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63話 さらば、ザガンの町①

翌朝


目が覚めるとアンが俺の腕枕でスヤスヤ眠っていた。

昨夜の不安そうな感じは全く無い。どうやら安心したようだな。


(良かった・・・)


しばらくアンを見つめているとパチッと目を覚ました。


「おはよう。」


俺が挨拶するとアンもニッコリと微笑んでくれる。

「レンヤさん、おはよう。」


そのままアンが俺にキスをしてきた。

お互い裸で抱き合っているけど、不思議とそんなに恥ずかしく感じない。

それどころかアンの事がとても愛おしく感じてしまい、ギュッと抱きしめてしまった。


アンの唇が離れニコニコしながら俺を見ている。

「ありがとう、ずっとこうしてレンヤさんと一緒にいたい・・・」


「俺もだよ。こんな可愛いアンといつまで一緒にいたいな。」


自分でも自覚するほどにアンと甘々になっているよ。

2人っきりでこうしているのは初めてじゃないか?

アンとはお互いに好きだと自覚した時から、すぐにラピスが追いかけて来て、それからはずっと3人で一緒にいたし・・・






「昨夜はお盛んだったみたいね。今のあなた達は本当に幸せそうよ。」




(・・・)





(???)




(なぜだ?ラピスの声が聞こえた・・・、空耳ではない・・・)




(どうして?)




アンもラピスの声が聞こえたのか、真っ赤な顔でキョロキョロと周りを見ているし・・・


(ヤバイ!)


今の俺とアンは裸で抱き合っている!

そんな姿を見られようとするものなら・・・

ラピスの極限の嫉妬で修羅場どころの騒ぎではなくなってしまう。


(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!)



「ふふふ、予想通りだったわね。2人で私達より先に大人の階段を登ったのね。羨ましいわ・・・」


(今度はマナさんの声!でも嬉しそうだけど・・・)


アンが更に真っ赤になった顔で俺を見ているよ。

とても可愛らしいけど、この状態じゃ・・・

ギュッとアンの抱きつく力が強くなってくる。


俺の背にはダラダラと滝のような汗が流れてくる。



「男と女・・・、やっぱり裸のお付き合いは大切よね。お互いに心が触れ合えるし・・・、昨夜のわだかまりも解けたみたいね。私もそんな相手に初めてを捧げたかったわ・・・、レンヤさん、私は処女じゃないけどテクニックであなたを喜ばせる自信はあるわよ。真心を込めてあなたに尽くしてあげる。天国の気分にさせてあげるわ。」


(ローズの声?何だ!いつもよりも艶っぽい声だ!)


ローズは俺とアンが結ばれた事が分かっているのか?

そうなると、ラピスもマナさんも俺達の状況が分かっているのか?




しかし、声は聞こえるけど姿が見えない。


(どこだ?どこに?)




「ここよ。」


ラピスの声が聞こえた方向に視線を移すと・・・



スゥゥゥ・・・


部屋の扉の前で3人の姿が現れた。3人揃って腕を組んで立っている。


(これは!)

ラピスのインビジブルの魔法だ!

いつからここにいて姿を隠していたのだ?


まさか・・・

今のアンとのイチャイチャも見られていたのか?



それ以上に・・・


今の俺とアンは裸だからベッドのシーツから顔だけを出している。

(いかん!このままではベッドからも出られない!)



「分かっているのよ、レンヤ・・・」


ラピスが口を開いた。


「あなたとアンが肉体的にも結ばれる事は想定済よ。そうなるようにマナがレンヤを仕掛けたからね。そして、今のあなた達の状態もね。ベッドから出るに出られないようになっているのも分かっているわ。」


「だから、このタイミングを狙って私達が現われたのよ。レンヤ君とアンの既成事実が出来るのをね。」

マナさんがニコニコ笑っている。


「今はお互いに裸でしょう?ふふふ、絶対にレンヤさんが断れない状況を作ったのよ。」

ローズがニヤッと笑った。


「お前達・・・、何を考えている?」


残念だが、ラピス達の考えている事は予想出来るけど・・・


「「「今夜は私達も抱いてね。」」」


3人がピッタリとハモった。


「おふぅぅぅ・・・」


(これは絶対に断る事は無理だ・・・)


まぁ、アンだけ特別扱いは無理だろうし、それはしたくないから、俺も4人は平等に扱いたい。


「レンヤさん、仕方ないね。」

アンがニッコリと微笑んで俺を見ていた。

「だけどね・・・」


ペロリと舌舐めずりをした。


ゾクッ!


