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44話 司祭様の秘密①

マナさんも落ち着いたので3人で部屋に戻ると・・・


(まぁ、そうなるわな。)


昼間はあれだけ遊んで夕食もとことん食べた奴らだ、幼い子供達の方は既にうとうとしている。

年長の子供達の方もかなり眠そうだよ。


マーガレットが俺の前まで来たがかなり眠そうだ。

「ねぇ、お兄ちゃん、今日は泊まっていくの?泊まるなら一緒に寝たいな。」


どうしようかと悩んでいたけど、アンが「良いじゃないの。私も子供達と一緒に寝てみたいわ。」と言ってくれたので、マーガレットの誘いを受ける事にした。

チラッとローズさんを見ると・・・

この世の終わりみたいな顔で落ち込んでいたけど無視しておこう。ローズさんと一緒に寝る事なんて出来ないよ。また発情して襲われてしまうのは確実だ。


そんな俺の気持ちを無視して3人組が俺にニヤッと笑う。

「レンヤ、もう夜だから姉御は任せた。さすがに俺達が護衛しても女性が夜の町中を歩くのは危ないからな。明日の朝、迎えに来るよ。」


おいおい、それは勘弁してくれ。ローズさんって俺を見る目が時々肉食獣の目つきになるんだぞ。そんな目で見られてみろ、さすがの俺もちょっと怖いし、女同士の戦いが始まるのも目に見えているからな。ローズさんを泊めるって事は孤児院にメテオを落とすようなものだぞ。


(本当に勘弁してくれ・・・)



そんな心配をしていたが、ローズさんは一番懐いていた女の子と一緒に眠る事になったので、今夜の修羅場は見事に回避出来たと心から喜んだよ。


俺の方は・・・


「えへへ・・・、レンヤお兄ちゃんと一緒に眠るなんて久しぶりだね。しかもラピスお姉ちゃんも一緒なんて最高だよ。」


俺とラピスの間にマーガレットがいて、2人揃ってとてもご満悦な表情だ。アンとマナさんはそれぞれ女の子と一緒にベッドに入っている。


しばらくすると子供達からすやすやと寝息が聞こえる。マーガレットも疲れていたのだろう、あっという間に熟睡してしまい、気持ち良さそうに眠っている。

ローズさんも女の子を抱いて眠っているよ。

何か、女の子がローズさんの抱き枕のようになっている感じだが、女の子の方も気持ち良さそうにローズさんに寄り添って眠っているし、このままそっとしておいてあげた方が良さそうだな。



さすがに早過ぎる就寝時間だったのでなかなか寝付けない。


アンがムクッと起き上がり部屋から出ていこうとする。


「レンヤ・・・」

マーガレットを起さないようにラピスが小声で俺を呼ぶ。


「どうした?眠れないのか?」


「違うわ、ちょっと気になる事があったのよ。アンも気付いたみたいね。」


「どういう事だ?」


「詳しい事はアンと一緒にね。早く後を追いかけましょう。」


みんなを起さないようにそっと起き上がり、ラピスと一緒に部屋から出ていく。

孤児院の出口でアンに追いついた。


「アン、どうした?」


「あっ!レンヤさん。ゴメン、起こしてしまった?」

アンが申し訳なさそうに俺を見る。


「いや、大丈夫だ。なかなか寝付けなかったから、俺も起きてきたんだ。アンがどこに行くのか気になって追いかけてきたけど迷惑だったか?」


「ううん、大丈夫よ。レンヤさんに付いてきてもらった方が心強いから良かったわ。」


(そうなのか?)


「レンヤ、アン、ボ~としてないで行くわよ。」


アンとラピスの後ろを付いていくと教会の入り口に辿り着いた。

ここに何があるのだ?


教会に入り礼拝堂へと辿り着く。

中に入ると・・・


「司祭様にヘレンさんどうしたのですか?」


2人が女神像の前で立っていた。まるで俺達が来るのを待っていたみたいだ。


「あなた・・・」

ヘレンさんが心配そうな声で司祭様に顔を向ける。


「心配するな。」

そう言って司祭様が1人俺達の前まで歩いてくる。

アンの前まで来ると立ち止まり、いきなり片膝を着いて頭を下げた。


「お名前をお聞きし、もしや?と思いましたが、間違いなく500年前の魔王様の御息女でお間違いないですね。アンジェリカ様、この目でご尊顔を拝見出来るとは最上の喜びでございます。」


何が何だか分からない。

「司祭様、どういう事です?」


アンがニコッと司祭様へ微笑んだ。

「やはり、あなたは魔族だったのですね。」


(何だと!司祭様が魔族だって!そんな事って・・・)


「私の正体がバレてしまっているのに、今の姿では失礼ですね。私の本当の姿をお見せします。」

アンの体がうっすらと輝くと、黄金の瞳と角を生やした本来の姿に戻った。


「おぉぉぉ・・・、何と神々しいお姿・・・まるで我らの神が降臨されたかのようです。」


司祭様が両手を床に着け深々と頭を下げている。本当に目の前に神様が降臨したかのようにひれ伏していた。

さすがにアンもこんな態度をされたら戸惑っている。

「司祭様、顔を上げて下さい。私はそこまでの存在ではないですよ、この姿も色々とあってこうなった訳ですし・・・」


司祭様にそんな態度をとられているものだから、アンも恥ずかしいのか顔が赤い。


(う~ん、照れているアンも可愛いな。)



スクッと司祭様が立ち上がり俺の方を向く。

「レンヤ君、いや勇者様、私の事も含めて疑問にお答えしましょう。それは500年前の魔王様がご健在でおられる頃から続く話です。」


500年前から?


