姉さん」


しかし、ラピスがちょっと微妙な表情になっている。

「どう見ても私よりもあなたが年上に見えるんだけど?何か納得出来ないわねぇ・・・」


「まぁまぁそう言わずに。私はラピス姉さんの事を尊敬してるのよ。『姉さん』と言うのはその現れだからね。」


「まぁ、そういう事にしておくわ。」

そしてジッとローズを見ている。

「だけどあなた、最近ちょっと無理していない?働き過ぎるのも問題だからね。」


しかし、ローズが嬉しそうに首を振った。

「心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫だから。今は王都に向かっているのでしょう?王都での商売は初めてだからちょっと緊張しているのもあるのよ。この建物の技術をある程度に真似出来たものはとても売れそうだから、私の商人としての血が疼いているのね。こんな機会を与えてくれたのにも感謝だわ。」


「まぁ、あなたのお店が儲かれば私達も楽になるしね。だけど、無理は禁物よ!」


「分かってます。」


ローズが俺の腕に寄り添う。

「こうしてあなたと一緒にいる事が私の1番のご褒美なんだから、無理して心配させる訳にはいかないでしょう?」


「確かにな・・・」


「2人が戻ってくるまでは私とラピス姉さんが独占出来るのよ。イチャイチャするのは今のうちにね。」


そう言ってローズがラピスへウインクするとラピスもニコッと微笑んだ。


「レンヤ、ちょっと小腹が空いたから、夕食前に少し甘い物でも食べない?3人でちょっとデートしましょうね。何かあってもすぐに戻れるから心配無いわ。」


ガシッと2人に両腕を抱えられ、ザガンの町ヘ転移させられてしまった。


(転移は便利だけど、すごく勿体ない使い方をしている気がするのは気のせい?)




『さらば』と言ったのにすぐに町に戻って来るって・・・






SIDE テレサ


兄さん・・・


ホント、どこまで規格外になったのよ・・・


(兄さんの中から常識がどんどんと無くなっている気がするけど大丈夫かな?)


兄さんは私がちゃんと支えないと、変な方向に行ってしまうわ!


それだけは絶対に阻止しないといけない!



「しかしねぇ・・・」


私の前の前には王宮でも見た事が無いような立派な家具で寛いでいる殿下がいるわ。

とても気持ち良さそうに座っているし・・・


「テレサ、あなたも座りなさいよ。これは本当に凄いソファーよ。」


「それではお言葉に甘えて・・・」


ソファーに座ると・・・


「な、何!この心地良さ!体が沈み込むけど決して柔らか過ぎでもない!こんな極上な座り心地なんて・・・、兄さん達は毎日こんな生活をしているの?」


「ねぇねぇ、テレサ・・・」


殿下が私を呼んでいます。


「何でしょうか?」


「このソファー、1つ持って帰らない?バレないかな?」


こらこら、いくら何でも王族がそんな事をしたらダメですよ。

いくら何でも持ち帰りは諦めてもらいます。


だけど・・・


私もこんなソファーに毎日座りたいなぁ・・・



それによ!

この規模の家なのにシャワーまで完備してあるなんて驚きよ!

旅に出るとどうしても体をキレイに洗う事が出来ないわ。いくら殿下の馬車でも塗れたタオルで体を拭くだけの事しか出来ません。宿屋に泊まれない時は仕方ないと思っていました。

だけど兄さん達はこの家を収納魔法で持ち歩いて、必要な時に取り出して利用しているのね。

野営も関係無しで毎日シャワーが好きなだけ使える。こんな事は女性にとって夢みたいな事よ。

殿下もとても喜んでいるわ。

一緒に同行しているメイド達もシャワーが使えると分かった時の表情といったら・・・


その気持ちは良く分かります。


そして気が付いたけど、この家にあるガラス全てがとても透明なのには驚いたわ。

王宮でもここまで透き通るガラスは見た事がないしとても薄いのね。

神々の世界の技術は私達の技術とは全く違うと実感するわ。



はっ!



兄さんって・・・



実は超超超優良物件じゃないのかな?

勇者としての強さは間違いないだろうし、こうして神々からも目をかけられているし・・・


(兄さんったら・・・、いつの間にか私の手の届かないところに行ったみたいよ・・・)


胸がズキッと痛い感じがする・・・


だけど、悪い女に引っかからないように、兄さんに近づく女は私がちゃんと見極めないといけないわ!

兄さんに憧れている殿下なら認めるけど、こうして兄さんの凄さを直に見ているメイド3人衆のアイ、マイ、ミイは怪しいわね。兄さんを狙っていないか探りを入れないと・・・


(あの娘達なら狙うのもあり得るわ。)


どさくさ紛れに殿下と一緒に兄さんのところに来るのは認められないからね。



あら、何か良い匂いがしてきたわ。

そうだったわ、アン姉さんが料理をしてくれると言っていたわね。


「はい?」


思わず唖然としてしまったわ。


「何なのよ!この異常な量は!」


大量の料理がテーブルの上に並べられているけど、こんな量なんてどうするの?


