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306話 戦いの始まり

すっかり萎れてしまったミヤビさんは気にしないようにしよう。


だけど、あれだけ高いところを怖がっている2人だけをティアの背中に残すのもなぁ・・・


チラッとマナさんと目が合った。


(これだ!)


「マナさん、フランと一緒にここに残ってくれないか?」


「私は大丈夫だけど、フランちゃんが何を言うか?」


ジッ!


2人でフランに視線を移すと・・・



すっごく不機嫌な表情のフランがいた!



シャルも俺も戦いに降りていくし、ここで留守番だと言われたら「置いて行くな!」って普通は思うよな。

特にフランはまだまだ甘えたい盛りだし、尚更機嫌が悪いのは分かる。


(だけど、そんなフランの機嫌を直す方法があった!)


「フラン・・・」


「何よ!パパ・・・、置いて行くなんて許さないわ!」


(ふむ、予想通りの展開だよ。)


「今からな、フラン、お前とマナさんにしか出来ない任務を任せたいけど・・・、嫌なら仕方ないな・・・」


「えっ!何?」


(よし!食い付いた!)


「前からマナさんと一緒に2人で長々距離射程の練習をしていたじゃないか?その出番が来たんだよ。」


「どういう事?」


少し嬉しそうなフランだな。

これならいけそうだ。


「俺達があの船に降りて戦うけど、その時に援護を頼みたい。だけどな、普通の援護じゃないぞ。ここからあいつらを狙撃して欲しいんだよ。俺達が戦う前にどこからかも分からない攻撃を受ければ、奴らは必ず動揺する。そうすれば俺達が戦うのも楽になるしな。それに姫様達の護衛も頼む。ある程度、相手の数が減ればティアに降りてきてもらいたいし、無事な姿の姫様がいれば奴等も戦う気は起きないだろう。その重要な任務をフラン、お前に頼みたいんだ。」


「うん!分かった!」


フランがとても嬉しそうに頷く。


(ふっ・・・、チョロイな・・・)


「じゃあ、パパ・・・」


フランが子供の見た目とは違い、すごく妖艶な視線を俺に送っている。

サキュバスも真っ青な魅了の視線だ。

神祖のバンパイアしか使えないスキルで事ある度に俺に使って誘惑してくるけど、『精神攻撃完全耐性』がある俺には全く効果は無いんだよね。

フランもこの事は分かっているけど、今ではこれを使う時は例のおねだりの合図なんだな。


(でも、今は2人の視線もあるし・・・)


スッと腕をフランの前に差しだした。


「今はこれで我慢な。さすがにあの2人の前じゃ首は勘弁してくれ。」


「仕方ないね、でも後でちゃんと吸わせてね。」


カプッ!


俺の腕にフランが噛みつく。

だからって痛くはないけどね。


フランが輝きみるみると大きくなり、背中には漆黒の大きな翼が生える。


「パパの血は最高・・・、ふふふ、力が漲るわ。」


とっても妖艶な笑顔を俺に向ける大人バージョンのフランだった。



「姫様・・・」

「ミヤビ・・・」



2人がガクガクと震えフランを見ている。


(やっぱり怖がらせたか?)


しかし!


「ミヤビ、あれが大人の女性なのね・・・、私もあのようになれるかしら?」


「姫様、それは安心出来ます。姫様は獣人族で最高に美しいと私は思っています。あと数年経てば姫様も必ず大人の女性になれる筈!私が保証しますよ!」


(おい!全然違う方向を向いていたか!)


まぁ、フランを怖がっていないのは良かった。


「マナさん、それじゃフランとのコンビネーションを頼む。」


「任せてレンヤ君、フランちゃんのサポートは完璧にこなしておくわよ。しっかりあの船にいる獣人族達に恐怖を与えておくわ。」


マナさんがグッと親指を立てて微笑んだ。



「レンヤさん、私達も行きますよ。その前に・・・」


アンの全身が金色に輝く。


「魔装!」


黄金の鎧が全身を包み背中には薄く金色に輝く翼が生えている。


「ひゃぁあああああああああああああああああ!」


キョウカ姫の叫び声が聞こえたが、どうしてかはさすがに俺でも分かる。


「ア、ア、アンジェリカ様の魔装をこの目で・・・、何たる幸せ!」


あまりの興奮なのか、キョウカ姫から鼻血がダラダラと流れている。。


「姫様、羨ましいです・・・」


ミヤビさんが少し落胆した感じでキョウカ姫の鼻血を拭いていた。


「気にしたらダメね・・・」


アンがボソッと俺へと話すが俺も同意見だ。



「アン!行くぜ!」


そう言って俺はティアの背中から飛び降りる。


「フライ!」


次の瞬間、俺の背中にはラピスと同じような白い翼が生える。


ギュン!


