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310話 船上での戦い④(シャルロット&フラン)

SIDE シャルロット


「そんなもんは俺も知らん!だけどな、お前達の野望はここで潰える。これだけは確実だ!」


はぁ~~~♡


さっきの姿を思い出しますが、レンヤさんはいつもカッコイイ!


その姿はフォーゼリア城で魔王達から私達を守ってくれた光景と同じ感じですね。


「ママ、ボ~としていたら危ないよ。いくらパパがかっこよくて見とれてしまうのは分かるけど、時と場合によりけりだからね。」


フランから言われましたけど、そんな事くらいは分かっていますよ!

周りをグルっと見ても危険な存在は感じないですね。


「今だぁあああああ!」


誰かの叫び声が聞こえます。



ヒュン!ヒュン!



(これは?)


周りから大量の矢が私に向かって雨のように降り注ぎました。


「ママ、いっぱい矢が飛んで来てるよ。大丈夫?」


何の危機感も無くフランが降り注ぐ矢を見つめています。


「分かっているわよ。はい、クリスタル・シールド!」


私とフランを中心に透明なドーム状のシールドが形成されます。



カカカカカッ!



全ての矢がシールドに阻まれ私達に届きませんでした。


「あれだけの矢でも無傷かよ!」

「く!この化け物め!」

「慌てるな!休む間もなく矢を打ち続ければ限界が来る!」


いろいろと言っていますね。

ただ、化け物と呼ばれるのは心外ですよ。

私のシールドはそんなにやわじゃないのでいつまでも耐えられますが、さすがに無駄な事に時間を費やしたくはありません。


スッと右腕を頭上に掲げ人差し指を伸ばします。



「サンダー!レイン!」



ガガガガガッ!



「「「ぎゃぁああああああああああ!」」」



弓を持った男達へと空から大量の稲妻が次々と降り注ぎました。

いくら私の命を狙った攻撃だったとしても、全員の命を奪うような冷酷な人間ではありません。

今回は威力を絞り気絶で済むようにしてあります。


(殺しはしませんよ。殺しは・・・)


「ねぇフラン、この気絶している人達をヴリトラさんが団長のシュメリア王国騎士団に送ろうと思っているけど、何人が脱落せずに真人間になると思うかな?」


私の質問にフランが腕を組んで難しそうな顔をしているわね。

そんなに難しい話をしたつもりはないんだけどね。


「ママ、あそこは止めた方がいいかもね。あそこは騎士団と言うよりも反逆者更生施設って呼ばれているんだよ。行ったが最後、まともな人格を残さなくなって日夜トラウマに怯えているって話よ。これにこの人達は獣王国の人間だし私達の国とは関係ないしね。このまま魚の餌にしても問題ないと思うな。」


しかし、フランがチラッと男達を見ているわ。


「でも、こいつらって、ママやパパに手を出してきたよね?やっぱり賛成かな。そんな奴らに地獄を見せるのもアリね。死すら生温い地獄をね。それで何人かは真人間になれば儲けものね。うふふふ・・・」


ふふふ・・・、フランは本当に可愛いわ。

普段は周りの事に関してはあまり無関心だけど、レンヤさんや私の事になった時は私でも驚くほどに冷酷になるのよね。レンヤさんと私が大好きだって事は言わなくも分かるわ。

そんなフランが本当に可愛い!

思わず抱きしめたくなるけど、今は戦いの最中だから、抱きしめるのは終わってからね。



「ちっ!使えない奴らだな!」


ザクッ!


「ぎゃぁああああああああああ!」


何ですって!

1人の獣人の男が倒れている男の胸に槍を突き刺しています。


「獣人の誇りはどうしたんだよぉおおおおおおおおおおおお!この腑抜け野郎が!」


「うぎゃぁあああ!ジン様、どうかお止め下さい!ど、どうかぁああああああああああ!」


うわぁぁぁぁぁぁぁ、これは見ていられないわ。


槍を胸に突き刺しているだけじゃなくて、刺した槍をぐりぐりと回している。

体が痺れて動けないのに、こうして苦痛を与えるなんて、この人は味方の事をどう思っているの?


