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313話 船上での戦い⑦(ラピス③)

「黙れ!俺は最強になったのだよ!消え去るのは貴様だぁああああ!」


ムクロが両手を広げると、片方づつに白い呪符と青い呪符が握られている。


「今の俺なら呪符の合成も可能だ!かつて誰も成し遂げることが出来なかった偉業をだ!」


両手の呪符を上空へと投げる。

すると、呪符が輝き漆黒の六芒星の魔法陣が浮かんだ。

その魔法陣に呪符が吸い込まれる。


「喰らえぇええええええええええ!白虎の力と青龍の力を合わせた最強の合体呪法!竜虎合神!」


ラピスの上空に巨大な竜巻が発生する。

その竜巻は単なる風が巻き付く竜巻ではなく、鋭い氷の塊が風の中で飛んでいる。

しかも、その竜巻は放電をしながら一気にラピスへと襲いかかる。


「へぇ~、大した威力ね。これは間違いなく極大魔法クラスはあるわ。でも、どうしよう?このままじゃ船が木っ端微塵になってしまうし・・・、まぁ上に向けて撃てば大丈夫かな?」


スッと掌を上空から迫りくる竜巻に向ける。


「レイ!ストーム!」



ズドドドドドドドドドドドドォオオオオオ!



真っ白な魔法陣がいくつも浮かび上がり、その魔法陣から大量の白い閃光が飛び出す。

白い光の奔流が竜巻を飲み込み一気に弾けると、そこには竜巻の姿形も無くなってしまっていた。


「うん、合成呪術よりも私の魔法が上だったようね。」


パチンとラピスがムクロへとウインクをする。



「う、嘘だ・・・、俺の・・・」



信じられない表情でムクロが消えてしまった竜巻を見つめていた。


「いやいや、別に大した事じゃないわよ。あなたの魔力、いやこれは呪力ね、呪力が何倍になろうが、元々が1なんだから何倍に増幅してもたかが知れているわ。だって、私はあなたと比べて何万倍も魔力があるんだから、最初から勝負にならないんだしね。」


「そ、そんな理不尽な・・・」



ギラッ!


ガックリとしたムクロだったが、まだ凶暴な目つきは死んでいない。


「そんなの信じられるか!俺は最強になるためにキョウヤ様から力をもらったんだよ!俺は最強!俺に勝てる奴なんていないんだ!」


凶暴な殺気を放ちながらムクロが叫ぶが、対するラピスは深いため息を吐いた。


「現実を理解出来ないなんてね・・・、本当の最強を見せてあげる。その姿を目に焼き付けて成仏しなさい!」


ラピスの両手に赤色と青色の呪符が握られている。

その呪符を見たムクロは信じられない表情になっていた。


「そ、その呪符は・・・、まさか?人の身で四聖獣全てを呼び出す気か?それこそあり得ない・・・」


しかしラピスはムクロと対照的にニタリと笑った。


「私を誰だと思っているの?私こそ世界最強の魔導士!私に出来ない事は無いのよ!」


2枚の呪符がラピスの手を離れ上空へと舞い上がる。

かなり上昇するとピタッと止まり、呪符を中心に赤色と青色の五芒星の魔法陣が浮かび上がった。



ズズズ・・・



「おぉぉぉ・・・」


あまりの神秘的な光景にムクロも我を忘れ上空の魔方陣に見惚れている。


赤色の魔法陣より、真っ赤な炎を纏ったクジャクのような巨大な鳥が現れる。

対して、青色の魔法陣からは青味の濃い緑色のようなとてつもなく長い胴体をもつ竜が出てくる。


「この目で四聖獣全てを見られるとは・・・、だが!」


とてつもなく鋭い視線でムクロがラピスを睨んだ。


「こうして四聖獣を呼び出してくれたのは、俺とって好都合だよ!貴様さえ倒せば、自動的にこの四聖獣は俺のものになるからな!ぎゃはははぁああああああああああ!奥の手は最後まで取っておくんだよ!」


いつの間にか手に何か黒い丸薬のようなものを握っていて、それを口に入れ飲み込む。


「がぁあああああああああああああああ!」


丸々と太っていた体が肥大化し、身長は倍以上の筋肉質な男に変化した。

あの鈍重そうな見た目とは真逆のマッチョマンがラピスを睨んでいる。


「へぇ~、ダイエット薬なんて持っていたのね。さっきの肉だるまよりもマシだけど・・・」


ブン!


バリィイイイイイイイイイ!


「あら?」


ムクロの姿がいきなり消えると、ラピスが一気に後ろへと跳躍した。

その瞬間、ラピスの前方に展開されていた玄武の障壁が音を立て粉々に砕け散る。


「どうだ!この黒狼丸は!キョウヤ様から頂いた最強の身体強化の薬だ!これはなぁあああ!さっきまでとは比べ物にならないくらいに強化出来るんだよ!この通り、俺は四聖獣の力を凌ぐ存在となったんだ!四聖獣よ!俺に跪け!俺に忠誠を誓え!俺が有効的にこの国を亡ぼす為に使ってやるぞ!ぎゃはははぁああああああああああああああ!」


「うるさいわね・・・、ゾウリムシからミジンコになったくらいで喜ぶんじゃないわよ。」


「何をほざく!最強となった俺にはどんな攻撃も通用しない!大人しく黙って俺に殺されるんだな!下手に抵抗すると余計に痛い目に遭うからな!今の俺は優しいから苦痛を受ける前に殺す事も可能だぞ!」


ラピスは迷惑そうに耳を塞いでいる。


「本当に・・・、体もでかくなったら、態度だけじゃなくて声も馬鹿でかくなるなんてね。それと、勘違いしているようだけど、私はまだまだ全然本気を出していないからね。そこは間違えないでよ!」


ビシッとムクロへ指を立てる。


「何を負け惜しみを言っている!どう見ても貴様にはこれ以上の手立てがあるはずがない!大人しく殺されぉおおおおおおおおおおおおお!」


「それはお断りね!」


「うるさい!ごちゃごちゃ言ってないで素直に死ねぇえええええええええええ!」


ムクロの巨大な拳がラピス目がけて振り下ろされる。



ピキィイイイイイイイイイッンンン!



