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55話 領主の館へ②

「兄さん・・・」


ドキッ!


テレサがいきなり俺の名前を呼んだ。

ゆっくりとテレサの顔を見ると・・・



ゾゾゾゾゾォオオオオオオ!



ヤバイ!ヤバイぞ!

テレサの視線が怖い!瞳孔が完全に開き切ってハイライトの無い目で俺を見ている!


(間違いない!テレサはブラコンの上にヤンデレだ!それも重度の!)


ダラダラと背中に大量の汗が流れる。


「ねぇ、何を考えていたの?あの2人の事を考えていたの?」



いっかぁあああああああああああああああああああああっっっん!!!


テレサよ!鋭い!鋭すぎるぅうううううううううううう!



すぐに話題を逸らさないと!アンとラピスの話題は今は出来ん!



「い、いや!テレサが言っていたレッド・ベアーの事を必死に思い出していたんだ。でもなぁ~、やっぱり思い出せない・・・」


「そう・・・」


再び沈んだ表情になってしまったが、本当に記憶が無いから何も言えない。

弱ったよ。


「兄さん・・・」


「ん!どうした?」


「兄さんの称号って『勇気ある者』だったわね?何で『勇者』に変ったの?称号って普通は変わらないと聞いているわ。この町で何があったの?」


もう俺は勇者だって事はバレているから、今更惚ける事は出来ないな。

アンの事は話さずに黒の暴竜に無理やり魔王城に連れて行かれ、デス・ケルベロスに襲われ死を覚悟した時に称号を得たと話をした。


プルプルとテレサが震えている。

何だ!テレサを見ていると寒気がする。


「黒の暴竜・・・、兄さんを殺そうとしたなんて・・・」


スクッと立ち上がり扉へ歩き始めた。


「テレサ!どうした?」


にたぁ~とテレサが俺に笑いかけた。狂気を含んだ視線で俺を見つめる。

「決まっているでしょう。今から私がそいつらを殺しに行くわ。兄さんを餌として置き去りにしたクズは生かしておけないわよ。兄さんを殺そうとしたのだから、妹である私に殺されても文句は言わせないわ。ふふふ・・・、どうやって殺してあげようかしら?私のこの『剣聖』の称号は兄さんを酷い目に遭わせた連中に天誅を与える為に授かった力かもね?腕が鳴るわぁぁぁ・・・」


ブワッと全身からどす黒いオーラが噴き出てきた!

マズイ!本気で黒の暴竜の連中を殺す気だ!


「待て!待て!」


慌ててテレサの手を握った。

俺に手を握られたからか、少し顔を赤らめて俺を見つめた。

スッと黒いオーラが引っ込んだのが見えた。


「兄さん、どうして止めるの?」


「もういいんだ。黒の暴竜は俺達で再起不能にしたし、鉱山奴隷が確定しているからな。死よりも苦しい未来が待っているから、もう構わないで良いからな。」


「そう・・・」

嬉しそうにテレサが俺の腕に抱きついた。

「ちゃんとお返しをしていたのなら私は何も言わないわ。それにしても神に近い兄さんを敵に回すなんて馬鹿な人達だったのね。」


(おいおい、俺はそんな大それた人間ではないぞ。)


いつの間にテレサの中で俺は神に近い存在なったんだ?テレサの病み具合が現在進行形でマズイ状態になっている気がする。かなりヤバイ方向になっているのは間違い無い!


(はぁぁぁ~~~、ヤンデレテレサなんて見たくなかったよ。)


「それと兄さん・・・」


「何だ?」


ゾクッ!


テレサがとても冷たい視線で俺を見ている!殺気を感じる視線だ!


(とうとうこの時が来たか・・・)



「一緒にいた銀髪の子と大賢者様はどんな関係なの?とても仲が良さそうだったけど?500年前に姿を消された大賢者様が再びこの時代に現れて、しかも兄さんと一緒にいるのよ。どうして?それに銀髪の子も普通の女の人ではない雰囲気を感じるわ。何があったの?」



「そ、それは・・・」


(マズイ!どうやって説明すれば・・・)


テレサが俺の腕に抱きつき顔がジワジワと迫って来る。


(近い!近い!このままでは俺の唇がテレサに奪われてしまう!)


そんな俺の気持ちを察したのか、テレサがニヤッと笑った。

「兄さん、私は負けたくないのよ。兄さんにとって私の存在が1番でありたいの・・・、私の初めてのキスは兄さんに捧げたい・・・、あの2人よりも私の方が兄さんの事を・・・」


(ヤバイ!ヤバイ!テレサの唇がぁあああああ!このままではぁあああああああああああああ!)



コンコン



扉がノックされた音が聞こえた。



ピタッ!



テレサの動きが止まったのですかさず離れた。


「勇者様、お着替えの準備が整いましたのでそろそろ・・・」


(あの執事の声だ!ナイス!タイミング!)


