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39話 3人でデート⑤

これで終わりだな?


そう思ってローズマリーさんを見ると・・・


真っ赤な顔をしてうるうるな目で俺を見ている。


(何で?)


ガバッとローズマリーさんが抱きついてくる。

「嬉しい!私の事を大切な人って言ってくれて・・・、もうレンヤさんの事しか考えられないわ・・・」


お~い!あれは言葉のアヤで決して・・・


って!そんな事!今更言える訳ないだろうがぁあああ!

はぁ~、アンの時と同じでまたやってしまったよ・・・


しかし、幸せそうに俺の胸に顔を埋めているローズマリーさんを見ていると・・・


(まぁ、本人がこんなに幸せそうにしているんだ。野暮な事は言わない方が良いな。)


「ローズ・・・」


「はい?」


上気した顔でローズマリーさんが俺を見つめている。

「これから私の事はローズって呼び捨てで呼んで欲しいの・・・、あなただけの特別な私の呼び方よ。お願い・・・」


このお願いは断れないだろうな。

「分かったよ、ローズ、これで良いかな?」


「ありがとう、嬉しいわ。」

チュッと俺の頬に軽くキスをしてくれた。

部下の前では凛々しい姿のローズさんとは違い、こんなデレデレしているローズさんって何か可愛く見えてしまう。意外な一面だ。


チラッとラピスを見るとニヤニヤ笑っているよ。

「ふふふ、現地妻が増えたわね。でもちょっとモテ過ぎなのが気に食わないわねぇ~、レンヤが勇者になった時にフローリア様が何か細工でもしたのかしら?あり得るわね。」


アラグディアさんもニヤニヤしている。

「さすがは勇者様ですね。『英雄色を好む』との言葉がありますが、勇者様はまさにその言葉通りです。これからも大変でしょうが頑張って下さい。」


(お~い、俺はそんな苦労はしたくなかったよ・・・)



「アラグディア」


「はっ!」


ラピスがアラグディアさんを呼ぶと、ララノアさんと共にラピスの前で膝を着き頭を下げた。


「この3人はあんた達に任せるわ。全身の骨があちこちと折れているから、目が覚めても動けないだろうし、そのままギルドに突き出してあげて。懸賞金はあんた達が好きにしなさい。」


「いえ、懸賞金につきましては我々はもう十分に資産を持っていますので、勇者様の名義に振り込む事にします。」


う~ん、俺も十分過ぎるくらいのお金を持っているからなぁ~

売っていない素材もあるし、換金すればどのくらいになるか分からないが、正直、ここまでお金は欲しいとは思っていない。何か1人で稼ぎ過ぎて他の冒険者に悪い気がするよ。


(そうだ!)


「ラピス、今回の懸賞金は孤児院の寄付にしたらどうだ?もちろん匿名での寄付だけど、そうすれば子供達にもっと美味しい物を食べさせられるしな。」


「いいアイデアね。こんなお金の使い方なら私も大賛成よ。」

ニコッとラピスが俺に微笑んでくれた。


「アラグディア、そのように手配を頼むわ。」


「はっ!かしこまりました!」

恭しくアラグディアさんが頭を下げたが、すぐに真剣な表情でラピスを見つめている。

「それと、先ほど尋問した奴らの情報ですが、この建物の地下室に大量の麻薬を保管しているとの事です。この建物はかつての王族が使用していましたから、万が一の時の為に地下に脱出路を設けた頑丈な地下シェルターがありますので、それがその地下室に当たると思われます。」


「分かったわ。その地下室ごと吹き飛ばせば問題ないわね。普通に建物を燃やしても地下室は無傷で残るでしょうし、ここは私の出番ね。証拠として残しておきたいけど、何かの拍子に薬が出回ってしまったら目も当てられないし、完全に消滅させておくわ。」


「お願います。」


「さぁ、派手に行くわよぉおおお!」

ラピスがニヤリと笑い舌舐めずりをしている。

この表情はヤバイ!極大魔法を使う気だ!


「アラグディア、ララノア、巻き添えを喰らいたくなかったら、さっさと移動して。」


「かしこまりました。」

アラグディアさんが気絶している3人を抱えると、隣にいたララノアさんが呪文を呟く。

2人の足下に魔方陣が浮かび姿が消えた。


「レンヤ!アレを使うわ。500年前に魔王軍を壊滅させたアレよ。」


(マジかい!アレをだと!)

確かにアレだと地下室ごと消滅するのは間違いないけど、森の被害はどうなる?


