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47話 王女様がやってきた①

SIDE ???


「ねぇテレサ、そろそろ町ね。門が見えてきたわ。」


豪華な馬車が街道を走っている。その馬車の中で腰まで届く金髪の髪をカールにしている美少女が窓の外を見ていた。

馬車は豪華なのに中で座っている少女は、どこでも見かけるような旅人の服装で座っている。


「そうですね。シャルロット殿下、いくら何でも叔父である辺境伯様に連絡無しでいきなり顔を出すなんて・・・、悪ふざけもここまでくると国王様から本気で怒られますよ。」


シャルロット殿下と呼ばれた少女の向かい席には、肩までの長さで切りそろえられた金髪の少女がちょっと怒ったような感じで座っていた。

彼女も同様に旅人の服装だが、脇には豪華な装飾を施された剣が置かれていた。


「テレサも頭が固いわね。これはサプライズなの!可愛い姪っ子がいきなり遊びに来れば喜ぶでしょう?普段は王宮でたまにしか会えないんだし、こうして叔父様のところまで来るなんて初めてだからね。それと、今は私の事を『殿下』って呼んでも良いけど、町中では絶対にそう言わないでよ。友達同士の設定なんだから、『シャル』って必ず呼ぶ事!敬語も無し!これは命令よ。」


「はいはい、分かりました。『シャル』、これで良いのね。」

テレサと呼ばれた少女がため息をついた。


「分かればよろしい。」

満足そうに彼女が微笑んだ。

「それにね、テレサって私と同じ歳じゃないの。私って同年代の友達がいないから、テレサが友達になって欲しいって本気で思っているのよ。さすがにみんなの前では王女と騎士団副団長がタメ口で話す事は無理だけど、こうして2人っきりでいる時だけでも友達として接して欲しいな。」


「殿下・・・」




「シャルよ・・・」

ジト~とした目でシャルロットがテレサを睨む。



「私は平民、本来なら不敬罪ですよ。」


テレサが再びため息をしてしまう。


「私が許可しているから問題無いの。」


「分かったわ。シャル、あなたの同年代って貴族様のご令嬢も多くいるんじゃないの?親しそうに話しているのも見ているし、何で友達じゃないの?」


今度はシャルロットがため息をついた。

「あの子達はねぇ・・・、私が王女だから近寄ってくるだけよ。心から仲良くしようと思っていないわ。どうやって私に取り入れてもらうか見え見えなのよ。貴族は第一に自分の家の事を考えるわ。自分の家が有利になるように相手をどうやって蹴落とすか常に考えている人種なのよ。そんなのは友達でも何でもないの・・・」


「シャル・・・」


「その点、あなたは問題無いわ。何せ、私のお兄様のプロポーズを断ったくらいだからね。王族に入れるチャンスを蹴った人はあなたが初めてよ。」


「そ、それは・・・、カイン様は第2王子であり騎士団団長でもあるし、私とは身分が違い過ぎるわよ。そんなところにお嫁に行けないわ。」


しかし、彼女はニヤニヤと笑っている。

「どの口が言うのよ。今のあなたは騎士団副団長よ。しかも16歳のあなたがよ。1年前に称号を授かってからここまでのスピード出世は歴代最速記録なんだからね。ホント、幻と言われた『剣聖』の称号は伊達ではないわ。実際に剣の腕はあなたがこの国1番の上に私に匹敵する美貌、お兄様の立場が無かったら、本当はあなたが騎士団団長になっていたのよ。誰もあなたが王族の仲間入りに反対する人はいないわ。あなたはそれくらい周りから認められているのよ。あなたも分かっているわよね?それを瞬殺と言えるレベルでお兄様のプロポーズを断ったものだから、しばらくは王宮でも話題になったくらいよ。」


「そ、そう言われても・・・」


「それにお兄様への断り文句が『私には心に決めた人がいます。』って・・・、テレサ、あなたの好きな人は誰なの?王族の地位すら蹴るほど好きな人って・・・、気になるわ。」


「で、ですから・・・」


テレサが真っ赤になって俯いてしまった。


「この旅で絶対にテレサの想い人を白状させるわ。覚悟してね。」


「か、勘弁してぇぇぇ・・・」




突然馬車が止まった。


「どうやら着いたみたいね。」


門の前に馬車が止まっている。

その門が開き町の中から数人の男が出てきた。


「情報収集の先遣隊が戻ってきたわね。町の中はどんな感じかしら?叔父様はちゃんと治めているのかな?」


ワクワクした表情でシャルロットが男達を見ていたが表情が変わった。

男達が門から出てくると大急ぎで馬車へと駆け出し始め、馬車の前で膝を着いた。


「何があったの?」


扉を開けて馬車の外で膝を着いている男達に尋ねた。


「で、殿下・・・、大変な事がこの町に起きています。我々の想像を超えた事が・・・」


「じれったいわね!何が起きているっていうのよ!早く言いなさい!」


「は、はい!」

先頭の男が額に汗をかきながらシャルロットを見つめていた。

「実は、この町に勇者の称号を持つ者が現われたと・・・、しかも、500年前に姿を消された大賢者ラピス様も一緒にいらっしゃると・・・」


「そ、そんな・・・、信じられない・・・」


シャルロットも呆然として男達を見つめていた。


「それが、どうやら本当のようです。あの難攻不落の魔王城も攻略され、アースドラゴンの素材が持ち込まれたとの事です。しかも、先日ゴブリンキングが現われ、それもあっという間に倒してしまったとの噂で持ちきりです。」


