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65話 道中にて①

「ラピス、そっちはどうだ?」


俺が声をかけるとラピスが馬車の屋根からひょっこりと顔を出した。


「今のところはサーチも反応は無しね。今日は何事も無く済みそうね。」


ラピスさんやぁ~~~い・・・

これはフラグだぞ。

絶対に後で何か起きるのでは?


「それにしても気持ちが良いわね。こうして屋根の上にいると風が心地良いし、500年前の旅を思い出すわ。」

嬉しそうにラピスが俺を見つめている。


「そうだな、昔はこうしてあちこちと移動していたよな。記憶が戻った今では懐かしいよ。ラピスはこうしていつも馬車の上にいて風を感じるのが好きだったしな。」


「そうよ、エルフは自然が大好きだからね。こうしていると自然を感じるから心が落ち着くわ。」



「レンヤ君」

マナさんが荷台から御者台へと登ってきた。そして俺の隣に座る。

「交代の時間よ。」


「そうか、アンの状態はどうだ?」


「かなり良くなってきたわ。アンがまさか乗り物に弱いってねぇ~」


「まぁ、アンはあの魔王城からはほとんど出た事が無かっただろう?こうして馬車なんかに乗るのも初めてじゃないかな?かつての魔族の貴族の移動は馬じゃなくてワイバーンで空を移動していたからなぁ・・・」


「でもね、レンヤ君、この馬車はとんでもないくらいに乗り心地が良いのよ。多分、後ろを走っている王女様の馬車よりも乗り心地は良いと思うわ。ほとんど揺れないし、もし、普通の馬車だったらアンは乗ってすぐに酔ってダメになったでしょうね。ホント、レンヤ君とラピスさん様々よ。」


正直、この馬車はボロボロみたいなものだし、乗り心地は最悪だった。

最初はね。

俺とラピスがこの馬車に重力魔法をかけ、地面から少し浮いた状態にして馬に引いてもらようにした。

おかげで地面の凸凹の影響も少ない上に、馬にとってとても軽く感じる馬車なのでスイスイと引っ張ってくれる。おかげで中にいても揺れが少なく快適な馬車の旅が可能になった訳だ。

俺もラピスも重力魔法の維持にはそんなに魔力を裂く必要もなかったし、交代で魔法をかけていけば消費よりも回復が上回る状態だったので、ずっと馬車を浮かせていられた。


(まぁ、装備もほとんど無い最低限の軽い馬車だから出来た事だけどな。)


荷物は収納魔法で収めてあるから荷台も広く活用出来る。俺達がゴロンと横になってもまだスペースに余裕があるし、こんな快適な馬車の旅は普通の人には出来ないだろう。

500年前の俺達でもここまでは無理だ。それだけ今の俺とラピスは規格外になったのだろう。


ちなみに王女様の馬車もこのように出来ないかと言われたけど、あまりも重くて無理だった。浮かせると魔力がガンガンと減っていく。

さすがにあの馬車は大きすぎた。



荷台の中に戻ると・・・


アンがテレサの膝枕でぐったりしている。


「姉さん、大丈夫?まさか完璧超人だと思っていた姉さんにも弱点があったなんて意外ですよ。」


心配そうにテレサがアンを見つめており、その隣には王女様がアンの手を握っていた。


(お前達よ・・・、何でここにいるのだ?)


この2人にはアンの正体は話していない。正直に話しても受け入れてくれるとは思うけど、そこはやはり王女様だからなぁ・・・、どこから話が漏れるか分からないし、そうなるとアンに危険が迫る可能性が高い。現時点ではどこかの国の滅びた貴族の娘の設定で説明しておいた。

これが無難な言い訳だろうな。


「姫様にテレサ、お前達の馬車はあっちだろうに。何でここにずっといるのだ?」


「兄さん、姉さんが大変な状態なのよ。困った時はお互い様、兄さんが介抱するのはさすがにちょっとねぇ・・・」

そう言って隣の王女様と何かアイコンタクトをしている。


「はぁ~、姫様、本音は?」


「は、はい!」

ピクンと王女様が飛び上がった。

いきなり話を振られて焦っているけど、こんな反応も面白いな。


「こ、こんな乗り心地の良い馬車にいたいからよ。私達の馬車は王国の技術の粋を集めて作った馬車だけど、ここまでの乗り心地は無理ね。どうしても地面の段差でガタガタするのはねぇ~、ゆっくり紅茶も飲めないのよ。それに比べ、ここだと飲み物もほとんど揺れないからのんびり出来るわ。」