「何ぃいいいいいいいいいいいいいいい!」


拳が振り下ろされるかと思いきや、ムクロの振り上げた右腕と右上半身が凍りつき、その動きを止めている。


「どういう事だ!貴様!何をしたぁあああ!」


「別に・・・」


ドガァアアアアアア!


「げひゃぁああああああああああああああ!」


ニヤリとラピスが笑うとムクロがいきなり後ろへと吹き飛んだ。


「青龍、ありがとうね。」


ラピスの前には蛇のように長い胴体にドラゴンの頭を持つ青龍が浮いている。


「ぐぐぐ・・・、こんなバカな・・・」


無様に床を転がっていたムクロがヨロヨロと起き始める。


「聖獣の力を使えるだけじゃなくその身をもって庇うだけじゃなく直接攻撃までする・・・、決して人間には懐かない聖獣がここまで貴様に心酔するとはあり得ない・・・」


「別に難しい事じゃないわよ。カグラも言っていたわよ。聖獣は使役するもじゃなくて対等に接するものだとね。仲の良い友達に力を貸さないなんてあり得ないのと一緒だってね。あんたは服従させようと思うから上手くいかないのよ。どんなに力があってもね・・・」



ボゥ!



「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」


いきなりムクロの上半身が炎に包まれる。


あまりの熱さなのか情けなく床をゴロゴロと転がり、炎を床に押し付け消そうとしている。


「ひぃいいいいいいいいいい!」


「無駄よ。朱雀の炎はあなたの知っている通り、対象物が消失するまで消えないのよ。でもね、今のあなただとそう簡単に燃え尽きないだろうし、時間も勿体ない上に炎が船に燃え移ったら大変だからね。」



パチン!



ラピスが指を鳴らすと、ムクロを燃やしていた炎が一瞬で消える。


「はひぃ・・・、はひぃ・・・」


ムクロの荒い息だけが辺りに響いた。


「さぁ・・・、準備運動は終わりよ。これからが本番だからね。」


絶対零度の視線でラピスがムクロを見ている。



ガバッ!



いきなりムクロが土下座を始めた。


「ど、どうかぁああああああああああ!お許しを!私の力はあなた様の足元にも及ばないと痛感しております!どうか!どうか!お情けを!」


額を床に擦り付け深々と見事な土下座を行っていた。





「何、言っているの?バカじゃない?」






「はっ・・・」


ラピスの冷めた話し方にムクロが頭を上げたまま硬直していた。


「当り前じゃない。あなた、さっきまで私の事を散々『殺す!』って言っていたじゃないの。それを、勝てそうにならなくなったら掌を返したような態度・・・、アンも言っていたでしょう。これはもう戦争なのよ。あなた達の身勝手さから始めた戦争・・・、子供の喧嘩じゃないんだから・・・」


「そ、そんな・・・」


「それによ、もう許す許さないの許容範囲は既に超えてしまったわ。だからもう諦めなさい。馬鹿な指導者の指示に従った己の不甲斐なさをね。」


ガクガクとムクロが降るえている。


「だったら・・・」


ガバッと起き上がる。



「こうなれば!何としてでも貴様を道連れにしてやるぅううううううううううううう!死ねぇえええええええええええ!」



「嫌よ。何であなたと心中しなければなならいのよ。寝言は寝てから言って!」


スッと両手を頭上に掲げる。


「冥途の土産に呪符魔術の神髄を見せてあげるわ。しかとその目に焼き付けておくのね!」



ブゥン!



ラピスの目の前の床に黄金の五芒星の魔法陣が浮かび上がる。


「白虎!玄武!朱雀!青龍!力を貸して!」


掛け声をかけた瞬間、四聖獣の姿が小さな光の玉へと変化する。

白、黒、赤、青色の光の球が黄金の魔法陣の中に吸い込まれ、更に魔法陣が激しく輝く。



ズズズ・・・



「嘘だ・・・、それこそ・・・、神を呼ぶだと・・・」


ラピスへと襲いかかろうとしたムクロだったが、大量の冷や汗をかきながら硬直している。

黄金の魔法陣の中から巨大な物体が徐々に浮き上がってくる。


「神獣・・・、麒麟・・・」


魔法陣から出現したものは、見た目は鹿に似ているが、顔は竜に似ていて2本の角が生えている。尻尾は先がふさふさしており全身が黄色く輝く鱗に覆われていた。

大きさも普通の鹿とは比べ物にならない程に大きい。


その麒麟の瞳がムクロをジッと見つめている。



ボ!ボボボ!



「何だ!体が!この白い炎は!力が!力が抜ける・・・」


ムクロの体のあちこちに白い炎が纏わり始める。


「これは麒麟の浄化の炎よ。魂まで穢れて戻れなくなってしまったあなたを浄化しているのね。熱くも痛くもないのは麒麟の慈悲よ。それには感謝しなさい。」



「嫌だ!消えたくない!助けてくれぇえええええええええええええええええ!」



涙を流しながらムクロが叫んでいるが、ラピスも麒麟も冷たい視線を向けたまだ。


「限りない欲望の果てに手に入れた分不相応な力、そしてその力に魅せられ飲み込まれてしまった者の末路よ。可哀想とは思わないわ。」


クルッとラピスが踵を返すと、ムクロがいたところには何も残っていなかった。


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