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40話 3人でデート⑥

時間は少し遡る。

留守番となったマーガレットの方は・・・


「う~ん、ケーキも美味しかったけど、このジュースも美味しい!」


再びケーキ屋へ戻って、テラス席でナルルースと一緒に寛いでいた。


「お姉さん、本当に良いのかな?こんな贅沢なものばかり食べて・・・」

少し心配そうな表情でマーガレットがナルルースを見ている。


しかし、ナルルースはにっこりと微笑んでいた。

「大丈夫よ。私達緑の狩人はこれくらいの出費は全く問題無いからね。」


「それに、私の事をお姉さんと呼んでくれてとても嬉しいわ。まさか400歳を超えてもそう言われるとは思っていなかったしね。」


「えぇえええええええええ!」

突然、マーガレットが叫んだ。

「信じられない・・・、どう見てもマナお姉ちゃんくらいにしか見えないよ・・・、エルフって本当にいつまでも若くてキレイな種族なんだね。羨ましいよ。」


「ふふふ、嬉しい事を言ってくれるわね。もっとご馳走したくなってきたわ。」


「いえいえ、私、もうそんなに食べられないよ。それに、私ばっかり食べてるとみんなに悪いし・・・」


「本当にマーガレットちゃんは良い子ね。私の息子もこれくらい良い子だと嬉しいのに・・・、いつまでも子供でホント手を焼くわ。」

ナルルースが「はぁ」とため息をついた。


「そっか・・・、お姉さんには家族がいるんだね。私は赤ちゃんの時に教会の前で捨てられていたって聞いているの・・・、家族がいるだけでも羨ましいな・・・」

少し涙目になって俯いてしまった。


慌ててナルルースがマーガレットの手を握る。

「マーガレットちゃん、ゴメンね。そんなつもりで言った訳では・・・」


しかし、マーガレットはニコッとナルルースに微笑んだ。

「私こそゴメンね。お姉さんに関係無い話なのに・・・」

胸から何かを取り出した。金色のペンダントが握り締められている。

「このペンダントは私が捨てられていた時に一緒に置いてあったものだって。司祭様はいつかは必ず迎えに来てもらえるから、絶対に無くさないようにって言われているの。」


「こ、これは!」

ナルルースが驚愕の目でそのペンダントを見つめた。

「このペンダントに彫られている紋章はシュメリア王国の紋章。しかも王族の身分を証明する特殊な紋章よ・・・」

マーガレットには聞こえないように小さく呟いてから、ジッとマーガレットを見つめた。

「この子は普通の子供にしては整い過ぎている顔だわ。まるでどこかのお姫様みたいな感じね・・・、やっぱり10年前にあったシュメリア王国のあの噂は本当だったのね・・・、この子は忌み子として捨てられたのかしら?でも王族の紋章を持っているのも変ね・・・、裏に何かあったのかも?」


「お姉さん、どうしたの?何かブツブツ言っていたけど・・・」

不思議そうな顔でナルルースを見ていた。


「い、いえ、大した事ではないわ。」

「ふぅ」と一息ついてから、ナルルースがマーガレットを見つめる。

「マーガレットちゃん、私も司祭様と同じでこのペンダントは絶対に無くしたらダメだと思うわ。それとね、これからはもう誰にも見せたらダメよ。そうね、レンヤ様の収納魔法に保管してもらっていた方が良いかもしれないわ。それだけ大事なものだからね。」


「そうなの?」


「そうよ、そうすればレンヤ様にも会う口実が出来るからね。レンヤ様はずっとこの町にはいないけど、あなたはこの町で暮らしていかなくてはならない。定期的にレンヤ様に会うようにして、このペンダントを確認するのはどう?」


「いいね、それ!」


「私からもレンヤ様とラピス様にも伝えておくわ。だから安心しなさい。」


「うん!分かった!」

マーガレットが勢いよく返事をした。



「ねぇ、お姉さん・・・」

マーガレットが真剣な眼差しでナルルースを見ている。


「どうしたの?」


「お姉さんって魔法使いなんだよね。しかも特別な魔法も使えるんだよね?」


「そうよ。」

にっこりとナルルースが微笑んだ。

「私の称号は『アークメイジ』、魔法使いの中では最上級の称号ね。でもね、私は最初からそんな称号ではなかったのよ。」


「嘘?称号が変わるなんて聞いた事無いよ。」


「希だけどそんな事があるのよ。それをクラスチェンジと呼ぶわ。レンヤ様もそうやって勇者様になられたからね。私の場合はたくさん勉強したからかな?魔法ってスキルだけで決まる訳ではないのよ。」