「テレサ、悪いが今はここでお別れだ。また後でな。」



「兄さん・・・」



とても悲しそうな顔でテレサが見ているが、これは仕方ない。

テレサなりの精一杯の告白だろうけど、今の俺にはテレサの想いを受け止める事は出来ないよ。

ラピスからは覚悟を決めるように言われているけど、やっぱり妹はなぁ・・・


(すまん、もう少し考えさせてくれ・・・)



部屋の扉が開くと、執事とメイド数人が立って待っていた。


「別に挨拶と食事だけなんだから、俺まで着替えをする必要があるのか?」


深々と執事が俺へ頭を下げた。

「領主様だけならここまではしないのですが、さすがに今回は王女様がいらっしゃいますから、ある程度の体裁は必要なのです。」


「まぁ、仕方ないな。貴族様ってこれがあるから苦手なんだよなぁ・・・、こういう見栄は500年経っても変わらないか・・・そういう面倒事は全部アレックスとソフィアに任せていたしなぁ~」



「兄さん、500年って?それに伝説のアレックス賢王様とソフィア様を呼び捨てで気軽に呼ぶなんて・・・」



(・・・)



(???)



「はい~~~?」

テレサの声だ・・・、すぐ後ろで聞こえる?


(何で?)


恐る恐る後ろを振り向くと・・・


(げげぇえええええええええええええええええええ!)


青い顔をしたテレサが俺のすぐ後ろに立っていた。


(マズイ!マズイ!今の独り言をバッチリと聞かれてしまった!)


「兄さん・・・、やっぱり・・・」


思わずテレサの両肩をガシッと掴んでしまう。


「テレサ、今はそれ以上聞かないでくれ!後で必ず説明するから、それまで待っててくれないか?」


「う、うん!分かった・・・」


「すまん・・・、必ず説明する。それに渡したいものもあるし、もう一度ちゃんと話をする機会をもらうように王女様にお願いするからな。」


コクンとテレサが頷いてくれた。


迂闊だった。まさかすぐ後ろにいて俺の独り言を聞かれるとは思わなかった。

もう誤魔化すことは出来なくなったな。


(こうなったらテレサには正直に話すしかないよな。)


「それじゃ、テレサ、行ってくる。また後でな。」


「うん、分かったわ。どんな話でも私は兄さんを信じるから・・・」



そのままメイドに連れられ別室に通された。

そこで服を着替えさせられたけど・・・


「何で貴族みたいな服装なんだ?」


そう言っても、着替えを手伝ってくれたメイドは「ふふふ・・・」としか笑ってくれないよ。


「今夜は王女殿下様がいらっしゃいますからね。それなりの服装にしてもらないと・・・」


そう一言だけ言ってくれたけど、どうやら王女様が絡んでいるみたいだな。

さっきのテレサとの面会も王女様の計らいだろう。

テレサの危ない性格が分かってしまったのは誤算だったけど・・・



着替えも終わりまた別の部屋に移動となった。


「大賢者様達とご一緒に待機していて下さい。すぐにお呼びになります。」


メイドが扉の前で頭を下げた。

そして扉を開けるとアンとラピスが中で立っていた。



「・・・」



「どうしたのよ?」


ラピスがニヤニヤと笑って俺を見ている。

アンもニコニコと微笑んでいた。


「いやぁ~~~、声が出ないって本当にあるんだなぁ~~~」


ラピスは緑色を基調としたドレスを着ている。テレサのドレスのように胸元が大きく開いてはいないけど、ラピスのスラッとしたスタイルが見事に強調されていて、ラピス自身の美しさもあってまさに美の女神が降臨しのでは?と思える程の美貌で佇んでいる。


アンは薄い紫色のドレスを着ており、大きな胸を強調するように胸元が大きく開いていた。だけどドレス全体に細かい刺繍やフリルが付いていて、いやらしい感じは全く無くアンの美しさを引き立たせる感じだ。

初めてアンに出会った時もそうだったけど、思わず見とれてしまった。


アンとラピスにとここまで美しい2人に見つめられるなんて、男としては最高に嬉しいのでは?


一緒にいるメイド達もとても満足した表情で2人を見つめていた。


「アンもラピスも着ている服1つでここまで変わるものなんだなぁ・・・」


「どう?惚れ直した?」


ラピスがずっとニヤニヤしながら俺を見ている。


「あぁ・・・、本当にキレイだし、改めて俺みたいな男で本当に良いのか不安になったよ。」


2人揃って不機嫌な表情になって俺の腕に抱きついた。


「レンヤ・・・、そんな事は言わないの!私が好きになったのはレンヤ、あんたなんだからね!」


「レンヤさん、そうよ!『誰にも渡さない!』ってくらい言って欲しかったのに・・・」



「ふふふ、こうやって3人並んでいると本当にお似合いですよ。」

アン達の着替えを手伝ってくれていたメイド達がニコニコしながら俺達を見ていた。

「こんなにお美しい方々のお手伝いを出来るなんてメイド冥利に尽きますわ。」



「勇者様方、それでは接見の間へ移動をお願いします。」


執事が扉の前で深々と頭を下げて迎えに来てくれた。


再び執事に案内され、大きな扉のある部屋の前まで移動する。


「ここが接見の間か・・・、そう言えば、この町の領主様を見るのは初めてじゃないかな?どんな人なんだろうな?」


「そうね、住民からは評判が良いから悪い人ではないのは確実ね。とは言っても、レンヤの勇者に肩書きに対してはどうなんでしょうね?何度もギルドに使いを送ったくらいだし、やっぱりかつてのようにこの国に帰属して欲しいと思っているのかも?」


「私はレンヤさんに付いていくわ。レンヤさんがどんな判断を下してもね。」


「アン・・・」



扉が開き中へと案内された。

部屋の中央の一段高い場所の席に座っているのが領主様だろう。


その領主様の顔を見た瞬間に・・・


「はいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


思いっ切り変な声が出てしまった。


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