俺より少し遅れて飛び下りたアンが一気に加速し俺の隣まで飛び並んで眼下の船へと飛び出した。


(そろそろソフィア達が降りている頃か?)


隣にいるアンを見るとアンがニヤリと笑う。

アンも俺と同じ気持ちみたいだな。



「さぁ!久しぶりの戦いだ!ワクワクするぜ!」






「さて、私達も準備しないとね。」


マナがスッと右腕を頭上に掲げた。


「プラチナ・クイーン!行くわよ!」


次の瞬間、マナの後ろに白銀色に輝く女神像が現れる。


ガシャァアアアアアアアアアアア!


女神像がバラバラになり、マナの全身へと装着された。



その光景をキョウカ達がジッと見ている。

その目はアンジェリカを見ている時の目と同じくキラキラ輝いていた。


「ねぇ、ミヤビ・・・」


「姫様、どうしました?」


「人族ってみんな翼が生えて飛べるものなの?エルフもそうだったけどね・・・、それなら、私も人族に生まれたかったな・・・」


その言葉にミヤビが「はぁ~~~~~」と溜息をする。


「姫様、人族が空を飛べるようなことは絶っっっ対!にありません!ここが、勇者パーティーそのものがおかしいだけですよ!我ら獣人族でも鳥族のごく一部だけが飛ぶことが出来るだけですよ。」


「そうですよね。たった数人で中央大陸でも屈指の強国の一つである帝国をも陥落させ、しかも人の身でありながら神をも倒したのですからね。我々の理解に収まらないのも分かります。世界最強とも言われるパーティー、私も出来ればメンバーの一人に・・・」


「姫様!」


ミヤビがジロッとキョウカを睨んだ。


「姫様は今や獣人国の残された希望です。その事は絶対に・・・、私も命を懸けてでもお守りします。」


「そうね・・・、勇者様・・・」


消え入るように呟いたキョウカの声は誰にも聞こえなかった。




「フランちゃん、そろそろ始めるわよ。」


「マナ姉さん、了解よ!」


ズズズ・・・


フランの掌から大量の血液が噴き出し、大きな丸い球状に変化する。

その球状の血液が徐々に細長く変化し、ある形状のものを作った。


「これがデウス様から教えてもらった武器、それを私の血闘術ブラッド・アーツで再現したもの。これにマナ姉さんの能力を加えれば、相手は為す術もなくただ倒れるのみ。一方的な蹂躙ね。」


「フラン、今回は牽制に使うから全滅させたらダメよ。」


「分かってるわ。ちゃんとお仕事をしてパパに褒めてもらうの。だから勝手にやり過ぎる事はしないわ。」


フランが両手に抱えている武器を胸の前に構え、片膝をティアの背中につけ狙いを定める。


「ブラッド・ライフル!いつでも撃てるわ!」


マナがフランの肩に手を乗せる。


「プラチナ・クイーン!シンクロモード!フランちゃんの視覚と共有するわよ!望遠及びターゲットスコープ展開!」


「これだけ遠く離れているのにハッキリと見えるわ!流石マナ姉さんね!あ!ラピス姉さん達が甲板に降りたわ!ぞろぞろと獣人達が出てくる出てくる。ふふふ・・・、早速ソフィア姉さんに玉潰しをされているわ。ざまぁよ!下品な男には最高のお仕置きね。あ!ママも降りたわ!さて・・・、弓を構えている男が5人いるから、こいつらに狙いを絞るわ!」


フランが赤黒いライフルを構えジッと撃つタイミングを待っている。


「湿度に風向入力、重力誤差も計算、弾道予測開始!ターゲットロックオン!」


「あ!マーカーが見える!それに狙いを定めれば良いのね。」


「そうよ、後は頼むわね。」


フランがキッと目を細める。


「ライフル・シュートォオオオオオオオ!」



バス!バス!バス!バス!バス!



乾いた発射音がほぼ同時だが5つ大空に響いた。






少し前・・・



「ソフィア!もうすぐ船よ!」

「そうね!でもマストにいる見張りに気付かれたみたいよ。」


先に飛び出したラピスとソフィアが上空から船に近づいていたが、マストの上にいた見張りが2人に気付いた。


「何だアレは!鳥族が向かっているだと!だが!この大陸には鳥族はいないはずだ!いや!あれは人族だ!どうして人族に翼がある?一体どうなっている!緊急事態!不審者が向かって来る!みんな気を付けろぉおおおおおお!」


ラピス達には見張りが何を言っているのか分からないが、仕草から自分達に気付き警報を船に出したものだと理解している。


「お仕事ご苦労様ね。でもね、今回の私達は容赦しないわ!」


ラピスの周囲に氷の槍がいくつも浮かんだ。


「アイスランス!」


恐るべき速度で氷の槍が見張りへと飛んで行く。



「うぎゃぁあああああああああ!」



憐れ、見張りの男は為す術もなく氷の槍に全身を穴だらけにされ、絶命し見張り台から甲板へと落ちていく。


「敵襲か!」


見張りからの叫び声を聞いた獣人族達が、慌てて船室から甲板へと走ってくる。


ドチャ!