「あぁあああ!飽きたな・・・」


ペロッと舌を出しながら口角を上げ、胸に刺さった槍を抜くと、すぐさま男の頭に槍を突き刺しました。

こんな人間を野放しにしておけないわ!


その男が私へと視線を向けてきます。

そして舌なめずりをしながら、下品な笑いを浮かべています。


(うわぁぁぁ~~~、気気持ち悪い・・・)


全身にサブイボがゾワゾワと出てきます。

ここまで体が拒絶反応が出るのは初めてです。


彼の下心が丸見え?

いえ、自分の欲望に忠実なんでしょう。


目の前の獣人は人間の容姿に近い獣人ではありません。

猛獣の豹が二足歩行の姿勢になった感じです。

同じ獣人族でも獣の姿に近い方が身体能力が高いと言われています。

特に猛獣系の獣人は獣人族中最高スペックの能力を持っていますので、この豹獣人もかなりの力を持っているのに違いありません。

細身の体ですが無駄なぜい肉も無く、全身がバネだと言わんばかりの肉体です。


その獣人は相変わらず私とフランを交互に見つめながらニヤニヤしています。


(本当に気持ち悪い!)



「ずるいよなぁぁぁ~~~~~」



(はい?)


一体、彼は何を言い出すの?


「勇者って本当にハーレムなんだな。しかも、どれも特上の女ばっかり!こんなにたくさんいるなら1人くらい俺がもらってもいいんじゃない?どう?俺の女にならない?」



ゾワッ!



(うわぁぁぁ~~~、これは無しよ!)


体中が拒絶反応で鳥肌が立っているわ。

でも、まだ粘着質な視線をを私達に送っている。


「あんたってどう見てもお姫様の感じだな。よし!あんたは俺の奴隷に決定だ!」


「何を言っているの?」


思わず相手の言葉に反応してしまったけど、完全に頭がおかしいんじゃない?

ちらっとフランを見たけど、フランも心底嫌そうな顔だしね。


男がニタニタ笑いながら舌をペロッと舐めているわ。


「だってよ、あんたみたいな高慢ちきな女の心をへし折って、どん底にさせるのってとっても面白いじゃない。生きる事すら諦める程に身も心もズタズタにするって最高!おもちゃはこうでなくっちゃな。本当はキョウカの奴をズタボロにしたかったけど、あんたの方が面白そうだ。」


(こいつは・・・)


ゲスを通り越してクズの中のクズね。

完全に女の敵よ!


「どうもあなたはこの世に存在してはいけない人のようですね。」


グーングニルを構えると、フランも私の横に立ったわ。


「ママ、あれは絶対にダメよ。上手く取り繕っているみたいけど、あれは殺人鬼の目ね。これまでどれだけの女の人が犠牲になったか・・・、漂ってくる血の匂いも普通じゃないし、そんな光景を想像するだけでも反吐がでそう・・・」


だけど、目の前いる男はずっとニヤニヤの笑顔を崩していない。


「可愛い顔をして意外と辛辣だね。だけどね、俺は別に殺人なんてしていないよ。女は俺に快楽を与えるためだけに存在しているだけだからね。俺が楽しい事は全て正しい事なんだよ。女は俺の事をジン様って敬い遜るしか出来ない存在だからね。」


これは全くダメですね。会話すら成立しません。

女性の言葉すら聞く気はないのでしょう。


グーングニルを男に向けて構えます。


「おや?この俺に盾突くつもりかい?どうやら俺の強さを分かっていないようだね。あまりにも俺が一方的になるだろうから、隣の彼女も一緒に戦ってもいいから。2人がかりなら少しは俺も楽しめると思うな。ふふふ・・・」