「そうなんだ・・・」


「ちょっと見てなさい。」

そう言うと、ナルルースの指先に炎が点る。オレンジ色の炎だ。

「これをね、ちょっとしたイメージをして燃え方を変えると・・・」


オレンジ色の炎がみるみると青くなっていった。


「どうして?」


「普通に炎の魔法を唱えてもオレンジ色の炎しか出ないのよ。マーガレットちゃん、炎はどうやって燃えているか知っている?」


「知らないわ。学院でもそんな事は教えてくれないの。」

プルプルと首を振っている。


「原理はね、燃えるっていうのは周りの空気、コレは分かるわね?その中にある燃えるのを補助する気体があるのよ。その気体を使って物が燃えるのよ。魔法を使う時にその気体を炎に集めるようにイメージするの。そうすると、普通の炎よりもっと高温で強力な炎になるの。ファイヤーボールが最上級のメギドフレイムの炎になるのと一緒な原理よ。それが分かればスキルを無理に上げなくても、自然とメギドフレイムの魔法も使えるようになるわ。スキルの経験値を知識で補えば、一気にスキルを上げる事も可能な訳ね。そのようにしていくつものスキルを上げると初めてクラスチェンジが出来るようになるのよ。」


「へぇ~」

目をキラキラさせながらマーガレットがナルルースの炎を見ている。


「まぁ、これはラピス様の受け売りだけどね。ラピス様は500年前に一度魔法を使えなくなったのよ。禁忌の魔法を使った戒めでね。魔法が使えなくなった100年間は私達エルフの指導に励んだと聞いているわ。その時に魔法に関しての原理を細かく説明した魔導書を書いていたの。その魔導書は我々エルフの宝物だから簡単には見せられないけど、私がマーガレットちゃんに教える分には構わないと思うけどね。」


「私、魔法使いになるのが夢なの・・・、教えて欲しい・・・」


「ふふふ、マーガレットちゃんならそう言うと思っていたわ。」

指先の炎を消してナルルースが微笑んでいる。

「本気で魔法使いになりたいのなら、私が色々な事を教えてあげるわ。魔法使いはスキル通りに魔法が使えるだけではダメなのよ。魔法以外にも色んな知識が必要なの。魔法使いがパーティーの知恵袋と言われるのはそんな訳よ。常に戦況を見極め、魔法を効率よく使えるように全体を見る目も必要だし、常に冷静でなければならない事も必要ね。あなたはその資質がありそうよ。さすがはラピス様が気に入っただけあるわね。私もマーガレットちゃんの事が気に入ったわ。」