そしてチラッとアンを見る。


「こんなに乗り心地が良いのに、それでも酔ってしまうなんて・・・」



「うぅ・・・、すみません・・・」



「良いのよ。」

王女様がニッコリと微笑んだ。

「私って世話されるよりも世話する方が好きだからね。正直、あそこの馬車にいるとメイドがアレコレと世話してくれるから、ちょっとウザいって感じだったのよ。それにね・・・」


俺を見てポッと頬を赤らめている。


(俺達と一緒にいたい。これが本音なんだろうな。テレサも同じ理由でここに押しかけて来てるのだろう。)


それにしても世話されるのがウザいって・・・




まるでアレックスみたいな事を言うよ・・・



(やっぱりアレックスの子孫だな。)



そう思ったら可笑しくなりクスッと笑ってしまった。


「勇者様、私、何か変な事を言いました?」


ちょっと王女様が焦っている。だけど、そんな態度も面白いよ。




そうだ!聞きたい事があったから今のうちに聞いてみる事にする。

「姫様、1つ聞き忘れたけど、ミーティアはどうなっている?」


「そうですね、詳しい事は教えてはもらっていませんけど、王城の宝物庫に保管されているはずです。アーク・ライトの方はいつの間にか消えてしまったとの報告は受けていますが・・・」


「そうか・・・」


だけど不思議だ。聖剣のアーク・ライトが消えたとなると大騒ぎになるのでは?でも王女様の話からするとそんな騒ぎになっていない気がする。


「父がこの件に関しては箝口令を敷いたのですよ。聖剣がこの城から消える事は予測していたかもしれません。王だけに伝わる話があったと聞いています。多分、勇者様の事ではないかと思いますね。」


あの場にいてラピスの転生魔法を見ているアレックスなら俺が転生する事を知っているはずだから、いつかは俺が生まれ変わって再びこの世界に現われる事を伝えていたのかもしれない。その事に関しては実際に国王に聞かないと分からないけどな。


右手を王女様の前に差し出した。


キィイイイン!


光が集まり俺の手の中に黄金の剣が握られる。


「これは!間違い無いわ!」

王女様が驚愕の表情で剣を見つめていた。

「聖剣アーク・ライト・・・」


「すまない、勝手に持ち出してしまって・・・、今は俺の収納魔法の中で保管している。俺の意志でこうやって具現化するんだけどな。」


俺が謝ると王女様は首を横に振った。

「いえ、アーク・ライトの正式な所有権は勇者様のものですよ。我々は預かっていただけです。やはり、こうして目の前で聖剣を握る勇者様を見れるなんて幸せですよ。本当に甦ったのですね・・・」


うっとりした目で俺を見ている。


「だけど、ミーティアの所有者はまだ現れていないのだな?」


「そうです。」

王女様が暗い顔になる。


「だけど、女神様からはこの時代にミーティアの所有者が現れたと聞いているんだけどなぁ~、まだ目覚めていないと言われたのは覚えているよ。」


「そうなんですか!」

今度はぱぁあああ!と明るい表情に変わる。コロコロと表情が変わって面白いな。

「可能性があるとしたら、第2王子のカイン兄さんの可能性が高いですよ。『上級騎士』の称号を頂いて騎士団の団長もしていますからね。第1王子のアベル兄さんは称号は授かりませんでしたし、私は称号を持っていますが女ですし、『結界師』の称号は戦いではあまり役に立ちませんから・・・」


「それは分からないぞ。俺みたいに目覚めて称号が変わった例もあるし、それに女といってもテレサは『剣聖』なんだ。無理だと決めつけるのは早いよ。」


「そうですね。私も期待しても良いかも?ふふふ、楽しみです。」


そう言って王女様はニコニコしているが・・・


ミーティアの所有者は俺が既に会っている人と聞いている。

そうなると、今回初めてあった王女様は違うだろうな。さすがに気の毒でそんな話は出来ないけど・・・


(今まで俺と会った人の誰かが目覚めるのだよな?そんな漠然な事だから誰だか見当も付かない。)




ん!