はぁ~~~、こうも能天気とは逆に怖いですよ。

正直、彼からは強さを感じる事はありません。どちらかと言えば、生理的嫌悪感ばかりなんですけど・・・


「ママ、どうする?」


フランも私と同じように思っているみたいでニヤニヤしていますよ。


「フラン、ここは私に任せなさい。まぁ、あのようなタイプはアレだと思うから、アレをお願いね。」


パチンとフランにウインクをすると大きく頷いてくれます。



「残念ながら、あなたの相手は私が努めます。私だけでも十分だと思いますからね。」



ビキ!



おや?私が宣言すると相手の雰囲気が変わってきましたね。

豹の頭だから毛並みのせいで血管が浮いているのは見えませんが、細かくプルプルと震えていますし、目も少し血走っている感じです。


「き、貴様ぁぁぁ~~~、女にくせに舐めた真似を~~~~~」


「別に私は舐めてませんよ。あなたごときは私1人で大丈夫と思っただけですし、何でそこまでお怒りか理解に苦しみますよ。」



「うるせぇええええええええええええええええ!」



あらら・・・、簡単にキレてしまいましたよ。単純ですね。


「こうなったら徹底的にいたぶってやる・・・、まずはその背中の羽を切り落として空に逃げられなくさせてから、そのすまし顔を徹底的に切り刻んでやる!手も足も落としてこの世の苦痛全てを貴様の体に刻み込んでやる!」


「出来るものならね。」


ニヤリと笑ってやりました。



「ふざけるなぁああああああああああああああああ!」



彼の体がブレたと思った瞬間、その場から姿が消え失せます。


(早いわね。でも・・・)



ガキィイイイイイイイイイ!



私のすぐ左から槍が突き出されましたが、その槍をグーングニルで受け止めます。


「ちっ!受け止めやがって!俺は豹の獣人!スピードは獣王国一番の男なんだよ!たまたまマグレで受け止めて調子に乗るな!だがな!これは捌き切れんだろぉおおおがぁあああああ!」


すぐに私から離れて構えています。


「死ねぇええええええええええええええ!疾風怒涛!」


ほほぉぉぉ~~~、これは見事な突き技ですね。

一本の槍がまるで数百本もの数に見え私へと迫ってきます。


(ですが!)



ピタッ!



彼の槍の先端が私の槍の先端で止められています。

どんなに高速で突きを放とうとも、先端を押さえつけてしまえばそれで終わり。次の行動を取ることが出来なくなります。


「ば!馬鹿なぁああああああああ!俺の槍が受け止められる?俺のスピードに追い付くだと?そもそもあの速度で槍の穂先を合わせる事すらあり得ない・・・」


驚愕の顔で私の顔を見ていますが、正直、彼の槍捌きは欠伸が出るほどに遅いのですよ。

テレサのまさに光速の動きを誇る剣技に比べればね。


「さぁ、次は何を見せてくれるのですか?」


私がニコッと微笑むとザッと後ろへと飛び退き距離を取ります。


「この化け物めぇぇぇ・・・」


私を化け物とは心外ですね。


「だが!これは躱せまい!」


ぐっと腰を落とし空中へと大きくジャンプをします。

さすがは豹の獣人だけあります。まるで翼が生えて空に飛んでいるかのごとく高く飛び上がりました。

そして、ジャンプが終わり落下を始めます。


(これは!)


どういう原理でこんな事が出来るのでしょうか?