「勉強は嫌いじゃないから頑張る!立派な魔法使いになって、大人になったらレンヤお兄ちゃんを助ける人になりたい!」


「頼もしいわね。マーガレットちゃんが覚える私の知識は決して損にならないわ。これからの人生を豊かにすると私が保証するわ。頑張ってね。」


「うん!」

大きくマーガレットが頷いた。


ナルルースがふと空を見上げた。


「お姉さん、どうしたの?」


「ラピス様が極大魔法を使うわ。物語にもあったラピス様最強の攻撃魔法よ。」


ワナワナとマーガレットが震えている。

「そ、それって、魔王軍の大軍を壊滅させたって書いてあった・・・、私が1番好きなシーンだ・・・」


指を空に向ける。

「ほら、あそこよ。」


キラッと空が光った。

真っ赤に燃えた巨大な岩が遠くの森へ落ちてくる。


「あれがメテオの魔法・・・」


カッ!と森が光ったと思った瞬間に大きなきのこ雲が立ち上がった。

少し遅れて地面がグラグラと揺れた。


「うわぁあああああ!地面が揺れる!」


かなり遅れて大きな爆発音が聞こえたので、咄嗟にマーガレットが耳を塞いだ。

テラス席から見える通りの人々も、いきなりの地震と爆音で呆然とした表情で周りをキョロキョロと見ていた。

その中でナルルース1人が涼しい顔で椅子に座っている。


「どう?伝説の魔法を見た感想は?」


「す、す、凄いよ!あれがメテオの魔法なんだよね!やっぱりラピスお姉ちゃんって凄い人なんだ!」


「ふふふ、嬉しそうね。さすがにメテオの魔法は私の魔力では無理よ。ラピス様ほどの魔力でないと使う事は出来ないわ。でもね、原理は分かっているのよ。」


真っ赤な顔でマーガレットがナルルースを見ている。

「教えて!」


「分かったわ。マーガレットちゃん、この空の上には大きな岩がいくつも浮いているって知っている?」


「知らないわ。」

プルプルとマーガレットが首を振っている。


「私達の目には見えないくらいの遙か上空にはたくさんの岩や石が浮いているのよ。それが自然と落ちてくる時に見えるのが流れ星よ。流れ星なら見た事はあるわね。」


うんうんとマーガレットが頷いている。


「その現象を人為的に行うのがメテオの魔法よ。浮いている岩を召喚魔法で重力の影響を受ける高さまで召喚し、重力魔法を使って一気に加速して落とすのよ。あんな高さから落ちる岩を防ぐのはどんな防御魔法でも不可能ね。あれだけの距離と質量の召喚、その一連の魔法を同時に行うだけの魔力操作と膨大な魔力がないと無理な魔法よ。ラピス様だけしか出来ない特別な魔法っていうのはそういう事なの。」


「へぇ~、そんな目に見えない空の事まで知っているって、やっぱり魔法使いって凄いのね。何かワクワクしてきたわ。もっと色んな事を知りたい!」


「怖じ気づくかと思ったらワクワクしてきたって・・・、ホント楽しみな子ね。」

嬉しそうにナルルースがマーガレットを見ていた。






その後、ナルルースさんの英才教育を受けたマーガレットは学院でもメキメキと実力を伸ばし、学院制度始まって以来の天才だと評価されていた。

卒業を控えた頃には、高等学院の推薦を受けた、ていうか、是非とも来て欲しいって懇願されたけどね。

それとマーガレットの出生が分かった事もあった上に、見た目がとんでもない美少女だから、名のある貴族達から養子の誘いがいくつもあったり、貴族の御曹司達からは数え切れないくらいに求婚された事もあった。

それを全部断って俺のところに押しかけて来たんだよなぁ・・・


「なぁ、マーガレット・・・」


俺の隣に座っているマーガレットに尋ねた。


「何?あなた・・・」


ニコッと微笑んで俺を見つめている。ホント、アンやラピス達にも負けないくらいに可愛い笑顔だよ。

マーガレットと結婚して3年経ったけど、今でもマーガレットは俺に甘えてくるし、いつまでも新婚のままのイチャイチャぶりだったりする。


「俺と結婚して本当に良かったのか?お前の本当の身分は分かっている上に、ラピスと同等の才能を持っているから他のところでもっと幸せになっていたかも・・・」


いきなり唇を塞がれた。

マーガレットがキスをしてきたからだ。


しばらくキスをしてからマーガレットの唇が離れた。


「あなた・・・、私はあなたと一緒にいるのが1番の幸せなのよ。それ以外で幸せになることは絶対にないの。だからずっと私を傍に置いてね。それと、私が手伝わないとあなたの仕事が終わらないでしょう?分かっているの?」


「確かに・・・」


俺とマーガレットが座っている机の上には大量の書類が山積みになっていた。


「アンの方はラピスとマナさんが補佐に回っているけど、あっちも色々と忙しそうだしなぁ・・・、ホント、マーガレットがいなければ終わりが見えない状態だったよ。助かる・・・」


「ふふふ、ナルルース姉さんに教えてもらった事がこんな事務仕事にも役に立つなんてね。それにしても膨大な陳情書の山よねぇ・・・、あなたのおかげで世界は平和になったけど、これからはその平和を維持するのに私達の力も必要になるのよ。だからあなた、この国を理想の国にする為にアン姉さんが頑張っているからって、あなたもあまり1人で背負わないでね。」


「分かったよ。頼りにしてるからな。」


「任せて。大好きなあなたの為ならいくらでも頑張るわ。」

とても嬉しそうにマーガレットが微笑んでくれた。

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