【レンヤ、反応があったわ。】

ラピスからの念話だ。


【俺も反応があった。500mほど前だな。】


【そうよ、私の反応も同じね。ゴブリン20数匹が先にある街道脇の森の中で待ち伏せしているわね。王女様の護衛だけではちょっと厳しいかも?】


【あぁ、俺もそう思う。護衛料はいただいているんだ。それなりに働かないと後で文句を言われても困るな。】


ラピスとそんな会話をしていると、前方の街道から1人の男が慌てて走ってくる。

斥候の男で偵察に行って群れを見つけたようだ。


(やっぱりさっきのラピスのセリフはフラグだったか・・・)


さすがは王女様の部下だけあるよ。大騒ぎせずに真っ直ぐ戻ってくる。ここで大声でも出そうなものならゴブリン共に気付かれてしまうしな。


【サクッと全滅させてくるわ。】


【あぁ、頼む。あまり派手にするなよ。】


【分かっているわよ。】


ラピスが白い翼を背中から生やしてフワリと中に浮いている。


「な、何だアレは!」

「天使様か!」


斥候と後ろに控えていた護衛騎士達が騒いでいるが、ラピスは全く気にしないで宙に浮いていた。


「これが伝説の飛行魔法・・・」

王女様が御者台まで上がってきて、うっとりとした目でラピスを見つめていた。

「まるで女神様が降臨されたみたい・・・」


「さてと、ちょっと掃除でもしますかね。」

ラピスがそう呟いて右手を上に掲げた。


フォオオン!


握り拳大の白く輝く玉がいくつもラピスの上に浮かび上がった。


「レイ!」


ズバババァアアアアアアアアアアアアアア!


何十本もの真っ白な光線が光の玉から放たれ前方へと飛んで行った。


「レンヤ、終わったわよ。」


「あぁ、こっちも確認したよ。敵の反応は0になったな。さすがラピスだ、命中精度は俺とは桁違いだよ。」


スススッとラピスが俺の隣まで下りて座ってきた。

「ふふふ、褒めて褒めて!」

頭を俺の方へ突き出してくる。


スリスリと頭を撫でてあげるととても嬉しそうにしていた。


(ホント、500年前の旅の時とは雰囲気が全く違うよ。)


ラピスがこんなに可愛いと再認識してしまう。みんなそうだけど、俺には勿体ない妻ばかりだ。


「姫様、後ろに連絡をお願いします。」


俺達を見ていた王女様だったが、俺の言葉でハッとした表情になりすぐさま馬車の後ろから顔を出した。

「みなさん、もう脅威は去りました。このまま速度を落とさずに進みます。」


そう話すと護衛の騎士達からは「おぉおおおおおおおお!」と声が上がりホッとした表情になった。


しかし、まだやる事が残っている。

「マナさん、悪いけど引き続き馬を頼む。ラピスと一緒に行って後始末をしてくるよ。」


「分かったわ。こちらの方は任せてね。」

ニッコリとマナさんが微笑んでくれた。


「勇者様、何をするのですか?」

王女様が不思議そうに俺に話してくる。


「いや、今回は倒したモンスターが多いから後始末をするだけだよ。さすがに20匹以上の死体を街道脇に放置する訳にはいかないからな。他の魔獣やモンスターを呼び寄せてしまったり腐敗して疫病の原因にもなる。」


「そうですね。さすがは冒険者です。」


「それじゃ、ちょいと行ってくるよ。」

そう言って御者台から飛び降り駆け出した。

ラピスも空を飛びながら俺の横をピッタリと付いてくる。



「勇者様、速過ぎよ・・・、馬より速く走れるなんてあり得ないわ・・・」


王女様が唖然とした顔でレンヤの後姿を見ていた。



「よし、取り敢えず全部収納したな。」


「そうね、それじゃ穴を掘るわね。」


ラピスが魔法を唱えようとした瞬間に馬の蹄の音が聞こえる。それも数頭の馬が駆け寄ってくる音だ。


「はぁはぁ、追い付きましたよ。馬より速いって人間を辞めているのですか?」

馬に乗っている王女様がちょっと引き攣った顔で俺を見ている。


(ははは・・・、ちょっと調子に乗ってしまったな。反省・・・)


「姫様、わざわざ馬に乗って追いかけてこなくても良かったのでは?後始末だけなんですし・・・」


「いいえ」

王女様が首を横に振る。

「勇者様と大賢者様がどのような事をするのか見てみたいと思って来ました。単なる野次馬ですけどね。」


(ホント、ミーハーな王女様だよ・・・、とほほ・・・)


みんなもそうなのか、王女様の後ろにいる護衛もちょっと苦笑いをしていた。



「レンヤ、始めるわよ。」


おっと、ラピスから催促が来た!