「私1人だけ除け者は嫌だからね。今夜も絶対に抱いてもらうからね。」


そして3人に視線を移した。


「もちろん、そのつもりよね?」


「「「分かっているわよ。」」」


3人がアンにサムズアップしている。

ホント、この4人は仲が良いな。




(今夜は眠れるかな?不安だ・・・)





その頃、王女様の方は・・・


「ねぇねぇ、テレサ・・・」


「あっ!シャル!」


王女様と一緒にテレサがお茶を飲んでいたが・・・


「テレサ、どうしたのよ?何か朝から変よ。ちょっと心あらずって感じよ。」


テレサが俯いてしまう。

「何だかね・・・、とても不安な感じなのよ。、昨日の夜中から急にね。兄さんの身に何かあったのでは?と思うようになったのよ。多分、あの女達絡みね。」


「ふふふ、さすがはテレサね。大賢者様でもテレサにとっては恋敵なんだ。私も見習わないと、あの人達とは渡り合えないわね。それにしてもそんなに不安になったの?」


コクンとテレサが頷いた。


「えぇ・・・、私の心が訴えているわ。兄さんがあの女達に何かされたんじゃないかって・・・」


「まぁ、実質ハーレム夫婦みたいなものだからねぇ・・・」


王女様がジッとテレサを見つめる。


「テレサ、いよいよ手を打たないと私達の居場所が無くなってしまうわ。王都までの旅では勇者様と一緒にいるのだから、頑張ってアピールしないといけないわね。旅の間はプランBを実行するわよ。私のお小遣いがちょっと厳しくなるけど、勇者様と一緒に過ごすようにしなくちゃね。道中の宿の手配はよろしくよ。お金に糸目は付けないわ。」


「分かったわ。私達と兄さんが一緒にいられるような部屋を用意させるわね。」


テレサがうっとりした表情で上を見ている。

「兄さん・・・、一緒に旅をするのを楽しみしてるわ。日中だけじゃなく夜もずっと一緒よ。ふふふ・・・、兄さん、私がどれだけ兄さんを愛しているか・・・、一日中愛を囁いてあげるわ・・・」




レンヤの方に戻る


「うっ!」


「どうしたの?」


ラピスが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。


「大丈夫だよ。何だか急に背筋が寒くなってな・・・」


あの後、ラピス達はすぐに部屋を出て行ってくれたので、俺とアンは大急ぎで服を着てダイニングへと向かった。

今朝はマナさんとローズが朝食の当番だった。


マナさんは料理が上手なのは一緒に暮らし始めてから分かった事だったけど、ローズも料理や家事が得意なのは意外だったよ。

料理が出来ないラピスにとって、ローズの料理上手がとてもショックだったのか、密かに料理の特訓をしているのは知っていたけど、知らない振りをしている。


「レンヤ、裸で寝ていたから風邪でも引いたの?」

ラピスが遠慮無しに突っ込んできた。


「ブフッ!」


思いっ切りコーヒーを噴き出してしまった。

隣に座っているアンは真っ赤な顔でモジモジしているよ。

ラピスはニヤニヤしながら俺達を見ているし・・・

俺とアンが先にこんな関係になった事を根に持っているみたいだ。

しばらくはネタにされそう・・・


「まぁ、あなたの妹さんが噂でもしていたのかもね。あの子はかなり思い込みが激しそうだしね。」



(昨日のヤンデレテレサならあり得るよ・・・)



そう思うと、また背筋が寒くなった。



朝食後はラピスとマナさんはギルドへ移動した。

今日で引き継ぎが全部終わる予定で、その後のギルドの方針も含めてラピスも交えて話をするからだ。


ローズはというと・・・


「レンヤさん、お願い・・・」


今では転移の指輪があるのだから、自分の仕事場へは自由に転移出来るだろうが・・・

だけど、俺にお姫様抱っこされたくて甘えてくる。


「仕方ないな・・・」


そう言ってローズを抱きかかえると、とても嬉しそうに俺の首に腕を回してきた。


「私の前世がレンヤさんの婚約者だって、今でも信じられないわ・・・、でもね、こうしてレンヤさんに抱かれているととても嬉しいのよ。」

ジッと俺の顔を見てきた。

「だからね、前世で一緒になれなかった分、この人生はたくさん愛してよ。」


チュッと頬にキスされた。


う~ん、本当にローズが可愛くなってきたよ。


ゾクッ!