ゴクリと喉が鳴った。


「先代勇者と魔王様の戦い、それは激しいものだったと聞いています。魔王軍の四天王も勇者パーティーの前には敵わず、とうとう魔王城での最終決戦となりました。」


確かにあの戦いは凄かった。四天王も魔族最強メンバーだった事もあり、本当に激しい戦いだったよ。よく勝てたものだと思ったくらいだったからな。


「その時、魔王様は一人娘のアンジェリカ様を勇者達人族に渡すまいと行動を起こされました。魔王様の娘、その首を持ち帰れば魔王様と同じくらいに報奨金が出ます。それか、人族の奴隷にされるかもしれません。そんな事は父親である魔王様は我が身が殺される事以上に恐れました。」


「父様・・・」


「そこで魔王様はアンジェリカ様を封印し決して人族に渡すまいと決心されました。アンジェリカ様を時の牢獄の魔剣で時間を凍結し、魔王城の奥深くにその身を隠しました。その時には魔王様は己が敗北すると悟っていたのでしょう。アンジェリカ様を未来の魔族に託して最後は勇者と戦い敗れました。」


結果は相打ちだったけどな。あの時の魔王の必死さはアンを守ろうとした親の気持ちもあったのかもしれない。それだけ魔王との戦いは激戦だった。たった1人で俺達4人を相手に互角に戦ったくらいだったからな。


「私がなぜその話をご存じかというと、アンジェリカ様が封印された時に魔王様以外に側近が数人一緒にいました。その側近の子孫が私の主でありました。アンジェリカ様の封印の事は口伝で伝えられていましたし、私はその主の命を受け魔王城へと赴き、アンジェリカ様の捜索を行いました。それは今から20年ほど昔の事です。」


「司祭様、ちょっと待って下さい。何で今頃になってアンを探そうとしたのです。500年も経ってから・・・」


「それは、魔族領の3大公爵家に変化があったのです。魔王様が敗れてからは我ら魔族は人間に対して戦いを起こす事は無くなりました。魔王様みたいなお方がいなく、魔族を纏め上げられなかったのもありますが・・・、それに、3大公爵家のうちの2公爵は元々が穏健派に属していましたから、戦いを起こすような事はなく500年が経ちました。戦いを望む革新派は1派しかないのもあります。」

司祭様が一息ついた。

「しかし、20数年前に2公爵家の1つが跡取りがいなく断絶してしまったのです。残る公爵家だけでは革新派を押さえ込む事が出来ませんでしたが、ただ、革新派も魔族を纏め上げる事が出来ませんでした。今の時代は魔王様はいませんが、魔王様の血を引いているアンジェリカ様は封印されており、今もいらっしゃると・・・、魔王様の血筋であるアンジェリカ様を旗頭にして魔族を纏め上げられのでは?と思ったのです。」


「その公爵家はアンをプロパガンタにして魔族を纏め、再び人族との戦いを起こそうと考えていたのでしょうか?」


「勇者様の仰る通り、革新派は戦争を起こそうと考えていたのですよ。500年前と同じように・・・、アンジェリカ様の捜索として廃墟と化した魔王城へ行きました。私も含め魔族領でも屈指の戦士達が挑む事になりましたが、その時に門番のデスケルベロスに我ら捜索隊は私以外を残して全滅となってしまいました。魔王城は今の魔族では手が出せない場所となり、革新派もこれ以上の事は出来なく、戦争を起こすことは不可能となったと思います。今でも世界は平和ですからね。」


アンが「はぁ~」とため息をついた。

「あのデスケルベロスは父様のガーディアン・ソードよ。父様と同等の力を持っているから同じくらいに強い人でないと敵わないわ。そんな相手に挑むなんて・・・」

そして俺を見る。

「それを倒したレンヤさんはホント凄いわ。覚醒前だったのに無意識だけど私の封印を解いてしまったくらいだったからね。」


司祭様も俺を見る。

「やはりアンジェリカ様の封印を解いたのは勇者様でしたか。一緒におられるので心配しておりました。勇者は魔族となれば見境なく殺す存在だったと伝えられていましたからね。ですが、仲睦まじいお姿を拝見して、その考えは杞憂でした。」


う~ん・・・、確かに当時の俺は魔族に対する復讐で戦っていたからなぁ~、そう思われても仕方ないけど、それが言い伝えられているのもちょっとなぁ・・・


アンの目がキッと鋭くなる。

「司祭様、私がこうして封印から目覚めた事はあなたの主に報告するのかしら?残念ながら私は人間との戦争には反対よ。見ての通り、私とレンヤさんは将来を誓い合っています。私の夢は人間と魔族が仲良く暮らせる世の中にする事です。その公爵家が再び戦争を起こそうとするのなら、私達の敵になると思って下さい。」


「誤解を与えてしまい申し訳ありません。」

深々と司祭様が頭を下げた。

「私も今では魔族領とは関係無い身ですから、アンジェリカ様の事は決して口外しませんので安心して下さい。それに私も理解したのです。魔族も人間も同じ存在で分かり合えると・・・、人間はすばらしいとヘレンが教えてくれました。」


そう言って髪を掻き上げた。


司祭様は男にしては珍しく腰まで長く髪を伸ばし後ろで束ねている。

何でそんな髪型をしていたのか理解出来た。


髪の下から魔族の証である角が現れた。いや、角があった跡が見えた。

角は根元から折れていたから、髪があると全く分からない。

万が一の為に髪を長くして、完全に見えないようにしていたのだろう。


これで司祭様が魔族だとハッキリした。

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