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312話 船上での戦い⑥(ラピス②)

「私との格の違い、どれだけ絶望的な差かを見せてあげるわ。」


ラピスがニィィィ~と笑う。

まるで猛獣が獲物を見つけ、今にも飛びかからんとしている表情だ。


「黙れぇえええええええええ!俺は最強!誰にも負けないんだよぉおおおおおおおおおおお!」


顔中に血管を浮かべながら血走った目でムクロが叫んだ。


「最強ね・・・、だったらあなたの土俵で戦って、更に圧倒してやろうじゃないの。」


ムクロとは対照的にラピスはニヤニヤと笑い始めた。


スッ!


ラピスが握っていた杖が消え両手を優雅に広げる。


「ほら、今の私は手ぶらなのよ。自慢の呪符魔術を使ってみれば?万に一つの確率で攻撃が当たるかもね?うふふふ・・・」


「黙れぇえええええええええ!舐めやがってぇえええええええええええ!」


ムクロが右手を突き出すと、その手には何枚もの呪符が握られている。


「喰らえ!白虎の裁きよ!」


呪符をラピスの上へと投げつけると、勢いよく呪符が上へと飛んでいき白く輝き始めた。



ガガガガガッ!



その呪符から稲妻が飛び出し、何本もの大きな稲妻がラピスへと降り注ぐ。


ドォオオオオオオオオオオオンン!


激しい衝撃と音が辺りに響く。

ラピスの立っていた場所にはおびただしい煙が立ち込め、ラピスの姿が見えなくなってしまった。


「どうだ!勇者しか使う事の出来ない雷魔法は!勇者でなくても四聖獣の力さえあれば俺達でも最強の力を使えるんだよ!がはははぁあああああああ!」


口から涎を垂らしながら光悦した表情でラピスのいた場所を見ながらゲラゲラと笑い始めた。


「しかし、やり過ぎてしまったか?跡形も無く吹き飛ばしてしまたら、俺が倒した証拠が無くなってしまうな。まぁ、いいか・・・、俺が他の奴らを倒せばいいだけだしな。そしてこの国で暴れまくってやる!俺が最強だと!俺を認めない奴には死を!」



「よく喋るわね。この狸が・・・」



どこらから、またもやラピスの声が聞こえる。


「馬鹿な!あの稲妻で生きている訳が!」



「ごめんね。ちゃんと生きているわよ。しかも傷一つ無くてよ。」



全く傷一つ、ホコリすら付いていないラピスがドヤ顔で佇んでいた。

ただ、ラピスの周りの床は落雷で出来たのだろう、かなり壊れていた。


「嘘だ・・・、白虎の雷を喰らってピンピンしているなんて・・・」


よろよろとムクロが後ずさる。


「こ、これはぁあああ!」


少し放心状態だったムクロがラピスを見ながら叫んだ。


「何で貴様が玄武の障壁を使える!しかも!ドーム型の障壁の展開は俺でさえ無理なのに、どうして!」


そう、ラピスの周囲には六角形の障壁が何十枚も展開し、ラピス全体を覆うような障壁が形成されていた。


「そう?これってそんなにも難しい事だったの?」


ニヤニヤとラピスが笑う。


「ご苦労様。」


ラピスを覆う障壁が消失すると、横には彼女の身長と同じくらい巨大な亀が現れていた。

普通の亀とは違い全体的に色は黒色になっていた。

そして決定的に違う点は、尻尾が蛇でその長い胴体を持ち上げ、亀の頭と一緒にムクロへ顔を向けていた。


「信じられん・・・、玄武の力を借りるのではなく、玄武そのものを呼び出すとは・・・」


ギリッとムクロが歯ぎしりをする。


「俺は獣王国最強の魔術師なんだ!これはまやかしなんだよぉおおおおおおおお!」


両手に大量の護符を握り目の前にかざす。


「朱雀の炎よ!この幻を消し去るんだ!ペテン野郎が!死ねぇえええええええええええ!」



バリバリィイイイイイイイイイ!



「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」


ムクロの叫び声が響いた。

全身が黒焦げになって気を失っている。


「あんた、何を血迷っているのよ!」


ラピスの目が吊り上がりムクロを睨む。


「ここがどこだか分かっているの?海の上に浮かんだ船の上なのよ。それを・・・」


くいっと上へ視線を移すと、彼女の少し上空には巨大な真っ白な虎が浮かんでいる・


「あんな爆裂級の攻撃を放てば船が沈むのにね。私だって極大魔法や上級魔法を遠慮せずにぶっ放したいけど、場所が場所だし遠慮しているのにね。それが分からないまで頭に血が上るって、ホントおバカさんとしか言いようがないわ。白虎、目を覚まさせて。」


GYUUU・・・


真っ白な虎が低く唸り声を上げると、全身から白い稲妻が放電を始める。


バチ!