「悪い、頼む!」


ゴゴゴォオオオオオ!


ラピスが地面に手を置くとグラグラと揺れ、目の前の地面が陥没する。

どこまでも深い穴で底が全く見えない。


「ここまでの魔法なんて・・・」


王女様が青い顔で開いた穴を見ていた。周りの護衛騎士も同様な表情だ。


「次は俺の番だな。」


穴のそばに近づき手をかざすと、今ほど回収したゴブリンの死体がわらわらと空中に浮かび上がり次々と穴の中に落ちていく。


「これは、まさかの収納魔法ですか?」


「そうですよ。20匹以上のゴブリンを1匹づつ運ぶのも面倒ですし、一気に収納して吐き出しているのですよ。この方が手間がかかりませんからね。」


「伝説の収納魔法をこんな贅沢な使い方をするなんて・・・、しかも、飛行魔法も当たり前のように大賢者様はお使いになっているし、凄すぎて何だか頭が変になりそうです。」


王女様がこめかみに手を当てフルフルしている。

どうやらショックが強すぎたみたいだよ。何か悪い事した気分だな・・・


「まぁ、勇者様に大賢者様ですからね、私達の常識で考えると付き合えない存在ですね。」


(おいおい、そこまで規格外ではないのだけど・・・)



ラピスが再び地面に手を当てると、穴が塞がり今まで穴があったとは思えない程にキレイな地面に戻っていた。

これだけ深く埋めれば掘り起こす事も不可能だし、腐ってもそのまま大地に戻るだけだからな。


そうしている内に馬車が追い付いてきたので乗り込み、再び街道をパカパカと馬車が進んでいった。



そして夕方・・・


アンも酔いから回復して元気に馬車の中で座っている。

今日一日で馬車に慣れてくれたから、明日からは大丈夫そうだな。


街道脇の開けた草原で隊列を止めた。

テレサが王女様の馬車から降り、俺達の馬車へとやって来た。


「兄さん、今日はここで野営になるわ。さすがにこの地方は辺境だから、町と町の移動が1日で終わるような距離ではないわね。本当は兄さん達にはちゃんとした宿屋で泊めたかったけど、さすがにしばらくは無理そうね。ゴメン・・・」


申し訳無さそうにテレサが謝ってくるけど、旅なんて野営は当たり前だ。前世もそうだったし、この3年間も野営の方が遙かに多かったしな。自慢は出来ないけど・・・


「テレサ、気にするな。俺達は俺達でちゃんと泊まる設備を持っているからな。ここじゃ邪魔になってしまうから、俺達は外れの方で野営するよ。」


「邪魔になるって・・・、まぁ、兄さんだけじゃなくてアン姉さん以外にもラピス姉さんやマナ姉さんもいるしね。気を遣わせてゴメン。」


テレサは今日一日でマナさんとも仲良くなった。町を出る時のあのヤンデレバージョンのテレサが続くとどうなるか心配していたけど、俺達の馬車に王女様とテレサが押しかけてほぼ1日一緒にいたから仲良くなったみたいだ。

俺の妻と認めてくれた上に、みんなを姉と慕ってくれたので良かった。

だけどなぁ~、「兄さん、私の事を蔑ろにしたらどうなるか分かっているわね?」と、もの凄く怖い視線で見られた時はかなり怖かった。


(テレサのヤキモチ指数を上げないようにしないと、いつかは本気で斬り殺されるかもしれん・・・)


ツツーッと頬に汗が流れた。



(さてと、この辺りで良いかな?)


王女様達の野営地から少し離れた場所に俺達は立っていた。

本当はもっと離れた場所にしたかったけど、護衛の仕事だからなぁ・・・、だからそんなに離れる訳にいかない。


収納魔法から我が家を取り出した。



・・・



・・・



・・・



(ん?テレサが完全に固まっているぞ・・・)



「テレサ、どうした?」



しばらくすると、ギギギ・・・と油の切れたオモチャの様に俺と家を交互に見ている。


そして俺を見てまた固まっていた。




しばらくしてから・・・


「兄さぁあああああああああああああああああん!コレって!どういう事なのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


テレサの絶叫が響き渡った。


(ははは・・・、やってしまったよ・・・)


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