背筋に悪寒が!


恐る恐る後ろを見ると・・・



背中に夜叉を背負ったアンが立っていた。表情の無い視線が怖い・・・


「レンヤさん・・・、私も愛してくれるよね?」


怖い!アンのプレッシャーがハンパないよ!


「も、もちろんだよ。アンも大事な妻の1人なんだからな。」


途端にアンの表情がデレッとなった。

「レンヤさん、嬉しい・・・、愛してる・・・」


こうしていればとても可愛いんだけど、今朝からかなりヤンデレ度が上がった気がする。

今のアンはテレサといい勝負じゃないか?



3人でローズの娼館へ移動し、ローズを置いて俺とアンは孤児院へと移動した。


「うわぁ~、忙しそうだねぇ~」


アンが驚きの表情で孤児院を見ている。

隣にかつてあった救護院をヘレンさんが再開させていた。

まぁ、司祭様は『導師』でヘレンさんは『聖女』の称号持ちだ。今はまだ公表はしていなけど、2人は最上級の治癒の力を使えるようになった事で、この町の貧しくて医者にかかれない人達の手助けを行うように救護院を復活させたようだ。

ヘレンさんは貧しい人達の為に救護活動を行っていたけど、例の病で目が見えなくなって活動が出来なくなっていた。

それを今では夫婦で教会でもトップになれる力の持ち主になったけど、その力を人々の為に使わなくてどうする?って事で頑張っている。


(司祭様達も立派な人だよ。だからフローリア様に認められてのだろうな。)


ヘレンさんの目が見えるようになったと、この近所に住む人達はこぞって押しかけている。

とても楽しそうにみんなと話しているヘレンさんを見かけた。


「お兄ちゃぁああああああああああああああああああん!」


(ん?)


マーガレットがダッシュで俺に突進してきた。


マズイ!マーガレット・ミサイルだ!

これはマーガレットがマジック・ミサイルのように突撃してきて、頭が鳩尾にクリティカル・ヒットするマーガレットの必殺技だよ。

意外と・・・いや!かなりダメージが大きい!

10歳の女の子が出せる攻撃力じゃないぞ!


さすがに直撃は勘弁だったので、マーガレットの頭が鳩尾にめり込む前にさっと両脇に手を添えて。グルッと円を描くようにクルクルとマーガレットを回した。

俺が中心にして回る事で、マーガレットの突進力を受け流すようにする。


「お兄ちゃん!楽しいぃいいい!」


ニコニコと嬉しそうにしているけど、普通の人間だと鳩尾に直撃を喰らって悶絶状態確実だぞ。下手すればリバースも・・・

これだけの破壊力がある事を本人の自覚が無いから怖い。


マーガレットの攻撃を受け流して立たせた。


孤児院の扉からナルルースさんが現われる。

どうやら今日は緑の狩人としての仕事は休みのようだ。あの事件以来、マーガレットに勉強を教えてくれている。マーガレットも普段は学院で教えてもらっているけど、魔法や学院以外の知識に関してはナルルースさんから教えてもらっていた。


「勇者様にアンジェリカ様、こんにちは。」

丁寧に挨拶してくれるけど、何か恥ずかしいよ・・・


「ナルルースさん、申し訳ないです。忙しいのにマーガレットの勉強までお願いして・・・」


しかし、とても嬉しそうにナルルースさんが微笑んでくれた。

「いえいえ、こんな教え甲斐がある子なんて思いませんでしたよ。学院の勉強も完璧ですけど、私が教える知識もまるで大地に水が染み込むかのように吸収しています。教える私も楽しいですよ。彼女は将来は伝説に名を残すようになるのは間違いないでしょう。」


じっとマーガレットを見る。

(へえ~、ナルルースさんのお墨付きか。)


「頑張れよ。」


「うん!」

元気よく返事をしてくれる。

「それでね、将来はラピスお姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんのお嫁さんになるからね!」


「お、おぅ・・・」


(まぁ、今の時期だけなんだろうけどな。将来は素敵な彼氏を見つけて幸せになりな。マーガレットなら変な男に騙される事はないだろうしな。)


そう思いながらほっこりした目でマーガレットを見つめていると・・・

アンもナルルースさんも生温かい目で俺を見ているよ。


(なぜだ!何でそんな目で俺を見る!)