「ぎゃ!」


ムクロが短い悲鳴を上げて起き上がった。


「な、何が・・・」


気を失っていたからなのか、ムクロは自分の置かれている状況が分かっていないようだ。

だが、視線をラピスに向け、その頭上に浮いている存在を目にした瞬間、ガクガクと震え始めた。


「そ、そんな・・・、あれは白虎・・・、何であいつが使役している・・・」


「まだ寝ぼけているようね。白虎、もう一発喰らわせて。」



バリバリィイイ!



「うきゃぁああああああああああああ!」


またもや白虎の雷を受け、プルプルと震えている。


「ふふふ・・・、なんだかお腹が震えているのが面白いわ。もしかしてダイエットになるかも?白虎、もうちょっと遊んでもいいわよ。」



GAU!



白虎と呼ばれた白い虎が嬉しそうに吠えた。


バリバリ!


「ぎゃひぃいいいいいいい!」


バリバリ!


「ぎょひぃいいいいいいい!」


バリバリ!


「うきゃぁあああああああ!」


またもや黒焦げとなったムクロが床の上でピクピクとしながらうつ伏せになって倒れていた。


「十分楽しめた?」


ラピスの隣に白虎が降り立ち頭を摺り寄せると、ラピスはその頭を優しく撫でている。

白虎は気持ちが良いのだろうが目を細めてうっとりとした表情だ。



「こ、こんなの・・・」


目が覚めたムクロは四つん這いになりながら震えている。


「俺は・・・、俺は獣王国最強の魔術師だぞ・・・、それなにの・・・」



「本当に残念だったわね。もし、私がいなかったら最強になれたかもね。う~~~ん、エメラルダやシヴァと比べてもあなたはまだまだだわ。でもね、あなたレベルで獣王国最強ってはないんじゃないの?私の知っている獣人族とは違いすぎるしね。そもそも、私の呪符魔術は500年前にその人から教えてもらった訳だしね。」


ニコニコ顔のラピスとは対照的に真っ青な顔のムクロだった。


「5、500年前だと!そんな魔術師と言えば、あのお方しかいないはず・・・、金狼族、銀狼族に続く最強種族である金狐族の中でも伝説となっているお方『カグラ』様しか・・・、このお方は生涯弟子を取らなかったと・・・、貴様がその弟子だと?」


「まぁ弟子って訳じゃないわ。お互いに得意な魔法を教えあった仲よ。私の魔法を教える代わりに彼女の呪符魔術を教えてもらったのね。今はどうしているかな?確か不老の術を編み出したって言っていたから、今でもどこかで生きているんじゃないのかな。完全な不老じゃないけど、500年くらいなら見た目がはそんなに変わっていないかもね。」


ラピスの言葉にショックを受けたのか、ペタンと尻もちをつきプルプルと震えている。


「嘘だ・・・、嘘だ・・・、誇り高いカグラ様が軟弱なエルフなんぞに秘伝を教える訳はないんだ!そしてカグラ様、いや!カグラを超えるのは俺なんだよ!それだけの力を俺は持っているんだ!キョウヤ様から頂いたこの最強の力をもってなぁああああああああああああああああ!」



ビキビキ!



「むっ!」


ラピスが怪訝な表情に変わった。


「何コレ?テレサのように鬼神族に変わるの?いえ、これは違うわ・・・、とっても禍々しい気配を感じるわね。」


ムクロの額に生えていた漆黒の小さなな角が、ビキビキと音を立て巨大化している。

しかし、その角は醜く捻じれ歪みながら上へと伸びていく。

肌もかつての魔人のように薄く紫色へと変貌していた。


「魔人?いえ、この気配は魔人とは違うわね。」



GYUUUUUUUUU・・・



ラピスの両隣に控えていた玄武と白虎が唸り声を上げ警戒している。

しかし、ラピス本人は全く気にしていない雰囲気で再び白虎の頭を撫でた。

その光景が羨ましいのか、玄武の亀の頭も蛇の頭もラピスの前まで伸ばし、空いている腕にスリスリと摺り寄せていた。


「ふふふ・・・、可愛いわね。」


ラピスがニコッと微笑み玄武の2つの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めていた。


「どんな存在に変わったのか分からないけど、このまま放置って訳にいかないわね。少し手荒になるけど大人しくさせないと、このままじゃ見境い無しに暴れるのは間違いないわ。」



「ぐふふふ・・・、これだ、これだよ!力が漲る!俺の圧倒的な力が体の奥から湧いてくるぞぉおおおおおおおおおおおおお!」



真っ赤に充血した目でペロッと舌なめずりをしながら、にやけた表情でムクロがラピスを見ている。


「うわぁぁぁ~~~~~~、最高にキモイ・・・、やっぱり消し去るわ。」


ラピスがブルッと震え、心底嫌そうな視線をムクロに送った。


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