「ゴブリンキングをあっという間に・・・、この町にいる騎士団が総出でも勝てるかどうか分からないモンスターよ。それ以上に強いアースドラゴンでさえも倒す勇者と大賢者、一体どれだけの力を持っているの?」


シャルロットが再び男達を睨む。

「まさか偽物が名乗っている訳ではないわね?Sランク級の冒険者ならそれだけの力を持っている可能性はあるわ。」


「いえ、それはありません。勇者の方はギルドで黄金の聖剣であるアーク・ライトを所持していたと確認が取れています。この町の鍛冶屋が実際に見て間違いないと断言していました。その点に関しては、通信の魔道具で王宮に確認しましたところ、宝物庫からアーク・ライトが消え失せたとも確認が取れています。」


「そ、そんな・・・、国宝のアーク・ライトが消えたって・・・」

再び驚愕の表情で男達を見ていた。

「父はどうしたの?聖剣が消えたのなら大騒ぎよ!そんな話は私のところに来ていないわ!」


「そ、それが・・・、国王様は黙っているようにと管理官に伝えていると・・・、アーク・ライトとミーティアは引き合う運命だから、必ず戻ってくると仰っていたと言われました。」


「父は私にも話せない何かを知っているの?」


「さ、さぁ・・・」


「まぁ、聖剣の件はこれ以上は分からないから仕方ないわね。ところで、その勇者の称号を得た人物の名前は分かっているのかしら?」


「はい!それは確認が取れています。『レンヤ』と名乗る18歳の男の冒険者です。」



テレサが男の言葉にピクンと震えた。

「まさか、兄さんなの?あの時私を助けてくれた姿は本物の勇者だったの?」



テレサがボソッと呟いたが、その言葉をシャルロットは聞き逃さなかった。


「ちょっとテレサ、今、何て言ったの?『兄さん』って聞こえたけど、知っているの?」


「い、いえ・・・、私の兄が『レンヤ』という名前で歳も同じ18歳なもので・・・、15歳で成人になってから冒険者になって家を出ていきました。まさか、同一人物のはずがありません。兄の称号は『勇気ある者』と世間では外れ称号と呼ばれていましたから・・・、そんな称号で冒険者なんて危険な事をしないようにと私は散々反対していたのですが、勇者になると言って聞かず今はどこにいるかも分かりません。」


「外れ称号ねぇ~、確かに『勇気ある者』って称号は称号マニアの私でも聞いた事は無いわね。だけど何か気になるのよ。言葉を縮めると『勇者』ってなるし、私の勘がただの称号でないと訴えているわ。それにテレサ、あなたも何か知っているの?どうもさっきの言葉は何か知っているみたいね。」


「申し訳ありません。私もはっきりとは覚えていないのです。10年以上前の事ですから・・・、多分、兄と同じ名前の別人だと思われます。」


「そう、それなら仕方ないわね。その勇者の称号を持っている人に会えば分かる事だしね。」


シャルロットが手を合わせ頬を赤くしてうっとりた目で町を見ている。

「勇者様・・・、物語に出てくる勇者様と同じだったらどうしよう・・・、私達祖先のアレックス賢王様が唯一友と認めたお方、そんな立派なお方と同じ志だと信じたいわ。もし、そんな方だったら、私は・・・」


テレサがまたもやため息をしてしまう。

「殿下・・・、また病気が・・・、物語に出てくる伝説の勇者に憧れて結婚までしたいと思っているのは個人の自由なので構いませんが、物語は物語ですよ。現実にそんな人がいる訳ないでしょうが・・・、もういい歳なんですから大人になって下さい。」


「うるさいわね。」

ジト~とシャルロットがテレサを睨んだ。

「テレサ!さっさと町に行くわよ!私の理想の勇者様かこの目で見極めてあげるわ!最初の予定通り、私とテレサは一般市民を装って町ヘ入って行くから、あなた達は後ろからそっと護衛をしていなさい。その方が情報を得やすいからね。勇者の情報が集まれば、最後は叔父様の家に突撃よ。叔父様ビックリ作戦開始!」


「「「はっ!」」」


男達が一斉に頭を下げた。


テレサ1人だけがシャルロットの後ろでため息をしていた。


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