全身が穴だらけになり血ダルマになった男が甲板へと落ちてくる。


「見張りがやられた!上からだ!」


1人が叫ぶと一斉に全員が上を向いた。

しかし、もうすぐそばにラピスとソフィアが迫っている。



スタッ!



ラピスとソフィアが同時に甲板の上に降り立った。

大きな白い翼を広げながら床へと音も無く降り立つ姿に、甲板の上にいた男達全員があまりにも美しく幻想的な光景に一瞬目を奪われていた。


しかし、すぐに我に返りラピス達を睨む。


「貴様等!何者だぁあああああ!」


1人の獣人の男が前に出て2人へと近づく。

手を伸ばしソフィアに掴みかかろうとした。



ズン!



一瞬、獣人族の男達の動きが止まる。


ソフィアに掴みかかろうしていた男も動きが止まっている。

いや!止まってはいないが、ピクピクと小刻みに震えていた。


ソフィアの足が男の股間に真下から喰い込んでいる。

いわゆる金的蹴りをソフィアが放っていた。

しかし、単なる金的蹴りではない!

ソフィアのスラッとした足が深々と男の股間に喰い込んでいる。誰が見ても確実に絶対に再起不能レベルで潰れていると分かる程にだ!

男なら誰でも思うだろう。


『絶対に喰らいたくない!アレは地獄の責めよりも恐ろしい!』


ゆっくりと男が膝から崩れ落ち、股間を押さえながら泡を吹いてうつ伏せに倒れ込んだ。


その光景に男達全員が股間を押さえ黙ってしまう。


「ふふふ・・・、次は誰が潰されたいのかな?」


ソフィアの放つ殺気に誰もが動けないでいた。



スタタッ!



シャルロットとテレサがラピスとソフィアの背を守るように降り立った。


「また人族が空を飛んできた・・・」


獣人族の一人が彼女達を睨んでいたが、急にニヤリと下品な笑顔を浮かべた。


「だが、たかが女ばかり!その女の不意打ちさえなければ負ける訳がないんだよ!」


サッと右手を上げると、後ろから弓を持った男達が現れた。


「ふはははぁああああああああ!いくら腕が立とうが生身で弓には勝てまい!お前ら!すぐに殺すなよ。これだけの上玉が揃っているんだ、思いっ切り楽しもうじゃないか!ぎゃはははぁああああああああああ!」



「ゲスね・・・」



ラピスがボソッと呟いた。


「まぁ、この台詞はテンプレだと分かっていたけどね。マナから連絡があったし、精々束の間の優越感に浸っていなさい。」



「女共よ!無謀にも乗り込んできた度胸だけは誉めてやる!だがなぁぁぁ~~~、それも無駄だと思い知るんだな!撃・・・」


男が上げた手を下ろそうとした瞬間!


「「「がっ!」」」


弓を持った男5人がいきなり倒れる。


「お前達!どうした!」


倒れた男達へ後ろで待機していた男が駆け寄り抱き上げると驚愕の顔をする。

慌てて残りの倒れている男達を見渡した。


「隊長!死んでいます!どいつも眉間に穴が開いてぇええええええええ!ぎゃぁああああああああああ!」


男の上半身が炎に包まれ倒れてしまう。

あっという間に全身が燃え尽き消滅し、床には黒く焦げた後だけが残った。


「な、何が起きた・・・」


隊長と呼ばれた先頭にいる男が驚愕の表情で床の染みを見ている。



「別に大した事はしてないわ。」



シャルロットがニヤリと笑うと、体の周囲に光り輝く球体がいくつも浮かぶ。


「プラズマボール、飛び道具を持っているのはあなた達だけじゃないのよ。そんな原始的な武器で私達に立ち向かう事すらおこがましいけどね。」



「そ、そんな・・・、馬鹿な・・・」



男が額から大汗をかきながら少しずつ後ろに下がっていく。



スタッ!



「「「!!!」」」



再び男達の間に動揺が走る。


「き!貴様は!」


男が叫んだ。


シャルロットと男の間にレンヤとアンジェリカが降り立つ。


「アルファ、行くぜ!」


レンヤの右手に光が集まり黄金の剣が握られ、それを男達へと向けた。


「こ、この剣は!聖剣アーク・ライト!何で勇者がここにいるぅううううううううううううう!」


ニヤリとレンヤの口角が上がった。


「そんなもんは俺も知らん!だけどな、お前達の野望はここで潰える。これだけは確実だ!」




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