俺の考えが分かったのか、ラピスが再びニヤリと笑った。

「レンヤ、これは見せしめの意味もあるのよ。私達に害を及ぼそうとしたらどうなるか・・・、ローズマリーのバックに誰が付いているかを見せる為のパフォーマンスも含めてね。まぁ、被害は最小減にしておくけどね。」


いつの間にか、ラピスの右手には宝石が散りばめられた杖が握られていた。収納から取り出したのだろう。

「賢者の杖を使うのは久しぶりね。これが無いとやっぱり落ち着かないわ。」

そして俺を見る。

「レンヤ、もちろん飛べるわね?」


「あぁ、大丈夫だ。」


「OK!それじゃ、いくわ!」

杖を頭上に掲げた。

「ウインド・トルネード!」

杖の先から巨大な竜巻が発生し、天井と屋根を吹き飛ばした。屋根が無くなったので上には青空が見える。


「ローズ、悪い・・・」


「きゃっ!」

ローズさんを抱きかかえると可愛い悲鳴を上げた。最初は色っぽいしっかりとした大人の女性と思っていたけど、何か段々と可愛くなっている気がする。あの世界で生き抜くにはあんな態度を取らなかったのだろう。これが本当の姿かもしれないな。


「「フライ!」」


俺とラピスが同時に呪文を唱えると、お互いの背中から大きな白い翼が生えてきた。

一気に飛び上がり屋根の穴から空へと飛翔した。


「すごい・・・、空を飛んでいる・・・、何てキレイな景色なの・・・」


俺の腕に抱かれたローズさんが感動した目で周りの景色を見ている。

まぁ、人間が空を飛ぶなんて出来ないし、ワイバーンを使役している人間が背に乗ってやっと空を飛べるくらいだからな。こんな景色はローズさんにとっては初めてだろう。


離れた場所に町が見える。

「取り敢えず町の方まで飛んでいきましょう。障壁を張ってもこの距離だと巻き添えを喰らうわ。」


「そうだな。」


ラピスと並んで飛んで行き、町の近くまで辿り着いた。あの屋敷は森の影になって見えない。


「大丈夫よ。着弾地点の座標は設定しておいたから外れる事はないわ。さぁ、いくわよ。」

杖を掲げると散りばめられていた宝石が輝き始める。

「空に浮かぶ数多の星屑達よ。我の呼びかけに応え、その力を示せ。」



「メテオォオオオ!ストライクゥウウウウウウ!」



キラッと上空の空が光った。


ゴゴゴゴゴゴ・・・


真っ赤に焼けた岩が空から赤い軌跡を描いて森へと高速で落下した。


ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッンンンンン!


屋敷へと命中し、大量の土砂を巻き上げて爆発を起こした。衝撃も尋常ではなく、周りの木々が次々と衝撃波でなぎ倒されていく。俺達の目の前でピタッと木々の倒壊が止まった。


(ふぅ~、屋敷から円形に障壁を張っていたのは分かっていたけど、あんな威力に耐えられるか心配だった。無事に済んで本当に良かったよ。)


それにしてもとんでもない威力だよ。遙か上空から岩を落とす魔法なんてラピス以外には不可能だ。かつての戦いでも見たけど、コレを防ぐ魔法なんて無いくらいの威力だよ。それを平然とやってのけるのは、さすがに歴史上唯一の大賢者の称号持ちだけある。本当に味方で良かったと心から思う。


さっきまで空を飛んでいて感動していたローズさんも、目の前の光景を見てガクガクと震えていた。

「これが神々しか使えないと言われる極大魔法・・・、それを目の前で見るなんて・・・、こんな威力の魔法が我々に向けられると想像したら・・・」


爆発が収まり土煙が晴れてきた。

目の前の光景は・・・

屋敷があった場所を中心とした大きな穴が地面に空いている。それにとても深い・・・、いくら頑丈な地下室でもあのメテオの魔法ではひとたまりも無かっただろうな。キレイに屋敷一帯は消滅してしまった。


「あぁ~、気持ち良かった。久しぶりの極大魔法だったからスッキリしたわ。」


とても清々しい表情のラピスが巨大なクレーターを見ていた。しかし、その後の言葉は聞き逃さなかったぞ!


「変ねぇ~、ここまで威力を出すつもりはなかったのに・・・、400年間はただ眠っているのは暇で仕方なかったから精神の世界で修行したけど、その成果が出ているのかな?」


相変わらずのデタラメな魔法だ。威力は抑えたと言っているけど、500年前よりも強力になっていないか?いや!確実に強力になっているぞ!

ラピスもこの400年間はただ眠っていた訳ではなさそうだ。俺が以前の勇者の能力がパワーアップしたように、ラピスもパワーアップしたのかもしれない。


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