2人からちょっとショックを受けたけど、腕がクイクイと引っ張られた。

マーガレットが俺の腕を引っ張ってジッと見つめている。


「ねぇねぇ、お願いがあるんだけど・・・」


「どうした?」


「えっとね・・・、ナルルースさんお姉さんとお話していたんだけど、時々で良いからお兄ちゃんのところに遊びに行っても良い?お姉さんが『淋しくならないようにね。だけど、ちゃんと勉強するのよ。』って言ってくれたんだ。」


「ナルルースさん・・・」


思わずナルルースさんへ視線を移してしまったけど、ニッコリと微笑んで返事をしてくれた。


「勉強だけではやる気が落ちますからね。こんなに頑張っているのですから、ご褒美をあげたいと思っていたのですよ。どんなご褒美か聞きましたら勇者様とお会いしたいとお願いされました。勇者様は数日後にはこの町を出ていきますから、今のままでは会えなくなりますし、この子のモチベーションを上げるには最適なご褒美でしょうね。」


「ナルルースさんが嫌でなければ・・・」


「私は大丈夫ですよ、いえ、この子が可愛くて仕方ないのもありますね。本当に良い子ですよ。」

嬉しそうに微笑んでくれた。


「分かったよ、マーガレット、頑張れよ。」


「うん!」

花が咲くような笑顔でマーガレットが返事をしてくれる。

「お姉ちゃん!やる気が出たよ!さぁ頑張るわ!」


フンフンと鼻を鳴らしながらナルルースさんの手を引っ張り孤児院の中へ消えていった。


「げんきんな奴だなぁ・・・」


「そうね。」

クスクスとアンが俺の隣で笑っていた。

「それじゃ、子供達のところへ行ってくるね。」


嬉しそうにマーガレット達の後を追って、アンが孤児院の中へ入って行った。


「さて、俺は司祭様達の手伝いだな。」


そう独り言を言って救護院へ向かった。


回復魔法を使える俺は、忙しくなった司祭様達の手伝いだ。

もうこの町を出るので、今は冒険者の仕事の受注は止めてあり、王女様達の護衛だけを受けている。余程の事が無い限りは2日後には出るから、下手に受注して依頼が中途半端になっても困るからな。


アンは子供達の相手だ。

ヘレンさん達も忙しいし、子供達はアンが大好きだから。喜んでアンは子供達の世話をしている。

「私達に子供が出来た時の練習でもあるからね。」と、頬を赤くしてアンに言われた時はさすがに俺も恥ずかしかった。だけど、いつかはアンも母親になるだろし、子供が大好きなアンは良い母親になりそうだ。




夕方になって手伝いも終わり帰ってくると、ラピス達も既に帰っていた。


(どうした?こんなに早く帰ってくるなんて・・・)


夕食はいつもと違いかなり豪華だった。

どうも精が付く料理ばかりの気が・・・



そして夕食も終わり寛いでいると・・・



ズラァァァ~~~



4人が俺の前に立った。


ラピスがズイッと前に出てくる。


「レンヤ・・・、分かっているわね?」


(きたぁああああああああああああああああ!)


帰ってからそんな素振りは全く無かったのに・・・


「ふふふ、みんな楽しみですぐに仕事を終わらせて帰ってきたのよ。」

マナさんがニッコリと微笑む。


(それでみんな早く帰っていたのか?こいつらの執念は・・・)


「さぁ、覚悟を決めてね。」

ラピスがとても良い笑顔で微笑んだ。さすが人外の美貌を誇る美しさだけある。

だけど、こんな時に1番の笑顔って何だ?


ガシッ!


4人に両手両足をガッチリと抱えられ、そのまま寝室へと運ばれてしまう。


「俺はモノかい!」


「あら、そうでもしないと、いざって時にレンヤさんが逃げてしまうかもね?今夜は逃がさないわ。」

ローズが肉食獣さながらの目付きで俺を見ていた。


(あっ!完全に食べられちゃう・・・)



俺はどうなってしまうのだ?















「あいやぁああああああああああああああああああああああああ!」




4人に美味しく食べられてしまいました・・・

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