アン姉さんがニコニコ微笑んでいます。

「外にいる騎士のみなさんにも食べてもらいたいと思って作ったのよ。携帯食ばかりだと栄養も偏っちゃうし、食事は楽しくないと人生損しちゃうからね。」


(敵わないわ・・・)


でも、こんな人が私の姉さんになってくれるなんてとても嬉しい。

やっぱり兄さんの妻になる人ね、兄さんの人を見る目は間違えてないわ。



メイド達と一緒に外にいる護衛騎士達へ料理を振る舞ったけど、みんな本当に喜んで食べてくれていたわ。私も食べたけど、美味しいってレベルではないと思う。こんな料理を毎日食べられるなんて、兄さん、とても羨ましいわ。


(私も負けられない・・・、兄さんに釣り合う女になるように頑張らないと・・・)



今日は驚きの連続だったけど、やっと休める・・・


今は殿下と一緒にベッドで横になっているわ。

護衛の私は本来ならこうして一緒にいる事は出来ないはずだけど、殿下のお願いで添い寝する事になってしまったわね。

確かにこれだけ大きなベッドで1人で眠るのは心細いかもね。初めての場所だし・・・、今回の旅で分かったけど、殿下って意外と甘えん坊さんだったわね。友達もいないと言われていたから、王族は立場的に孤独になりやすいのかもしれないわ。


「ねぇテレサ・・・」


あっ!殿下が私を呼んでいるわ。ちょっと考え事をしていたから気になったのかも?


「殿下、どうしました?」


「シャルよ・・・」


(あっ!)


「ゴメン、シャル・・・、何か不安そうな顔だけど大丈夫?」


そう、殿下がとても不安そうな表情で私を見ている。どうして?


「何かね、私、自信を無くしちゃったのよ。今日1日勇者様達と一緒にいたじゃない?」


「えぇ・・・」


「勇者様も大賢者様も伝説の魔法を当たり前のように使っているし、そしてこの建物ね。この建物って神様からの贈り物と言っていたじゃないの?あまりにも凄すぎて私なんかが泊まっても良いのかな?って思ったの・・・、実際の勇者様達は物語以上の人達だったって分かったわ。それにね、一緒にいるアンジェリカさん達も堂々として正に勇者様の妻として相応しい態度だし、私は王家の血筋だけでここにいるんだなって思っちゃったのよ。」


「シャル・・・」


「テレサは勇者様の家族だから、あの人達と一緒にいても不思議じゃないけど、私はねぇ・・・、何も誇れるものが無いのかなって?勇者様に憧れて一緒になりたいって思っていたけど、私なんかだと勇者様と釣り合いが取れないのかもね?そう考えると私は一緒にいる資格はあるのかな?って・・・」


ポロポロと殿下の瞳から涙が出てくるのが見えます。

ギュッと殿下を抱きしめました。


「シャル・・・、そんな事は言わないでよ。シャルはシャルなんだからもっと自信を持ってよ。いつも明るいのがシャルなんだしね!それに兄さんもシャルが嫌じゃないって!もし嫌だったら、こうして護衛もしてくれる事は無いし、この建物にも泊まらせてくれないわ。シャルだから貸してくれたのよ。」


「ね、元気を出して!」


殿下がウルウルした目で私を見ています。


「ありがとう、テレサ・・・」


ニコッと笑ってくれたわ。


(良かった、少しは元気が出たみたいね。)


「シャルがそんな顔だと兄さんも心配するわよ。お互いに誓ったじゃないの、絶対に兄さんと結婚するってね。」


「そうね、私の夢・・・、目の前に勇者様がいるんだよね。そんな人を見逃す事は出来ないわ!ふふふ、元気が出てきたわよ。絶対に勇者様のハーレムに入るわ!父や兄がどんなに反対してもね!」


ガシッと殿下が私の手を握ってきたわ。


「テレサ、それまではお互いに頑張ろうね!」



それからしばらく殿下と楽しくお話をしました。



さすがに殿下も疲れたのかすぐにスヤスヤと眠ってしまい、私もうとうとして眠りに落ちてしまいました。

このベッドも最高級品のベッドです。ソファーよりもこのベッドを持って帰りたい・・・

こんなベッドなら何日でも眠っていられるわ。それくらい最高よ。






・・・




・・・



(ここは?)



目の前には真っ白な光景が広がっていて、それ以外のものは見えません。



(誰?)



いきなり私の目の前に男の人が現われました。

顔はハッキリと見えませんが、知っているような気がします。


「君が■■■■■か・・・、これも運命だろうな。2人揃って目覚める時をフローリアと一緒に待っているよ。」





パチッと目が覚めました。


「今のは夢・・・」


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