錐もみ回転をしながら落下を始めていますが、まるで彼自身が大きな渦を巻くように轟音をあげながら落ちてきます。まるで、巨大な竜巻が私に向かって落ちてくるように・・・


「ぎゃはははぁああああああああああ!奥義ぃいいいいい!下り飛竜!生意気な女は死ねぇええええええええええええええ!」



「ふぅ~~~」



軽く息を吐きます。

確かに凄い技でしょうが・・・


「そんな見せかけだけが派手な技に何の恐怖もありません!私の本気の一撃で終わりにしましょう!」


グッとグーングニルを頭上に掲げると、穂先が白く激しく輝きます。

背中の翼を大きく広げ羽ばたきました。


「グーングニルよ!太陽のように闇を照らし道を切り開け!ライジングゥウウウウウ!インパクトォオオオオオオオ!」


まるで私自身が光の矢のように彼が作った渦の中心へと飛び込みました。



ガシャァアアアアアアアアアアア!



「な!何ぃいいいいいいいいいいいいいいい!」


彼の悲鳴が聞こえます。


スタッ!


ドシャ!


私はゆっくりと床へと着地しましたが、彼は顔面から無様に落ちてきました。


「う、う、う、嘘だぁあああああああ!俺の竜牙槍がぁあああああああああああああああ!」


あらら、可哀そうに・・・

とても立派な槍でしたがグーングニルの前では単なる槍に成り下がったようですね。

名前からして、多分ですがドラゴンの牙を素材として製作された槍でしょう。


「相手が悪かったようですね。」


グーングニルを構え彼へ向き直りました。

いくら達人でも素手でこの私に立ち向かう気はなさそうです。


ガバッ!


情けなく彼が土下座をして私に頭を下げてきました。


「ゆ、許してくれ!俺はもう戦えない!だからな、見逃してくれ!心を入れ替える!真人間になって償いをするから!許してくれ!」


何とも情けない姿ですね。

これ以上は私が弱いもの苛めになってしまうでしょう。


「分かりました。約束通り心を入れ替えて下さいね。」


そして私は背を向けました。




「馬鹿めぇええええええええええええ!隙を見せたな!いくらお前が強くても俺のスピードにかかれば!

え”え”え”!」




予想通りですね。

私が振り向いた隙を狙って襲いかかってくる展開は・・・



いつまで経っても彼は私にたどり着けないでいます。


クルッと振り返ると・・・


「ママ、予想通りだったわね。やっぱりクズはクズ、情けをかけるだけ無駄だってよく分かったわ。」


フランがにこやかに微笑んでいます。

その横には・・・


懐にでも隠していたのでしょうか、ナイフを右手に持ち振り上げている姿勢で硬直しています。


「ど、どういう事だ!体が動かん!貴様!何をした!」


彼が騒いでいますけど、仕方ありませんね。種を教えてあげましょうか。何も知らなないまま死ぬのも可哀想ですからね。



「ブラッド・ワイヤー」



フランがスッと人差し指を伸ばします。


「がぁああああああああああああ!」


彼の首から血がじわじわ出て苦悶の表情をしていますね。


「これはね、私の血で作った目に見えないくらい細い単分子ワイヤーよ。それがあなたの体中に巻き付いているの。今のあなたはクモの巣にとらわれた虫と同じ。もがけばもがくほどワイヤーが食い込むわ。」


ニタァァァとフランが口角を上げているわ。その目は全く笑っていないけどね。


クイッとフランが人差し指を動かします。


スパァアアアアア!


「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」


彼の悲鳴が響きます。


(うわぁぁぁ~~~、容赦ないわね。)


彼の四肢が全て切り落とされ芋虫のように床に這いつくばっています。


「ひぃひぃ!た、助けてくれぇぇぇ、今度こそはちゃんと改心する!もう2度とあんた達には関わらない!だから許してくれぇええええええ!」


しかし、フランがとっても冷たい視線で彼を見下ろしているわ。


「そう・・・、でもね、あなたは今まで女の人を助けたことがある?命乞いをしている人に対して何をしていたの?あなたは拷問が好きなんだよね。このままでも出血多量で死ぬけど、万が一生き延びられても困るわ。だから・・・」


「い、い、い、いやだぁああああああああああああああ!ガッ!」


ゴトンと音を立て彼の首が落ちました。


「因果応報よ・・・」


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